2016年9月13日 (火)

おかあさんの外道!

   おかあさんは結構ネタバレを気にしないひとなので、時折フェイタルなネタバレをやってしまって猫科の人たちを泣かせます。ついこないだも、「アルスラーン戦記」の原作の方の新刊で、とうとう物語も締めに入ってきて、ととあるキャラクターの退場をかるく話題にしてしまって……。だって、虎美あれだけ母が勧めても原作読んでくれないから、もうアルスラーン興味ないのかと思って。2部だしいいかと。1部のあの結末は言いたいけど言わない……言ってないよね?

   今日もやってしまいました。
   「2部の敵はもう人外だから。アルスラーンがアレと相討ちになって死んじゃって、子供もいないから後を継ぐべき人がいなくて、一応もとの王族だからお願いしますとかいってヒルメスが王位につくんだけど、『解放王アルスラーンマジ名君だった』、『あの方が生きておられたらいいのに』って日頃そこら中から言われるのって最高の嫌がらせだよね」

   途中から虎美の表情が固まる固まる……!

   「おかーさん、それ……」
   「母の妄想だが」
   「ホントのネタバレかと思った!」
   違いまーす♪ でもそれくらいやられてもしょうがないかも、ホント、おれは正統の王子とかいって物語世界のほぼ全ての国に迷惑掛けまくった疫病神だから、ヒルメスって。最近自覚し始めたけど、その分やさぐれMAXでもう手が付けられないカンジよ。精々ハデに破滅すればいいのよ。ホントにもう。

   いえね、きのう2ちゃんで拾ったネタで、「青池保子の『アルカサル』のエンリケはふつうの漫画ならこっちが主役を張ってた登場人物」とか言うのがあって。
   それはたしかにそうとも言えるんだけど。王の庶子だけど嫡子の王太子より愛されて育って、ある日父王の突然の死により頂点から転がり落ちて、復讐の刃を研ぎ弟王をつけねらいとうとう……という一生は確かにアップダウン激しいな。まあ、本来の主人公カスティリア王ドン・ペドロも好敵手だけあってほんとドラマティックな人生だったんですけど。

   「アルスラーン戦記」のヒルメスも、伝統的物語のパターンならこっちが主役になっていたであろう人物とか、作者の田中芳樹が言ってたなあと思って。

   じゃあ、なんでも3つ揃えるのがお作法とすれば、「世界3大こっちが主役でも充分波瀾万丈な物語になる伝説級ライヴァル役はエンリケ、ヒルメスそして……?」

   おかあさん最近物語読んでないからどうしても出ませんでした。

   ……やっぱDIOですかねえ?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年2月11日 (木)

まだまだ想定の範囲内です

   恒例前年おかあさんをはにゃ~んと言わせた本! の発表は、「2015年は残念ながら該当なし!」となりました。仕事に頑張ったので本を読んでる余裕がありませんでした。てゆーか買ってる余裕が。にゃんこたちが2人とも私立大学に行きやがったのでもうギリギリです。いや1にゃんはおじいちゃんに面倒見て貰ってますが。学費から生活費小遣いまで丸抱え。親として深く反省。

   そんでもって細々とネットの小説を読んでたりしますが、まーあれだ。いわゆるなろう小説? もう読む方もゲームの知識があることを前提としたファンタジーね。異世界に飛び込んで、なぜかその世界でも珍しい突出した能力を持ってて、でも元の現実世界じゃああんまりイケてなかった少年少女お兄さんおねえさんが、行った先では万能のもてもて。シヤワセ~もう帰らなくてもいいよねッ(!?)ていうお話だ。
   普通に勇者にならなくても、カフェを開店して大繁盛、癒やし手となっても奇跡の人。次はどんな切り口で来るかとちょっと面白くって、いろいろ読み散らかしております。

   さてと。いい年の読者としては、楽しむだけじゃなく、出る本出る本みんなファンタジー世界を舞台としておって、大丈夫なの? きみたちそんなに日常に飽きて脱出したいと思ってるの、注目されたい、大切にされたいと願ってるのと親としては心配、というところまで思いをめぐらせるべきかな~と思っているところです。

   とーこーろーがー。
   BGMに昔買ったオペラの名作集を掛けながら読んでたら、おかあさんはたと気付いてしまいました!
   大好きなビゼーの「真珠採り」はたしかインド辺り、ビゼーなら「カルメン」だけど、これも異国情緒ものだ。「トゥーランドット」は中国で「アイーダ」はエジプト、「ナブッコ」はバビロニアだぜおっかさん!
   ……絢爛豪華なスペクタクルと国を救うの救わないのというラヴ・ロマンスはやっぱ知らない遠くの異文化の国の方が似合うんだなあ、コレ歴史の教訓。

   じゃーべつに血湧き肉躍る楽しみのための物語の舞台が知らない世界であることに何ら問題はないのでした。おおいにやれ。

   そんで、絵空事ばっかやってて楽しいの? とヴェリズモ・オペラが勃興し、日本のミステリに社会派が一大センセーションを巻き起こしたように、きっと青少年向け読み物にもリアルでイタ切ない話の波がきっと起こるんだぜ、そのうち。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年4月16日 (木)

華麗なるギャツビー 

   こりゃ困った。

   いつも見に行っているブログで2013年版、ディカプリオが主演で監督がバズ・ラーマンのを紹介してあったので、そういえばこれ読んでないわとブックオフへ。ちょうど出てたので買って、うちかえって流し読み。

   

定価で買わなくて良かった。そう思った自分がまた哀しい。

   理由1。

   こんなもんコーコーセーの時に読んどくもんでしょう。そんでもって気の利いた英文科生なら学生時代に原書で読み直してると。なんで50前にして初読、恥ずかしい

   理由2.

   翻訳文体、長く続く内省的な地の文がもう退屈で退屈で。こういうまとも(?)なものを読めない身体になっていることに絶望。ときどき挟まれるギャツビーの口癖「親友」ってのが、これは地の文じゃあもしかしてポアロみたいにフランス語なんだろうか、それとも、20年代の教養人はそういう口の利き方をしたものか、じゃあ原文じゃあなんて言ってるんだろなんて、いろいろ思いをめぐらしてしまうそういうヘンに知恵のついた自分も嫌ッ。説明の要る単語につき、括弧書きで2行に割ってさらに小さい字で注釈を入れてある翻訳物独特の文体? レイアウト? にご苦労さんですと書く方の苦労に思いを致すようになっちまってどうも。

   理由3。

   登場人物みんなに感情移入ができない。いろいろ解説を読んだりすると、そういう特異な時代背景の中の特異な人々と、それに対して批判的な目を向ける語り手(=作者)を味わうものらしいので、なにこの低俗な連中というざらっとした感想も作者の意図したものらしいんですけどほんとお付き合いしたくないわあ。本は娯楽として読みたいんで、時代を読み解くためにキョーヨー人の義務として読んでるんじゃないんで。

   全然血湧き肉躍らないしその時代のお素敵な雰囲気教えていただいてありがとうッとも思わないし、学校の図書館で借りて読んで「ああ、読んだよ?」と解った振りだけできればいい本と思いましたです。ふーん、アメリカ東部と中西部ってそういう精神的断絶があるの~? ッてカンジ。

   おかあさんバッドエンドものは引きずるから嫌なのよね。どこの分岐でだれがどうすればよかったかずるずる考え込んじゃうから。要は、物語として好きじゃないです。

   映画館でパーティ・シーンに圧倒されて、ああ、レオ様可哀相ッてしみじみして明るいところ出てきてさくっと忘れる映画としてなら我慢できたのかも知れないけれど。そういうライト・ユーザー向けの性格もあるのかな?
   「やっぱり過去にしがみついちゃダメだよね、未来に生きなくちゃ」 
   アメリカ版金色夜叉と解釈すればよいのか。最初から、語り手キャラウェイ君の目からは「こいつやべえよ」と見られてるようですが。

   ああ、そんで、レオ様版映画は気合いをいれすぎた衣装とかが前に出すぎでストーリーを圧倒しちゃってぼんやりした出来になっちゃったらしいですな。TV落ちしたら見たいかも。

   作劇上のこと。
   どの場面で雨を降らせると効果的かという点においては満点。すんごい惨めな顔してキャラウェイ君ちのお茶の会の日に時計をチラチラ見てるレオ様が目に浮かびました。そんでもってそのあと晴れるし。ありえねえハッピーエンドを一瞬だけ心に描けたりして。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年2月16日 (月)

発表! 2014年の本

   いやほんと、暮れからお引っ越しの準備しつつ買った本を整理してたけど、去年はまったく本を買って読む余裕がなかった! 「オリ咎」シリーズも出てなかったみたいだし。
   辛うじて東日本大震災のときに石巻? の製紙工場が大変だった話を日本の製紙業界の現状をからめつつ描いてくれた本は読んだけど、どっかいっちゃったわ。寝ても覚めてもなくらいに心に深く食い込んだって程でもないし。

   情けない。

   それで、2012年と被りますが、「マルタ・サギーは探偵ですか」が再び選出となりました。虎美が発掘して読み返してたのに付き合ってたら、なんと加筆再版で、新しいヴァージョンも読んだら、あー作者さんこういうところをもっと膨らませたかったのね~と胸がいっぱいになったり。

   あと、旧版では学校になじめず、父母からの「金は十分渡してる筈だ」というネグレクトを受けていた主人公に温かく目配りしてくれていた先生がそれでもいたのが、新版ではバッサリカットされていた辺りの事情を作者さんがご自分のツィッターで説明していたとか言う話がなんともイマドキーでした。
   そういう、出版社の公報や、雑誌のインタヴュウでなく作品について語る場があるっていいわよねーと、時代の流れに溜め息を吐いたと言うことと。
   明らかにネグレクトを受けている生徒をそれと知って学校側が手をさしのべないというのは2013年時点では有り得ないということでカットになった云々の事情が。
   ニュースとかで、この子も救えなかった、この子の命も失われてしまったというのばかり見聞きしますと行政はなにをやっておるのかと思うことが多いのですが、それなりに頑張っておるし、頑張らないといけないように環境は変わっているのだそうです。
   悪くないじゃん日本。

   想像世界のオスタス(この作品で主人公が飛ばされた異世界)もすてきな場所ではありますが、それなりに悪の組織とかあって、無碍に失われる命とか、ある訳ですが、現実世界の日本も、なかなか悪くはないのではないかと思うしだい。それが十全ではなく、メリットよりまだデメリットの方が多い感じで歯がゆくもあるでしょうが、世の中そんな捨てたもんじゃないと思ったので、2014年という年にこの本に触れて良かったと思ったのでした。

   こういう年もありでいいでしょ? でも、今年はもっと本をじっくり読みたいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年11月30日 (日)

だいたい世界三大といって3つほんとに揃ってるものはない

   野梨原花南先生の「マルタ・サギーは探偵ですか?」がレーベル替わって加筆アリで復刊となって大興奮の早乙女家です。受験はどうした。アニメイト特典だと彼を名探偵たらしめているカードバトルの特殊カード、「名探偵」のカードがホントについてくるとあって、大盛り上がりだったみたいです。ノイエ・リリエンベルクのアニメイトでは売り切れた、池袋ではまだあった、町田にいけ云々と、ツィッター情報で東奔西走して手に入れたらしいです。ほんと、おまえ受験生だろッ。あ、情報を娘に下さったお姉様方にはありがとうございました。これからもこの若輩者を引き立ててやって下さいませ。

   「もうマリアンナ嬢がかわいくってかわいくって!」と娘悶えております。主人公マルタを評価してなにかと気遣いしてくれる美人で有能なおねえさんであります。
   「うむ、これは世界三大恋に狂ったおねえさんのうちに入るであろう」と、わたくしももう2人の恋を応援したい気満々です。
   「三大って、残りは誰と誰?」
   「ワンピースの蛇姫
   ボア・ハンコックのかわいさはもう歴史に残るでしょう。ひごろの高飛車な女王様っぽさとの落差がもうたまらん。
   「あとひとりは?」
   「……それはあなたが考えなさいニッコリ」
   おかあさん3つ揃うまで考えないで言いましたね?
   それでお集まりの皆さんのお考えはいかが?
   恋に狂っててもストーカーまでいってはいけないのであります。あくまで可愛くなくては。……ということで山岸由花子@ジョジョ4部は除外と。学年一緒だし。これはなかなか難しいかもよ。……あ、最近のところでソルキャの邑楽先輩でどうよ? カワイイは可愛いけど狂うまでいってないかな?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月 8日 (水)

発表 2013年の本

   悩んだ末にとりあえず発表。

   2013年のおかあさんをきゃう~んと言わせた本は「Fate/zero」虚淵玄(字こんでよかったですか?)小説版ということで。

   いやもうほんと字の本はゆっくり読んでられなくて。大河の関連本も読んでないわー一応第一回はみたけど、岡田さんは顔の美しい男性だなーとかしみじみ言って息子に引かれたりしましたけど。

   「オリンポスの咎人」シリーズも、パリスまできたらもう向こうのリア充な価値観についていけなくなってきて。タトゥーはそんな軽々しく入れるもんじゃないだろ←こういうところ。そんでもってシリーズが続くとヒロインのヴァリエーションも苦しくなって非モテ救済色が濃い感じがありありとしちゃって酔いきれない。レヴュウもあげなくなっちゃって。一応次ぎも買うつもりではいますが……。

   今年はいかなる生活の荒波に直面するのでありましょうか。それでもなにかに心動かされる経験ができますように。お集まりの皆さんもなにかよい本がありましたらご紹介下さい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年12月13日 (金)

「船に乗れ!」 青春はザンコク

   波多利郎さんからお借りしてました。「船に乗れ!」藤谷治。最初主人公がもう痛くってやな奴で読むのが辛かったのですが、そこを乗り越えると面白かったです。一巻読み終わるのに半年かかって、その後は一気。ごめんなさい。

   音楽一家の生まれ、どのくらいって、「おじいさま」が、三流とはいえ音大の学園長をしているくらい。そういうおぼっちゃんの主人公は中学生坊主の頃からわかりもせん哲学書をめくって、わかりもせんのに自分はそういう高尚な人間なんだと思っているようなやな奴でした。チェロはそこそこ弾けたので芸大の附属高校なんぞ受けてみましたが、そういう態度で学科を疎かにしていたので見事に滑り、おじいさまの大学の高等部に行くことになります。ほぼお嬢さん女子校、音楽科だとクラスに男子は6人って。そこでハーレムを期待する人は解ってません。すっげえ肩身狭いもんだって。それがまた、音楽科のオケ(ソリストを育てるものでも合わせる練習はカリキュラムとして一応やるらしい。文化祭の目玉にもなるしね)に顔を出すとレヴェル低っくう。
   それでも、これは天才だとすぐ判るフルートの美少年伊藤とか、ヴァイオリンの美少女南、その親友で親しみやすい性格の鮎川と、それなりに友達もできて高校生活がはじまり、あっちへぶつかりこっちで引っかかり生傷だらけだけどワクドキの1年生生活を送るのが一巻。
   南とけっこういい感じになって、付きあってんの? おれ達付き合ってんの? と嬉し恥ずかしな2年生は、前年の卒業生が芸大に合格したという情報から一気に野心的になります。「わたしも芸大に行きたい」「行けるよ、南なら」「一緒に行こう」の三段論法で、超スパルタなしかし充実したプラトニックならう゛らう゛生活になります。そこへきて持ち上がる主人公の留学! いいよなおぼっちゃんは!

   爆発しろ!

   しかしそれが地獄への入り口だったのでした。

   惨憺たるありさまで帰国した主人公を迎えたのは心を閉ざした南でした。
   それまで片時も離したことのなかったチェロを忘れて登校するぐらい主人公も精神的に追い込まれており。南の退場はもうハァー!? という理由だし。それで鬱屈する主人公は一番大切にすべき関係のひとをぶっ壊してしまうし。これは、卑怯ものだなんだと前振りがうっとうしかったですが、たしかにこれは外道だ。おまえ自分の学園内での立場判っててやったろ。ほんといやらしい。最低。近くに軽侮対象の新キャラが出てきてたから、こういうひと相手に下劣な青少年的なにかをやらかすかと思ったのに、下劣に対して下劣を向けるのではないところがもう……これが青春なのかなあ。
   2巻は、もうそんな感じで山あり谷ありおもっくるしい

   3巻に至ると、もうはっきり主人公はチェロが重荷です。まあそれは、中年になってからの回想の形で物語は進んでるんで。南とは別れるし、チェロはやめるって判ってたんですけど。
   ぬけがらみたいな主人公をよそに、美少年で実力派の伊藤はいろいろ華やかなことになってる。それでも主人公を切らないでいろいろ手をさしのべてくれる、でも、心が死んでるから想いのイロイロに気付かない。この伊藤君はもしかしてアレだよね? と思っていると、最後にどーんと。
   そして、文化祭にまた奇跡が起きる。鮎川はいいやつ。まあ、別離のきっかけを作ったということでムッチャ責任感じてたんだろうけど。主人公はそういうことに頓着しないし、してられる精神状態じゃないし。そりゃ置いてかれ組は、津島君(主人公)いいなー羨ましいなーと思ってるでしょうけど、主人公は主人公なりにもうぺっちゃんこになるまでやられちゃったんだし。それをまたつぶさに語る暇も性格でもなかったし。まあそれなりに得るモノもあったみたいに書いてあって、少しは持ち直すことを期待もしたんだけど。その上にガールフレンドがこれじゃあ壊れてもしょうがないよ。「こころ」の「先生」みたいなもんだ、自分の心を守るために必死で取った行為のせいで親友が死のうと傷付こうと青春だからしょうがな……と割り切れなかったのが漱石(の作中人物)だけど、津島君はなんとかなっちゃう。そこに音楽があったから? いやもう青春ってザンコク

   そして甘酸っぱい青春の回想は幕を引き、どこにでもいる汚れた大人になっていくわたし達なのでありました。くうっ、こいつはクるぜ。

   それにしても、男性にとってホモにもてた話は武勇伝のうちにはいるのかしら?

   男性サラリーマンのためのお伽噺をめざしている「課長島耕作」では、学生時代からの親友でライヴァルの樫村という登場人物がいて、彼はじつは男性しか愛せない人で、かねてより島耕作を愛していたといまわの際に語るんですよ。たしか政情不安な国に赴任していて、銃で撃たれたか何かしたんだったと思いますが。
   「最期の頼みだ、おれを愛してると言ってくれ、島」
   親友樫村の告白に惑乱しつつも、そこは島耕作、デキル男ですから
   「ああ、おれはお前を愛しているぞ、死ぬな、樫村」と涙を流して言ってやる。樫村は満足して愛する島に抱かれて死出の旅に出る……。作者はなにを考えて描いたんでしょうね? これ。

   もともと総合電器メイカーが舞台の話で、いろんな国や地方に赴任する話もありますし、脇役が結構あっさり死ぬ話として密かに有名でもありますが、団塊世代で同期何千人もいるんだからそりゃ中には色々あるよっていうドライな所もあるでしょうし、時代は性的にフリーダムなので、そういうひともいてもいいって考え方なのかも知れないけど。
   まあ、基本島は自分しか愛してない男だしな。この前結婚したとか聞きますけどよう知らん。

   ホモと判っても才能ある親友なら決定的な離別にはならないのか。最後の方で「パートナー」がいる云々書いてあったので、やっぱりそういう趣味のまま日本を離れて暮しているのねとちょっと納得しました。どうよおかあさんのホモ・フォビアは。こんな一般向け青春小説にまでホモ要素に食いついて。

   森雅裕だったと思いますけど、「画狂人ラプソディ」ってのがありました。やっぱりヒロインは母子家庭で苦労して芸大でヴァイオリンを学んでいて。その辺はやっぱりレッスン費用とか留学費用とか楽器のランクとかおうちの財力が影響してくるので、おぼっちゃんお嬢ちゃんがぬくぬくちゃらちゃら音楽をやってるのを見ると複雑な気持ちになるみたいなことを書いてあったような。そして、いろいろ追い詰められたヒロインはとうとう……って話で、切なかったです。

  音楽の女神はドS!
(嗜虐的傾向が強い様子)

   それでもギリシャの昔からひとが音楽からはなれられないのは、その魅力が余りにも強く大きいからなんでしょうね。

   波多利郎さん、いい出会いをありがとうございました。エチエンヌのマドレーヌお付けしときます、ご賞味下さい。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2013年8月10日 (土)

「ちょんまげぷりん」 なんじゃこりゃ~~~~~!

   「ちょんまげぷりん」荒木源。えーとブックオフの105円ワゴンでみかけたので買いました。黄色い地にプッチンプリンとおぼしきお手軽なプリンを手に載せたりりしい男性のイラスト(上條淳士 画)が目を引いて。ああ、これちょっと前に映画になったんだよな、タイムスリップもので、江戸時代から来たお侍さんがシングルマザーに拾われて主夫になってプリンつくってくれるようになる話……と思ってめくったら、そのお侍の安兵衛さんによるフェミニズム論が面白くって

   あらすじはざっくりと上の通り。いかに幼児を抱えたシングルマザーが大変なのか、冒頭数ページでもう胃が痛くなりました。昔を思い出しておかあさん泣きそうになっちゃった。ごめんわたし専業でしたが。分を弁えないでごめんなさい! 今も! もっと全身全霊を家族に使う! ……今日も口約束

   タイムスリップで見も知らぬ「東京」に来ちゃった安兵衛さんの惑乱がうまい。それでも、匿ってくれて食事を振る舞ってくれたヒロインの遊佐ひろ子殿に恩義を感じる辺りがうまい。それにしても、ぎりぎりの生活の中で食事を出してあげるひろ子さんに脱帽。えーおかあさんいま突然お客来られたら困るわー無理(食事もそうだが掃除しろ)。
   自分の分を弁えて目の前の仕事を誠実につとめる、それもまあ大事ですけど(この作品で尊いと示しているのはこういう価値観のようだ)、それより、困っている人にまっすぐ共感し、同情を示す、親切にしてやるという人間としての最低のことを忘れてはならないというのをまず感じましたね。どれだけ生活に追い詰められ、心をすり減らしていても、人間、なくしてはいけない最低の線というものがあるのだと。

   それとはまたべつのレヴェルで、人として得意なことを認められ、賞賛を受けることは必要なことなんですよね。コンクールで優勝して、マスコミのおもちゃにされて天狗になったみたいな安兵衛さんに、え? どうなっちゃうの? と非常に危うい物を感じたんですが、彼は自分を見失ったりはしてなかったようです。いやどうだろ、ギリギリか? 「台所用具を処分」ってのが、ひろ子さんに叱られて反省してやり直そうとしたのか、それともムキになってもう「先生」になりきっちゃおうとしたのか、ちょっと判然としがたい感じでよく読み取れませんでした。ちょうど時代が合ってたらしい「六本木ヒルズに部屋を持つ」ってのがいい記号になってて。もう業界人になっちゃった感もしていて(ほんとちょっとの描写がうまい)、すっごく心配しました。これはいいかんじでひっくり返されたな。よしよし、そうでなくちゃ。それで彼らは家族になるんだよねと物語の終わりを楽しみに読もうとしたら、

   「人生はケーキほど甘くないでござる
   作中、TV局に勧められて安兵衛さんが出した本のタイトルより。なにこれ、もう使い捨てされる臭アリアリ。

   なんじゃこりゃ~~~~~!?
   ロマンスは!? がんばってるシングルマザーへのご褒美は!?(おかあさんハーレクィン読み過ぎ) 友也くん(子供)の幼い思慕の行き先は~~~~~!?

   切なくもこれでよかったのかと納得しかけたところに、やさしい結末が。そうか、安兵衛さんは約束を守ったのか。ちゃんとしてました。今日買って、今日読み終わりました、ごちそうさま。しかしこのどんでん返しはすごい

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年5月21日 (火)

「オリンポスの咎人 ストライダー」 もげろ!

   古式ゆかしき時代においては、恋人のいる状態のひとがそういう惚気話を人に聞かせた場合は、「このーっ憎い憎い! なんか驕れ!」「はははいいよ」という流れになるのがお作法だそうで、それが一般的になったあとで、今度は「(こんなに長々と惚気話を聞かせて、こいつめ、もう通り一遍のものを驕らせたんじゃ気が済まない、)お安くないぞ!」という慣用句が発生したんだそうで。それ故に、ひとがはくしょんとやったら「(ゴッド)ブレス ユー」と言うが如くに惚気話を聞かされた場合には「お安くないぞ!」というのがお作法だったらしいですな。おかあさんも近年知った事実。それではこんにちネットでアツアツな話を読まされたときにはなんと言って煽るのが正しいかというと、先だって申しましたように「爆発しろ!」もいいのですが、さらにアダルトな辺りでは、「もげろ!」と言うんだそうな。ええと、その、幸せな人がお使いになる器官がです。からっとしてて良いですね。とても面と向かっては言えないけど。

   「オリ咎」シリーズも巻を重ねて、征服の番人ストライダーの恋はもうほんとそんなカンジ。もう両思いと解ってる2人がくっつくまでいかに相手にええと性的魅力を感じていて昂奮している、そして、できうることならこういうふうに持ち込みたい、でもできない……の連続、しかもそれをヒーロー側からもヒロイン側からもやるので、やっと2人が思いを遂げるまで全530ページの350ページ地点までそんな濃い煩悶シーンが続いちゃってもうどうしようかと思いました。

   作者もいろいろヴァリエーションを出すのに苦心していて、今回はヒロインの側から話がはじまります。ハルピュイアという半獣というか西洋的に魔獣にちかい種族のカイアがヒロイン。ほとんど人間に近い肢体ですが、背中にはドラゴン風の翼があるらしく。ただ、それで羽ばたいて飛ぶには表面積が足りず、もっぱら卓越した身体能力でジャンプする補いになる程度。ただ、体内に魔獣の部分を不可分に保っていて、感情が高ぶると爪やら牙やらが出るらしく。戦闘の時にはそれを使って高い能力を示します。精神が魔獣に乗っ取られるともう最凶。そんでもってどうやら女性だけの種族らしく、適当に、他の半神半獣的生き物や人間と行為を持って、女の子を授かってほぼ不老不死の生を激しく生きておるらしいですな。あんまりキリスト教的道徳には縛られていないみたいよ。欲しいものは闘って奪う倫理観。食べ物は盗むか勝ち取るかしないと口にできない習性とかで。
   カイアはそのハルピュイアの一族でも大物な母を持ち、わりと武闘派として優秀に育ってきたらしいですが、あんまり慎重(おりこう)ではない。100年に2度の大祭(ハルピュイア内のそれぞれの一族の名誉を掛けたわりに血なまぐさい武闘大会)の最中に、ライヴァル的同族ジュリエットが男の奴隷を連れているのを見て、虚栄心からそれを奪おうとして、その奴隷の反乱を招いています。結果、一族の多数が死に絶え、ジュリエットが「伴侶」と思っていた奴隷は逃亡、「恥さらしのカイア」という不名誉なあだ名を持って現代に至っています。これはきつい、千五百年ですよ。こうなると不老不死も恵みではないですな。

   そういう過去を背負っている身で、現代に至り、とりあえず末の妹が物語世界の悪の組織「ハンター」にさらわれたところから、物語のヒーロー側との関わりがはじまります。解放してくれたオリンポスを追放されたヒーローたち不死族のサビンと末娘グウェンは恋に落ち、結婚。カイアの双子の妹は、戦天使ライサンダーと恋に落ち。なんだか独り身の寂しさを感じ始めたところで、うっかりその不死族のパリスと関係を持ってしまったのが失敗。
   パリスは淫欲の番人なので、おなじ女性と2度関係できないんです。さらに敵の女性で、自分の替わりに命を落としたシェナに恋をしてしまっている。彼女を復活させたいと深く願うほどに。だから、パリスルートは望みがない。
   それに、さらに彼女の好みに合う戦士に出会ってしまったから! 征服の番人ストライダーは、負けると身体に宿した「征服」の魔物が身を苛むので、絶えず挑戦し、勝ち続けなくてはならないひと。それでも長生きだけあってひねくれたユーモアとタフな精神でその日々を結構楽しんでいるようで戦闘種族なハルピュイアにはとても好ましい性格。パリスの親友だけあって、戦士たちのなかでは遊び人なほうで、ルックスもセクシーなイケメン。カレに決めたわ! と思ったところが、ストライダーには彼女を拒否する理由がありました。

   1)失恋したばかりなんです。
     前巻アムンで、友の敵、ハンターの女性ヘイディを捕え、アジトに連れ帰ったのは彼女に愛憎分かちがたい想いを持ってしまったためと自覚したんですが、彼女は「秘密」のアムンと心を通わせてしまったので失恋。友の永い孤独を知るからにはやっと訪れた春は祝福してやりたいという侠気が泣かせます。

   2)だってカイアは友の元カノだし。
     遊び人な彼らのこと、とくにパリスには心に決めたひとができたようだし、たった一度の関係は無視しても良いはずなのにこだわるところが日本のネットの処女厨(女性は処女でないと意味がないと言い張る困った連中、多分にコンプレックスの裏返し)のようで笑える! そこんとこが勝利にこだわるストライダーのキャラ設定に絡んでいてさすが。

   3)カイアの性格が問題。
     ハルピュイアとしての好戦的性格が現われて、カイアはなにかとつっかかってコミュニケーションを取るタイプなんです。妹のビアンカやグウェンはそうでもないから、そこは個人の性格? 友人としては面白いけど、恋人や伴侶にしたら、「~についてわたしと勝負する?」といちいち魔物を刺激されて神経が休まらないんじゃないかと思ってます。

   逃げるストライダー、追うカイア、そこへ、憎いカイアに愛する相手が生まれたその時を狙っていたジュリエットが復讐の幕を上げるのです。れいのハルピュイアの大祭への召喚! 致死率の高い「ゲーム」で、皆が「恥さらしのカイア」への復讐を果たそうと待ちかまえています。逃げるのは臆病者と見なされるため不可能。頼れる姉妹達はカイアの名誉のため、愛するカイアのために「チーム・カイア」を結成して参加を表明、もう望みのない片想いをしている暇はない……んだけど、ストライダーが「伴侶」なら、回復要員として期待できるのです。「伴侶」の血を飲めばどんなけがも回復するって、やっぱりその辺が魔物。

   偉大な母に再度認められたい、若い頃の恥を雪ぎたい、恋を手に入れたい、単純に生き延びたい、いろいろな理由から勝ちたいカイアですが、優勝賞品がヒーロー側が長年探していたアイテムだと発表されて、ヒーロー達の支援が本格的になります……。いやどうよ、男はチームのバトル要員にはなれない規則だそうで、サビンは拡声器持参って、やっぱりただの応援団っぽいし。ライサンダーが連れてきた天使も、ビアンカがやられたときに怒りに燃えて乱入するかものライサンダーを取り押さえる要員らしいし。とりあえずストライダーは、アイテム奪取を大義名分にハルピュイア・ゲームについていきます……。

   ま、いろいろ血なまぐさい戦いを経て2人の心は結びつき、身体もそれなりに相性最高だったようで、心から「もげろ!」というハッピー・エンドになりました。カイアの父親が何族ってのは重要じゃなかったのかなと思わせて、来ました新しい「能力」! これであの可哀相なひとが救われると思ったのに、肩すかし。ほんとバカップルがくっついただけでした! ……そう、今回の敵重要人物が意外にまともだったのが予想を外されて小気味よかったかな。復活を期待。

   今回の引きはウィリアムとともに敵ハンターに囚われたらしいケイン。彼もまた新しい登場人物と恋の予感……。いやいや、だから先に病のトリンを幸せにしてやってよ! 今回「トリンに調べてもらおう」って地の文1箇所だけだったと思う! 出番!

       あ、これ↓ ツィッターの bot だけど各キャラクターの個性が出ていてあるある。ずっと読んでいてしまいました。

           https://twitter.com/oritogacopybot

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年2月15日 (金)

「謎解きはディナーのあとで 2」 なかなかやりおる

   「謎ディナ」は東川作品の中ではつまらない方なんて書いたおかあさんですが。

   甘高の図書館で借りてきた2巻を読んでみたら、やっぱり面白かったのでした。

   まあねーあの赤い宝石のお嬢さんは誰ってやつは、もうネックレスの描写が出てきただけで、あのネタで来るなーってのが解るぐらい見え見えでしたけどね。それに絡ませてた、人間関係ってやつの認識の細かさが(そういえば、最初のシリーズでも人間関係で同様に誤認させるやつがあった)目から鱗というか、そういわれればそうよねーって膝ポンなナットクリョク(人を納得させる論理の展開、物語の力)がありました。

   そういう安楽椅子探偵な面白さは変わって無くて。

   読んでて思ったんですけど、東川作品は、脇を支えるディーテイルの描写が楽しくも細かいですよね。ユーモラスな線は外していないながらも、「謎ディナ」で言うならお嬢様のスタイルが、具体的ブランド名をちりばめるワケじゃなく、でもああ、ステキなお洋服をお召しなのねとか、風祭警部は残念なお坊ちゃんなわけねとイメィジがちゃんと浮かび上がります。
   これが、友に隠れて探偵小説読みながら東大出て公務員になったような昭和のおじさんミステリ作家だと、ミステリとしての根幹は論理的で圧倒的でカタルシスもある作品なんだけれども、残念ながらヒロインがただのお飾りだったりして、残念どころかオイオイと突っ込みたかったりするのでした。

   具体的に言うとだね。大学の頃読みあさったような斎藤栄だと、
   「ショートカットとセミロングの中間のような髪型」とか書いてある。おいおい。そりゃレングス(髪の長さ)であって髪型じゃないよ。その髪の長さでも、まっすぐおとなしめにおかっぱ(ボブ)にしてたり、その年なりの流行のスタイルにセットしてたりいろいろあるじゃん。ボブだって、クラシカルなボブでお嬢さんスタイルとか、モードなボブでモデルさんみたいな可能性だってあるよ? 装いの描写と言い、頭がよくて快活な美人の感じと伝えたかったのかも知れないけれど、もう少し努力してください、あなたの本領であるところの大胆かつ緻密な暗号トリックに割く分のほんの少しでいいから。って、いちいち覚えてんのかよ、覚えてました、それくらい衝撃的だったから。

   由良三郎になるともっとひどい
   ちょっとファム・ファタールなカンジの美人看護婦が誘いを掛けてくるシーンで、「髪油がぷーんと匂った」って、ねえ、これ昭和60年代よ!? あなたのお育ちになった環境では色っぽいおねえさんはそういう感じだったかも知れませんが、もう少し若い人間にも魅力的に感じるように書いてくださいよ!
   でも、このひとの得意とする大学医学部内のネタとか、クラッシックネタ、それから、男女の微妙なところとかは非常にナットクリョクを感じたので、気に入って作品はだいたい読んだんだけどさ(もう現役は引退されたのであろうか、心配)。

   風俗を反映させつつ、読者層にも解るように魅力的なヒロインを描き出すのはなかなか難しいようです。

   「翔んでる警視」の胡桃沢耕史になると、作風もあってか、「松板慶子さんみたい」「夏目雅子さんみたい」とハッキリ言っちゃって、ヒロインそれぞれの美貌を表現しちゃってる。でも、それだけでなく、会津の出で真面目で融通が利かない女性警官と、頭の回転が速くってお茶目な女性警官をそれぞれ生き生き書き分けてる。うまいです。バブルの入り口で、まだブランドにも疎かった読者に、「ゲルベゾルテ」という煙草とか、大きなダイヤモンドを(カラットという単位ではなく)「1キャラ」とか言っちゃう感じ、「アメックスのゴールドカード」という無敵の小道具でなんだか解らないけど一流なんだなと納得させていました。

   ここで漫画の話を出して恐縮ですが、「ファイブスター物語」の永野護も、バブル期のSF的作品にいきなり遊び人の騎士がブルガリの時計をしてる描写があって、こっちはそんなもん見たこともなくて、もしかして多分に漫画家の自己満足だったかもしれませんが(この世界にもブルガリやBMWはあるの! と欄外に書いてあった……?)、そういう世界観というか心意気は作品に溢れてましたね。やっぱ、神は細部に宿る?

   バブルを経て読者も書く方もブランドに詳しくなっちゃうと、もっとお金持ちや美人の描写も簡単にピンポイントになっていくんでしょうか。そういえば、「犯人に告ぐ」でしたっけ、主人公が劇場型捜査に乗り出すと言って小田急でブランドのスーツを買うってのが、なんともぴったり来てましたとここにも書いた覚えがあります。

   そんなのと比べると、東川作品は必要十分なんじゃないですかね。やっぱ、ユーモアミステリは評価されにくいって事に帰ってきますかね。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧