2017年8月20日 (日)

「とりかえばや物語」 女性の幸せはどこに?

   その昔、コーダンシャが出した「21世紀版少年少女古典文学館」がセンテンススプリング社で文庫落ち。表紙がいのまたむつみで可愛いッから買っちゃった。作者は古典をやさしく語ってくれることについてはもうプロフェッショナルな田辺聖子師匠。もうそれだけで期待できます。

   その昔、氷室冴子が翻案して、花とゆめEPOで大人気だったのが同じ原作の「ざ・ちぇんじ」。今はさいとうちほが新たにやってるらしいので、そういう需要もあるのかも。さいとう版はレンタルで無料分だけさらっと読んでるけど。

   時は平安、藤原氏でも超主流派、兄弟で右大臣と左大臣を分け合うぐらいの名門のおうちのお兄ちゃんの方、権さん(登場時権大納言だったから)のうちは、異母きょうだいながら双子かって言うぐらい男の子も女の子もそっくりな美形。ところが困ったことに、姫君の方は、賢くて活発で素直で元気で、もうどこに出しても恥ずかしくないお子様。……どっちかっていうと男の子の性格として好ましいよね? それで、来客も家族もこっちが男の子だったっけ? と思っちゃってる。ヤバい。対するに、男の子の方は、内気で病弱で、父親にもまともにお返事できない引きこもり。……女の子だったらそれでもいいけど。

   ここんところを、氷室版では、若君の方を「女の子として育てたら育つと夢のお告げがあった!」と神秘系な母親のせいにしてました。それに対する女の対抗心として、姫君はこちらのほうがよっぽど男の子らしい! と、もともとの気性に加えて、そうなるようにしむけて男の子っぽく育ってしまった、と描いていました。
   田辺版でもさいとう版でも、まず、姫君の方が本人の生来のものとして、男の子らしい振る舞いを好んでいる、という描き方……?

   既に、時代として、読者の方に男の子らしさ、女の子らしさという感覚がなくなっているのでは?

   描かれる沙羅(さいとう版のヒロイン)も、春風(田辺版ヒロイン)も、ムチャに暴力的でも、乱暴な言葉遣いをするわけでもない。ただ、陽性というのか、外に出て身体を動かす遊びが好き、ゲームも、「男の子向け」である、漢字の習得の助けになるようなものがより好みである、来客にもすぐさまなついて親しげに相手をねだる……。そういう積極的な幼い子の好ましい振る舞いが描かれていて、それを、みたひとが「若君であろう」と判断しているのです。
   いやそれイマドキの来客の多いうちなら女の子でも十分アリだし。
   お庭でディスク投げて飼い犬と遊んでたり、ゲームでもきわだって強くて、何に対しても生き生きとした表情を見せてくれて、
   「ピアノで新しい曲を覚えたからきいてきいて~」とお客さんに飛びついてくるようなお嬢ちゃま、可愛いよね?

   あの時代は、外遊びが好きで健康的なぐらいで男の子扱いされちゃうのか。
   紫式部が、兄の素読を横で聞いて覚えても、女だから何の役にも立たないと嘆かれるくらい。
   学問を修めて、器楽に秀でて、歌や言葉でいきなやりとりをする才をもっていても、姫として生きるにはなんの役にも立たないのか。

   だから、沙羅は、春風は、男として成人することを選んだ。

   それが痛快だなんて、やべーよ、平安時代。
   そういうのが読者の憧れだなんて、哀しいよ。

   それに比べたら、ただ引きこもってるあにきの秋月はほんと影が薄い。氷室版の弟は、自分が「姫」でないことを自覚しており、本当は若君として大臣家を継がねばならないことを知っている。ただ、病弱な自分を育ててくれた母の歪んだ愛にまだ勝てない。「若君」として優秀な姉の綺羅のような振る舞いが自分にもできるとは思っていない。物語の序盤は、ただ情けないヘタレとして姉に叱咤されながらも、母の周囲のやや病的な女性達に傅(かしづ)かれていて、自分と他者を観察し、思慮を巡らし、じっと、力を蓄えている。そして、運命が彼にも役目を与えて、宮中に出仕となると、自分より弱い存在である女東宮に出会って、凛々しい公達に脱皮してみせる。

   クライマックスの「ざ・ちぇんじ」はだからこそ大興奮で大納得したんだけど。

   女の子の身で男装して出仕、才能を発揮して皆に愛される沙羅/春風は家に閉じこめられた昔の姫君たちには憧れだっただろうけれど。男の生活はそれだけではない。恋の時代、平安を生きる男は、女性達と浮き名を流し、また、家のために良い家の姫の婿として引き立てを得なくてはならない。大臣家の「嫡男」であるヒロインは、従姉である右大臣家の姫君(田辺版では冬日)と結婚することになる。
   これが、貴族の男として生きていくなら結婚は避けて通れないのだから、共犯者として秘密を明かし、味方に引き込んで、もしかして百合的な間柄になってもそれだけの繋がりを持てばよかったのに、ただ罪悪感からやさしくするだけしかできない。

   沙羅/春風、ぬるいんじゃないの? それは氷室版の綺羅もそうだけど。

   ライヴァル宰相中将(さいとう版では石蕗、田辺版では夏雲)が才能ある美形だけれど浮気っぽくて信頼おけないだらしない男の象徴になっていて、男に対する目がつめたい、とはよく言われてるけど、女の友情も信じてないのかな。
   ヒロインには、氷室版では腹心の乳姉妹がついてたけど、さいとう版も田辺版も、女の子の友達も近しい召使いもいなくて、その辺りは孤独を感じました。まあ、登場人物おおいとごちゃつくからな。実際はいるけど名前を与えられてないのかもな。

   「乙女」向けコバルトレーベルだったせいか、氷室版では綺羅は宰相中将に迫られて混乱するだけですが、田辺版では原作準拠。望まない妊娠までいってしまいます。
   もうね、辛辣。個々人の努力で、どこまで実績を積み上げて、男なみに認められて出世しても、妊娠したらもうキャリアはおしまい。夏雲はもうバカ丸出しで、いいじゃんおれの妻になっちゃえよ、こんなにきれいな恋人持てて幸せだよ、もうおれだけのものになって屋敷にいて、なんで男社会に出てきて苦労する必要あるんだよ、とか言っちゃう。無神経。なんで女が才能発揮したらいかんのだよ、おまえより有能なのに。

   春風の絶望は深いです。

   それなりに贅沢な女性の装いをしても、教養も気だても含め当代最高の美女と誰に褒められても。春風の心の満足はない、響いてこない。

   せっぱ詰まった果てのヒロインの選択は?
   わたしさいとう版は読んでませんので、そちらがどうなるかは知りませんから!

   結局、あの時代としては最高のハッピーエンドに落ち着いたとは思いますけど、日本の中古は公的に女性の政治参加はできないからなあ。武士の時代になっても、いや、新憲法になるまでないから。

   結局女性が才能を発揮して伸び伸び生きていくにはどうしたらいいのよ?

   エポックメーキングな漫画誌「EPO」で読者を熱狂させてから30年、「とりかえばや物語」はまだまだ日本女性の心を騒がし続けるのでした。

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2017年5月21日 (日)

「ケーキ王子の名推理」 苦労は買ってでもせよ

   春先ぐらいからノイエ・リリエンベルクの駅の本屋さんにでっかいカットアウト:等身大の販促用の人型立て看板が置いてあって、タイトルからしてああ、若い女性向けライトミステリなのねーというカンジで思いっきりスルーしてたのですが。だいたい若いイケメンを「○○王子」っていつの流行だよ。もしかしてそれが「ハンカチ王子」からだったら、あのひと甲子園出て4大行ってプロ入ってウン年目だから7,8年前だよ!  

   「ケーキ王子の名推理(スペシャリテ)」七月隆文。

   「野崎くん」目当てで見に行ってるガンガンオンラインでコミカライズをやっていたのでちょっと1話と最新話を読んでみたら、なかなかいいセイシュン・ミステリだったので。
   学園のプリンス、みんなの憧れなんだけど近寄りがたい容姿に恵まれた男子と、平凡なんだけどある一分野にだけとってもこだわりが強くその分野では突出した感覚を持っている一芸女子とが日常の事件に挑むコージーミステリです……?

   いやもう、どのくらいって、ヒロインがいきなりお店に入ってきて号泣したのは何故かとか、三つ星レストランのウェイター氏が電撃的フォーリンラヴ&ハートブレイクした事情とか。「Q.E.D.」のB面作品か北村薫作品かってぐらいの。断片的情報から登場人物の心の動き、取った行動を全て推理し言い当てる王子の観察力と推理力にはあっと言わされますが……いいんだよ、普通の高校生はこれで! 国際謀略とか血なまぐさい事件とかに絡まなくていいから! 

 ……いややっぱこれはセイシュンラブコメ止まりだろう。

   冒頭、ヒロイン未羽ちゃんが自由が丘から有名ケーキ店に以降として迷子になる辺りのストリートヴューか!? というような描写といい、ケーキおたくの未羽ちゃんが味見する度に事細かに表現するケーキの描写といい、これは原作に当たるべきと思って買ってきましたよ! マックでヴァリューセット食べきる間に読み終えられたよ!(おかあさん自重)

   そういう安楽椅子探偵っぷりもさることながら、王子においしいケーキに対する執着を見込まれてどんどん距離を縮められていく辺りのワクドキ、そしてヒヤハラ(女の子達の嫉妬怖い)加減がほんとにあの年頃を判ってる!! のが見所でした。まあ、あとは各章がひとつのケーキの蘊蓄に絡んでるところとかね、へえ、ふーん、というお得感。

   なんで女子に厳しい=冷酷王子と呼ばれるのかという看病イヴェントからの告白は痛々しいものがありました。でも、外見ではなく、おいしいケーキを作りたい、食べさせたい、という情熱をこそ評価してくれる未羽ちゃんは彼にとって足りないところを補ってくれるかけがえのないパートナーとなることでしょう。うん、「Q.E.D.」の燈馬くんにとっての可奈ちゃんみたいにね! 

   やさしいけどワケアリっぽい師匠の青山さんもまだまだ枯れるような年でもないし。2人ともいっぱい苦労していいパティシェのいい男になってね! 明日2巻買いに行こう!

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2016年9月13日 (火)

おかあさんの外道!

   おかあさんは結構ネタバレを気にしないひとなので、時折フェイタルなネタバレをやってしまって猫科の人たちを泣かせます。ついこないだも、「アルスラーン戦記」の原作の方の新刊で、とうとう物語も締めに入ってきて、ととあるキャラクターの退場をかるく話題にしてしまって……。だって、虎美あれだけ母が勧めても原作読んでくれないから、もうアルスラーン興味ないのかと思って。2部だしいいかと。1部のあの結末は言いたいけど言わない……言ってないよね?

   今日もやってしまいました。
   「2部の敵はもう人外だから。アルスラーンがアレと相討ちになって死んじゃって、子供もいないから後を継ぐべき人がいなくて、一応もとの王族だからお願いしますとかいってヒルメスが王位につくんだけど、『解放王アルスラーンマジ名君だった』、『あの方が生きておられたらいいのに』って日頃そこら中から言われるのって最高の嫌がらせだよね」

   途中から虎美の表情が固まる固まる……!

   「おかーさん、それ……」
   「母の妄想だが」
   「ホントのネタバレかと思った!」
   違いまーす♪ でもそれくらいやられてもしょうがないかも、ホント、おれは正統の王子とかいって物語世界のほぼ全ての国に迷惑掛けまくった疫病神だから、ヒルメスって。最近自覚し始めたけど、その分やさぐれMAXでもう手が付けられないカンジよ。精々ハデに破滅すればいいのよ。ホントにもう。

   いえね、きのう2ちゃんで拾ったネタで、「青池保子の『アルカサル』のエンリケはふつうの漫画ならこっちが主役を張ってた登場人物」とか言うのがあって。
   それはたしかにそうとも言えるんだけど。王の庶子だけど嫡子の王太子より愛されて育って、ある日父王の突然の死により頂点から転がり落ちて、復讐の刃を研ぎ弟王をつけねらいとうとう……という一生は確かにアップダウン激しいな。まあ、本来の主人公カスティリア王ドン・ペドロも好敵手だけあってほんとドラマティックな人生だったんですけど。

   「アルスラーン戦記」のヒルメスも、伝統的物語のパターンならこっちが主役になっていたであろう人物とか、作者の田中芳樹が言ってたなあと思って。

   じゃあ、なんでも3つ揃えるのがお作法とすれば、「世界3大こっちが主役でも充分波瀾万丈な物語になる伝説級ライヴァル役はエンリケ、ヒルメスそして……?」

   おかあさん最近物語読んでないからどうしても出ませんでした。

   ……やっぱDIOですかねえ?

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2016年2月11日 (木)

まだまだ想定の範囲内です

   恒例前年おかあさんをはにゃ~んと言わせた本! の発表は、「2015年は残念ながら該当なし!」となりました。仕事に頑張ったので本を読んでる余裕がありませんでした。てゆーか買ってる余裕が。にゃんこたちが2人とも私立大学に行きやがったのでもうギリギリです。いや1にゃんはおじいちゃんに面倒見て貰ってますが。学費から生活費小遣いまで丸抱え。親として深く反省。

   そんでもって細々とネットの小説を読んでたりしますが、まーあれだ。いわゆるなろう小説? もう読む方もゲームの知識があることを前提としたファンタジーね。異世界に飛び込んで、なぜかその世界でも珍しい突出した能力を持ってて、でも元の現実世界じゃああんまりイケてなかった少年少女お兄さんおねえさんが、行った先では万能のもてもて。シヤワセ~もう帰らなくてもいいよねッ(!?)ていうお話だ。
   普通に勇者にならなくても、カフェを開店して大繁盛、癒やし手となっても奇跡の人。次はどんな切り口で来るかとちょっと面白くって、いろいろ読み散らかしております。

   さてと。いい年の読者としては、楽しむだけじゃなく、出る本出る本みんなファンタジー世界を舞台としておって、大丈夫なの? きみたちそんなに日常に飽きて脱出したいと思ってるの、注目されたい、大切にされたいと願ってるのと親としては心配、というところまで思いをめぐらせるべきかな~と思っているところです。

   とーこーろーがー。
   BGMに昔買ったオペラの名作集を掛けながら読んでたら、おかあさんはたと気付いてしまいました!
   大好きなビゼーの「真珠採り」はたしかインド辺り、ビゼーなら「カルメン」だけど、これも異国情緒ものだ。「トゥーランドット」は中国で「アイーダ」はエジプト、「ナブッコ」はバビロニアだぜおっかさん!
   ……絢爛豪華なスペクタクルと国を救うの救わないのというラヴ・ロマンスはやっぱ知らない遠くの異文化の国の方が似合うんだなあ、コレ歴史の教訓。

   じゃーべつに血湧き肉躍る楽しみのための物語の舞台が知らない世界であることに何ら問題はないのでした。おおいにやれ。

   そんで、絵空事ばっかやってて楽しいの? とヴェリズモ・オペラが勃興し、日本のミステリに社会派が一大センセーションを巻き起こしたように、きっと青少年向け読み物にもリアルでイタ切ない話の波がきっと起こるんだぜ、そのうち。

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2015年4月16日 (木)

華麗なるギャツビー 

   こりゃ困った。

   いつも見に行っているブログで2013年版、ディカプリオが主演で監督がバズ・ラーマンのを紹介してあったので、そういえばこれ読んでないわとブックオフへ。ちょうど出てたので買って、うちかえって流し読み。

   

定価で買わなくて良かった。そう思った自分がまた哀しい。

   理由1。

   こんなもんコーコーセーの時に読んどくもんでしょう。そんでもって気の利いた英文科生なら学生時代に原書で読み直してると。なんで50前にして初読、恥ずかしい

   理由2.

   翻訳文体、長く続く内省的な地の文がもう退屈で退屈で。こういうまとも(?)なものを読めない身体になっていることに絶望。ときどき挟まれるギャツビーの口癖「親友」ってのが、これは地の文じゃあもしかしてポアロみたいにフランス語なんだろうか、それとも、20年代の教養人はそういう口の利き方をしたものか、じゃあ原文じゃあなんて言ってるんだろなんて、いろいろ思いをめぐらしてしまうそういうヘンに知恵のついた自分も嫌ッ。説明の要る単語につき、括弧書きで2行に割ってさらに小さい字で注釈を入れてある翻訳物独特の文体? レイアウト? にご苦労さんですと書く方の苦労に思いを致すようになっちまってどうも。

   理由3。

   登場人物みんなに感情移入ができない。いろいろ解説を読んだりすると、そういう特異な時代背景の中の特異な人々と、それに対して批判的な目を向ける語り手(=作者)を味わうものらしいので、なにこの低俗な連中というざらっとした感想も作者の意図したものらしいんですけどほんとお付き合いしたくないわあ。本は娯楽として読みたいんで、時代を読み解くためにキョーヨー人の義務として読んでるんじゃないんで。

   全然血湧き肉躍らないしその時代のお素敵な雰囲気教えていただいてありがとうッとも思わないし、学校の図書館で借りて読んで「ああ、読んだよ?」と解った振りだけできればいい本と思いましたです。ふーん、アメリカ東部と中西部ってそういう精神的断絶があるの~? ッてカンジ。

   おかあさんバッドエンドものは引きずるから嫌なのよね。どこの分岐でだれがどうすればよかったかずるずる考え込んじゃうから。要は、物語として好きじゃないです。

   映画館でパーティ・シーンに圧倒されて、ああ、レオ様可哀相ッてしみじみして明るいところ出てきてさくっと忘れる映画としてなら我慢できたのかも知れないけれど。そういうライト・ユーザー向けの性格もあるのかな?
   「やっぱり過去にしがみついちゃダメだよね、未来に生きなくちゃ」 
   アメリカ版金色夜叉と解釈すればよいのか。最初から、語り手キャラウェイ君の目からは「こいつやべえよ」と見られてるようですが。

   ああ、そんで、レオ様版映画は気合いをいれすぎた衣装とかが前に出すぎでストーリーを圧倒しちゃってぼんやりした出来になっちゃったらしいですな。TV落ちしたら見たいかも。

   作劇上のこと。
   どの場面で雨を降らせると効果的かという点においては満点。すんごい惨めな顔してキャラウェイ君ちのお茶の会の日に時計をチラチラ見てるレオ様が目に浮かびました。そんでもってそのあと晴れるし。ありえねえハッピーエンドを一瞬だけ心に描けたりして。

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2015年2月16日 (月)

発表! 2014年の本

   いやほんと、暮れからお引っ越しの準備しつつ買った本を整理してたけど、去年はまったく本を買って読む余裕がなかった! 「オリ咎」シリーズも出てなかったみたいだし。
   辛うじて東日本大震災のときに石巻? の製紙工場が大変だった話を日本の製紙業界の現状をからめつつ描いてくれた本は読んだけど、どっかいっちゃったわ。寝ても覚めてもなくらいに心に深く食い込んだって程でもないし。

   情けない。

   それで、2012年と被りますが、「マルタ・サギーは探偵ですか」が再び選出となりました。虎美が発掘して読み返してたのに付き合ってたら、なんと加筆再版で、新しいヴァージョンも読んだら、あー作者さんこういうところをもっと膨らませたかったのね~と胸がいっぱいになったり。

   あと、旧版では学校になじめず、父母からの「金は十分渡してる筈だ」というネグレクトを受けていた主人公に温かく目配りしてくれていた先生がそれでもいたのが、新版ではバッサリカットされていた辺りの事情を作者さんがご自分のツィッターで説明していたとか言う話がなんともイマドキーでした。
   そういう、出版社の公報や、雑誌のインタヴュウでなく作品について語る場があるっていいわよねーと、時代の流れに溜め息を吐いたと言うことと。
   明らかにネグレクトを受けている生徒をそれと知って学校側が手をさしのべないというのは2013年時点では有り得ないということでカットになった云々の事情が。
   ニュースとかで、この子も救えなかった、この子の命も失われてしまったというのばかり見聞きしますと行政はなにをやっておるのかと思うことが多いのですが、それなりに頑張っておるし、頑張らないといけないように環境は変わっているのだそうです。
   悪くないじゃん日本。

   想像世界のオスタス(この作品で主人公が飛ばされた異世界)もすてきな場所ではありますが、それなりに悪の組織とかあって、無碍に失われる命とか、ある訳ですが、現実世界の日本も、なかなか悪くはないのではないかと思うしだい。それが十全ではなく、メリットよりまだデメリットの方が多い感じで歯がゆくもあるでしょうが、世の中そんな捨てたもんじゃないと思ったので、2014年という年にこの本に触れて良かったと思ったのでした。

   こういう年もありでいいでしょ? でも、今年はもっと本をじっくり読みたいです。

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2014年11月30日 (日)

だいたい世界三大といって3つほんとに揃ってるものはない

   野梨原花南先生の「マルタ・サギーは探偵ですか?」がレーベル替わって加筆アリで復刊となって大興奮の早乙女家です。受験はどうした。アニメイト特典だと彼を名探偵たらしめているカードバトルの特殊カード、「名探偵」のカードがホントについてくるとあって、大盛り上がりだったみたいです。ノイエ・リリエンベルクのアニメイトでは売り切れた、池袋ではまだあった、町田にいけ云々と、ツィッター情報で東奔西走して手に入れたらしいです。ほんと、おまえ受験生だろッ。あ、情報を娘に下さったお姉様方にはありがとうございました。これからもこの若輩者を引き立ててやって下さいませ。

   「もうマリアンナ嬢がかわいくってかわいくって!」と娘悶えております。主人公マルタを評価してなにかと気遣いしてくれる美人で有能なおねえさんであります。
   「うむ、これは世界三大恋に狂ったおねえさんのうちに入るであろう」と、わたくしももう2人の恋を応援したい気満々です。
   「三大って、残りは誰と誰?」
   「ワンピースの蛇姫
   ボア・ハンコックのかわいさはもう歴史に残るでしょう。ひごろの高飛車な女王様っぽさとの落差がもうたまらん。
   「あとひとりは?」
   「……それはあなたが考えなさいニッコリ」
   おかあさん3つ揃うまで考えないで言いましたね?
   それでお集まりの皆さんのお考えはいかが?
   恋に狂っててもストーカーまでいってはいけないのであります。あくまで可愛くなくては。……ということで山岸由花子@ジョジョ4部は除外と。学年一緒だし。これはなかなか難しいかもよ。……あ、最近のところでソルキャの邑楽先輩でどうよ? カワイイは可愛いけど狂うまでいってないかな?

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2014年1月 8日 (水)

発表 2013年の本

   悩んだ末にとりあえず発表。

   2013年のおかあさんをきゃう~んと言わせた本は「Fate/zero」虚淵玄(字こんでよかったですか?)小説版ということで。

   いやもうほんと字の本はゆっくり読んでられなくて。大河の関連本も読んでないわー一応第一回はみたけど、岡田さんは顔の美しい男性だなーとかしみじみ言って息子に引かれたりしましたけど。

   「オリンポスの咎人」シリーズも、パリスまできたらもう向こうのリア充な価値観についていけなくなってきて。タトゥーはそんな軽々しく入れるもんじゃないだろ←こういうところ。そんでもってシリーズが続くとヒロインのヴァリエーションも苦しくなって非モテ救済色が濃い感じがありありとしちゃって酔いきれない。レヴュウもあげなくなっちゃって。一応次ぎも買うつもりではいますが……。

   今年はいかなる生活の荒波に直面するのでありましょうか。それでもなにかに心動かされる経験ができますように。お集まりの皆さんもなにかよい本がありましたらご紹介下さい。

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2013年12月13日 (金)

「船に乗れ!」 青春はザンコク

   波多利郎さんからお借りしてました。「船に乗れ!」藤谷治。最初主人公がもう痛くってやな奴で読むのが辛かったのですが、そこを乗り越えると面白かったです。一巻読み終わるのに半年かかって、その後は一気。ごめんなさい。

   音楽一家の生まれ、どのくらいって、「おじいさま」が、三流とはいえ音大の学園長をしているくらい。そういうおぼっちゃんの主人公は中学生坊主の頃からわかりもせん哲学書をめくって、わかりもせんのに自分はそういう高尚な人間なんだと思っているようなやな奴でした。チェロはそこそこ弾けたので芸大の附属高校なんぞ受けてみましたが、そういう態度で学科を疎かにしていたので見事に滑り、おじいさまの大学の高等部に行くことになります。ほぼお嬢さん女子校、音楽科だとクラスに男子は6人って。そこでハーレムを期待する人は解ってません。すっげえ肩身狭いもんだって。それがまた、音楽科のオケ(ソリストを育てるものでも合わせる練習はカリキュラムとして一応やるらしい。文化祭の目玉にもなるしね)に顔を出すとレヴェル低っくう。
   それでも、これは天才だとすぐ判るフルートの美少年伊藤とか、ヴァイオリンの美少女南、その親友で親しみやすい性格の鮎川と、それなりに友達もできて高校生活がはじまり、あっちへぶつかりこっちで引っかかり生傷だらけだけどワクドキの1年生生活を送るのが一巻。
   南とけっこういい感じになって、付きあってんの? おれ達付き合ってんの? と嬉し恥ずかしな2年生は、前年の卒業生が芸大に合格したという情報から一気に野心的になります。「わたしも芸大に行きたい」「行けるよ、南なら」「一緒に行こう」の三段論法で、超スパルタなしかし充実したプラトニックならう゛らう゛生活になります。そこへきて持ち上がる主人公の留学! いいよなおぼっちゃんは!

   爆発しろ!

   しかしそれが地獄への入り口だったのでした。

   惨憺たるありさまで帰国した主人公を迎えたのは心を閉ざした南でした。
   それまで片時も離したことのなかったチェロを忘れて登校するぐらい主人公も精神的に追い込まれており。南の退場はもうハァー!? という理由だし。それで鬱屈する主人公は一番大切にすべき関係のひとをぶっ壊してしまうし。これは、卑怯ものだなんだと前振りがうっとうしかったですが、たしかにこれは外道だ。おまえ自分の学園内での立場判っててやったろ。ほんといやらしい。最低。近くに軽侮対象の新キャラが出てきてたから、こういうひと相手に下劣な青少年的なにかをやらかすかと思ったのに、下劣に対して下劣を向けるのではないところがもう……これが青春なのかなあ。
   2巻は、もうそんな感じで山あり谷ありおもっくるしい

   3巻に至ると、もうはっきり主人公はチェロが重荷です。まあそれは、中年になってからの回想の形で物語は進んでるんで。南とは別れるし、チェロはやめるって判ってたんですけど。
   ぬけがらみたいな主人公をよそに、美少年で実力派の伊藤はいろいろ華やかなことになってる。それでも主人公を切らないでいろいろ手をさしのべてくれる、でも、心が死んでるから想いのイロイロに気付かない。この伊藤君はもしかしてアレだよね? と思っていると、最後にどーんと。
   そして、文化祭にまた奇跡が起きる。鮎川はいいやつ。まあ、別離のきっかけを作ったということでムッチャ責任感じてたんだろうけど。主人公はそういうことに頓着しないし、してられる精神状態じゃないし。そりゃ置いてかれ組は、津島君(主人公)いいなー羨ましいなーと思ってるでしょうけど、主人公は主人公なりにもうぺっちゃんこになるまでやられちゃったんだし。それをまたつぶさに語る暇も性格でもなかったし。まあそれなりに得るモノもあったみたいに書いてあって、少しは持ち直すことを期待もしたんだけど。その上にガールフレンドがこれじゃあ壊れてもしょうがないよ。「こころ」の「先生」みたいなもんだ、自分の心を守るために必死で取った行為のせいで親友が死のうと傷付こうと青春だからしょうがな……と割り切れなかったのが漱石(の作中人物)だけど、津島君はなんとかなっちゃう。そこに音楽があったから? いやもう青春ってザンコク

   そして甘酸っぱい青春の回想は幕を引き、どこにでもいる汚れた大人になっていくわたし達なのでありました。くうっ、こいつはクるぜ。

   それにしても、男性にとってホモにもてた話は武勇伝のうちにはいるのかしら?

   男性サラリーマンのためのお伽噺をめざしている「課長島耕作」では、学生時代からの親友でライヴァルの樫村という登場人物がいて、彼はじつは男性しか愛せない人で、かねてより島耕作を愛していたといまわの際に語るんですよ。たしか政情不安な国に赴任していて、銃で撃たれたか何かしたんだったと思いますが。
   「最期の頼みだ、おれを愛してると言ってくれ、島」
   親友樫村の告白に惑乱しつつも、そこは島耕作、デキル男ですから
   「ああ、おれはお前を愛しているぞ、死ぬな、樫村」と涙を流して言ってやる。樫村は満足して愛する島に抱かれて死出の旅に出る……。作者はなにを考えて描いたんでしょうね? これ。

   もともと総合電器メイカーが舞台の話で、いろんな国や地方に赴任する話もありますし、脇役が結構あっさり死ぬ話として密かに有名でもありますが、団塊世代で同期何千人もいるんだからそりゃ中には色々あるよっていうドライな所もあるでしょうし、時代は性的にフリーダムなので、そういうひともいてもいいって考え方なのかも知れないけど。
   まあ、基本島は自分しか愛してない男だしな。この前結婚したとか聞きますけどよう知らん。

   ホモと判っても才能ある親友なら決定的な離別にはならないのか。最後の方で「パートナー」がいる云々書いてあったので、やっぱりそういう趣味のまま日本を離れて暮しているのねとちょっと納得しました。どうよおかあさんのホモ・フォビアは。こんな一般向け青春小説にまでホモ要素に食いついて。

   森雅裕だったと思いますけど、「画狂人ラプソディ」ってのがありました。やっぱりヒロインは母子家庭で苦労して芸大でヴァイオリンを学んでいて。その辺はやっぱりレッスン費用とか留学費用とか楽器のランクとかおうちの財力が影響してくるので、おぼっちゃんお嬢ちゃんがぬくぬくちゃらちゃら音楽をやってるのを見ると複雑な気持ちになるみたいなことを書いてあったような。そして、いろいろ追い詰められたヒロインはとうとう……って話で、切なかったです。

  音楽の女神はドS!
(嗜虐的傾向が強い様子)

   それでもギリシャの昔からひとが音楽からはなれられないのは、その魅力が余りにも強く大きいからなんでしょうね。

   波多利郎さん、いい出会いをありがとうございました。エチエンヌのマドレーヌお付けしときます、ご賞味下さい。

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2013年8月10日 (土)

「ちょんまげぷりん」 なんじゃこりゃ~~~~~!

   「ちょんまげぷりん」荒木源。えーとブックオフの105円ワゴンでみかけたので買いました。黄色い地にプッチンプリンとおぼしきお手軽なプリンを手に載せたりりしい男性のイラスト(上條淳士 画)が目を引いて。ああ、これちょっと前に映画になったんだよな、タイムスリップもので、江戸時代から来たお侍さんがシングルマザーに拾われて主夫になってプリンつくってくれるようになる話……と思ってめくったら、そのお侍の安兵衛さんによるフェミニズム論が面白くって

   あらすじはざっくりと上の通り。いかに幼児を抱えたシングルマザーが大変なのか、冒頭数ページでもう胃が痛くなりました。昔を思い出しておかあさん泣きそうになっちゃった。ごめんわたし専業でしたが。分を弁えないでごめんなさい! 今も! もっと全身全霊を家族に使う! ……今日も口約束

   タイムスリップで見も知らぬ「東京」に来ちゃった安兵衛さんの惑乱がうまい。それでも、匿ってくれて食事を振る舞ってくれたヒロインの遊佐ひろ子殿に恩義を感じる辺りがうまい。それにしても、ぎりぎりの生活の中で食事を出してあげるひろ子さんに脱帽。えーおかあさんいま突然お客来られたら困るわー無理(食事もそうだが掃除しろ)。
   自分の分を弁えて目の前の仕事を誠実につとめる、それもまあ大事ですけど(この作品で尊いと示しているのはこういう価値観のようだ)、それより、困っている人にまっすぐ共感し、同情を示す、親切にしてやるという人間としての最低のことを忘れてはならないというのをまず感じましたね。どれだけ生活に追い詰められ、心をすり減らしていても、人間、なくしてはいけない最低の線というものがあるのだと。

   それとはまたべつのレヴェルで、人として得意なことを認められ、賞賛を受けることは必要なことなんですよね。コンクールで優勝して、マスコミのおもちゃにされて天狗になったみたいな安兵衛さんに、え? どうなっちゃうの? と非常に危うい物を感じたんですが、彼は自分を見失ったりはしてなかったようです。いやどうだろ、ギリギリか? 「台所用具を処分」ってのが、ひろ子さんに叱られて反省してやり直そうとしたのか、それともムキになってもう「先生」になりきっちゃおうとしたのか、ちょっと判然としがたい感じでよく読み取れませんでした。ちょうど時代が合ってたらしい「六本木ヒルズに部屋を持つ」ってのがいい記号になってて。もう業界人になっちゃった感もしていて(ほんとちょっとの描写がうまい)、すっごく心配しました。これはいいかんじでひっくり返されたな。よしよし、そうでなくちゃ。それで彼らは家族になるんだよねと物語の終わりを楽しみに読もうとしたら、

   「人生はケーキほど甘くないでござる
   作中、TV局に勧められて安兵衛さんが出した本のタイトルより。なにこれ、もう使い捨てされる臭アリアリ。

   なんじゃこりゃ~~~~~!?
   ロマンスは!? がんばってるシングルマザーへのご褒美は!?(おかあさんハーレクィン読み過ぎ) 友也くん(子供)の幼い思慕の行き先は~~~~~!?

   切なくもこれでよかったのかと納得しかけたところに、やさしい結末が。そうか、安兵衛さんは約束を守ったのか。ちゃんとしてました。今日買って、今日読み終わりました、ごちそうさま。しかしこのどんでん返しはすごい

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