義元去りし後、画面の潤いはもっぱらナガオカゲトラ君が担っております。いや、イロイロ麗しい奥方が出てきてはその時代なりの女性のすがたを見せてくださっておりますが。
破竹の勢いのナガオカゲトラ君、関東管領を擁してもう天下の正義は我にあり状態。小田原を攻めておって、いまこそ3国同盟が意味を持つとき! って、もう義元いなくって、跡継ぎはあの松平元康ちゃんが裏切ったとかでそのフォローに追われてます。武田からは一応少し援軍が出て、後方攪乱はしてくれるらしいです。
関東の諸豪族がこぞって景虎のもとに集まった時でしょうか、一座にどよめき。誰かの奥方が出てきたのです。忍城の城主成田君の奥さんで名はお伊勢ちゃん。
「これは美しい」
「お虎どのに生き写し」あ、やだな。この前の「義経」の時も実直な清盛さんが常磐に迷ったのは、「死んだあんたのママそっくり」という噂のせいだったじゃないですか。いくらオリジナルエピソードだからって「亡き母の面影」ってそんなに大事ですか。
って、そのパターンで女嫌いの景虎、人の女房に迷いますか、そんな、史実!? ファンは怒りませんか? 山は死にますか?
妙にどきどきしてしまいました。
「京都から嫁いできたんです
「長旅だったんだ? どのルート?」
「お船に乗りました。伊勢の港から」だから伊勢と呼ばれてるんじゃないかな。
「そりゃいい船旅だったでしょ。富士山は見えたかい?」
「全然! すっごく海が荒れて、富士山なんか見えませんでした」
と、会話が弾んで。もう、イヤな予感びしばし。
「成田君、奥さんここに置いてっていいよ。ゆっくり富士山見物させてあげるから」って、山田君に座布団運ばせてるんじゃないんですから、そんな簡単に。もう、一同唖然。そりゃ、ここまで来れば景虎くんが女性に興味のない人だって解ってるから、そっちの心配はしなかったかも知れませんが(そっちの心配をされる人:虎パパ、秀吉)、「ママに似てる」って前振りがありますから、動かないはずの山が動いた!? 可能性はないわけじゃないでしょ(わたくしはとっても疑いました)。でも、成田君は絶対イヤだ! って言えない立場です。あ、ひどいな。景虎君は悪気は100%ないかも知れません。うさみちゃんが
「殿、それはヤバイです」って言ったら逆ギレしそうなぐらい。それが解るからうさちゃんなにも言えなかったんでしょうか。
でも、絶対イヤって言えない立場なのを解ってて「下司の勘ぐりはこまるねぇ~」とばかりにいやみたらしく奥方を誘ってるってのはすっごくある意味いやらしいですよ。素直に「美人じゃ~ん! 成田君、ちょっと、一晩だけでいいから彼女と過ごさせて」って言った方が可愛いかも。まだ冗談にして断れるし。そんでホントに手でも出してたら最低の鬼畜だな。それでも逆らえないのかな。どうですか、当時の豪族の皆さん?(聞くな)
謙信女性説じゃないけど、本当に、純粋に、死んだママ似の奥さんに好意を持って、「富士山見物できなかったんならさせてあげよう。どうせ関東はぼくのものになるんだし」って、そういう素直な心からだったのかも知れませんが。または、そういう素直で純粋な人に見せかけて冷徹に人質を取ったんでしょうか、ううむ、どうもこの辺が正解?
この前の(いや、ずいぶん前です)砥石崩れでは、驕った晴信くんが力押しをしすぎて、結果、甘利くんや板垣くんを失ったんでした。どうも今回は景虎くんが驕る番のようです。人間上手い具合に物事が運ぶとやっぱり驕らずにいられないのでしょうか。
小田原攻略はならず、3日で帰すという約束のお伊勢ちゃんはずっと人質生活。戦がうまくいってないってことを視野から外すと、人の奥さんを何日も預かりっぱなしってのは絶対ヤバイと思いますけど、誰も麗しの軍神にそんなこと忠言する人はいません(そこんとこ、どーよ? また家出されたら困るからかしら?)。石清水八幡で「古式ゆかしく」関東管領の跡取りになって、ご機嫌の帰り道。
コキュ(推定)成田君、一世一代の示威行動です。皆が這いつくばって新管領様に敬意を表しているのに、成田君1人馬の上です。
景虎改め政虎くん怒ったね。
得意の絶頂だったし。
でも小田原城落ちてなくてちょっと後ろめたかったかも。
正式に家督を継いだ、正当の関東管領だって、喧伝すればするほど、実は兄を押しのけて長尾家の実権取ったとか、上杉家とはなんのゆかりもないしとか、後ろ暗いところがあるのは見え見えって自分でも意識してたのかもだし。
3日で帰すって言った奥さん帰してないし。純粋に約束破ってるよね。
自分を見下ろす成田君に、そういう弱みを見透かされたような気になったのかも知れません。
いきなり
「馬を下りよ」というなり手をつかんで引きずりおとす。
あまりのことに硬直する(武士なら受け身を取るなりしろよ)成田君を、鞭でもって打ち据える。
だめじゃん。
あーあ、となすすべもなく見守るうさちゃん(お前が止めろ)。
聞くところによりますと、成田君ちはあれで由緒正しくって、関東管領さんがお歩きになってても、馬を下りなくていいそうです。そういう不文律があるんだそうで。
知らねーよ、そんな 関 東 ロ ー カ ル な ル ー ル 。
それを、公衆の面前でばしばしやられて、怒るまいことか。
そんでもって、奥さん人質にされたままだし。
ここから驕る政虎の落日が始まるのでした(いや、落日じゃないけど)。
みんな、もうちょっと学習しようよ。
そして、そこら中の名将がこけまくった後、じっと待っていた三河の若者が腰を上げるのでした。
これはこれで面白いな。
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