2020年7月12日 (日)

ミステリと言う勿れ ー 大丈夫マイフレンド ー

   いやあの映画見てない。
   ネットをいろいろ閲覧してますと、増えましたねえ、各種オンラインコミックの広告。うっかり踏んでいろんなコミックの出だしだけ読まされちゃう。

   今回はそういうカンジでよく最近目に入る「ミステリと言う勿れ」田村由美。骨太な物語で有名ですが絵があんまり好きじゃないので読んだことなかったわ。既刊一気したけどやっぱり好みじゃなかったわ。見せゴマはきれいだけど、どうでもいいところはホント雑で、でも、何が描いてあるか、どう見せたいかはわかるから巧いんでしょう。でも好みじゃない。骨太美形もね。

   広告部分は、主人公カレー大好き安楽椅子巻き込まれ探偵の久能整(くのうととのう)くんが、野暮用で乗った新幹線で隣になった知らないおねえさんの手紙を見るともなしに横から見ていると、本文に可愛いイラストがついている、過去分みんな読み返してるけど、どのお手紙にも。とくに意味もなく付いてるこのイラストのアイテム、頭文字だけ抜き出すとなんだか穏やかでない言葉になってる、暗号では……? という、実に続きを読ませたくなるセレクトです。

   勇んで購入してコミックを頭から読んでみると、それはエピソード3で、物語は整くんが自宅から高校時代の級友(?)殺害容疑で任意同行を求められるところからでした。

   海千山千の捜査員たちに高圧的に犯行を決めつけられる中、へーぜんと、のらりくらりと、上げ足をとったり捜査員たちの会話に割り込んだりして状況を読み、見事に事件を解決して自らを解放した1話は素晴らしかったです!

   人の心理を深く読み取り理解して状況を解き明かす、そして、それだけでなく、現代の物事への風刺やらちいさな問題提起とかがあって、読んでいてすっとする、ためになる、そういう謎解き系のミステリ。

   なんでいじめられた方が転校しなきゃならないの?

   コミュニケイション能力ないんだなんてひとかどのキャリアもってるいい大人が言うな、使う相手を限ってただけでしょ?

   ヴァージンロードってなんでお父さんがエスコートするの、お母さんの立場は?

   女の幸せって男がいう言葉に騙されるなよ?

   ……空きページの名セリフかるたにはこういう言葉の方を選んでほしいなあ。

   タイトルは謙遜が過ぎるんじゃないかな、大丈夫、十分ミステリしています。

   しかし、それ以上の、問題提起があるという意味かな。たしかに、「ミステリと言う勿れ」。

| | コメント (0)

2020年5月13日 (水)

最後のレストラン ー 横からどや顔 ー 

   自粛づかれなどの言葉もささやかれる中皆さまいかがお過ごしでしょうか。おかあさんは本日はおさぼりです。こないだ雪降るほど寒かったのにもう真夏日かい!? 身体がどうかなるわ!(雪がふったのは3月下旬です)

   さて、書店が閉まってても書籍も発売日は粛々と訪れ、またしても新刊が出ました。電子書籍で買いました。

   「最後のレストラン」藤栄道彦。もうはや15巻に突入です。
    親の残したレストランをなんとかこんとか回しているオーナーシェフの園場凌(そのばしのぐ)クンのお店は、歴史上の人物が今わの際によくタイムスリップしてくるというマジカルなお店。今日も有名無名の偉人が現れておいしいものに癒されたり園場クンにありがたい言葉をかけてくれたりするのでした。

   連載最初はそのころ流行りの偉人召喚バトル漫画「ドリフターズ」と登場人物が被っていたものでしたが、向こうが連載止まってる? 間にもこちらは巻を重ねて、被ってるどころかもう古今東西有名どころはみんな出尽くして、ネタ切れ感を感じてきていたのですが。いやいや。

   ここへきて、どうも新刊15巻は文豪シリーズ。ドイルに漱石やらシェイクスピアやら。前巻14巻では最後の大物(?)ケネディが巻中ぶっとおしでご出演して、さらに召喚された他の偉人、チェ・ゲバラなど同時代人やイシンノゲンクン大久保利通と絡んだりしてくれて二度おいしい作りです。そういえば、大河サーヴィスで西郷さんが召喚されたときも、光秀さんと絡むシリーズがありました(12巻)。作者さんもいろいろ工夫しているようで応援したいです。

   作者さんご自身空きページの解説で語っていますが、一般的な評伝をひっくり返して、実はこういうところもあったのよ、というのを描いてくれているのでまいど得をした気持ちになります。エリーザベト皇后が足ることを知らない無駄づかいエンプレスだったとかね。
   
   そして、偉人との触れ合いを経て(園場クンはかたくなにそっくりさんと言い張ってますけど)、園場クンじしんもいろいろ成長して、レストラン初期メンバーに加え、帰れなかった被召喚者のジャンヌ・ダルクや安徳天皇、出戻ってきた同窓の女性料理人、ソムリエ親娘や2号店3号店の人たちまでしょって立とうとし始めたのには感嘆を禁じられません。一話完結ものとはいえ、少しずつ、人間変わっていかないとね。でも、お見合い相手の好美さんを取るか、自分を慕ってくれているジャンヌをとるか、黙ってつかず離れず召喚者たちのことを教えてサポートしてくれる前田嬢(マルチリンガルの才女で被召喚者のプロフィールを教えてくれる。初期は通訳も)は園場クンのことどう思ってるのか、シェフより威張ってる同窓の御奴さんは園場クンとどうこうなる気はないのか、よく考えたらハーレムじゃんこれ!

   時事ネタも多少さらっと混ぜてあって、フランス料理も毎回お題に合わせてなるほど、というものを用意してくれて、そして歴史について、人生について、やられた! と思わせる名回答を見せてくれて。いやいやこれすっごい密度濃いですよ!

   クールジャパンで、よその国の方に漫画をご覧いただくなら、こういう作品も混ぜといてほしいです。

   日本は、古今東西の偉人についてこれくらいのお遊び(描いて面白がれる)ができる程度には教育水準が高く、個々の人物について、いいことも、悪いことも調べて描ける程度には自由ですと。そして、ただの評伝ではなく、面白おかしく、お料理に絡めて目にも楽しく読めるような作品を生み出せる作家がいるのですよと。

   自分は生み出す側でなく享受する側ですが、とりあえず欠かさずお金を払い、そして折を見てこういうところでアピールする、どや顔でね。それくらいはするつもりです。このあとどうなるか考えるとこわいけど、空前の繁栄をしていた漫画の国ジパングの住人としてね。

| | コメント (1)

2020年4月26日 (日)

指輪の選んだ婚約者 - 大団円お見事! -

   ステイホーム支援。

   やっぱハッピーなのがいいでしょうって、ちょうどピクシヴ更新あったからご紹介。「指輪の選んだ婚約者」茉雪ゆえ、早瀬ジュン(漫画)。なろうの原作は一応完結済み。47話プラス番外編少々。コミカライズはやっぱりカドカワフロースコミック。ピクシヴやコミックウォーカーで一部無料公開されてます。コミックはシーモアでも購入可能。

   きゃわいい伯爵令嬢だけどちょっと変人のアウローラちゃんのオタク趣味のターゲットは刺繍。ホントは刺繍のプロになりたかっただけあって技術はお嬢様の趣味の域を超越してプロレヴェル。夜会に出ても、美形を追っかけするよりレディたちに交じって噂話をするより、黙って壁の花になってお集りの紳士淑女のお召し物を鑑賞するのがサイコーに幸せなひととき。ところが、大きな夜会に久々参加したら、ちょうど珍しい方が嫁取りにご出席されていたようで、そのどたばたのとばっちりを喰らってしまいます。

   「この指輪を放り当たった女性が我が妻である!

   氷の貴公子と呼ばれる超絶ハンサム侯爵家の跡取りクラヴィス様、ちょっとヤケになってたみたいよ。

   翌日土下座して事情をゲロッたうえで、昨夜の騒ぎのおかげで求婚の申し込みがなく心安らかな朝を迎えられたから、当分縁談除け期間限定婚約者をやってくれないかという失礼な申し出をするという残念ハンサムでした。

   心優しいというかおっとりアウローラちゃん、なんだか可哀そうになって、
   「お受けします(私も結婚しろと言われなくて趣味の刺繍に打ち込めるし♪)」と答えちゃう。
   弟があまりにもハンサムなのにコミュ障で困ってたお姉ちゃんの公爵夫人が電撃訪問して
   「愚弟を見捨てないで!」とやってきたことでもあるし。
   はた目には美男美女の新しいカップルが誕生したのでした♪

   「ローラ、お前一体
    昨晩何したんだ?」と、美形姉弟が去ってのちお兄ちゃんの質問に
   「……慈善事業? かしら」と答える(アウ)ローラちゃん。そう、おっとりローラちゃん、じつはしたたかでした。

   ところが、ローラちゃん失われた魔女の能力を微力ながら持っていることが判明し、その能力と熱い刺繍への想いが密接に絡み合って、おっとりしたたかな立ち回りもあってコミュ障残念ハンサムなクラヴィス様を強力にバックアップし始めるのでした。

   お? やけになったとんでもセレクトと思いきや意外にも良縁?

   少しずつ心を通わせていって、最後には収まる処に納まるハッピーエンドはほんとに美しい話だったとため息が出ます。

   これはコミカライズも美しいですが、服飾の書き込みがスゴイ。今のはやりはこんなドレスだけど、これをそのまま着ていくと可愛いけど絶世の美女までいかないローラちゃんでは少し見劣りがする、ドレスで差をつけないと。それではこのように工夫しよう、そういう流れがほんと詳しくて、でもそんなに素材とか技巧に詳しくないわたしが読んでいてイメィジしやすくてワクワクする。これは原文で読んでもらいたいです。

   「大奥」よしながふみでの、お万の方好みの裃や、「徳川の女人たち」吉屋信子の同じくお万の方のデビュウの墨絵の打掛のような、ヒロイン(「大奥」のお万の方は男性ですが)を彩る秘密兵器であるところのお召し物のように描かれるローラちゃんの工夫を凝らしたドレス、デビュウのとき一度きりでない波状攻撃なところがまたよみでがある! 作画の方もこれから先大変でしょうけど楽しみにしてます。どうぞ、お集りの方も楽しんでください。

   そして、最後の、これは必然の運命だったという落ちが最高にカッコよかった。何度も読み返してしまうにんまりハッピーエンドです。

| | コメント (0)

聖女の魔力は万能です ー ナチュラルいいじゃない ー

   またしてもステイホーム支援のご紹介。

   「聖女の魔力は万能です」橘結華、作画藤小豆。乙女向け召喚ものの一大メジャー。「なろう」の原作は第三部111話まで更新中。コミカライズはカドカワフロースコミックで連載中で、各種オンラインサーヴィスで無料で読めます。コミック版はシーモアでも電子で買えます。絵がきれいで見ていて楽しい。色使いも素敵。

   ちょっと社畜の疲れたおねえさん、小鳥遊聖(タカナシ・セイ)さんはある夜異世界に召喚されますが、問題なのは一緒に可愛い女子高生が召喚されたダブル召喚だったこと。待ち構えていた王子は見た目可愛いその女子高生アイラちゃんに飛びついて聞いちゃうのです。

   「貴女が聖女か?

   よっぽど大物じゃない限り、即答ではいって答えられないと思いますけどコレ。

   恋に墜ちたんだかどうなんだか、二人の世界を作ってしまった王子とアイラちゃん、さっさとどこかへ行ってしまいました。取り残されたセイさん、静かにキレながら事情をきこうとするも、みんな「王子の聖女」の方に気を取られてハッキリした説明もなく放置放置放置……。

   そりゃあ、キレるわ。

   ところが、神のイタズラか、喪女力をこの世界で魔力というんだか、暇を持て余したセイさんどんどん謎の力を発揮していくのです。これがまた、常識外。ほかの術者が汗水たらして作り上げるポーションを楽々量産したり(しかも効果が謎の5割増し)、顔見知りの騎士さんが魔物退治で四肢欠損したら、治った方がいいよね? と楽々再生。

   なろうで有名な「俺やっちゃいました?」系ですよこのおねーさん!

   しかも、乙女向けとしてふつーに逆ハーレムですから! 淡々としていて、もててもてて困る事案は起きてないけど、すべての発端、暇を持て余して薬草園にお散歩に来ていたセイさんを
   「薬草に興味あります?」と見事に薬用植物研究所に勧誘したふんわりジュードさん、王宮から内内にフォローをお願いされてた研究所の所長さん、その友人でセイさんの五割増し上級ポーションの効果で一命をとりとめた騎士団の団長さん、セイとアイラちゃんどちらが聖女なのか、セイさんの能力をを確かめるために派遣された魔術師団長さん。みなさんキラキラした美形で、

   「なんなんだこの部屋の美形率は」とセイさんもあきれるほど。

   その他、諸悪の根源王子といい、団長さんのお兄様である魔術師団の副団長であるインテリ眼鏡様、もちろん国王様も、皆さま美形ぞろいでいらっしゃる。ああ、目の保養。メインは団長さん。命の恩人への感謝以上の好意を見せてくれて、それが中高生の初恋みたいなほほえましさなのを、周囲が見守ってくれてる可愛らしさが好ましい。皆さん(諸悪の根源王子以外は)セイさんに好意的で優しくセイさんが物理的にも精神的にも辛いことがないように図ってくれているのでほんとうらやましい。いや、約一名自分の知的好奇心を満たすためだけにムチャ振りするひとがいたか……。

   もう日本には帰れないらしいけど、勤勉で周りの人に笑顔でいてもらいたいと心掛けるお姉さんにとっては非常に暮らしやすい召喚聖女生活なんじゃないでしょうか。

   聖女として魔物討伐にも積極的に参加し、結構怖い目も見るし、聖女としての奥義技が出せなくて追い詰められたりもするけど、そこそこ承認欲求も満たし、ほのぼのとした好意的な美形やお嬢様との交流、舞踏会やらお茶会やらなどを経験して、みんなに慕われる穏やかでハッピーな聖女生活を終えられたらいいんじゃないかな。

   ほんと、セイさんにひどいこと言ったりやったりするひとがモブから国の重要人物までほとんどいないので、安心して読めます。侍女さんたち、騎士さんや研究員さんたちがみんな優しくてプロフェッショナルなのがいいです。自分もこういうモブでありたいものです。

| | コメント (0)

2020年4月19日 (日)

千歳ヲチコチ ― 時空を超える共感 ―

   明日っから仕事と思ったら筆がのるのる。

   LINEコミックでおすすめされてたから一巻無料読んだらはまるはまる。シーモアで買いなおそうと思って検索かけたらまさかのシーモアでのサーヴィスなしで、そろそろ電子コミックのサーヴィス一本に絞るために解約しようと思ってたRenta! の方調べたらあったので久々にチャージしてお買い上げ。やっぱりサーヴィスの使い分けって必要? なんでも複数チャンネルを確保しておくことが大切なのかな。

   「千歳ヲチコチ」D・キッサン。平安ものです。
    時は平安、パパが太宰府に単身赴任中なので気楽な女所帯暮らしのお姫様、チコちゃんは平安ものの例にもれずユニークな方。昆虫に思いを寄せたり生き物は積極的に触りに行ったり雷の日はかえってテンション上がったりと、やんごとなきお姫様としては規格外で、いつもおつき女房の長山さんに怒られるけど、学者のお家柄にしてはおおらかな乳母の仙河さんにフォローされて、親友のなり姫ちゃんとも仲良く楽しい日々を送っています。パパは物語がかなり進むまで出て来ないのでどのクラスかわかりにくいですが、「ざ・ちぇんじ」みたいに自分が入内とかは無理メの家柄みたいよ。宮中でそれなりのお方のところにお勤めできれば幸いっていうリアル紫式部クラス?

   事件は例によって昆虫についてアツく語った(とはいえみやびな言葉遣いで、現代人感覚ではおひめさまらしい優しい語りっぷりと読めますが)が突風で飛ばされ行方不明になったこと。これは文の内容を問わず文使いの失態です。個人情報の流出だ。それを拾った公達が読んで、へえ、と興味を持ってなんと返信を認(したため)めてくれたのです!

   拾い主の享(とおる)くんが弁(わきま)えのある公達だったので、強引に恋愛関係へ持っていこうという野心のにじんだ感じにならず、相手に警戒心や羞恥心を起こさせないように貴婦人からの手紙を装った文体や渡し方になったので、物語はそんなに色っぽくもスリリングにもならずに進んでいくのでした。

   「秋の風にとらわれたあなたの手紙が 
    まるで天女の衣のようにわたしの心をとらえました
    はしたない心をお許しください
    私は香りすら残しません」

    問題児なお姫様がはじめて人様と文を交わした、ということでおつきの女房連中もふわーっとなってしまう幕開けでした。親友なりちゃんは乳母同士が姉妹と後でわかる。人間関係狭いね。 

    これうまいですよ。みそひともじになってないからこそ、かえってスルーされないで読者の心に染み入る。そして、平易で穏やかな詠みっぷりから亨くんの真面目で優秀なところがにじみ出る。控えめだしね。
    こんなカンジで、この作品は平安ものとして折々に和歌(らしきもの)が物語に密接に絡んできますが、解りやすくて世界観をちゃんと作ってる。  

    そして始まるすれ違いらぶ♪

    宮中に出仕してないチコちゃんとおうちの方針で同じく大学寮の学生やりながら内舎人やってる亨くんとでは出会う機会もないんですが、そこは、婚活のため出仕することにしたなりちゃんの引きでチコちゃんも宮中に出入りするようになり、例によって平安京の姫君ではあり得ない大活躍をしながらどんどん距離を縮めていくのでした。

    いや、ほんっとハラハラドキドキ、序盤全然かすりもしないんだもん。ハッピーエンド無理か!? とか思っちゃった。いやこれでハッピーエンドならなかったら結末つけようがないけど。
 
    けっこー調べ切った感の平安絵巻が勉強になるなる。五節の舞姫のオーディション事情とか、宮中の年末年始のイヴェントとか、息子を披露するホームパーティとか、平安ものでは裏事情まではあんまり詳しく描写されてなかったと思うけど、すっごく詳しくてそれでいて波乱万丈で面白かった! すっごいまともな平安時代日常ストーリーなのに登場人物が個性的なもんでムッチャ楽しい。チコちゃんだけでなく、留守宅を取り仕切る有能な女房の長山さんが美少年愛好家でなりちゃんの文使いOROSHI(美少年三人組ユニットw)にめろめろだったり、亨くんのエネルギッシュなパパ上とか、亨くんのママ上とそれを支えるパパの愛人さんたちとか(号令ひとつで集合してパパからのプレゼントを見せ合ったりする。怖いw)。割り切った現代語を駆使して楽しくわかりやすく描いてくれてるので、これが1000年前の話という距離感は全然感じませんでした。

   たとえばね。亨くんの仕事仲間のサリーって、実在の藤原佐理(ふじわらのすけまさ)だったらどうしよう。史実どおり能書家ってことになってますが。となると時代は三蹟のほう、コウゼイ、サリ、トーフーなら藤原黄金期になりますね。わりとアバウトなひとだったようですが、作中では結構女性関係が派手。お気に入りの筆がウサギの毛なので「ピーター」、これを怨霊退治で壊しちゃったので代わりに陰陽師の大江さんからもらった筆が狸の毛だから「ラスカル」って名付けちゃったりするノリ。これを面白がれるならおススメですね。楽しかった♪

   氷室冴子の「ざ・ちぇんじ」と「なんて素敵にジャパネスク」に始まったジャンル。これコミカライズの山内直美さんの力量もありましたけど、あと、「きらきら馨る」高橋冴未、これもLINEコミックで読んだ、浸った。そういう、平安時代ものの少女漫画もジャンルとしてちゃんと存続しているってのは、大したもんだと思いました。日本の乙女の趣味の多くはとおくこの時代に源流を発しているので。心を一つにできますよ。全然大丈夫。

   追い風は千年前から柑橘系
    振り返りたい自分に笑う    舞音

 

| | コメント (0)

2020年4月18日 (土)

払暁 ー いろいろもったいない ー

   パティさんから、缶詰生活のお供になにかおススメをと入信がありまして。

   「払暁 男装魔術師と金の騎士」 作:戌島百花 絵:明野たわ。シーモアにリンク張ってみましたけどうまくできてます?

   タイトル落ちで実に趣ある表題にイマドキのサブタイトルついてて残念なんですが、ぶっちゃけこの「男装の魔術師」ってところに引っかかって読んだのでわたしが言える筋合いじゃないです。ほんとベルばら趣味でスイマセン。そして原作小説にもこのサブタイトルついてたのでほんとビッグなお世話ニア。おかあさん少し落ち着こう。

   召喚されたもと女子高生というプロフィールの魔術師ハルカくんはちょっと見美少年。隣国からの侵攻を受けて国民総動員状態の召喚先の国で、赤紙が来たお師匠さん(既に死去)の代わりに男装して従軍しました。間違い召喚で力も必然もなく異郷に放り出されて途方に暮れていた自分に優しくしてくれた村の人たちに報いたい、自分でできることを返したいというけなげな心で立ち向かうには激戦地のヘダリオンは過酷すぎ。魔法で敵を吹っ飛ばし、魔法で味方を癒す獅子奮迅の大活躍。心身ともに限界のハルカくんがであったのは美形の重傷の将校さん? 渾身の救命治療を拒む姿にハルカくんブチ切れて要らん賭けをしてしまう。

   「お前が捨てようとしているその命
    私が拾ってやる

    私のために
    生きて
    私のために
    死ね」 

   なにより心が死にかけだったその将校さん、聞くと伯爵家のお坊ちゃんのリカルドは従属の禁呪まで使って約束を果たし、ハルカくんに懐きまくってしまうのでした。

   しばらくはあの宝石商のリチャードさん並みの金髪美形に傅かれ、元傭兵のアルフレドにボディガードをしてもらって甘々優雅な静養生活を送りますが、激戦地を守り抜いた英雄魔術師の名は高まるばかり、英雄に憧れるショタは飛び込んでくるは、敵国から刺客は忍び込むは、ハルカくんもお屋敷に引っ込んでいられなくなります……。

   社交界にとうとう顔出しするためのパートナーとしてリカルドが調達してくれた才色兼備のご令嬢セラフィちゃんがいいっ! 華やかで勝気なだけでなく、伯爵家のご令嬢として嗜みが優れていて、ハルカちゃんが政治的に利用されないよう巧みに防波堤になったり、女性の友人として精神的な支えになったりと大活躍。

   公式の場に出るときのフォロー要員として以外にも、ハルカちゃんとの文通できゃっきゃしていたように書いてありますが(原作にも記述アリ)、ここんとこもう少し実例エピソード欲しかったわあ。セラフィとはもう仲良し♪ な描写が足りないから横恋慕王女がリカルドを奪おうとしたときの名アシストが唐突に思われて。ついでに主様にガールフレンドができたと思ってジェラシっとるリカルドくんの微妙な表情ももう少しわかりやすくしてほしかったです。対外的にも仲良しが知れ渡ってるからこそ、セラフィちゃんとしては(横恋慕姫に負けちゃダメ!)という渾身のフォロー、めくった右肩大ゴマの

   「今日は特別
    別れがたく
    思いますの……」が効くんじゃないかぁ! もう可憐な中にもちょっとエロスな百合っぽい雰囲気がおおっとなりました。

   そんでもって、一身上の秘密……が二個も三個もあるけどこのヒト、を明かしたあとの、

   「私の大切な友人が
    ありのままで
    いられないなら」という泣かせる(いや言ってる本人が泣いてる)名台詞に繋がるのでした。武辺の家の娘で自らも戦地に赴きたい愛国者という前振りからのこのセリフですから。それだけハルカくんに入れ込んでいるかが知れます。
   
    もう、最高、こんな友人ができたんだからハルカちゃんこの世界来た意味あったよ! セラフィちゃんいい婿捕まえていいマダムになってね! 戦場に出て国民を守れないことを苦にしなくていい、あなたのその魅力でこの国をよくして行って!

    まあ夜会でハルカくんを護る名シーンは他にもありますけど、心でハルカくんとつながって、……もしかして女性? と疑いを抱くシーンを入れておいてほしかったなあ。

    リカルドとしては主様が23才の健康な男性と思ってるからここはらわたがちぎれるような気持になってると思うけど、でも横恋慕姫のアプローチ後だからお泊り容認するしかないつらみィ! そりゃ翌朝即行迎えに来るよなあ! いや成人男性なら過保護だろ。そんでもってこの世界は他のイマドキの小説世界とは違ってまだ同性愛に禁忌感あるっぽくて、リカルド自身も、友人グラハムも、男にそんな気持ち持っちゃうわけ!? ともだもだしているのがおかあさん的に好感を持てます。さいきんは男でもいいじゃんいっちゃえっていう世界観普通なので。

    そして英雄ハルカくんを貶めようとするやつらが放った最大のスキャンダル……ハルカくんは傷心を抱えて旅に出ますが……当て馬アルフはいちいち思わせぶりですがまあ役割だからね、しょうがないね。

    ハルカくんは立ち直り、自分がこの世界に召喚された役割を果たし、そして。

    ここんとこが最大の残念ポイント。打ち切りだったんでしょうか。予算のない大河ドラマ後半の合戦シーンみたいでした。えーっ、原作はそれなりにハルカくん頑張ってたのに。

    なにより心が強い。召喚されてチートついてないなんて十二国記の陽子よりひどい目に遭いながらも自分で魔法を学んで国を救う英雄級にまで成長し、真実を知ってもなお前を向き甘い愛に溺れず自らの役割を果たそうとするハルカくんに敬意が静かに沸き起こります。

    そしてね、残念なのはお師匠。間違って召喚してしまった、これから花開く直前の乙女に対して、何ができるのか。何をもって償えばよいのか。自らの魔術の全てを教えるしかなかったのか。そこんとこ私は突っ込みたかった。木彫りの熊なんか作るくらいしかできなかったのか。マッド・マジカリストだから女性の関心を得る方法にも疎かったのか、追放の身ではわかりやすくドレスや宝飾品を与えて機嫌を取ることもできなかったのか。この世界のことを何にも知らない、自分に依存するしかない乙女を目にして愛欲の方へもつれ込むことはなかったのか……師匠腹上死じゃないよなとまで考えましたよ、ごめん。

    美青年に傅かれながら当惑は最初だけで、母似の美貌にコンプレックスを抱くリカルドを精神的に解放してやったりと、そういう主としてのふるまいのドキドキも楽しめました。従属の契約を受け入れた後は、主としてふるまおうと心掛けているところもあり、所々見せる少年でありながら主という倒錯した雰囲気がちょっとクル。あなたは弱い、守らせろ、とまいど誘惑してくるアルフのこともまいど断って。そういう、悩み苦しみながらも前を向いて立ち上がる、立ち向かうヒロイン。もっと読んでいたかったな。そういう残念。どうぞお試しください。

| | コメント (2)

2020年4月12日 (日)

村井の恋 ― 少年は暴走する ―

   この前から左カラムに表紙絵を準備してたんだけど。

   なんか電子コミックの賞を取ったとかでおすすめされていたので。「村井の恋」島順太。

   入学式で新入生代表を務めるような優秀な男子生徒が進路調査をいきなり「先生と結婚したい」一択で提出したら担任としては嬉しいより困るでしょう。ヒロイン鉄仮面の鉄子こと田中ーあーっと既刊三巻までファーストネイム出てきてないかも。実兄からはあっちゃんと呼ばれていた高校教師、困惑通り抜かして迷惑を感じています。聖職者ということもありますが、田中ちゃんイマドキの女性なので乙女ゲームのヒーロー、忍者の春夏秋冬(ヒトトセ)くん以外の男性が目に入らない状態なのです。お若い頃はなんとかいうベーシストに入れあげていたそうですが、彼の電撃結婚以来生身の男性を愛せない心と体になったらしい。ピュアよね。

   さて、問題児(?)村井君は授業中爆睡していていきなりあてられても問題見ただけで解答がちゃんと答えられて、当てた先生から「お休み村井君」と許されてしまうほどの秀才。物語冒頭ではとある理由から黒髪ロン毛ですが、

   「(三次元における)男の黒髪ロン毛って恋愛対象外なの」

    という田中ちゃんの一言で髪を切ってついでに金髪にしてくるくらい行動力があります。
    二人に対して偶然が味方したのは、その金髪にした村井君のルックスが、その田中ちゃんの愛するヒトトセくんそっくり瓜二つだったこと!

    全身全霊をもって拒否しなくてはならない相手がなんの因果かすべてを捧げる心の恋人と同じ顔で若さを武器に真っ向愛を語ってくるんですよ! もう思考回路はショート寸前! いやマジ作中神経線維をチェーンソーでぶった切られる描写あるし。

    な ん て 幸 せ な 不 幸 !

    村井君もただ大人の言う通りにしていたからの「新入生代表」ではなく、明晰な頭脳を論理的に使って、是は是とし、非は非であると向こう傷を恐れずに明言して世の中渡ってきた理系ぼっちゃんとして、

   「このように頭で解決できない問題に出会ったのは初めてです」

   「この感情を制御することは不可能」

   と登場2ページで断言して誠実に恋の暴走を始めるのでした。いやもう、恋を自覚したらすぐ進路調査に結婚したいって書くんだもんな。ストレートでよろしい。デイトに誘ったり押し倒したりするんじゃないのかよ。

   恋の暴走に息つく間もない田中ちゃんと読者ですが、頭おかしい状態の村井君がじつは誠実で実によくものを考え、察しのいい男子であることを知っていきます。これは、いい意味で頭のイイひと。そして、そのよい頭を、やさしくてひととしてまっすぐな心の在り方が制御している。得難いひとです。こういう身も心も美しい少年にまっすぐ愛を捧げられるのって贅沢で幸せなことじゃないかなと。

   友はそのひとを表しもしますが、村井君の親友たちもいい子。
   登場時はありがちなウェーイ系、その時その時が楽しければいいイマドキの若者のようでしたが、物語が進んでゆくと、それなりに個性的で級友たちからはみ出てしまうところもあり、それを負担に思っていた時代に村井くんに出逢い、個性的なことは悪くないと向こう傷を恐れない正論でありのままを受け止めてもらった過去があったことを示されます。この過去があって、冒頭のイマドキの気安い友達付き合いができるまでに関係が深まったと思うとしみじみします。

   そして、この個性派親友たちが友の恋の成就のために立ち上がるのがムネアツ!

   さらに妹のことには燃え上がってしまう兄やゴリラを脱いで初恋を手に入れるために参戦する幼馴染などが乱入して村井君の恋は前途多難!?

   あなたも恋の暴走に吹っ飛ばされて並走してキュンキュンハアハアしましょう! 

| | コメント (0)

2020年3月15日 (日)

王様ランキング ― と、思うじゃん? ―

   最近漫画の紹介しかしてない。

   最近はネットで読むコミックのサーヴィスが花盛りで、ネットでいろんなサーヴィスを利用しているとその手のCMが入りまくりで記事が円滑に読めなくてほんとイライラします。いや、まんまと引っかかってそこを見るから興味がある人だと思われて延々とその手のCMばかり表示されるんでしょう。

   サーヴィスごとに「売り」の作品が違うみたいなんですが、そんなにいろいろサーヴィス契約してもしょうがないので、コミック・シーモア一本に絞って、よそで見かけて興味をそそられた作品もシーモアで検索しなおして試し読みを読んでみて、それで気に入ったら一気にお買い上げしたりしてますが。うん、ここ一年のネット購入本棚がすごいことになってますわたし。場所を取らないからってこれはやばい。

   それで、今回は「王様ランキング」十日草輔。絵本のようなディフォルメの効いた絵柄で流行りのキラキラした美麗さはないですが、それだけに個性あふれた登場人物のイロイロがすっと心に入ってきます。

   主人公ボッジはとある国の王子。しかし、偉大な巨人である父とは似ても似つかぬ小柄でひ弱な体つきで、耳が聞こえず発語もできないというハンディキャップを持っています。母親違いの弟は努力家で小利口なので、跡継ぎはこの弟王子ダイダの方がふさわしいと国の大多数は思っているみたい。ひととコミュニケイションを取ることができないボッジのことを周囲のものは知性もないだろうとみなして心無い扱いをしますが、なかなかどうして、へこたれない根性や自分より弱い立場の者への思いやりを持ち、王族としての素質はあるというのが描かれてきます。かれの哀しい日々をかえたのは、謎の黒い生き物、カゲ。誰も理解できなかったボッジの心を読んで、理解し、代わりに周囲に伝える役目を担うようになります。はじめて周囲がボッジに知性があり、彼なりの考えに基づいて行動していることを知ることになります。折も折、父王ボッスが世を去り、後継者にに選ばれたのは……! 

   真の王とはどのような存在であるべきなのか。優れた王を順位付けする王様ランキングという制度とともに、おとぎ話の世界というにはかなり辛辣な世界が描かれていきます……。

   これはね、某ワールドトリガーの名台詞を使うなら、「と、思うじゃん?」な物語。

   聞こえず、語ることのできない王子は、どんなに尊い志を持っていても周囲のものから理解されない。可哀そうな方と憐れまれたり、馬鹿にされたり。国のお荷物になるか……と思いきや、王の死後の動乱を収める中心人物として期待されるようになるでしょう、なってほしいと読者は見守るようになります。

   ボッジの指南役、たぶんイケメン枠であろう剣士ドーマスは、アルスラーンでいうところのダリューンのような役回り、王子を護って動乱を切り抜ける……と思いきや、ブッレブレの心の弱さを見せつけます。

   王妃ヒリングは、面差しや初登場時のふるまいから、頭は切れるけれどヒステリックで絵に描いたようなママハハ、と見せかけておいて、その名の通り癒し系(いや意味ちがうけど)。LINEコミックでも1話ずつ読めますけど、活躍する回のコメント欄ではもう「ママがんばって!」「ママいいおかあさんしてる!」と応援コメントの嵐だったり。

   悪相の蛇使いベビンはべビンであんたその顔でマジかというような温かいところを見せつけるし。こっちがボッジの守役につくべきだった。ホント惜しい。

   登場人物がみな、一言で言い表せない、第一印象とはちがう複雑なキャラクター性を持っていて、あとであっと言わされる。そういう奥深いところのある作品です。一気買いしちゃったぜ。

   ストーリーもいろいろ謎を含んでいて、ボッス王は悪魔と取引をしてなにを求めたのか、なにを代償にしたのか。謎の女ミランジョの目的は何なのか。目を離すことができない傑作であります。LINEのコミックサーヴィスや各種ネットコミックサーヴィスでご覧になれます。ぜひどうぞ。

   今、漫画が非常に絵がリアルになったり、いろんな効果が使われて、画面が濃く美麗になっていっていますけど、ワートリ読むんでジャンプスクエア? 読むようになったんですが、どの作品もみんな髪の一筋から細密に描いちゃって、服の質感、建物のパース、どれもキレイ過ぎたいへん手がかかってる感じで、大丈夫かってなるんですが、やっぱりすべての作品がそっち方向行くんじゃないのねっていう安心感も感じました。こういう絵柄もあっていい。絵はこれだけど見ごたえあり。

 

| | コメント (0)

2020年2月 1日 (土)

Artiste(アルティスト) ― クソパリクソ最高 ―

   あらやだおかあさんたらお下品。

   Artiste(アルティスト)さもえど太郎。

   電子コミックの大賞取ったというのでお試しで一巻無料。3月までですよマダム、今がチャンス。って、4巻まで一気買いして読みふけりました。いや月ぎめ購入のチケットが切れてね。三日待って2月になったから既刊全購入させていただきました。眼福。

   物語はフランスはパリの正統派レストランに新人マルコくんが入ったところから。当然皿洗い雑用からで「お前はジルベールに面倒見てもらえ」って、厨房の端に蹴りやられたら当のジルベールさんは気弱なのっぽさんでした。

   超ビビリで他の従業員にも舐められまくっているジルベールさんは意外や面倒見がよく、いろいろ苦労していてすれたマルコの見たジルベールそしてその店のシェフの隠された秘密は……?

   一巻内容はくすぶってたジルベールが再起動するまでのほんの導入。実は主人公はジルベールの方で、彼の次の職場が物語の真の舞台となります。

   登場人物みなそれぞれ個性的で、それが、紙の上で作り上げた「キャラクター」ではなく、地に足がついている。これこれこういう過去があって、こう影響を受けていて、だからこういうものいい、ふるまいになる。そういうのがしみじみ理解できる物語の作りです。

   「事故で体が不自由になってもう現場に立てなくなった有名シェフの代わりに各分野からスペシャリストを招聘して新しく作られるレストラン」、オールスターチームを成立させるのは技能だけじゃありませんでした。円満ならそんな才能のある人を元の職場が手放したりしません。

   訳 あ り ス ペ シ ャ リ ス ト だから新チームに参加することができるんです。ここうまいなァ。「HEAVEN?」もそうでしたよね?

   鼻も舌も腕もあるけど主人公ジルベールは壊滅的にビビリでコミュ障(コミュニケィション障害:人とかかわるのがひどく苦手、という程度のイマドキの常套句です念のため)。事前の市場での顔つなぎにも参加していた食材管理担当のヤンもゴリゴリに人間不信オーラを撒き散らしていました。パティシエのディミトリも無口ででかいのに立ち居がぞんざいしかも凶器持ったままという物理で殺しに来るタイプ。小柄な日系のお魚担当リュカはあの、すいません具体的な名前は出ないですけどネットでよく見聞きするイマドキの扱いがむつかしいそのあの辺のなんとか障害? ぽい特徴がもろ出しで、ああ、近しく付き合うには知識と気遣いが必要ねってタイプ。

   やばそうな所へ持ってきて、具体的に、知識がないため逆鱗に触れる、直接的に拒絶、凶器(職業上の必要な道具)持った厨房の人間に勢いよくぶち当たる……という大惨事が発生……。

  

   ジルベールでなくても終わったなって思いますって。

 

   連載はここで切っておいて、次号は三日後から始まるんだから嘘みたいに読者をじらせる作風。

   ここから怒涛の盛り返しがあって、無事開店レセプションにこぎつけるんですけどね。またこれが、ひと悶着あって。

   泣かせて、笑わせて、ハラハラさせて、もう、なんて豪華なジェットコースター。

   それが、出てくるパリジャンパリジェンヌたちがみんな教科書に出てくる善男善女じゃなくて、ちょっとイジワルで、ひねくれていて、あんなにいい子なのに、今回エピソードで実はいいヒトだったってわかったむかつく同僚に仕返しのイタズラしかけて冷や汗かかせたりして。奥深い、やっぱ人間はこうよね、パリは花の都ってばかりじゃなく実際クソなところもあるけど(話の合間の余白ネタ)、クソだからこそいいのよねってのが、しみじみ実感できる作品でした。

   いやもうね、主人公ジルベールは、エッフェル塔のパリ土産をもう段ボールにひと箱持ってる。その理由がね。クソパリで、クソジルベール。このエピソードだけでもう上手ッ!! と思いますよ。

   なんか最近のきれいだけど整いすぎてて無機質プラスチック~な絵柄じゃなく、がんこシェフの巻いてるスカーフのチェックとか、パリの石畳のいっこいっこ形の不揃いなところ、手で一本一本線を引いてますって感じで手仕事~あったかいわ、って、ネットで調べたら、作者さんピクシヴ会員で下絵とか公開してて、バリバリにPC使ってました。わたしの目は節穴。いやPC描画環境の技術向上素晴らしいわ。

   おかあさんのおきにいりは最初ゴリゴリだったヤン。彼がどうしてゴリゴリだったのか、そして解凍後どうなったか。ほんと、人間ドラマよねー。彼が大ゴマで泣いた過去のシーンと、暗がりでこっそり泣いた現在のシーン。ほんと名場面。

   そして、いい男が泣くとほだされるおかあさん。スラダンの三井くんといいジョジョのアバッキオといい。チョロいわ。    

| | コメント (1)

2019年8月12日 (月)

天竺熱風録6 無事完結!

   暑っつう。皆さん夏はレイジャアの季節ということはもう忘れて、命を守る行動をしましょう。文明開化からもう元号も5個目。意識改革しましょう。江戸の昔を思い出すんです。夏はなんもしないでただ命を長らえることを最優先

   さて、前項で申し述べましたように7月末に「天竺熱風録」原作田中芳樹作画伊藤勢は最終巻が出てめでたく完結。いやー面白かった。前の巻で動き出していた梟雄クマーラ王やら旦那より肝の坐ってるアルジュナの鬼嫁とかをうまくかわしてなんとかカナワジ城陥落、それでも天竺を大乱に叩き込むほどの復讐は望まず、まあ適当なところで矛を収めて帰国、ただしおうちへ帰るまでが修好使節、をちゃんとやっていて、帰国して皇帝に復命するまでちゃんと描いているところが偉い。これは原作でもあった。

   それどころか、ちゃんと帰路は一行が全滅しないように陸路と海路とに分けて帰るとか、問題点を洗い出した結果をすぐ反映しているあたりがやはり秀才。アルジュナの息子のその後まで描いて、彼岸の旅の成果とか、ちゃんと日本にその影響が伝播している……まで載せて、アジアが輝いていたあの時代を見事描き切ってくれてほんと読んで楽しい佳作にしてくれました。

   今はなんでも引き延ばしで20巻30巻越えの長編になってしまって簡単に手を出せないといろいろ言われていますが、このくらいで、ほんとこのぐらいでまとまってたら人にも勧めやすくていいんじゃないかしら。ほんとおすすめしたいわ。

   ヤスミナちゃんにも良縁が来てよかった! ロマンスはこのくらいでいいかなー足りないぐらいでいいのかもね。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧