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2020年3月15日 (日)

王様ランキング ― と、思うじゃん? ―

   最近漫画の紹介しかしてない。

   最近はネットで読むコミックのサーヴィスが花盛りで、ネットでいろんなサーヴィスを利用しているとその手のCMが入りまくりで記事が円滑に読めなくてほんとイライラします。いや、まんまと引っかかってそこを見るから興味がある人だと思われて延々とその手のCMばかり表示されるんでしょう。

   サーヴィスごとに「売り」の作品が違うみたいなんですが、そんなにいろいろサーヴィス契約してもしょうがないので、コミック・シーモア一本に絞って、よそで見かけて興味をそそられた作品もシーモアで検索しなおして試し読みを読んでみて、それで気に入ったら一気にお買い上げしたりしてますが。うん、ここ一年のネット購入本棚がすごいことになってますわたし。場所を取らないからってこれはやばい。

   それで、今回は「王様ランキング」十日草輔。絵本のようなディフォルメの効いた絵柄で流行りのキラキラした美麗さはないですが、それだけに個性あふれた登場人物のイロイロがすっと心に入ってきます。

   主人公ボッジはとある国の王子。しかし、偉大な巨人である父とは似ても似つかぬ小柄でひ弱な体つきで、耳が聞こえず発語もできないというハンディキャップを持っています。母親違いの弟は努力家で小利口なので、跡継ぎはこの弟王子ダイダの方がふさわしいと国の大多数は思っているみたい。ひととコミュニケイションを取ることができないボッジのことを周囲のものは知性もないだろうとみなして心無い扱いをしますが、なかなかどうして、へこたれない根性や自分より弱い立場の者への思いやりを持ち、王族としての素質はあるというのが描かれてきます。かれの哀しい日々をかえたのは、謎の黒い生き物、カゲ。誰も理解できなかったボッジの心を読んで、理解し、代わりに周囲に伝える役目を担うようになります。はじめて周囲がボッジに知性があり、彼なりの考えに基づいて行動していることを知ることになります。折も折、父王ボッスが世を去り、後継者にに選ばれたのは……! 

   真の王とはどのような存在であるべきなのか。優れた王を順位付けする王様ランキングという制度とともに、おとぎ話の世界というにはかなり辛辣な世界が描かれていきます……。

   これはね、某ワールドトリガーの名台詞を使うなら、「と、思うじゃん?」な物語。

   聞こえず、語ることのできない王子は、どんなに尊い志を持っていても周囲のものから理解されない。可哀そうな方と憐れまれたり、馬鹿にされたり。国のお荷物になるか……と思いきや、王の死後の動乱を収める中心人物として期待されるようになるでしょう、なってほしいと読者は見守るようになります。

   ボッジの指南役、たぶんイケメン枠であろう剣士ドーマスは、アルスラーンでいうところのダリューンのような役回り、王子を護って動乱を切り抜ける……と思いきや、ブッレブレの心の弱さを見せつけます。

   王妃ヒリングは、面差しや初登場時のふるまいから、頭は切れるけれどヒステリックで絵に描いたようなママハハ、と見せかけておいて、その名の通り癒し系(いや意味ちがうけど)。LINEコミックでも1話ずつ読めますけど、活躍する回のコメント欄ではもう「ママがんばって!」「ママいいおかあさんしてる!」と応援コメントの嵐だったり。

   悪相の蛇使いベビンはべビンであんたその顔でマジかというような温かいところを見せつけるし。こっちがボッジの守役につくべきだった。ホント惜しい。

   登場人物がみな、一言で言い表せない、第一印象とはちがう複雑なキャラクター性を持っていて、あとであっと言わされる。そういう奥深いところのある作品です。一気買いしちゃったぜ。

   ストーリーもいろいろ謎を含んでいて、ボッス王は悪魔と取引をしてなにを求めたのか、なにを代償にしたのか。謎の女ミランジョの目的は何なのか。目を離すことができない傑作であります。LINEのコミックサーヴィスや各種ネットコミックサーヴィスでご覧になれます。ぜひどうぞ。

   今、漫画が非常に絵がリアルになったり、いろんな効果が使われて、画面が濃く美麗になっていっていますけど、ワートリ読むんでジャンプスクエア? 読むようになったんですが、どの作品もみんな髪の一筋から細密に描いちゃって、服の質感、建物のパース、どれもキレイ過ぎたいへん手がかかってる感じで、大丈夫かってなるんですが、やっぱりすべての作品がそっち方向行くんじゃないのねっていう安心感も感じました。こういう絵柄もあっていい。絵はこれだけど見ごたえあり。

 

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2020年3月 8日 (日)

箱根温泉ガラス旅

   春だというのに禁足な週末でつまんないですね。すいません、わたしは温泉に行ってきました。

   わたしはそんなに温泉好きじゃないです。血圧低いんで、のぼせちゃうし、目が悪いんで、足元が危険です。まあ、家族が好きなのでご一緒しますけどね、積極的には行きたくないです、ごめんなさい。

   ところが、虎美は好きなんだ。赤ちゃんの頃から行ってたから。休みというと温泉に行って癒されるものだと思ってる。

   仕事の目標に追いまくられていた年末からずっと、
   「あー、温泉行って癒されたい!」と叫んでました。

   虎ちゃんが虎視眈々と狙っているのが旦那様の親会社の関連の箱根のホテル。一度客が来ないからもう社員一人一回ノルマ! とかで連れて行ってもらってから味を占めて、

   「お父さんの会社のレジェンドホテル箱根(仮名)空いてない?」と言いまくっていたのですが。

   「春節が終わるまで待ちなさい。あちらは今が書き入れ時です」

    とーころがこの事態ですよ。

   「閑古鳥が鳴いているそうなので」

   「やったあ、家族みんなで行こうよ!」

    ……ということになりました。

    おかあさん今繁忙期で休んだら殺される(社会人的に)ってのに。

    でも、今年の繁忙期用の増員のみなさん優秀で研修終わったらマジ即戦力だったので、

   「3月の人員に余裕があります。有休を申請するなら受け付けます」って、思わず目を疑う告知があったので、予備日として月曜を有休にしておいて、行ってきました箱根!

   「おかあさん、わたし箱根で美術館行きたいんだけど一緒に行かない?」と、虎美殊勝なことを言い出して。

   「よし! 母はあこがれのラリックの」

   「箱根ガラスの森美術館!」

   「ラリックは……」

   「二つも行く余裕ない!」

    娘は猛獣。うん、知ってる。そして思い悩むと体は反応する。

   「早乙女さんどうしたの顔が真っ赤」

   「すいません熱があるんですけど!?」

   「きゃーやだコロナ? やめて今コロナ出たらうちのチームどころかこのセンター閉鎖だから!」

     ……なんて騒ぎを金曜にやっておいて、葛根湯とイブ飲んで早寝して熱が下がった朝6時!

   「行こ♪」

    最速で荷造りして洗濯機まわして干して、娘を待って、後十分で出るって言ったのになんで出られないのとかあんた洗濯も干し物もしないで勝手なこと言うんじゃない母は昨日まで死に掛けてたんだからとかギャアギャア喧嘩しながら出かけました!

   「直行ロマンスカーもうないじゃん」

   「あー母が悪うございましたねー」

    違うの、ノイエ・リリエンベルクがロマンスカーと相性悪いの。町田まで出れば嘘みたいな頻度で箱根湯本まで行くやつ出てました。

    そして、事前に調べた時からすでにがーらがらー、予約の必要もなくホームの自動販売機で特急指定席券買えました。

    ホームに滑り込んでくるロマンスカーに余裕で乗り込んで、ご機嫌ないい日旅立ち。

    お昼過ぎに箱根湯本についたら、虎美に調べさせたカフェに入ってかるくご飯食べて、行こう箱根ガラスの森美術館! 駅前バスターミナルからバスの乗っていざ出発……

    「エヴァンゲリヲン発進!

    ぱーどん?

    ノイ・リリの駅にもポスター貼ってありましたけど、今また箱根はエヴァンゲリヲンとコラボしていて(またかよ!)、なんか周遊券を買うとスタンプラリーができてなんか記念品貰えるらしいですが、いやもうおかあさん興味ないから。それが、ただの各観光地行きシャトル、ラッピングもなにもされていない普通の市内巡行路線バスサイズのが、エンジン掛かったら三石琴乃声で

    「ネルフの葛城ミサトです! 本日はご乗車ありがとうございます」と自己紹介したうえでルートの案内からバス停のコール、運転中は危険ですから席を立たないでなどの諸注意からご提供のコールまでもしかしてミサトさーん!?

    いや乗客はあんまりそういうの嬉しい人たちじゃなかったと思うけど。割といました。全席(優先席も)二人掛け仕様だったけど、ほとんど席埋まってるぐらいだけどかろうじて立ってる客いないぐらいの混みよう。

    「おかあさんそんなデッカイキャリーバッグ要らないでしょなんで持ってきたの」

    「うるせー今すぐ出せるカバンこれしかなかったんだ、昨日の夜までひとりで留守番するつもりだったんだぞコロナ疑惑で」

     おかあさんいつもの2,3泊用の10年物のキャリーを引っ張ってきていますがこれをもってバス乗ると場所とるのよね。膝の上に無理やり乗せて汗かいてました。いや、熱ないから。6度4分だから。

     そして着きました箱根ガラスの森美術館。まずロッカーで荷物を預けて、先にお手洗い。 

    「おかあさん! 手を洗うところからお湯がでる!

     その日は箱根寒かったから。

    「これぞおもてなし!」あとで旦那に言ったら、

    「そんなものここでは幾らでも湧いている」とぶった切られましたけど。

     そしてガラスの森美術館は。

     お庭を先に見ましたが、あーイタリア風なお庭にイ、イ、インスタレィション? 彫刻とも展示ともつかぬモダーンな感じの中小ていなキレイなガラスのなにかが飾ってありました。おかあさんアタマが古いので抽象とか現代芸術わかんないんですいません。絵もモネよりダヴィッドとかのほうがいいです。ナポレオンの戴冠式描いたやつみたいな。

     イタリアの貴族の館を全力で再現したという館内は音が響くカンジで、今まさにサロン・コンサートが終わったとこでした。拍手鳴りやまぬ感じで。ヴェネチアンガラスを製法別に紹介してある展示室に二人して足を踏み入れて、

    「この作品は19世紀か、新しいね」

    「まあガラスだから、もっと古いものは残っていてもここにまで回ってこないだろう」

    「ごめんわたし史学科だから。もっと古い史料とか普通に見ていて」

    「ヴェネツィアがガラス産業を押し出したのは近世になってからだろう。最盛期だとやはりこの時代なのではないか」などと罰当たりなことを囁きかわして。

    一周したらちょうどこの日最後のサロン・コンサートの時間になっていて、わくわくで聴いていくことに。

    MCが出てきて、演者のかんたんな紹介をした後、

   「いい演奏だったらお気軽にブラヴォーと声をかけてあげてくださいね! では練習しましょう、ブラヴォー!」なんてやっておいて、拍手でお出迎え、ヴァイオリンを持ったマエストロが出てきて、ポピュラーな曲をやりますって、イタリア語と英語でご挨拶。たぶんイタリア語、シニョーリ云々言ってたから。ああ、シニョーレも一応複数形になるのねーとかぼんやり考えてたら、

   「プリマヴェーラ、アントニオ=ヴィヴァルディ」って。

   「おかーさんヴィヴァルディって?」虎美が声をかけるより、MCの人がスイッチ入れたら 

   ♪チャンチャンチャンチャラララーンってあれかよ! それも他3パートはカラオケかよ! その他、タイトルは知らないけど聞いたことあるような曲を2,3曲やって、やらせのようにアンコールをえーとレ・ミゼラブルからやって、握手してCD売っておしまい。あとで会社の熟女にここ行ったというと、

   「とつぜんカンツォーネ始まるでしょうw?」っていわれたから毎週やってるみたいです。

   この道おにいちゃんの住んでる町からの通り道だから絶対通るから拾ってもらいましょうとさっさと電話かけて約束取り付けておいて売店でおばあちゃんにお土産買って。そして外で箱根の風に吹かれた虎美は寒い寒いと震えて。

   「母今コートの下のカーデ脱ぐから着なさい」

   「イヤっ」

   「じゃあ、予備のバスタオル出すから包まって」

   「絶対イヤっ」

    言ってる間に豹太くん到着、ところが、せっかく進行方向に立っているのに手前の矢印に従って美術館の有料駐車場に入ってしまいましたよ。意識高すぎ。

   「会社で非常用食料の更新があって希望者どうぞっていうから貰ったけど食べる? 賞味期限の迫ったアルファ米」

   「うっわ嬉しい」

   「……持って帰れる?」

   「こんなこともあろうかと! 大丈夫母のキャリーに入る! 豹太くんありがとう! 虎美は食べなくてよろしい」

    おかあさん大人げない。

    無事お宿の箱根レジェンドホテルに集合して、バイキングの夕食と温泉を楽しみました。満員じゃないけどそこそこお客はいましたよ。中国語はほとんど聞こえませんでした。……ほとんど社員の関係のひとだったりして。

    夜はカラオケが貸し切りだったので諦め、

   「大丈夫あたしカードゲーム持ってきた!」というので、虎美推薦の「ソクラテスラ」というゲームをしました。

    世界の偉人の名前を3つにぶった切り、それを手札にして、名前の前パーツ、真ん中パーツ、語尾パーツをうまく組み合わせて怪しげな名前を作り、その基本点の和とその回その回で優先されるポイントで勝敗を決めるというバトルのようで。

    カードにはその偉人のプロフィールも印刷されているので「25才で即位し/対外戦争に勝利し/国に繁栄をもたらした」というような何の変哲もない紹介文も、3人分ばらして組み合わせると、

    「生まれてすぐ天上天下唯我独尊と言葉を発し」「妻たちを次々処刑して」「女性の地位向上に寄与した」みたいな無茶苦茶な説明になるのでした。これは適当に今作りましたけど。

    ソクラテスもリンカーンもガンジーも適当なところで名前をぶった切られて組み合わされるのでとんでもねえ珍名ができるので、お酒が入っている歴史オタクFateのオタクがやるとおかしくって涙が出そうな時間を楽しむことができるのでした。面白かった。

    さてその翌日。旦那様も豹太くんも適当に食休みした後はうちへ帰るとのことで、

    「母はラリックの美術館に行きたいのだが」

    「適当に自分で探して行って」

    「昨日のガラスの森美術館の先なのでそこまで車に乗せていってくれれば母あとは自分で」

    「いやです」

    「虎美は」

    「おかーさんは明日も休みとったんでしょ、あたしはあした仕事だから帰る」

     おかあさんひとりで温泉シャトルバスに乗って箱根湯本駅に戻って、一人でまたバスに乗ってラリック美術館を目指しました。

    「エヴァンゲリヲン発進!」ミサトさんはその日も元気でした。

    箱根の山道はとても曲がりくねっていて、あれですね、箱根駅伝の中継はあれでもランナーに伴走しているから速度控えめですね。路線バスはガチで法定速度出していて、とてもスマフォ見てる余裕ありませんでした。げろりん。

    でもなんとか最寄りのバス停までたどり着いて、降りて、なんとかキャリーを転がして美術館の入口に。やってるか心配でしたがが、ちゃんと守衛さんも立って駐車場に入る人の交通整理していて、笑顔で迎えてくれました。キャリーを預けて、いざラリック!

    薄暗い館内はもう夢の世界。ガラスが、あの有名な香水瓶が、ライトに浮かび上がって、ああ、憧れのアールヌーヴォー、昆虫モティーフのアクセサリー! この世に4枚しかないラリックデザインの花柄の絹のショール! うわー、何かのネタでつかいたい! インスピレィションわくわくー! 暗さに慣れたころにサラ・ベルナールの間がガラス張りで外のお庭見られるようになってて明るくて休憩できてほっとするー!

    ほんっと人がいなくて順路も適当に好きなように回って前からも横からも舐めるようにみたーっ!

    素晴らしい。ああ幸せ。娘連れてこなかったからかえって遠慮なく見られてよかった

    ミュージアムショップで矯めつ眇めつして絵ハガキとクリアファイルと、よく考えると全然かすってもいない日本の手ぬぐい技術で染めた巾着とガーゼハンカチ買っちゃったけどまあいいか。

    今度は忘れないようにキャリーの中にしっかり納めて帰りのバスに乗りました!

    お土産買いすぎて残り所持金千円切って、慌てて駅のATMでお金おろしたけど。いいの! PASMOちゃんにチャージしておいたお金で会社へのお土産(富士山アルフォート)と帰りのお弁当買ったから!

   うっかりエビーナから寝ちゃって町田で降りそこなうとこだったけど、ちゃんと降りて帰ってこられたから!

   夢がかなってよかったです。一人でもどこへでも行けるんだ、なんでもみてやるんだ、ってそんな第一歩でした。  

   そして、薄着で箱根の山風に吹かれた虎美ちゃんは、翌日熱出して仕事休みましたとさ。         

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