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2019年4月 6日 (土)

ワールドトリガー ―多重構造―

   まあ噂には聞いていたんだけど。「ワールドトリガー」葦原大介。

   虎美がはまって、「おかあさん今度帰ったときに(キンドルの入った)タブレット見せるから絶対読んで!」とのことで。

   お正月ぐらいに一気読みしました。ジャンプSQで絶賛連載中なのでこれから娘が毎月更新分見せてくれるそうなので楽しみです。

   話に聞いただけで一応予習のためにウィキペディア読んでみたら(おかあさんは割とネタバレを気にしない人なのである程度のところで予習します。「本好きの下剋上」とかね)、

   「登場人物大杉、わけわからん」

   主人公以外にどれだけチームがあるの!?

   ところが、1巻から読んでみたらするする入る。これはスゴイ。

   導入は普通の学園ものに見えた。いや冒頭はあからさまにSFだったけれども。

   「ある日この街に

    異世界への門が開いた」って。

   そこから3ページで異世界からの敵に対応する謎の組織の存在が説明され、普通の学園生活の描写へ。1ページ目でその組織のヒーローに救われたと描かれていた眼鏡くんが孤高を保つ(?)様子から。ふつーの公立中学のふつーの日常、いじめっこたちがひとりのペンケースを奪うとかいうちょっとしたいじめを、主人公の眼鏡くんはきれいに無視して、自分の頭にぶつかったそれを淡々と持ち主に返してやるけれど、それは称賛されない。彼にできるのは精いっぱいその程度。眼鏡くん三雲修は非力だから。

   異世界からの侵攻を受ける異常事態で、それでも彼は卑怯なふるまいを見過ごしにはできない。それは、絵に描いたような訳あり転校生空閑遊真がいじめっこに絡まれ、連れていかれた時にも! その異世界からなんかおどろおどろしい敵が現れて、いじめを止めようとした修を返り討ちにしたいじめっこに襲いかかっても!

 

   「……ぼくが

    そうするべき

    だと思ってる

    からだ!!」

    

    なにこの青臭いモヤシ眼鏡主人公? 事情通によればジャンプ初の眼鏡主人公だそうです。「スケットダンス」のボッスンはあれはゴーグルだったしな。

    無敵のパワーと戦いぶりで事態を収束させたのは「親の形見の指輪」と謎の「黒い炊飯器」を駆使して戦う遊真のほうだったのですが。この異世界「近界(ネイバー)」から来たと語る遊真と修は運命の出会いを果たすのでした!

    そういう、SF的敵と戦って日常を守る主人公~な重苦しい生き残りストーリー……「宇宙戦艦ヤマト」のような、主人公が必ず敵をぶっ飛ばしてスッキリ! ではないサスペンス風味の強い物語運びが根底にあります。まあ、きわどいところで敵は毎回撃退されて、守備隊「ボーダー」に温情合格C級隊員のひ弱眼鏡くんも少しずつ注目されていくんですけどね。どっちかっていうと活躍してるのは近界パワーを駆使する遊真の方だしね。

    そして、物語はただの修の出世ストーリーではないのです。

    異世界からは断続的に侵攻は行われている状態。そこへ、自分が死んだら日本へ行ってボーダー所属の友人を頼れという父の遺言に従った遊真とその父自身と言える超兵器黒トリガーの処遇をめぐって上層部がいきなり割れます。敵である近界民に、父の形見とはいえ一般隊員のトリガー:武器よりはるかに高性能な超兵器を持たせておくわけにいかないとする指令と、そこまでする必要はないとする本部長とが対立し、遊真から黒トリガーを奪おうとする指令派部隊と守ろうとする本部長派部隊との戦いが勃発!   

    おいおい、いきなり仲間割れかい!?

    最初のページで修を救ってくれた憧れの先輩:迅が活躍し、遊真の身柄はリベラル派の支部長のいる迅と同じ支部に引き受けられることに。

    物語は遊真もボーダーに入隊して、組織内の各チームでの順位を上げるランク戦へ。トリオンという架空の物質を元にした武装で戦うチーム対抗模擬戦で隊員たちは腕を磨くのでした。「アイシールド21」の主人公セナくんと同じくらい体力や体格がぱっとしない修が、タイムリミットを抱えた遊真と、同様に近界に行かなくてはいけない事情を持つ幼馴染千佳とを近界に連れていくために組織内での地位を上げ、近界に行っても負けない実力をつけるために知恵を振り絞ってのしあがるスポ根ものの性格も出てきました!

    この、組織内にチームがいくつもあるために冒頭の「登場人物大杉!」という印象になるのですが、巧みな構成によって、個性的なメンバーが次々紹介されていくためにあまり混乱はありません……かっこつけの隊長、二宮と王子を混同したりすることはありますが。

    チームが各々オペレーター含む4~5人編成なので、各チームそれぞれ担当兵科が分かれているのもあっていろいろ個性的で、主人公チームとの対戦ごとに過去話やらチーム内の人間関係とかわりとしっかり描いてあっても枝道に行ってしまう感はないです。「おお振り」だとスポーツの性格上敵チームは9人以上だしやってる時間も9回裏表2時間かかるところを、模擬戦はそこまで長くないので飽きることなく楽しめます。また、アクションとしてもいろいろ超絶技が出て面白いうえに、作戦の面白さもあります。敵の侵攻もまたいいタイミングで挟まれるし。捕虜にした近界人剣士を故国に帰りたい心につけ込んでスカウトするし! このへんの修のしたたかさはほんと見習いたい! 「背すピン」のつっちーもそうだけど、最近のジャンプヒーローは弱いけどしたたかでイイ!

    主人公以外の人間関係もいろいろ複雑で面白い。チームの中の先輩後輩関係、武器での師弟関係、入隊の動機からの敵への思い入れの違いなど、脇役を深く見ていってもいろいろ楽しめます。

    てなわけで、一色で単純に言い表せない深みのある作品ということで、注目しています。

    おかあさんの好みは中学生スナイパーで、同じスナイパーの千佳ちゃんにほのかな恋心を抱いているユヅルくんです。「ひとを撃つことができなくて」失踪してしまった師匠、鳩原さんと同じで、千佳ちゃんも優秀なのにひとを撃てないのではということから千佳ちゃんに接近していろいろ助言したりしているところがジャスト思春期なかんじでかわいらしいです。いいカンジで進展することを期待しています!

 

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コメント

 もうね、ガンダム世界におけるミノフスキー粒子、銀英伝におけるゼッフル粒子と同じくらいトリオンというのが万能設定。

 生身の体に影響しないでいくらでもチャンバラできるとか、20歳ぐらいで分泌が止まる謎設定のおかげでいたいけな青少年を戦場に送り出す理由付けがもうパーペキ(パーフェクトで完璧)。

 敵も敵でヤマトにおけるガミラスみたいに生存権を賭けて侵略してくる事情とかね。深い。
 そういうおもっ苦しい世界観に中高生(大学生含む)が切磋琢磨きゅんきゅんな学園ものが絡んでもうおいしいおいしい。

 作者さんには体を大事にして頑張ってもらいたいです。

 あと、絵馬ユズルくんの「ず」は「すにてんてん」と娘から速攻訂正入ったのでとりあえず追記。ごめんよ。

投稿: まいね | 2019年4月13日 (土) 14時04分

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