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2018年9月30日 (日)

MCI49無事終了!

   満中陰=四十九日っておかあさんふざけすぎ。

   11時菩提寺集合ということで、わたくしは前日の金曜有休とって朝お洗濯してごみ出してから悠々出発。ところが、
   「お世話になったご近所や親せきに差し上げるからお土産よろしく
   って虎美の指令、
   「小田原のかまぼこと鳩サブレとおばあちゃんの好物の崎陽軒のシウマイと水無瀬のおばさまに虎屋の羊羹」ってお土産買うだけで半日使うよ!
   「これって木曜(きょう)のうちに町田の小田急行ってお土産買っとかないとダメ?」
   木曜の段階で通勤途中にオタ熟女亜弓様に愚痴ったら 
   「うーん、東京駅の大丸にないかな?
   その場でゲームやってたスマフォを中断し、ググるググる。
   「蒲鉾は鈴廣でいいと思う。それを、デパ地下どこに入ってるか検索して、新宿より東京駅の方が、少しでも重い区間を減らせるじゃない」
   「ありましたお姉様ーっ!」
   「大丸も地下広いからどのへんかよく見て」
   「大丸の公式からデパ地下地図出ましたーっ!」
   「うん、虎屋は絶対あると思う。鳩サブレと崎陽軒もあるか確かめて」
   「揃いましたーっ! ありがとう!! これで帰れる!」
   朝から号泣しましたよ。いやしてません。
   「お弁当もデパートで買えば多少はお安いじゃない?」
   「ですよねー」

   ってことで、今回は一回八重洲口から出て大丸へ。
   って、まさか東京駅で八重洲口から出ておいて大丸探すと思わなかった。ほんときれいに変わったのね東京駅(遅い)。いや最近東京駅で外出てなかったから。
   まあ、とりあえず探せたけど、一番最初に見つかった虎屋で、水無瀬さんには相場以上のお香典をもらったからと追記事項に、じゃあ最近手元不如意で小さい羊羹セットしか贈れていなかったから奮発しましょうと、ちょうどシーズンだかと栗羊羹をセンターに入れて夜の梅と黒砂糖羊羹の竹皮で包んだような大物をセットにしてもらいました。さすがに桐箱はやめといたのが最後の理性。ところがこの人が殴り殺せそうなぐらい重い羊羹セットが体力を削る削る……。
   もう自力で探すの諦めて、入り口わきの総合案内のお姉さんに、
   「鈴廣さんの蒲鉾どこ?」
   「ごめん今度は鳩サブレ」
   と道を聞いて揃えました。それでも手に食い込む羊羹の重み!
   大汗かいて3周したけど見つからなかった崎陽軒はどうせ新幹線入り口に売ってるし、最悪車内販売あったと思うからあきらめて、実家にシュガーバターの木を買って、自分用にまいせんののり弁当買ってもう重くて手が抜けそうになって泣きながら新幹線のりました。ギリギリ。
   亜弓様、デパ地下でもまいせんだとのり弁でも千円しました。とてもヴォリューミーでゴキゲンだったけど。
   3人掛けの席の真ん中に滑り込んで身も細る心地で食べました。あとはちょっと寝て。無事金沢着。

   もう学校行ってるという娘、改札出たところで待っててくれました。
   「母ファンケルで注文間違えて、化粧水頼んだつもりで洗顔料とクレンジングオイルしか入ってなかった。ファンケルハウス連れてって」
   「エムザに入ってる」
   例の有名な近江町市場の向かいに建ってるデパート。ちょっとバス乗って、この辺もきれいになったのでもう外からじゃわからない。角のミスドはどこへ行ったのよ。向かいの三和銀行はたぶん三菱と合併したからなくなっちゃったんだな。もう金沢は知らない街です。
   ファンケルのショップは1階にありました。
   「アンチエイジングのラインですと化粧水と乳液ペアでお求めになるとハンカチプレゼントなんです」
   「買っちゃお♪」
   娘のアプリでポイント加算してもらって。そして、ピンクとブルーの二枚入りのハンカチ、娘にブルーの方取られました。うーん、まあいいか、案内料だ。

   雨が降っても雪が降っても濡れないお屋根のかかったバス停、でっかい液晶掲示板に次々バスの近づく案内が出て、降り積もる雪で立ってるところも狭い中足踏みしながら来ないバス待ってた昭和のころを思い出して感無量。

   今回はすぐ早乙女家に帰り、荷物を置いたところで実家にブラックフォーマルを回収に。お葬式の日そのまま実家に行って泊ったからそっちでクリーニングもしてもらってたんですよ。なんというおんぶにだっこ。
   でもちゃんと今日は手土産買ったし。
   「もう年だからそんなの食べられない、持って帰れ」と言われたら虎美と山分けするつもりで、虎美にも言ってあったのに、「あらそう」って素直に受け取ってくれました。おばあちゃんもシュガーバターの木食べてみたかったのか。
   「最近は文明堂なんかでもお土産にしても受け取り拒否らしいですから」って。今日行きつけのパン屋の奥さんに愚痴ったら言ってた。田舎びとも口が奢ってきて。いやだわw。たしかにな、大丸の地下でも、ああ、これ金沢にもあるし。これも金沢出店してるし、って、候補がだんだん絞られて。シュガーバターの木だってイマドキセブンイレブンで買えちゃうもんな、買ってからあちゃーって思ってたんだけど、うちの両親コンヴィニ行かないから。セーフ。
   
   うまく出張をぶつけて糸魚川の顧客のところへ顔を出してきた旦那様が、糸魚川に停まる北陸新幹線がなかなかないとぼやきながらご帰宅したのが夕方、ちょうどわたしたちが徒歩で実家へ行く途中ですれ違いました。

   危篤~葬儀のときは4人寝るところがなくてわたしと豹太は実家泊だったのに、和子師匠や実母の活躍のおかげで無事3人仏間で寝られました。あ、豹太は前日から富士の裾野? の勤務地を出て美濃の国辺りのSAで仮眠して早朝着。
   「玄関開けてくれない?」と娘に明け方電話したとかで、娘をどかしてそこに横たわっていました。
   
   さて、見事に晴れ上がった当日、朝のこと。
   近くの和菓子屋さんにお寺に持ってくお菓子を調達に行きました。
   「この喜今日(ききょう)っての3000円箱でお願いします」
   USBサイズのきんつばと見ました。ききょうって、秋らしくていい名前と思ったんですよ。
   「かしこまりました。御熨斗は?」
   「えーと法事なんで、イエロー&ホワイト?」
   「それは……失礼ながらどのような?」
   「四十九日なの」
   「こちらは喜ぶという名前ですのでふさわしくないかと……」
   「あっそうか……じゃあこのへんで適当に」
   「かしこまりました」
   お菓子の商品名まで不祝儀の時は控えなくちゃならんのか、失敗失敗。金額に合わせて適当にニュートラルなものを詰めてもらってる間に店内を見て回ると、お彼岸だったのでおはぎが置いてあって。じゃあお礼代わりに買っとくかと4個入り2パックお買い上げ。
   ところが、このあとお寺でもお茶菓子が3種類出てさらに温泉でもお茶菓子が出て、なんでこんな日に頼みもしないのにわざわざ足のはやいものをかったとつるし上げられておかあさんしょんぼりとなったのでした。

   満中陰法要はお義母様とうちの家族4人に水無瀬のおば様を交えて6人。金沢市内中央からちょっと南西に外れた辺りの寺院群の中の菩提寺Z寺の金堂は一応最前列にお座布団並べてありましたが、二列目からはお椅子。少し座面が低く、正座のお坊様を見下ろす雰囲気を和らげています。お経を少し上げて、合図があったら焼香して、ろうそくの取り換えをしてまたお経、そして、法話。

   「私たち浄土真宗では阿弥陀様のおかげで臨終、即時に成仏ということになっています。本日上げたお経は故人のためではなく、故人とご縁を結んだ私たちが故人のことを偲ために上げさせていただいたのです。
   現代において私は神だ、私は仏だという人は詐欺師です。最後の最後にこの世をお救いくださる方はお経に書いてあります。広隆寺や中宮寺にいらっしゃる弥勒菩薩様です。ほっそりした優しいお姿の仏様でいらっしゃいます……」
   などなどとありがたいお話を伺い、納骨。
   火葬場で購入した大小ペアの骨壺の、小さい方を、本堂の地下、ご本尊さまの下の金庫(クラシックな南京錠がかかってた!)みたいなところ、中は棚になっていて奥からびっしり金襴の袋入りの小さいツボが並んではいってた!
   さらに出たところでまたお経をあげて。終了。
   納骨はそのあと裏の墓地へ行って……?

   「これって謎なんだけど、あの墓石ずらして下のカロート? に入れるんだよね? 大きい方のこれ。持ち上がるんかな? 漆喰で固めてるんじゃないの?」
   「わたし知らないから見てみたい」と娘も食いつきます。うちってあんまりオカルト的なことに敏感じゃないんで、お墓参りしたら普通に記念写真そこで撮ったりするんですよね、変なもの映ったことないし。
   ところが。
   「石屋さんだれかお呼びしてますか?」とお坊様。
   「いいえ?」
   「この花立が動かせてこの石板を上げると下が開くんだと思うんだが」と旦那様。
   お嫁に来たときはなかったと思うんですけど、やや新しい、石の種類も違う、ちょうどバブルのころはやったピカピカのグレイの御影石製の花立が後年追加されてるんですが、これが重くて持ち上がらない。
   「これって、起重機持ってきて吊るんじゃあ?」
   おかあさん、クレーンって言おうよ。
   「いいえ、これくらいは石屋さんが人力で持ち上げてますよ」
   「俺は無理だ」と旦那様。
   「豹太くんはやめときなさい。こないだ避難訓練で土嚢積みやらされてぎっくりしたんでしょ?」
   「……うん」
   「わたしも腰やってるんですよねあはは」とお坊様。
   「うちの出入りの石屋さんは広坂の坂上がったところ右の……」お義母様、所在地はいいから具体的店名か電話番号言ってください。
   結局お寺御用達の石屋さんを呼んで開けてもらうことにしました。
   「わたしこれからちょっと用があるので」と一旦お坊様退席。しばらく待ってたら来てくれました。メイソン石材店(仮名)。
   「うっわ重、大変」とか言いながら、その大きな新しい花立も、もとからある花立も、その下の石板も動かしてくれて、とうとうオーラロードじゃない謎の空間が開きました。
   「ちょっと水が入り込んじゃってますね」
   「掃除が要りますか?」
   「あとはかなりいっぱい入ってるので割れちゃってる壺に入ってるのはもう土に返す感じにするか……相談しといてください」
   「今日は無理ということですか」
   「いつならお願いできます?」
   「水曜か木曜……」
   「必要なものは?」
   ぼんやり聞いていると、虎美わたしのハンドバッグに手を突っ込んで、スマフォのラインを起動して家族ラインのところへ要点を書きこんで送信してました。うーんすごいIT力
   だっておばあちゃんへたばってお寺の控室にいるし、嫁の分際で仕切っていいのかなーってのがあったし。旦那は黙って立ってるし。虎美ちゃんが跡取りの自覚出てきて助かるわあーってお兄ちゃんは廃嫡かい。

   とりあえずお骨はお寺に預かってもらって、仕切り直しとなりました(あとで虎美から無事に納められましたとラインが証拠写真入りではいった)。

   そのあとは昔から利用していた伝承1500年の宿、Hへ行って慰労会。

   持ち込んだアラン・デュカス監修の純米酒を開けて虎美ちゃんのあこがれの家族カラオケ&家族トランプ大会のはずでした。
   お兄ちゃん疲労でご飯を食べた後寝落ち。
   しょうがないから3人で行ったカラオケで採点機能で「99点でカラオケ代金無料、88店でアルコール1杯無料……」虎美ちゃん2回も88点出してノリノリ。
   その後のトランプはみんなアルコール回ってべろんべろんで、とても大貧民とかできる状態じゃなくて、
   「ね? 東急ハンズで買ってきた猫の絵のトランプかわいいでしょ!」
   虎美ちゃんゴキゲンです。
   「ぶっさ! こんなぶちゃいくな猫よりもっと入れるべき種類があっただろう!」とおかあさん暴言暴言。
   「じゃあババ抜き、ババ抜きね……ババ抜きってどんなゲームだった?
   旦那様地味に壊れています。
   「ジョーカーを最後に持っている人が負けなんだよ」
   「ジョーカーというのはライオンか?」
   ……旦那様語るに落ちています。
   「トラもだけどね」
   おかあさんフォローになっていません
   「あーっババ抜きなのにババ2枚とも入れちゃったあたし!」
   「じゃあ一枚出すよ」って2枚とも行ってたんですね旦那様。
   それから始まりますが、
   「やーだーっまた持ってった。バカじゃなーい、Yes!」
   とだれももうわからない早見優のヒット曲歌って煽るおかあさん。
   「また負けた」と落ち込む旦那様。

   「やめだやめだもう寝よう!」とお開きになって、Hの夜は更けていったのでした。

   翌日はもう朝ごはん食べてゆーーーーーーーーっくりして、午後に金沢に帰り着いて、お兄ちゃんの車に夫婦して同乗して北周りで帰ってきました。

   「お昼どうする?」
   「黒ラーメンたべよう。この前帰りにカップ麺買ったらうまかった」って高岡のサーヴィスエリア入って。
   「どうしよう、土産買うの忘れた」ってホタルイカせんべいなんか間に合わせに買って、ところがそれ職場に持ってったら大うけで、ひごろ話したことない熟女まで{早乙女さんご馳走さま~」って声かけてくれたところでこの項おしまい。

   え? お義父様は元気で極楽往生してるよね? どうぞごゆっくり。

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2018年9月24日 (月)

背すじをピン! と ― 妻をめとらばパートナー ― 

   うちの母というのは思い付きで物を申すので、幼いころから振り回されてまいりました。
   「舞子ちゃん! 社交ダンスのサークルに入りなさい! 東大や早稲田の社交ダンスのサークルには外交官の卵が入っているから、そうでなくても世界に羽ばたくエリートの方とお知り合いになれるわっ!」
   いやそんな世界に羽ばたくダーリン捕まえたいわけじゃないけど、まあ、普通に幼児期にシンデレラ読んでりゃ舞踏会には憧れますって。

   てなわけで大人になったらダンスパーティでひらひらドレス着て踊ってみたいとは思ってました。ちょうど、高校生ぐらいのときにあの名香智子のスーパー少女漫画「パートナー」を友人が貸してくれたのではまって。競技ダンスが結構ハードなスポーツだってのは知ってたんですけど。

   映画も「ダンシング・ヒーロー」や「Shall we ダンス?」は胸アツで見てたんですよ。
   だから競技ダンス漫画もそれなりに興味がありました。
   「ボールルームへようこそ」の方も結構追っかけてたんですが。少年漫画の方で社交ダンスって、やるなあ、とは思っていて。
   「10ダンス」はぎりぎりBLくさい(いやあれはモロか?)ライヴァル関係がどきどきで読んでます。掲載誌かわって青年誌になったらしいんですが、イマドキはすごいなあと思ってて。買ってますよ。

   さて、「背すピン」はなんといっても王道、ジャンプ掲載ってことで、娘が一気にはまってイマドキ本で全巻揃えたというから、この四十九日の帰省で読まされてきました。
   「顔が地味」
   「おたふくじゃん」と辛口に始まって。
   「いい子だなあ」
   「おい、熱いなあ」
   「これだよ、こういう細かい心の交流、いいよな!」
   「くぅ~~~~熱いぜ!」
   「このライヴァルいいやつだなあ。パートナーがもうできた女房で」
   「おい、次どうなる!?」
   と、どんどんはまって、完結まで10巻、読破してきました。

   主人公つっちーは身体能力が低く背もちっちゃい地味男くんですが、新入学の部活紹介で見た競技ダンス部の先輩のカッコよさに圧倒されてました。種目がラテンで、女性は露出の多い派手な衣装だったのにも魅了されて、若人らしいスケベ心もあって友人たちと部室に体験入部しにいって、豪快なオネエ(?)の部長に捕まって初心者への指導を受けることになります。スケベ心で集まった新入生がみんな逃亡する中、ひとり残った女子のわたりさんと、苦しいけれどなんだかスッキリする指導を受けて、体はへとへとだけどなんだか楽しかった、また行こうね、と偶然帰りが同じ方向だったので帰りの電車で感想を述べあって笑いあうという運命的な出会いをするのでした。
   かわいいボーイ・ミーツ・ガール
   競技ダンスは全然チャラチャラしてない、マジ体育会系、というのをやりながらも、年の近い男女が心を一つにしなくてはいけない、そういうドキドキも描いてくれて部活物として面白い作品です。

   そして、男女が組んで行うほぼ唯一のスポーツ(まああとは混合ダブルスとか、同様にフィギュアのペアだな)として、先輩たち、ライヴァルたちみんながカップルで現れるんですよね。
   外国人のパートナー(女子)と語学の壁でまだコミュニケイションの取れない元ジュニアチャンピオンの御木くん、パートナーのことだけは女の子扱いしてあげられなくてケンカップルになっている女たらしの八卷くん。
   おぼっちゃんの金龍院さんをおおらかに支える神宮寺さん、真面目で優秀すぎて本音を包み隠さず言ってしまう天然の宮大工を必死にフォローする柏さん。俺が、俺がと暴走する畔田くんをいじりつつ巧みに手綱を取る仙崎さん。
   みんな、さすがに勝ち進んでくるだけあって、お互いを知り尽くしていて補い合ってしっくりいってるんですよね。見ていてしみじみ来ます。

   初心者が新しいスポーツを始める部活物ですけど、つっちーは実力相応。妙に勝ち上がったりしない。トップレヴェルで勝ったり負けたりに鎬を削るのは先輩たち黄金世代。それでも、合理的な「必殺技」は出て、主人公が注目されてスカッとする瞬間は用意されている。イマドキはスポーツものでもうまく話が練られています。さすが。
   あとは、特にうまいわけじゃない、美男美女じゃないけど、基本に忠実で、心から楽しそうに踊る、そこが、応援したくなる、そういう魅力の設定は、大多数の地味な存在である読者にかえって夢を与えると思いました。夢でいけなければ元気というか希望だよ。
   つっちーの魅力は、パートナーの心に寄り添おうとするところ。
   デビュウ戦で、いままでつっちーを励ましてくれて、同じ心でダンスに挑もうとしてくれていたわたりさんが緊張とトラウマのフラッシュバックから動けなくなっても、怒鳴りつけたり、むっとしたりしない。おろおろして、途方に暮れて哀しくなるにしても、わたりさんの心を察して、なんとか自分ができることを考え、励まして、最後まで力を尽くそうとする。胸が暖かくなりました。そうだよ、男の子なんだから。リーダーはパートナーを心から労わって、輝けるようにしてあげなきゃならない。それは、人生においても同じ。

   平凡な主人公のできることは、平凡な読者にもできること。

   必殺技を繰り出したり、特別な血筋に伝わる能力を発揮することなんて、読者にはできないけれど、漫画を読んで、せめて読者がやってみようと思って、実際に行うことができて、そして読者の生活をよりよくさせることができる。
   そういうことを教えるとまでいかなくても、提案できるなら、この作品は血沸き肉躍るバトルファンタジーよりよっぽど読者のためになっている、わたしはそう思います。

   あとは、伏線回収のスッキリ。ごめん、ネタバレです。
   八巻先輩のパートナーは、空手家の娘である秋子。センスがあり気性の激しい美人ですが、空手を修めていて、ケンカップルである八巻とは何かと衝突して、足が出る。そういう、慣れ合わない二人は合うときはキレッキレで華のあるダンスを見せるんですが、食い違うと、ばらばらで見ていられない出来に。また、独自の魅力を出そうとして、八巻はその勢いのある足技を振りに取り入れて、空回り、採点対象外となり、点数が伸びずに低迷。所作に切れがあるだけに、転倒した際にリーダー(男子)である八巻の顔を切ってしまって、流血、失格に……。
   ここで二人がお互いを見つめなおし、恋愛としてステップアップを経て得難い相手として再起するのかなーとか恋愛脳は思いましたけれども、そういうことはなく、お互いを切磋琢磨の相手とすることで再起し、その足技を、いままで「準決勝まで必要ない種目」として封印、紹介されなかった5番目の種目、ジャイヴでの振付に活かすという逆転ホームランをかっ飛ばしてくれてカタルシスをもたらしてくれたんですよね。

   もう、大喝采。

   それも、主人公つっちーはみんな脇で見て、読者と一緒にハラハラしてドキドキして感動する役目なんですけど。
   まあ、それもありか。
   ライヴァルたちはつっちーと出会うことによってそれぞれパートナーとの関係を見つめなおし、ちゃんと手を握り直し、より高みに上っていくんですから。

   つっちーは全国大会優勝とかしないみたいですけど、いいじゃない。その手の中に、自分に寄り添ってくれる、同じ心で同じものをいいと感じられるパートナーを得ることができたんだから。平凡な主人公には、それこそが宝なんじゃないの。

   妻をめとらばパートナー。
   
   世界なんか救わなくていい。10年も20年も連載しなくていい。ほんのちょっとの努力で、自分と、周りの人が幸せになるふるまいを身に着けられるなら、そうして欲しい。そういう青春も描いてほしい。少年漫画は、地味でもそういう話があっていいと思うの。

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2018年9月17日 (月)

落穂ひろいは未亡人のわざなり

   もうすぐ四十九日です。忘れないうちに。

   ご近所の虎美の盆踊りのお師匠様に手伝ってもらってなんとか汚屋敷が半分片付いて(リヴィングや次の間やサンルームに突っ込んだ。突っ込む先があるからできた奇跡)、葬儀屋さん:リラヴォルケン金沢(仮名)がご遺体を連れてきてくれました。ささっと祭壇作ってご遺体を安置して、いつも月のお命日にお経を上げに来てくれるお寺に連絡。

   いつも来てくれるお寺のひとって菩提寺の方じゃないんだ?

   なんかテクニカルタームがあったみたいだけどよく聞こえなくて覚えられなかったです。
   虎美などはちゃんと理解していた模様。Jに対するサテライトみたいなもんか。あるそうです。そういう子分のお寺。
   「〇〇寺さんだよね?」ってやっぱり曲がりなりにも3年ここで暮らしてただけあるな。
   それが、早めのヴァカンスに出てしまっているので捕まらない、明日なら来られるとかでとりあえずご住職のお母様? がお経をあげられとかで謝りながら来てくれました。
   いやー8月はお寺もお忙しいからねえ。かろうじてお盆にかからなかったけどね。
   枕経とかいうのを上げてくれました。

   「お寺のかたがいらっしゃる前に、ご存じとは思いますが、簡単にお焼香のお作法を」
   リラヴォルケンの人さすがです。
   真宗大谷派はお焼香で一回上げないんですよね。持ち上げたらそのままパッと落とす。大きいおばあちゃんのとき、みんな変なことするなあと思いつつ、一般的に一度つまんでから手を返して鼻先に上げるようにしてから落としてたら、まさに早乙女お義父さんに注意されたんでした。
   「違うよ!」
   その時はなんだかむかっ腹が立ったものでしたが、お里が知れるとかこんなことも知らないのかとかそういう叱られ方はせず、人のいるところではなく陰へ行って、単純にそれはうちとは違う、うちはこう、という指摘だけだったので、よく考えたら立派な注意の仕方だったですね。さすがは教職の長い方。故人の徳の高さがもう亡くなったその夜から炸裂!
いや、思い出したのはしばらくたってからだったけど。

   「習わないですからね、外国人タレントのあのひとも、こっちに来てすぐのときわからなくて見様見真似でお香を食べちゃったって言ってました」
   葬儀社の方は笑いを取りながら教えてくれました。

   「……たしかにバブルのころのあの人の失敗ネタでその話は聞いたことがあったが、時代を経て葬儀屋さんのネタにされてるとは思わなかった」
   帰りの車内でお兄ちゃんに熱く語ってしまいましたよ。
   「失敗の経験が後の人に活かされているのならいいじゃないか」
   そして豹太くんもそういうことをいえるようになって、なんて大人になったの。
   参照。ハンター×ハンターのキルアの実家エピソード(おかあさんちがいます)。

   そして、これからのタイムシートを出しながら、明日の朝までに決めてほしいこと、明日の夕方までに決めなくてはならないこと、順番に案内が始まりました。
   「お通夜の祭壇に飾る花の順番を決めていただきます。祭壇の、仏さまに近いところから右左右左と。5列3段を目安に、あとは、増えればそれなりに追加させていただきます」

   来たよー、お花の順番。
   一族での序列とかがここで出るんだ? すいませんが早乙女家はお義父様が二人兄妹、旦那様が一人っ子で親族少ないんですよ、15基(?)もお花来ないです。
   「虎美、……解る?」
   「そういうのはユリウスおじさんに聞けばいいんだよ」
   ああ、ユリウスおじさんね、時々虎美の話に出てきてました。モンブランのご本家の方に挨拶に行くときに一緒に行く人。確かお義父様の従兄弟……?
   お義母様が死にそうな顔しながらそれでも右左右左と割り振っていってました。
   「俺の会社からは3つしか来ない」
   携帯で連絡を取っていた旦那様が放り出すように。
   よかった、来るんだ。
   とりあえず安心。
   チェリースタッフ:私の勤め先には翌朝連絡を入れましたが、実の父じゃないので会社からはお花は出ないとのことで、どうしようと思ってたのでした。
   「弔電も、辞退される方おられますけど……?」
   会社の人に確認されましたが、
   「義父はにぎやかなことが好きなので、ぜひお願いします」
   お願いしちゃいましたよ。だって、その時点ではもう閑散としたお通夜が予想されてたから。せめてと思って。
   「あの、寂しいようでしたら、実家はもちろん弟の方からも出させていただきますけれど」
   恐る恐る申し出てみたら、
   「それより私の妹のうちの方が近いから」と却下されました。あ、そうなの。なにがなんでも数をそろえるってわけじゃないのね。
   そのお花も、1万3千円コースが真ん中で、上と下があって旦那様の会社からは上下二段に花が入る松竹梅で言えば「松」ランクのお花でした。そのほかはとりあえず2段式のお花は来なかったです。竹クラスはあったのかな、ちょっと見わかんなかったです。
   こちらで親戚にお願いした以上にも、お義父さんの所属していた非営利団体から結構来ていてこういうところで義理をかかないんだなあと思いました。
   お花だけでなくお菓子のお供え物という選択もあったので、お値段同じでこちらのおうちにはお菓子を負担してもらう、とかいろいろ組み合わせが悩ましいようです。
   「あんたのご実家にも出していただくけど」とお義母様。
   「当然でございます」
   うちに寝に帰ったとき、さらっと「一万五千円ぐらいお願いします」と鯖を読むおかあさんでした。いやだって、活田家としてもお釣りもらうのもなんだし、大赤字が予想されるんだからもらえるところからもらおうかと。
   そして、ヨシツネ君の「葬儀のお花は男の甲斐性」発言が出るわけよ。
   まあ、結果的に獅子王様の取引先関係からは何にも来なかったわけやけど、パパァ、それブーメランだからね? 定年から20年、ちょっとアルバイトに行くぐらいで無為徒食やってたあなたはどこからお花をもらうつもりなのよ。あ、お花は喪主の取引先が出してくれるのか、それにしたって、ご会葬者数は絶対早乙女家とは段違いだと思う。ちょっと話したら虎美もドン引きしていたし、ここに書いちゃうから永遠にネットの海に残るんだからね(残すなよ)。

   夜6時過ぎの死去だったのですぐ翌日通夜とはいかず、一日予備日ができました。

   「新聞社に連絡して、死亡記事出してもらってください。ただで載るのはお悔やみ欄。これは、名前と死亡日と葬儀会場程度。黒枠の死亡広告は有料です。名刺大で30万? 新聞社の人と相談してください。連絡先は金沢だと、北國と北陸中日と読売ぐらいで」
   実はこれが結構大変で。
   お義父様は私立の学校の先生だったんですが、このご時世、私立の学校は名前が変わりまくりで。実際教えてる最中でも2回ぐらい変わってるのに、やめた後もまた宗教関係の学校で再編があったとかで今は真宗の私立大学の系列になってるとか何とかで、名前の確認に一苦労。これ、学校関係でなくても、バブル・大不況を経て業界再編とかされてるから、肩書きをどう表現するか大変かも。
   「オストオケアノス大学の校友会幹事を必ず入れてください」
   「そういう非営利団体の肩書きはちょっと」
   「これは故人の遺言です!」
   お義父様そういうお金にならん仕事はいっぱい引き受けていたみたいで。なんだか相当押し問答をして、特別料金でそのイレギュラーな肩書きの死亡広告出してもらったらしいです。どのくらい打ち込んでいたかを知らない身としては、それ一行でうん万円違うんなら削ったっていいじゃないと思ったんですけど。
   オストオケアノス? 大学? そんなようしらん大学の幹事だったからって新聞を見た第三者がおおーこのひとはきっとスゴイ! って思ってくれるんだかと非常に懐疑的だったんですが。
   そんなもん要らん。人はみな身一つであの世に旅立つのだ! とオール却下できるほどの立場でもありませんので黙ってました。
   「原稿はファクスで送らせていただきます」というので大掃除で書斎の机から動かしていたファクスを慌てて元の場所に戻して、動かなかったときはメイル対応、とか打合せしました。今どきこんな用途に生きているのか。
   それが、ホッコク新聞社やらかしてくれて、獅子和さまのカズを一と書いたゲラを送ってきやがったので、れーせーに突っ込ませていただきました。やっぱりファクス必要

   そして、到着した豹太に乗せて行ってもらって、お義父様が生前にもらってあったという戒名を菩提寺にとりに行って、ついでに通夜・告別式の打合せ。私がお留守番をしてると、
   「リラヴォルケン金沢でございます。この度は会員様のお宅にご案内をしております。金沢南の弊社の式場がリニューアルしましたので、お近くの会員様には19日に内覧会を予定しております。ぜひお越しください」
   おい。お義母様言ってた葬祭サーヴィスに入ったってこれかい。でも、もう13日葬儀って決まったんだけど。情報いってなくて行き違いってやつかな?それとも、こっちは19日内覧会ってことは13日葬儀できんの? それともこことは別の式場が近所にあるの? なやむなやむ。それでも、
   「あ、はい、ぜひお願いします」って招待状送ってもらうことにしてもらっちゃいました。
   死人がすでに出ているうちに営業かけられて、うちは別に構わないけど、あとでこのお姉さん怒られないかしら。
   仮通夜はほんとに家族だけって言ったら近い親戚も来なくって、ほんとお通夜は大丈夫かと胃が痛くなりました。きっとご近所がいらっしゃると思って、朝実家からペットボトルの大瓶のお茶を2ダース買って行ったら、 おばあちゃんはもう手が痛くて2リットル瓶なんて持てないのになんでこんなのをこんないっぱい買ってきたんだと虎美に叱られてそんなん知るかと穴掘って叫びたい気持ちになりました。まあそれでもリラヴォルケンのお兄さんには何杯も出したけどね。お茶。二間続きの部屋を全開で使って全然エアコン効いてなくて、それなのにお兄さんは仕事柄非クールビスで、熱射病で倒れるんじゃないかと思ったから。
   お通夜の留守宅は盗人狙い放題なので、絶対一人留守番を置いてくださいと言われましたが、誰を置くかでまたもめる。若い女の子一人置いとけないし、実家に来てもらうか、押し入れあけたらそこはカオスってところに泊まってもらうの? いい時間になったらだれかかえって交代するの? もう指揮命令関係カオスで、結局鍵かけて出たんじゃないかな、私も知らない。

   「納棺の際は、友引でのご葬儀ということで、友引人形というのをお入れしてさみしくないようにしていただきますが、故人様の大切にしたらした人形がおありでしたら」
   「いっぱいあるわ。この猫たちを入れてあげて
   猫スキーは早乙女家のファミリーポリシーですか。
   昔茶虎軍団がいたころ、猫だまりになっていたのを撮った写真、数えたら9匹ぐらいいたというやつを大伸ばしにしたのが1枚、ぬいぐるみが一体。猫じゃダメです、人じゃないとと言われて土雛をワンペア。
   「陶器はダメなんじゃ?」
   最近はこういうのも火葬場が厳しくなって、入れていいものいけないものの一覧表が渡されました。補聴器眼鏡はダメなんだって。三途の川の渡し賃も今は紙に印刷したのを入れるそうです。なんだその紙、真田家リスペクトかと思った。
   お兄さん、土雛をひっくり返していろいろうなった挙句、
   「う~ん。まあいいでしょう」
   お棺は白木じゃなくて、ヴェニアらしい合板にそれらしい布を張ってゴージャスそうに見せたやつになりました。刺繍が入っててこういうの華美じゃないかなと思ったら、
   「お父さんは派手なのが好きだから」とお義母様。
   そうなんだ? あんまりおしゃれだとは思ってなかったけど。まあいいか。
   そして始まる通夜。意外と集まって、150規模の会場、割と空席なしでした。よかった。祭壇は白い菊で流れるような線が描かれ、中の上にしてはまあまあな感じ。こういうのもフラワーアレンジメントの影響なんでしょうか、昭和のころの葬儀とはイメィジ違ってきてますね。

   そして、配られる謎の小冊子。広げると、お経に読み仮名と謎の記号が書いてあって意味不明。短いけど般若心経ではなくて。正信偈ってやつ。式が始まると、
   「真宗のお通夜では皆さんにご唱和していただきます。お分かりになる方はどうぞご一緒に故人の冥福を祈っていただけたらと思います」
   
   ナンダッテー!? ΩΩ Ω

   ああそういえば、大きいおばあちゃんの時もあったかも。
   教会の結婚式の時に讃美歌何番とか歌うやつだよ(違います)。お通夜でもコーラスするんだ!?

   そういえば、旦那様が打ち合わせの時に言ってたっけ。
   「桜花は真宗の学校だから、学校側の参列者には坊さんがいっぱいいて、勝手に経を読むと思う」
   「は?」
   お兄さん固まってました。
   「それは……何人ぐらいで?」
   「解らん。来た人間が勝手に入って読むと思う」
   「その場合は、ええとその」
   「勝手にやらせておけばいい」
   「葬儀屋さん的にはそれでお茶を出したり別室を用意したりギャラが発生するのかということを気にしていると思う」
   おかあさん割込みました。
   「あ、はい奥さんのおっしゃるようなことが」
   「関係ない。コーラスに加わるだけ。何もいらない」
   
    それってこーゆーこと!?
   「帰命無量寿如来~」(きぃーみょーむーりょ~じゅ~にょぉらーい~)
   いい声のメインヴォーカルにサイドヴォーカル2人が加わって、最初の1フレーズは誰も唱和しなかったのに、そのうちだんだん加わり始めて、会場皆の大コーラスになったのでした。確かに、聞いたことあるよこれ! 低いから合わせづらくて、おかあさん途中から1オクターブ上歌っちゃった。
   これが、ああ、カタカナってこうやってできたのねーと体で理解できました。一本調子に読むのではなく、ここで上がるの、ここでフラットするの、ここはこぶしを効かせて、というところに漢字の脇にそれぞれ印が入っていて、さっきここはメインのひとちょっと上げてた印だな、と思うとちゃんと同じ印のところでちょっと上げてて、注意深く見ているとちゃんとメロディを歌えるようになってるのでした。
   でも、みんなすぐ帰って、余る余る通夜ふるまい! お香典の計算をやってるおじ様たちに差し入れして食べていただきました。
   内覧会を控えているというリニューアルしたばっかのリラヴォルケン金沢南、いつも使ってる粟津温泉Hのスィートよりきれいだったよ。
   IHのコンロ付きキッチンに冷蔵庫と流し、20畳ぐらいありそうなリヴィングダイニングにお棺が向こう側からワゴンで入ってくる線香番用の8畳和室にツインのベッドルーム。洗面所にバスルーム付き。洗面タオルは無料、お布団バスタオルや浴衣は使った分請求。
   「俺ソファでいいわ」
   「おばあちゃんベッドね、私も」
   「豹太はお布団しいて寝なさい」
   えーとおかあさんどこで寝たらいいかな?
   実家でのびのび就寝してたから、今日ぐらい番をしましょうか、と畳に転がって携帯にアラームセットしたらそのまま座布団抱いて寝てました。いや、2,3時間おきに起きて香炉にお香追加してたよ、ほんとだよ。線香は危ないので、タブレットになった熱源の上に砕いた香木(お焼香の時のアレ」)を振りかけるのが今は主流らしいです。このタブレットが火が付いたかどうかがわかりにくくてちょっと悩みました。
   割とみんなすぐ眠って、すぐ朝が来て。
   ご清潔なイマドキを反映して、リヴィングの方にスプレイすると防臭・殺菌してくれるアレが置いてありました。そうね、喪服は2セット持ってくるひとあんまりいないからね。いつもはそんなの使わないけど、ありがたく噴霧させていただきました。
   通夜葬式はどちらかだけというのが普通らしいので、昨夜のうちにあらかた来てしまっていて、葬儀の日にお香典はこれ以上増えないだろうという見積りで、あー誰も来ないさみしい通夜は避けられたけど、葬儀で大赤字は避けられないなと思ったのでしたが。
   「桜花学園は女子高だったから。教え子たちは夜は出歩かない。連絡網が回ったら告別式に駆けつけてくれる人がいるかもしれない」
   お義母様ァそれ希望的観測過ぎません? って思ってたんだけどさ。
   いきなりお通夜の夜9時、小松から駆け付けたひとがいて、もう和室に安置されたお義父さんのお棺にお参りして、虎美を抱きしめてアツく語ってくれた教え子の方いらしたし。
   
   的中しました。満員御礼桜花学園。エントランスで同窓会始まっちゃうし。
   朝ごはんの時に来た弔電をチェックして読むオーダーを決めて、名前を音読するから間違いがないよう読み合せして、解らない人はみんなしてその場でスマフォで検索して特定、原稿作成。虎美ちゃん使える! 使える!
   「まーこのゴージャス電報どこから?」
   「オストオケアノスの校友会」
   「やったね、チェリースタッフからは刺繍電報だ。女性多い会社だから細かいところが気が利いてる」
   「桜花からも今の理事長で」
   お義父様ごめんなさい、地味にVIPだったんですね。
   あとは、火葬のあとの精進落とし? の会食に来ていただく方にはご招待カードを目立たぬよう手渡しするとか。一人、昨日お香典の計算を引き受けてくれていた地味に重要人物のおじさまに渡すのを忘れていて来てもらえなかったとか、弔辞を言ってもらうはずの町内会長さんに根回しを忘れて当日朝8時にお願いしちゃったとか、手落ちはそれなりにありました。
   お棺に入れる一言カードに虎美が一首詠んで、付き合いでおかあさんも詠んだけどいかんともしがたい駄作だったのでほんと悼む気持ちになってないんだなーと自分のドライさに申し訳なくなったとか。

   そんでお葬式にはお里の実母がにんにく持ってきたとか。
    虎美が最後におじいちゃんへのお手紙を読んで、
   「会場中を泣かせる弔辞書くから」なんて偉そうなこと言ってて、読みながら自分が感極まって泣いちゃって、読み終わって高砂(って言わない、親族席)に戻ってきたときに頭撫でてやったらこの子ハートが猛獣だから殴り返してきやがった。一生言っちゃる。
   まあ、いろいろあったけどなんとか終わって、おじいちゃんはお骨になりました。
   おじいちゃん危篤で7月の帰省&イヴェントが吹っ飛んだ虎美、心おきなく9月に帰省して2週間も羽を伸ばして帰りましたよ。

   四十九日法要は来週です。愛するにゃんこたちと旅立ってください。
   まつすぐな背なを頼りに思ひきて 今日ぞ心の乱れぬるかな
                                             舞音

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2018年9月 1日 (土)

弟、来襲

   何から話そうか。

   お葬式関連はあんまり長くなったから最後はしょった感があるんだけど、思い出したらまだあったからあとで落穂ひろいします。実家の母が、
   「みなさん大変だけどこれ食べてスタミナつけてね!」と葬式の日に焼きにんにくをアルミホイルに包んで持ってきたとか。

   マ ン マ ミ ー ヤ!

   ネタじゃなくてリアルなんだよこれ!!
   「大丈夫匂いしないから」
   してます、ガチでしてますから! 実母ー! 頼むよ!
   「やめてよバッグに匂いついちゃったよ!」(>о<)
   「あらそうだった? ごめん持って帰るね」
   それでも葬儀から火葬場まではバッグに入れてたわたくしを親孝行だと思って!

   てな感じでネタ満載だったんですよ。

   さて、本日の話題は、葬儀の日が決まって実家に連絡を入れたところから始まります。

   「12日か」
   聞くなりヨシツネ君(実父)沈痛な面持ち。
   「大丈夫友引でもできるって」
   「あのね、お墓参りするつもりやったんよ」
   母が横から解説。あーうちも墓参り大好きなうちでした。暇になったからもうお盆に年末にお彼岸もフルにいってるみたい……? いいじゃんもう毎日が日曜日なんだから14とか15に行けよ今年は。
   「それが今年はくーちゃんも来るって」
   「ぱーどん?」

   わたくしの弟、活田久比来(仮名)、モンゴルのハーンの名を持つ男(今はクリスと呼ばせている)、首都圏で家を構えていたはずでは……?
   「それはあいちゃんや奥さんも連れて? わたし泊ってたらやばかった? いつ来るの?」
   「なーん、ひとりで」ともにょもにょ。
   「どうするん? 葬式だけ出てご会食カットして午後から行ってもらう?」
   いえ活田様御一行は当然火葬の後のご会食もお席用意してありますよ。キャンセルならお早めにお願いします。
   「……いや、ご葬儀を欠席などと失礼はできん」
   出たよ原理主義。父は自分で日本一の良識人と思っていてがちがちの俺ルールを押しつけようとするのですが、どうもこちらも敦盛舞うような年になると、
   「おとうさんのマイ・ルールってじつは微妙?」と気が付いてきたんですけど。
   実例。
   こないだ墓参りに金沢に帰ったとき、墓参りの流れから、金沢駅→早乙女家の菩提寺はしご→活田家→ゴール:早乙女家とルートどりをして、実家で土産物を開いていたら、
   「お前は早乙女に嫁に出した身なのだから金沢に帰ったらまずは早乙女家に顔を出してお義父様お義母様に挨拶をして、実家に顔を見せさせていただきますと許可を取ってからうちへ来なくてはならぬ、謝ってこい!」といきなりうちを追い出されたんでした。
   えーっそれって金沢ルールなの? 21世紀にもなって? と首をかしげながら早乙女家に行って口だけ謝ったら(誠意が足らん!)早乙女お母さんにそんなんいわんわいねと笑われたんでしたが。
   その謎モラリストに育てられたクビライは正々堂々反抗してうちに寄り付かないと思っていたら、それでもオリジナル・ルールに基づいてそれなりに義務は果たしていたんですね。めんどくさい墓参りは嫁や娘にさせないっていうのは合理的で妻子にやさしいかもしれませんが、奥さんやあいちゃんは活田家の墓がどこにあるか知らないわけよね、それって困らない? くーちゃん本人がちかぢか急死しちゃったらどうすんのよ。

   でも、さすがは大ハーン、大人になったらいっぱしの口をきくようになって、ちょっと前、おにいちゃんの奨学金で助けてもらおうと思ったら思いっきり正論で叩きのめされたわたしとしては、敬して遠ざける日々だったんですよ。いや、来るんだったら実家から逃げようと思うくらい。
   
   「あんたたちは実の姉弟やないか。クビライがなにか言うたとしても、そこは姉のあんたが受け止めてやるのが筋やないんか」
   いいえ、わたくしそこまで大人じゃないんで。
   もぞもぞ言っている間に父と弟の間で調整が行われ、弟はスケジュールを変更して翌月曜に来ることになりました。活田家は大聖寺の出なので、石川県と福井県の県境の町まで墓参りは一日かかるドライヴなんです。

   そしてにんにくの薫る葬儀が行われ(お義父様すいません)。

   とーぜんの顔をしてわたくしと豹太は実家泊りいたしました。
   翌13日の朝。
   「じゃーわたし留守番しつつ葬式の疲れをいやしているからどうぞ行ってらっしゃい」
   自分で言いながらそれって人としてどうなのと思いましたです。
   「来るかどうかはあんたが自分で考えなさい」
   父ももう年で頭ごなしに拉致するまでのパワーはないようです。車も母のマーチ、運転は弟だそうです。
   「……せっかくだからご一緒させてください」
   うちのお兄ちゃんには早乙女家に戻しておばあちゃんの御用をしてもらうことにしました。結局疲れてみんな寝て過ごしたそうですが。

   果たして母が言っていた時間より一時間も前に来た弟は一礼開口一番、
   「この度はご愁傷さまでございました。父の指示でお悔やみは控えさせていただきました」
   おう、できるビジネスマンになっちゃって。こないだ会ったときは吉田栄作そっくりだったはずなのに、おっさんになったなと思ったらもう50だった。当然か。
   「いえ、こちらもご辞退とお母さんの方で話がありましたので」
   お葬式の花があまりにも少ない件で、実家から弟の名前で花を出すべきかどうか相談したんだけれど、それよりお義母さんの妹である水無瀬家が優先と断られていたので。クビライが首都圏住みで金沢に寄り付かないのは早乙女家でも旧知の情報だったので、何が何でも葬式に顔を出せという話にもならなかったし。
   ぎこちないまま4人乗って墓参りツアースタート。

   さすが大ハーン、わたくしが圧倒される母の天然マシンガントークをさらに上を行く西の方のニュアンスのマシンガントークで制圧し、父はもう借りてきた猫、一言も発さずに黙って後部座席で運ばれていきました。

   あの父が。ありえねえ。

   もうね、もうクリス呼び出来ない、クビライ様。危なげない運転で母の気まぐれの、
   「お花を買い忘れたからどこかお花の買えるところへ寄って」にも余裕で対応。
   「なんで今になって言う!?」
   「あたしも大聖寺まで車乗るなら車酔いの薬欲しいわ」
   「あーはいはいやっぱりまだ車弱いのね」
   「ぎゃーお茶とかハンカチとか日焼け止めとか入れて完璧にしたリュック玄関先に忘れた!」
   「お姉全然年を取った落ち着きが感じられない。戻っとる時間が惜しい、欲しいものは買え!」
   
   それでも父とは言葉少なにランドマークなど確認しつつちゃんと、
   「今日は××寺は寄らないの?」
   「〇〇院は?」と、数件ある菩提寺をちゃんとそれぞれ理解している様子。
   「じゃー今日はどこへ行くのよ」
   「この道でわからんのか」
   「ごめん全然わからん」
   父黙り込んでしまいましたよ。
   「あー砂の寺か。ここまで来たらわかる」
   それじゃ全然来られないも同じです。海が近いのか、墓地の地面が砂地なんです。
   とりあえず草をむしって花を入れて花入れに水を注いで拝んで終わり。
   
   「鯛焼き?」
   「鯛焼き行くよね」
   車を出したらすぐに皆囁きはじめて。
   「! わたしはたこ焼き」
   「じゃあたこ焼きもね」

   大聖寺駅の近くにいつも帰りに鯛焼きを買う店があって、当然のように弟はそこの店先に車をつけ、母は飛び出して行って鯛焼きとたこ焼きを買って帰ってきました。幼い時から変わらず……。

   「実はあの店は先代がやくざをやっていた人でな……」と父が語るには。
   お祭りに店を出すにあたってPTAからそういう業種のひとは排除したいといわれたとき、女傑といわれた祖母が出て行って、店の人にも暮らしがある、入れ墨は見せないように服をちゃんと羽織って、あこぎなことはしない条件でとはなしをつけて露店を出せるようにしてあげたとかいって、後日お礼もうでがあったとかで。
   「もとのうちにある日帰ってきたら一丁ずっとその筋の人が並んでしゃがんで待っていて、おあんさん、おかえりなさい! とあいさつされたんや」
   ジョジョ5部のアレみたいなもんか? と話半分に聞いていますと、
   「それからも、大きくなって仕事は汽車に乗って金沢まで通っていたから、夜、帰りは腹がすいてしょうがなかったのを、必ず店を閉めた後待っていてくれて、あそこを通るたびに残りものですいませんが、といってなにか店のものを持たせてくれたんや」
   父も昔語りがしたくなる年頃なんですね。
   だから墓参りというか大聖寺にいったときは必ずあそこで鯛焼きを買っていたのか。

   45年目の事実でした。
   いやそれ「マダミス」にあった「作りたての残り物」だったんでしょうね。こんなところに人情。

   「お姉はケーキとかくうんか?」と、金沢が近づいたころクビライ様がやさしい声を出します。
   「え? 自分で作れとか言われたらもう嫌だけど、お皿に乗ったのがここに出てきたらうれしく食べるよ」
   「暇だったんでるるぶとか見たら出ていた。今工大前のなんとかいうところにうまいケーキ屋ができたそうだ」
   「工大の? どのあたり」
   そこからは父と具体的なランドマーク提示の応酬があって。
   「はーん、あそこか、31の横やな」
   「そうそう」
   車に乗る人ってなんでそれでわかるんでしょうね。
   「まあうれしい、行きましょう、あたしがお金出すから」と母ご機嫌。
   「要らん! 俺がおごってやる!」
   「運転手のお駄賃や、払わせなさい!」
   ということで、行ってきました。今どきのちゃんとしたケーキは一切れ500円普通にするのね。おいしかったけど、もう少し冷やしてクリームをしゃんとさせてから食べたかったかなあ。今どきはほんと夏の生ケーキは大変。

   たぶん、暇だったんじゃなく、甘党のうちの人間が集まるから弟はわざわざちゃんと調べてきたんでしょうね、それも、駅の向こうの今にぎやかなあたりじゃなく、うちの実家から車で県南へ出た帰り道に寄れるあたりで。その辺が、やっぱり二人もお嫁さんもらえるリア充ってところよね。と思いましたです。
   さんざんマシンガントークで親を親とも思わないシヴィアーな面を見せてくれましたが、まあ、いいじゃない、彼も怨念ですっげえ名前つけられて、天然な母に迷惑な愛情を注がれ、紙一重のキチガイな姉にネコ科のかわいがり方をされて幼少期は苦労したから。
   ちょっとうちでケーキ食べてくつろいで、母のアレも持っていきなさい攻撃をあっさりかわして、年なんだからもう車は処分しなさい、遠くへは乗せていってあげるからと手を振って帰っていきました。カッコよかったかもしれない。
   というわけで弟と久しぶりに邂逅して疲れたっていうか刮目したっていうか、まあやっぱり彼には遠くで幸せになっていてほしいです。
   

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