« 本好きの下克上 ― わらしべガッデス! ― | トップページ | ひとでなしの夏 »

2018年7月15日 (日)

宝石商リチャード氏の謎鑑定 ― 美しいのはあなたの方です ―

   夏休み(前)は出版業界はかき入れ時。読書感想文需要があるからね。もう宿題から解放された大人だって、ヴァカンスのお供には良い本を♪

   ってことで、平成に入ってから「インテリげんちゃん」だの「想像力と数百円」だの、各社文庫にはキャッチコピーに磨きを掛けて挑んでいるのです。

   そんでもってさ、集英社文庫は数年前からキャラクターを設定してアピールしてるんですよ。「よもにゃ」って。猫の。猫の。猫のマスコットをポスターだのなんだのにくっつけてアピールして! 一昨年は目にとめただけだった。去年は耐えた。今年はなんだかかわいいブックマークを付けてアピールしているのでとうとう落ちました! ふらふらと平台に近寄って、なにか感性の合いそうなものを一冊……?

   そして出逢ったこの一冊! 金髪碧眼のお兄さんとピンクの宝石を目に当てた日本人青年2人の表紙イラストにもう目は釘付け、鷲掴みでレジへ持っていったー!

   「宝石商リチャード氏の謎鑑定」

   集英社もオレンジレーベルはコバルトを卒業したお姉さん向けって噂はきいてたんだけども。何も考えず青春ミステリだと思って読み始めて。
   主人公は名付けられたとおりの正義くん。その背景はちょっと苦くって、かれはその重みに潰されずに大学まで育って……ちょっとお疲れ? でも、夜勤の帰りに公園で酔っぱらいに絡まれてる外国人男性を助けてあげちゃうぐらいにはまだまだ正義の心がすり切れていなかった。そのダイヤモンド王女@ちょーシリーズ並みに人間を捨てた美貌の外国人男性が宝石商と聞いて、彼ら一家を縛っている宝石をみて貰うことにしたのでした……。

   造形だけでなく言葉遣いと言いプロフェッショナルなたたずまいと言いパーフェクトなその宝石商、リチャードさんにその宝石の縛りから解放してもらった正義くんは、そのまっすぐさを見込まれてリチャードさんの日本でのお仕事を手伝うことになったのでした……。

   えっとね、小野主上の人気初期シリーズ、「ゴーストハント」、あれの、宝石にまつわる話だと思えばいい。麻衣ちゃんがけなげでいい子なのと同様、正義くんもまっすぐで、そして愛おしい。悪口を言うより人を褒めたい、そういう心持ちが若さと相まって眩しい。美しいと言われ慣れていてそのために苦労もいっぱいしたらしいリチャード氏も心和んじゃう。……和むぐらいならいいけどそのうち痒くなってきて別室でクッション殴ったりしちゃうらしい。

   ……にぶいおかあさんでも気付きました。
   辛抱堪らなくなって娘へライン。
   「これ買った」と表紙を撮影・発信。
        母「栞目当て」
   虎「あ、それ私読みたかった奴」
        母「導入巧いよ」
        母「ごめんもしかしてBL?」
        母「店主~~~~~~~!?」
        母「左の絵が宝石商リチャードさんだが!?」
        母「主人公に華麗にジェラッシッとる!?」
   虎「限りなくBLに近いバディものと聞いたが」
        母「リチャードさん気の毒すぎる」
        母「リチャードさんがんばれ」
   虎「実況しないで」
        母「させてくれ」
        母「結構既刊出ているな」
        母「読了。
          リチャードさん不憫すぎる」
   虎「貸して」
   虎「持ってきて」
        母「是非読んで」
        母「了解」
        母「たぶんリチャードさん胃炎になっとる」
        母「宝石系ゴーストハント」
        母「不思議要素はない」

   ……おかあさんみごとにBLアレルギー治ったみたいね。いや、正義くんの同学年のお友だち谷本さん(石の好きな天然ちゃん:お名前は水晶の晶子(しょうこ)ちゃん!)への恋も応援してるよ。
   天然で石ラー(作中では石屋:石系のオタク。といってもパワーストーン系じゃなく三浦海岸に地層見に行く系硬派)の谷本さんに悶絶しながら想いを育てていく姿がもう清々しい若人っぷり。突っ走っては後悔し、綺麗な言葉で叱咤されながらもへこたれず微速前進しようとする姿勢がほんと、心を洗われる。きっとリチャードさんもそれだから正義くんをお茶くみとして雇ったのでしょう。

   ……美しいのはあなたの方です。

   作中こんな独白はなかったけど、ここんとこ絶対リチャードさんと読者の気持ちは一致してると思うよ! 

   1冊目買って悶絶して帰省のお供に2冊目買って。
   読み終わって即行墓参りの帰りに金沢の書店でまた3冊目買って。
   とんでもねえ引きに4冊目買いに行ったらノイエ・リリエンベルクの有隣堂に4冊目だけ切れてて! 書店の検索端末じゃあ在庫はあったから言えば出してもらえたと思うけどそこではっと自制して!

   3冊目の最後のエピソードで、谷本さんのことを思い切ろうとする正義くんをはげます美しい長ぜりふで、リチャードさんはそう言っていたと思うので。

   にぶちんなかれは「いいカンジの兄貴が背中を押してくれた」だけだと思っていて、その言葉の意味するところを深く理解していなくて、まるきり純粋な友情そのものから「ありがとう大好き」みたいなことを真っ向から言って。もう、銀座の大通りの真ん中から二階にいる人に大声で……。ああ、青春だなあ。

   そして、リチャードさんは……。

   ちょっとちょっとちょっとどうしてここで切るのよう~~~~~~~~!

   おかあさん久々山岸由花子状態!

   明日ハマーツェントルムの丸善行って続きを買って参ります。
   ここで言い逃げなんて許さないんだからーーーーッ!

|

« 本好きの下克上 ― わらしべガッデス! ― | トップページ | ひとでなしの夏 »

コメント

 一つ苦言を呈するなら。
 4冊目の表紙、イラストレイター氏はたぶん今回のメインアイテム「仏手柑」を見ないで描いてる。いや、見て描いてるんだったらごめんよ。
 とりあえずわたしがその昔タキイ種苗のカタログで見た当該植物はそんなカタチしてなかったから。

投稿: まいね | 2018年7月15日 (日) 23時11分

 まずは訂正。
 仏手柑がモティーフなのは3冊め表紙。ごめん。でも表紙のこれがあの柑橘類には見えないというところは譲るつもりはない。

 さて。買ってきましたよ。
 一応がミステリなんだからジャンルづけはネタバレのうちに入るんだろうな。だから純粋にミステリとかとして未読のママストーリー展開を求めてこの本を読まれるなら以下の戯言は読まなくてよろしい。いつもごめんよ。

 主人公の出逢った心優しい有能な相棒が彼を英雄にしてくれて、ちょっと呪いがかかっていていわゆる恋愛の幸せから遠ざかっている愛すべきヒロインと結ばれるような王道! だと思っていたら。

 きれいな魔法使いが呪われた可哀相なヒロインでとろりんきゃわわなお嬢さんがハンサムな助言者だったよ。
 これぐらい逆転してないと21世紀の読者を熱狂させられませんか。

 熱狂したよ。

「じゃあもう愛でいいです」

 Bravo!

投稿: まいね | 2018年7月16日 (月) 22時22分

 あともうリチャードさんの声は某2次元アイドルの中の人で聞こえてくるようになった。そんでもって隠されているミドルネームは「カミュ」に違いないとか。
 永遠の別離を覚悟して託す手紙の中身がレシピってなんなの!?
 絶対宝石言葉とかに託した愛の告白だと思ったよ!(ハイ残念でした!)
 でも別のデルトラ暗号はわかったもん!

投稿: まいね | 2018年7月16日 (月) 22時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/138427/66944342

この記事へのトラックバック一覧です: 宝石商リチャード氏の謎鑑定 ― 美しいのはあなたの方です ―:

« 本好きの下克上 ― わらしべガッデス! ― | トップページ | ひとでなしの夏 »