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2017年8月10日 (木)

「魔法使いの娘」 リカヴァリーは可能

   イマドキはレンタルコミックやらライン配信のサーヴィスやらで、過去の名作やらドラマ化の話題作を無料で読めるようになっていて、ほんと貧乏人にはやさしい世の中です。まあそこで「課金して続き全部読んじゃった」「既刊を買って読みました!」とか感想が付いてるから、みんな乗せられて作家さんにお金が回ってるらしいからいいかな。それも実はサクラだったりして。

   ということで、読んでて密かに楽しみにしてました。「魔法使いの娘」那須雪絵。そしたら、波多利郎さんが「よかったら」といって続篇の「魔法使いの娘に非ず」までセットで貸してくれました。もう相模原の方に足向けて寝られない。福島もだし、これから死ぬまで北枕だな。

   女子高生の初音ちゃんは美人だけど気が強いのが玉に瑕。死んだ父親の友人というパパと今は2人暮らし。実は死んだ父親は陰陽師として高い能力を持っており、友人であった現「パパ」も最強レヴェルの現役陰陽師。……でも、一芸に秀ですぎて社会人としてはダメダメ。能力のある初音ちゃんにあとを継いでもらいたいらしいパパですが、初音ちゃんは拒否。子供のようなパパを抱えてめっぽう所帯臭くなってしまった初音ちゃんに、ある日パパからの指令です。
   「今おまえの許にいる2人だが
    片方は私の弟子、
    もう片方は私が放った
    鬼だ」

   「命が惜しくば
   おまえは
   私が帰るまでに
   どちらが鬼か見極め
   自分で退治てみよ」

   いやーパパそれはスパルタンでしょ。
   そんでもって味方は敵となり。
   ちょっとしたどんでん返しに生き延びた初音ちゃんぶち切れの第一話。

   いやー殺伐としたオカルトホームコメディだなー。

   それから人でないものの起こす事件に無理矢理巻き込まれていく初音ちゃんは健全な一般女子高生の感覚で人の心の闇に向き合ったり自分の出生の秘密を暴いていったりするのでした。

   いやまさか弟子がね。弟子がね、弟子がね。初登場時うさんくささ100%だったあの弟子がね。初音ちゃんに弱みを握られてこき使われるあの弟子がね。

   まさかの結末でした。

   その昔、真面目に(?)オリジナルを書く修行をしていた頃、当時賞を取ったラノベを一通り読んでたんですが、その中にあったなあ。
   「セレーネ・セイレーン」とみなが貴和。
   「普通」でない2人が、障害を乗り越えて心を通わせ、結ばれる。しかし、ストーカーが割り込んで、「彼女」の身体を乗っ取って、「彼」を殺してしまう。「彼女」はかけがえのない「彼」の殺人犯として裁かれる……どんなに彼らを理解し、大切に思ってくれた人たちが弁護し、罪はないと言い聞かせてくれても、自分自身が「乗っ取られ」た自分を許せない……。そういう悲劇と読みましたけど。

   それまで、かれの負い目はほんの少しずつ描かれてはいたようだけれど。
   終盤、滂沱の涙で懺悔する彼に、その昔の作品が思い浮かびました。
   愛してるだの好きだのとは一言もいっていなかったのに。
   大切な相手を守れないどころか、殺そうとしてしまったことは負い目であったのだと。
   ふたりでいろんな経験をしてきて、信頼は芽生えていただろうけれど、数々の局面でかれは心ならずも初音ちゃんの「敵」になっていた。
   その事実はどうしようもない負い目であったようでした。

   へらへらした彼、兵吾の時折見せる激情が、わたしに2度読み3度読みを強いるのです。ここ数年でこんなに心を支配された作品はありませんでした

   ガンバレ。パパが初音にとって大切な存在となり、大人が考えてこれはきっとこうなるだろうと予測した未来を覆したように、きみと初音との日々も、出会いの最悪さを覆すでしょう。絆って、そういうもの。

   波多利郎さん、良い出会いをまたもありがとうございました。


 

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