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2017年6月17日 (土)

「天竺熱風録」 ― あんたが大将 ―

   いや買いに行ったのは「ファイアパンチ」なんだけど。

   新刊の棚の真ん中にどど~んと積んであって。原作に「田中芳樹」とあって、タイトルが「天竺熱風録」とあったら、ああ、ちい昔ノヴェルスででたあの熱い話ね、と即お買い上げ。作画は伊藤勢ってう~ん知らないかも。

   唐の時代に、あの三蔵法師のほぼ同時代、天竺と唐を3往復した官吏が居たらしい、しかも、2度目の訪問の時には当のインド側、マガダ国では世界史の教科書にも載ってるハルシャ・ヴァルダナ王が卒し、アルジュナとか言う簒奪者が宮廷を支配していた!? 修好の礼物は取上げられ公の使節は牢屋に叩き込まれ、その正使だった彼、王玄策は辛うじて脱出、ネパール・チベットの兵を引き込み大暴れ……だったかな。田中芳樹もよくまあこういう人掘り出してくるもんだ。ノヴェルス版の挿絵はあの富士鷹じゃない藤田和日郎で、アツい冒険に胸躍ったものよ。ただ、ロマンス分は例によって乏しかった覚えが……。

   期待してページをめくれば、陰影に富んだ画風。居並ぶは威儀を整えた馬上の将。対するは威容を誇る戦象部隊。オープニングのナレーションに熱い国の風俗が巧みに描かれ、まずは適度な露出の冴えた美貌のヒロインが問いかける。
   「王正使殿
   勝算はありましょうか?」
   「きかんでくれや~」答えるは主人公。頼りなさげだけど、精神がタフで神のごとき計略をもって仲間を何度も窮地から救い出す魔法のオタマジャクシ。正しき田中作品のヒーローじゃないですか。「一介の外交官だっての」とかいろいろ事情を打ち明けてくれながらも、ついには、

   「なんとかするしかあるめぇよ」と、冷や汗かいて虚ろな目で、3枚目の線ながら堂々の登場でした。

   大丈夫?

   いやいや。その後のシーンはその第2回訪問時のヒマラヤ越えでの難所に巻戻り、崖崩れに遭って、随行の学僧智岸(理知的な美少年)と濁流に呑まれながらも無事に生還するエピソード。危機に即応する瞬発力、守るべきものを正しく守ろうとする心意気、それでいて役目だからとかいってツンデレしたり恩に着せたりしない、からっと太陽のような笑顔

   「誰1人欠けちゃなんねえぞ!!
   おうちに帰るまでが修好使節です!!」

   そのあとたぶん高山病で一同ひっくり返ってうごけなくなって一行の理性(たぶん族弟の王玄廓)に「世界の屋根ではしゃがないこと」と雷を落とされるまでがナイスな掴み。もう原作忘れちゃったけどこんなイントロだったかしらあ~伊藤氏の創作でもどっちでもいい、最高よ。

   「あ ん た が 大 将 !

                                    いいえ、正使です。

   せっかくたどり着いたマガダ国の都カナウジで、問答無用で護衛の士4人を殺され、いきり立つ副使の蒋師仁(かなり使えるようす)を、憤怒に震えながら、

   「徒死(いぬじに)は許さん」と抑えるところが圧巻。

   彼らを捕えに来た武将(まだ名前は明らかになっていない?)にも、引きだされた簒奪者アルジュナにも堂々言葉で渡り合うところがさすがの外交官。
   獄に繋がれながらも、
   「便所事情が
   悲惨だよ」とすぐさま事態を正しく把握して一行に告知。
   予想もしなかった事態に当たって、少ない情報から状況を正しく推理し、皆がバラバラにならないよう心を配ってできることをすぐに考え実行に移す。真実と、自分の立場上言うべき事を正しく分別してその場の頼れるリーダーを演ずることができる。

   立派なリーダーの姿ではないですか。

   獄中、なんとも頼れる(?)導師を味方に得てなんとか副使とともに脱出に成功、さて、王正使の冒険は始まったばかり……。なにせあのヒロインちゃんとすてきなそのご主人(ネタバレしようにももう記憶にない)に出会わないと!

   お楽しみはこれからだ!! 

   いやほんと、絵がいいのよ、インド~な陰影で、描き込みが濃くて。美人は色っぽい武人は凛々しいし、導師は胡散臭いし。最高。ジャストフィット!

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コメント

 いやね、先月からネタはイロイロあったんだけどキーボードがまた壊れて。
 欲求不満maxでとうとう旦那様のデッドストックのキーボードを強奪して今朝繋いでなんとか復活。でもこれ「超コンパクト」だけあって、一オクターブしか手が届かないおかあさんのちっちゃい手でも小さすぎてミスタッチ多発。残りものには訳があるの正しい例だったわ。

投稿: まいね | 2017年6月17日 (土) 17時19分

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