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2015年3月 6日 (金)

回帰熱 最初は相聞

   この秋につっといて放置のママ春になろうとしています。やばいよ。

   ブラームスのリーベスリーダー・ヴァルツァーの歌詞を王朝和歌ふうに翻案してみようというシリーズですが、残りが少なくなってきました。こんな後半戦になって取上げるのが第1曲ってどうよ? だってこれ難しかったんだもん。

   ブンチャッチャと「ウィンナワルツってなこんなもんよ」というブラームス渾身のイントロに乗せ、「答えよ、乙女よ」と巻き舌の男声2重唱で始まるこの曲を初めて聴いたときにもうハートを鷲掴みにされていました。もともと別の東欧の言語でやってた土地の詩の翻訳詩だったそうなので語呂とか文法とかけっこー苦しいダウメルさんの原詩とドイツ語初等文法B評価のまいちゃんが力業で格闘したのは今を去ること30年前のことだったのでした。嗚呼、昭和は遠くなりにけり。

   歌の構造としてはテノールとベースの男声2部合唱(もしくは2重唱)で始まり、恋の始まりを歌い、乙女を誘うパートのあとは、女性2部合唱(2重唱)に移り、終盤は「訪問してもいい?」 「来てよ!」 という掛け合いになって終わるんですね。おおらかでいいなあ。

   これはもう、王朝和歌の伝統、相聞歌にしなくてどうします!
   ノリノリで作り始めたんですけど、なんということでしょう、これは、歌詞がやばい

   相聞のお約束って言ったら男性が使ったネタと同じネタを使うとかもありますが、内容にも方向性の縛りがあります! すぐオッケーしちゃダメなの! 
   「えーっマジ? 誰にでも言ってるんじゃないの?」とか、
   「どーせその場の勢いでしょ、簡単に乗ると思わないでよね」とかいって、最初はお断りのポーズじゃなきゃダメ! あの時代のビッチ代表(!?)の和泉式部たん(おかあさん要出典!) でも
   「あなたに恋をしてしまったよ」と言われて、
   「まあ嬉しい、今夜来て」とは返してないと思いますよ! (いや返してたらどうしよう!?)

   ところが、さすがは肉食系、すぐオッケーしやがる。おかあさん頭を抱えました。……とりあえず豪傑訳(このまま曲に乗せて歌えるけどかなり意訳)さらしますのでどうぞ。

   聞いていいかい 愛しいひと
   きみの熱い眼差しで
   恋識らぬ心は 浮かされざわめくのさ
   まだ落ちてはくれないの
   お高くとまっていないで
   心とかす共寝せず眠るの?
   ぼくを待ってるの?

   心とかす共寝せずにねむるなんて
   おばかさん
   来てよ 素敵なあなた ねえ
   来てよ 星の瞬く頃

   どーです? ホントに「Komme, du Schwarzes Auge」って言っちゃってるのこのやらしいねーさん!(マルシー松井優征。あんまり放送禁止用語連発するのはまずいと思った)王朝和歌だったらありえねえでしょ!?
   あとは、ドイツ語恒例後ろから長々と修飾する関係代名詞、「その眼差しをもちて我が冷静なる胸にかくも華々しき熱情を投げ入れしところの愛らしき乙女よ」ってところを、付き合ってらんないので原因っぽく分解してまとめたところが力業。この1文でAメロ全部使ってるもんな、ホント一目惚れはあとのフォローが大変だわい。

   それでも、「心からの悦びを伴わない眠り(直訳)」をしたいわけ? と聞かれて同じフレーズで「心からの悦びを伴わない眠りですって?」と女声が入ってくる辺りはやっぱり相聞のお作法に洋の東西はないのねーと思ってしまったので、頑張って詠んでみましたとも!

   まなざしで氷の理性をたち割れる 
     きみにあはむとて月を待ちける

   「平静なる胸に華々しき火花の感情を云々」っていう原詩を活かすとこうなるかなーと思ったのですが、別解。

     まなざしでわれに情理(なさけ)をおしへける

       ひとにあはむとぞ月を待ちける

   冷静な心があなたによって乱されたというのは、要するに恋を知ったということ、それはあなたのせい、というのを前に出すとこうなる。

   あと、夜の時間帯を表わす天体は原詩では「星」で、「来てよ 星の瞬く頃」と言ってるのですが、この後の歌でも「星の瞬く頃キスして」とか言ってる。しかしながら王朝和歌のお作法では月が出て、明るくなったら夜這いの時間、まだ来ねーよといって見上げたり、帰るときは有明の月に照らされたり、と、恋の夜を演出する天体は主に月なので、その辺翻案詩だからまるっと変えました。ゴメン。

   そんでもって超絶肉食系の彼女の返歌はこうなる。

   あはずしていかでこのよを過ぐすべき
      月の出待ちて来たるべしきみ

   「来たるべし」って、……ほんとお嬢さん自重して。王朝和歌のお約束「逢ふ」すなわち「もう共寝しかない!」を堂々使用。そんでもって「世」ってのは「男女の仲」という言葉と「夜」とを掛けてあるという当然の技巧も入れてみて。
   ……でもこんなど直球な和歌詠んだの光源氏にめっかったらとっても怒られそうだよ。「もっと婉曲にしなさい!」って。柏木の手紙にダメ出ししてたよね? 彼。

   かの歌の心に深くしみければ

     ふたたび三度うかされにけり   舞音

   でもとっても楽しかったの。王朝和歌ってこうよねーって自分で再確認できて。何年越しになるんだこのシリーズ、頑張って完結を目指します。

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コメント


 >まなざしでわれに情理(なさけ)をおしへける

 >       ひとにあはむとぞ月を待ちける

 下の句がなんか文法的に自信ないのと、上の句も下の句も「ける」で終わってるのはどうよと思ったので。

 まなざしでわれに情理をおしへける
  ひとにあはむとて月を待ちけり

「ぞ」は係り助詞なので係り結びで「ける」になるのは文法的に正しいけど、「とて」はなにもなく終わるときに「ける」じゃあヘンだよね? 終止形の「けり」にしないと。ということで修正。けるけるを避けるためには「とて……けり」を採用、と。

 どっちにしても翻案が効き過ぎの感はあるので、逐語訳までいかなくてももう少し原詩の言葉を活かすようまだ改善の余地はあるかも。

投稿: まいね | 2015年3月18日 (水) 00時21分

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