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2014年9月10日 (水)

渚のセカンドハウスで~ その目は腐っているか

   虎美ちゃんも絶賛受験勉強中。去年トチ狂って理系を選択したので古文をほとんどやっておらず、やっぱ史学科いくわとなった今になって母を臨時家庭教師に古文を独学することにした模様。
   「今日はこれ。『伊勢物語 渚の院』問題文をざっと読んで講釈、それから設問をやるから」へえへえ。昔採った貝塚(おかあさんソレ違います)、それくらいのお役には立てますよ……? 
   「『伊勢物語』というのは歌物語。その辺に解説のある在原業平というプレイボーイが主人公と言うことになっていて、そのアリーがいろいろ恋をしたり振られたり上手いこと言って受けたり世の無常を悟ったりする各話に和歌が絡む連作短編みたいなもんだ。
   ホワッツ・マイケルという猫漫画、あれも主人公は必ずしも同一人物ではない茶虎のマイケルであるが、この話も、史実の在原業平である必要は必ずしも無い」
   高校の必須単元で有名な「筒井筒」の段も、どこにアリーが出てるって、出てないもんな。 
   「さて、この渚の院というのはアリーの仕えていたプリンス、コレタカ親王というのが山越えた水無瀬とか言うところの先に別荘を持ってて、この院というのは上皇のことではない。パティオのある別荘、そこでみんなして狩りに行って狩りは適当で酒飲んで盛り上がったなーという話」
   反応が薄いです。この「渚の院」は、
   1: 有名な和歌の出典を明らかにする
   2: 「ましかば~まし」の重要構文を学ぶ
   3: 贈答歌という王朝文化を学ぶ

   ということができるお得章段なので古文の教材としては頻出です。おかあさんも高校の時にやっていて、当時仲良くしてた子がバスの時間だというので「赤バス逃げて乗せずもあらなむ」っていってやったもんです。
   「だからここんとこは、プリンスがもう寝るよーって言ったもんでウマノカーミであるアリーが……」
   「そういうのはいいから逐語訳で」
   へいへいほーと講釈をして、母ご機嫌になって、
   「どうだ? こいつららぶらぶだろ?」と言ってやると、虎美黙り込む。
   「わかんない? このシチュエーション。
   贈答歌ってのはお作法があって、先に読んだ方の同じネタで、次のやつはウッソーとか混ぜ返したり、もっと上を言ったりしてひっくり返すのがお作法
   「日本文化陰湿ですね」
   「違うってぇー!」
   母悶絶。

   昔懐かしい上方漫才のノリで申しますと(参考文献:「大阪豆ゴハン」@サライイネス)


   アリー: いやそれにしてもぼく思うんですけどね、世間さまは2月3月になるともう開花予想なんかしちゃって、今年の桜ははやいやら遅いやら言うて、咲いてきたら咲いてきたで満開になるまで、早けりゃはやいで花見の仕度が間に合うか気ィ揉めるしおそけりゃ鳥が来て蕾を食うたんちゃうやろかと心配になるし、咲いてしもたらこんどはいつまで保つかそぞろになるし、この世の中に桜ちゅうもんがなかったら、かえって春の頃はのどかーな平和な気持ちで過ごせるんちゃうかと。

   ツネ : せやかて工藤、あんさんなに言いまんの。ちゃいまっせ。桜は散るからええんです。この世の中にエターナルでインモータルなものがなにかありますか? ないでっしゃろ? 

B 
   アリー: 天の川ちゅうとこに来たからには、織姫ちゃんもおるはずでしょ? ぼくはそこに一晩泊めて貰うことにしますわ、そんでもって行きずりの……ぐふふ。

   ツネ: あんさんなにいいまんの。織姫ちゃんゆうたら1年にいっぺんだけ逢えるダーリンがおりまっしゃろ? あんさんの割り込む隙がありまっかいな。あかんあかん。


   アリー: まだお名残惜しいのにプリンスお休みでっか、今夜のお月さんみたいやな。あー、山の稜線がさっと逃げてお月さんを入れんようにしたらええのに。プリンスももうちょとおあそびしまひょ?

   ツネ : せやな工藤。左様でんな。もうお山も真っ平らになって、お月さんの入る余地なくしてしまえばええんちゃう? そんでプリンスもわしらと一緒にオールしまひょ?

   こんな感じちゃうん? 陰湿ちゃうよ、会話の遊び。

   丁度問題文にもありました。けっこーいいとこ突いてくるねこの問題集。
   「A,B,Cの各贈答歌につき先の歌と後の歌との内容の関係で適切な物を選んで記号で答えよ」
   「だからぁ~ 最初のは『桜がなかったら春はもっとのどかなのに』に対して、『そんなことないって、この世に永遠なものなんかないんだから』って言ってるから、『先の和歌に対する反論』で、【エ】、次は『先の和歌とは別の視点を提案する』で【ウ】、次は『先の和歌の内容に同意する』で【オ】! 贈答和歌ってのは深いんだって!」

   あー今落ち着いて解釈自分で書いてたらこれAとBの内容の選択肢逆だわ。ごめーん虎美。

   「要するに、こいつらプリンスと盛り上がって、ずっとプリンスといっしょにいたいなーってのを和歌で言って、そういうのが当時の文化だったわけ、って問題!
   な? こいつららぶらぶだろ?」
   「そういう言葉使わないで!
   「は?」
   「おかあさんはそういう意味で使ってないと思うんだけど、らぶらぶなんて表現だと恋愛関係を妄想しちゃうから真面目なところで使わないで!」
   「あ、ああ、とってもみんな仲が良いって言うか……」
   史実でも莫逆っつうかコレタカ親王をすごく慕ってたっぽい言われ方してますよね。
   「このまえの問題も、父である親王を主人公が恋い慕うって説明に書いてあって、そういう意味じゃないのにそんな激しい表現使われてすっごく気になって落ち着かなくてイライラしたんだから!」
   おお娘よソレは違う。おまえの目が腐っておるのだ。なんでも恋愛で見るんじゃありません。

   母どん引きの夕べでした。  

   それで肝心のプリンス・コレタカを中心とする王朝文化サロンのレヴェルの高さについては理解できたんでしょうかねえ……。   

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