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2014年5月18日 (日)

「アルスラーン戦記」 神はオッサンに宿る

   なんで今更と思ってたんですが。「鋼の錬金術師」の荒川弘が作画であの田中芳樹の「アルスラーン戦記」を再コミック化。再というのは、バブルの頃に角川でアニメ映画かしたときにええとASUKA系の少女漫画家さん、中村地里だ、やっと出た、でコミカライズもされてたので。映画はパート2までやったと思うけど1しか見てないなーあんまりキャラクターの魅力が生かし切れてなかった感じでした。原作は一応一部完結した(オトナの事情で出版社変わって2部続刊中。今週末新刊出たって)けど、コミックの方はどこまでやったんだか。絵がキャワイイ系だったので、天野喜孝さんの角川版挿絵と違いすぎててちょっと好きじゃないわ、とそういう認識。

   

荒川さんにバトルもの描かせなくてどうするという編集側の企画先行ってところですかね。その辺、1巻に対談載ってたんで確認してください。

   田中芳樹はもういいやというスタンスで(タイタニアの新刊もスルー)、連載についての情報も見ないまま来たんですが、単行本出るって聞いたら我慢できなくてね。とうとう買っちゃいました、1巻。娘にも見せたら、よくわかんないって。

   バカヤロー、母はこういう架空歴史物が書きたいんだよと今月出た2巻も見せたら、ようやく「面白かった」って。よし!

   「全巻そろっとる。ただし、実家か西金沢のおじいちゃんちかどっちにあるか判らない。自分で掘るがよい」
   「それあるって言わないから!」
   嗚呼それは五月雨というもおこがましい出版スパンの作者に言ってほしいです。おにいちゃんの大学の図書館でカッパノベルス版を探してもらった方が早いかも。

   さて。
   中世西アジアっぽい架空の国、パルスは武勇に秀でたアンドラゴラス王のもと、繁栄を極めておりましたが、大陸西の方、唯一神イアルダボートを奉ずるルシタニア王国の侵攻を受けます。いつもの通り簡単に撃退、ついでにちょっとひ弱な王子アルスラーンは初陣を飾る……筈が、万騎長のひとりエーラーンの裏切りにより軍は壊滅、王は退却中行方不明。最年少万騎長の勇者ダリューンが、大将軍である伯父に頼まれて王子を保護に動き、なんとか2人は戦場を脱出、「旧友ナルサスを頼ります」となったのが1巻。「ひねくれもの」の知者ナルサスを見事に口説き落として味方に引き入れ、再起を期して都落ち、その間、あるじを失った王都エクバターナはとうとう陥落、王妃は敵王の手に落ちてしまった……?(笑)というのが2巻。

   次々現われるアルスラーン王子の味方(候補)が魅力的。豪雄無双の騎士やら、芸術家肌の参謀やら、吟遊詩人だったり詐欺師だったり火事場泥棒だったり追いはぎだったりする美形とか、辺境の城を守る勇者だったりとか。これから東の国境の城までの道中出会うであろうあの英雄あのおねーさん、もう原作既読者には楽しみでしょうがない。いえ、初めてご覧になる方にも楽しいでしょうとも!

   そして、目を愉しませるのはそういうお若い麗しい登場人物ばっかりではありません。ダリューンの伯父、厳めしくも優しい大将軍ヴァフリーズ、裏切り者のエーラーン(ここだけ横山光輝画かと思った!)、敵でも、味方の蛮行に心痛める将軍(たしかモンフェラート)あり、やっと登場した敵国の王とその弟(苦労性の実務責任者)、それ以外にも、名もなき指揮官、雑兵、街の衆、皆々元気で味があるのが荒川世界なのでした。

   主要登場人物だって逞しいよ。
   地の文でだけ追っていたときは、ダリューンとナルサスの「悪友」加減もさらっとしか飲み込めなかったのに、荒川さんの筆によるダリューンのひとの悪そうな笑みを見ると、もう、お主もワルよのう!(さてはカーラーンの城の近くを通ったな! 参照) 。
   おつきの少年エラムを伴うようナルサスに口添えするアルスラーンも、たぶんこれ漫画オリジナルだと思うけど逞しいっていうかいい抜きのシーンだったなあ。
   「どうせなら仲良く嫌われようではないか」という勧誘の台詞(これは成功せず)も、乾いた諦めを漂わせていて、ああ、肩入れしたい! 荒川版は守ってあげたいひ弱王子って方向なのね! 原作だけだとここはやけになってる空元気っぽいイメィジ持ってたかも、わたし。
   そんでもって、渋るナルサスを動かした勧誘の台詞は、

   「おぬしを宮廷画家として迎えよう」……!?
   あるるん(その昔、最初のアニメ化の頃はファンにこう呼ばれてた……?)おまえさっきナルサスのヒドイ絵見ちゃって魂とばしてたろうが!?

   苦労人だけあってひとの心のツボが解るようです、この王子。
   いや、両親からネグレクトされて育ってるし。いきなり脱走した敵国の捕虜に人質にされて町中引きずり回されたりと(これ漫画版オリジナルのイントロ)、苦労してますよ。街の小僧にもあのヘタレ扱いされてたし、たぶん、宮中でも内心軽んじられてたでしょう。だから、スパルタで剣を仕込んでくれてたヴァフリーズには懐いてたし、その甥のダリューンにも心を開いて従ったんだと思うけど。

   そういう感じで、原作の奥深さがより際だって味わい深い「アルスラーン戦記」はおすすめ! なのでした。

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コメント

 新刊読みました。古来皆殺しと言えばトミノ、ガンダムその他の監督の富野由悠季(字こんでよかった?)氏ということになっていましたが、田中芳樹氏もそういえばクライマックスでは(この方の場合ほんの序盤でも!)ファンの胸を熱くしてきた登場人物が死にまくるのでした。今回も、上げて落とす。ラヴの種を播いといて、咲かせない。このやろう。
 ああもう、頼みますよ。幼い頃から苦労続きのあるるんには幸せな中高老年期をすごさせてあげてください。とりあえず、あと二冊分(?)本棚のスペースあけときます。

投稿: まいね | 2014年5月26日 (月) 03時01分

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