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2014年5月26日 (月)

回帰熱 クライマックス

   さて残りも少なくなって参りました。ブラームスの「リーベスリーダー」 Liebeslieder Warzer op52ね、これを王朝和歌に翻案しようという「回帰熱」シリーズ、前回に引き続き第12、13曲行っちゃいましょう。

   錠前師よ 錠前を作れ 作れよ 数限りなく
   品性下劣な輩の口を いちどきに鎖(とざ)さんがため

   11曲からイントロなしで入ります。外野ウゼーシリーズ。伴奏はドンドンバァーン! と、カナトコを叩く鉄槌のイメィジ。ピアノも打楽器なんだなあ。 mache Schloesser, mache Schloesser と早口に二度も繰り返して、どんだけ錠前欲しいんや。ベースが口火を切って、急ぎ足の掛け合いで。そんで、Schloesser ohne Zahl! ともう1回言うぐらいせっぱ詰まってます。

   それがまた、要するに恋の噂が立って、ウゼーから鍵掛けて鎖そうっていう手前勝手。will ich schliessen 倒置構文、しかも2回繰り返しって、どんだけ締めたい意志をしっかり出したいんや。この「鎖したい」「鎖したいんや!」の繰り返しのあと、下降音型、「マジで、マジで?」と追っかける(ほんとにそう聞こえる)ピアノ間奏のチャーミングなこと。
「だって奴等の口いっぺんに締めたいんや!(なぜ関西弁になる?)」と早口にばしっと言い切って終わる。もうおばか。小学生か。
   それを和歌にするとこう。

   いざ市へ 錠前もとめに参るべし
    噂好きなる口ぐち鎖(とざ)さん  舞音

   オーダーメイドじゃなくて買いに行くことにしちゃいましたけど。日本じゃああんまり錠前やさんっていない気がして。まあ、蔵なんかには需要があったでしょうが、鍛冶屋さんの仕事の範疇なのかな? 独立した職業として成り立ってたのかな、そこんとこどうでしょう。

   噂好きな口とかなり突っ込んで意訳しちゃいました。これ、原文は口という単語じしんが「人間の口」じゃなくて「動物の口」っていう単語使ってるんで、学生時代もどういう訳語を当てるか困っちゃったんですよ。

   そういうトチ狂ったゲーテくんは、当然振られます。第13曲になると、もう静か。

   小鳥は空を飛んで 羽を休める枝を探す
   人はその心の安らぐ心をもとめる

   あの頃はなんで鳥が出てくるのか理解に苦しみました。そんで、一般論になってるし。振られたな。今となっては解る。噂になったから振られたんじゃないんです。噂になったことによってカリカリした見苦しい余裕のない様を見限られたんです。あなたといてももう楽しくない、そう言われたの。

   羽根を休む枝をぞもとめ鳥は飛ぶ
    心休まるひとをこそ得め      舞音

   伊勢物語、筒井筒の名台詞「このおんなをこそ得め」。「妻として得たい」のアレンジ。でも、一首の中に係り結び2回はくどいでしょ、たとえもと歌が対句になってたからって。

   そして振られたゲーテくんは第14曲で

   鏡なる水の面に月見れば
   昔の人の偲ばるるなり    舞音 再掲

   と、完全に追想モードになるのでした。

   いやこれもとの詩集「ポリドーラ」では独立した詩の数々だったと思うよ。それを、こういうふうに並べて恋の進捗にしたてたブラームスが凄いと思うの。ほんと、ユーチューブにいろいろ落ちてますんで、時節柄チャゲアス聞くのもいいけど一度お試し下さい。

   それにしても、学生の頃源氏物語をやっていて、
   「あぁ~ん、もう! こういう男女の仲とか人間の心の細かい動きとかの考察は、女コドモのするもんじゃないですね、やっぱりオトナじゃないと理解できない世界でしょう!」と、担当のイヌカイ教授に申しましたところ、教授はにやりと笑って、
   「でも、若いうちからやってないとそういうのの解るオトナになれないんだよ」と仰いました。さて。30年を経過してわたしは源氏をやる資格のあるオトナになったかしら。

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