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2014年1月27日 (月)

おかあさん不善を為す

   もうほとぼりも冷めたかと思うので。

   この秋からずっと行っていた現場はクリーニング工場、ただし、病院関係のリネン類専門の工場です。大量に出るベッド用のシーツから、包布っていうんですってね、脇がヒモになっていて出し入れが楽な布団/毛布カヴァー。あとは、最近脱ぎ着が楽なようにガウンというか作務衣のようにヒモ式になっている患者さんのパジャマ(病衣)、それから枕カヴァー。これを業務用洗濯機でゴンゴン洗って乾燥機でガンガン乾かして、生乾き状態でもう春先の蛇のように絡まって機械から出てくるのを、プレス機に掛ける前にほぐしたり、アイテムごとに分けたりするのが派遣のお仕事です。パートさん正社員さんは機械の操作、プレス機に掛ける仕事をやってます。いやーホラ日本は工業用ロボットの普及が著しいから。21世紀にもなって上半身ランニングシャツのタオル鉢巻したオジサンがぴかぴかのアイロンでじゅわーっとお仕事してるわけがないのでした。三角巾に揃いのブルゾン姿の近隣のおうちの主婦とおぼしき大お姉様たちがじゃっこんじゃっこん機械にシーツ類を食わせて、マジック・カーペットのようにシーツは宙を泳ぎ畳み工程へと運ばれて行ってました。もう感動。

   さて、そのコンヴェアから運ばれてどさっと降ってくる半乾きシーツですが、これをとりあえず病院を区別する為の端のステッチやら、縫いつけられたワッペンを頼りに混ざらないように分けつつ機械の前に山にしていくんですね。包布も、病院によって色とりどりで、今は華やかでいいわねーとか思いつつ、「チューリップが来た!」「次はその黄色いやつを頂戴!」などとコミュニケーションをとりつつ立ったりしゃがんで拾ったり振って皺をとったり機械に掛けやすく軽く畳んだりして折るわけです。これでおかあさん3キロ痩せました。下半身中心に。ここに通い始めた頃はちょっと緩いかしら、でも冬はまだ着ぶくれるし、って言ってたパンツがもうゆーるゆるでウェストにペットボトル一本挟まっちゃいます。ヒップも同様。タイツ2枚履きになっても余裕でいけてます。これは冬用を買うべきってことかしら?

   肉体的には辛い時間帯もありまして、男性のチームメイトも当然いるのですが、これが、気が利く人に当たればいいけど、指示待ちくんに当たるとほんときつい。おかあさんだって一度に5枚は最低持つようにしてるのに(ものが大判な上、湿気を含んでいるので大層重い)、いい若いもんが両手にたった2枚きりとはなんだー! よしんばきみが自分の中の女性性を持てあましていて、戸籍上男だからと言って男だからしゃんとしろとか、重いモノを持てとか当然のように言われることが苦痛なのかも知れないが、この場できみに要求されているのはその若い筋力でここのシーツを一気に運んでくれることなんだよー! とか、自分だって若い頃は女の子なんだから神経が行き届いて丁寧な仕上がりとかを要求されることにとっても負担を感じていたくせにぼんやりジェンダーっぽいことを考えていてしまったのでした。
   それがまた、そのフェミ男くん(死語)は畳み工程に入ると角はぴっちり、アイロンかけたみたいにきれーに畳んでくれるし。いや、この局面ではそれより効率を優先して欲しいのってまたおかあさん言えない言葉で腹が膨れる。
   「枕カヴァーを地べたに置くなよ……ッ?」
   枕カヴァーは機械に掛けやすいようにぴんと伸ばして袋状になってる底の方を機械に向けて置くことになってるんですが、大きな袋のついた車に入れられてやってくるのをとりあえず受けとって山にして、車を先に機械工程に返すんですよね。その山は、靴を脱いで上がった床の上に作っちゃう、それはまあしょうがないみたいです。掃除もちゃんとしてるし、そのあと高温でプレスも掛けるし。でも、一度ぴんと伸ばした状態になったからにはその枕カヴァーを地べたに置くのはなんというかデリカシーがないような、と脇の机の上に置いてたんですが、おかあさん振りかえってその男子を注意しようと思ったら、彼は既に畳んで機械待ちになってる包布の山の上にその枕カヴァーを並べていました。

   いいよ、その感覚

   洋物のミリタリー? な映画で、男臭いオジサンがちょっと頼りない新入りに対して、見直したぞ、とか、仲間として認める、的ニュアンスで言う台詞があるそうですね、わたしはネットで見ましたが。

   「よし、おまえ、うちへきて妹を○○○○していいぞ」

   あ、4文字言葉でスイマセン。だからってほんとに彼に妹がいるかどうかは問題外で、実際いたとしても妹さんに夜這いを掛けるとまた袋だたきにされそうな感じですが。自分ちの女性の貞操は自分に責任があるみたいな古き良きマッチョな価値観ですね。あれだよ、ドイツのワールド・カップのときに、準決勝で相手の選手に挑発的な言葉を掛けて退場になった騒ぎ。

   「おまえのねーちゃんくそビッチ」(推定)。
   「姉について悪く言われたので理性が飛んだ」云々言ってましたっけ。そういう価値観で。

   きみはいいセンスをしている、認めるよ。
   実際彼がうちの娘とお付き合いをしていいとかお婿に欲しいとかそういう意味ではないんですけど、この台詞の感覚が初めて解った気がしましたよ。

   あと、この包布がね。
   ヒモが四方八方に出ているんですが、それは、ほどいた状態で洗濯に掛けられるはずで、あとの使い勝手を考えると当然ヒモは結ばない状態で納品するべきなんですが、
   「ッ! ほどいてッ」
   大お姉様がいらだたしげに投げてくるんですよ。見ると、そのヒモがもう@@@こんな感じで、固結び三連のもう数珠玉みたいにしてあるんです!
   「患者さん暇なんか! ああ、暇なんやな……可哀相に……しょうがないけど止めて欲しいな」なんて言いながら必死にほどきます。
   「またッ」
   「もうッ」
   ……患者さん暇だったみたいです。これが、ちょっと湿った包布の重みでカンカンにきつく締まっているのをほどくのは大変で。
   「患者さんどんだけ暇なん!? 暇は解るけどDSでもしとって!
   いや笑いをとるつもりはない心の叫びです。笑われたけどね。病人閑居して不善を為すってこのことね(違います)。
   敢えて結んじゃうのはほんと堪忍して欲しいですが、そこまで行かなくても、シーツのあっちとこっちを結んであったり、パジャマの袖が結んであったり(それって、お袖に通す必要がない状態ってことはおいたわしい状態なので、ちゃんとほどいて出してとも言いづらいですが)、ボタンがかかったままだったりするのはほんと、お体が本調子じゃない方のこととはいえもうちょっと洗う方の身にもなってよという悲しい気持ちになりましたです。
   「今度から旅館で帰るときには浴衣ちゃんと畳んで出るわ」
   「そっすねー」

   「『××堂大学病院』てこれあの駅伝の強い大学? この地名千葉やろ? 千葉の病院のシーツをわざわざ神奈川まで持ってきて洗とるんか? はるばるアクアライン渡って? 油代ムダやん! 千葉の工場に出せばいいやろ」
   「早乙女さん静かに」
   大きな声の独り言には時々突っ込みが入ります。
   「あ、そのニンテンドー大学のシーツこっち!」
   「早乙女さん、それ××堂だから」
   「間違えたの!」
   「ウケを狙って言ったのかと思った」

   そういうわけで、楽しくもハードなお仕事をしていました。いまちょっと違うところが続いてて、また呼ばれないかなーと思ってます。

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コメント

 あとね、結構定時5分前に作業を終わらせてくれるいい工場だったんですが、だからって、あと5分になったら隅へ寄ってもう終わった気でぺちゃくちゃやってるのがどうも。
 ある日はちょっと作業が押していて、お姉様たちは残業だというので機械の前にシーツを運ぼうとうんうんやっているというのに若い労働力は向こうの方でだべっている。
「ちょっとーそこのイケメン! 手伝って頂戴! 本日最後のご奉公や!」とでかい声で呼ばわったら勇者になりました。
 きみたちもそこはバッと髪を整えて、
「ぼくのことですか?」つってカッコつけて駆けつけなさいよ、「……ぼくのことじゃないですね」みたいな顔してスルーしやがって、バカ。

投稿: まいね | 2014年1月28日 (火) 11時52分

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