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2013年12月 9日 (月)

具志堅で行こう

   その昔、ロスアンゼルス・オリンピックといえばちょっとすごかった記憶があります。その後の大会への転換期になったんじゃなかったかしら。
   その前のモスクワ大会が80年で、共産圏初のオリンピックってことでやつらも(失敬)国威高揚をかけて頑張っておったところが、ちょうど前年にアフガニスタンに侵攻もしたもんで、冷戦のまっただ中の関係上、アメリカさんは「それ良いんですか?」とおおっぴらに文句を付けて、いろいろやり合った結果、アメリカとそれに追随する国はオリンピックをボイコットしちゃったんですよね。日本もです。西ドイツ以外の西ヨーロッパ主要国はあれこれアピールはしたけど参加したらしいです。ナンヤソレ。おかげで幻のオリンピック候補としてその後の人生ムッチャ影響浮けた人も出たとか。スポーツってほんと平和で豊かでないと楽しめないものなんですね。ひどいわ。

   さて。そんでもってその更に前のモントリオール大会では大赤字が出たとかで、ロサンゼルス大会は派手に民間で盛り上げて黒字にしようと気合いが入っていたように思えます。開会式のロケットマン(宇宙服姿の男性が背に負ったユニットから出した二本のノズルでガスを噴射して空を飛んだ!)すごかったですよね。夏休みの開催で、もうTVにへばりついてみてたかな。
   すごかったのが体操競技。その頃はもうオリンピックといえば東側の国が全面的にバックアップしている選手(ステート・アマ)が活躍して金メダル取りまくりで羨ましいやら見ぐるしいやら、あれってどうなの状態だったのですが、特に、旧ソ連なんて、採点のある芸術っぽい競技では、審判は公平を期して各国から選出されてるというのに、露骨に自国の選手にいい点を付けてライヴァルには点が辛く、非常に採点を公正でなくしていた記憶があります。夏は体操、冬はフィギュアね。だから、体操はソ連と東ドイツの独占って印象が強かったです。ナディア・コマネチが10点出して金を取ったのはモントリオールらしいですが、まああれも共産圏ですけど、衝撃的でもあるけどスっとしたもんです。
   その東側の気に入らない連中が、モスクワの報復とばかり「アメリカもグレナダに侵攻したよね?」なんつってロサンゼルス・オリンピックをボイコットいたしまして。あーあ、と思いはしたものの、アメリカさんはそこはネアカだから、
   「じゃあ金メダル取り放題じゃん」って。
   かれらももともと体操競技を見るのは好きだったみたいで。
   その他の競技もアメリカさんはメダル・ラッシュだったらしいですけど(史上最高の独占率)。
   体操競技の会場では、「U.S.A.!」の大合唱。アメリカ贔屓の審判が10点出しまくりで。この大会は甘いんじゃないのってコメントは聞いたような聞かなかったような。それで、日本男子体操陣は隅っこに追いやられて小さくなってました。えーうまいじゃん、負けてないよ、ブランクないって! と素人なりに見ていても、表彰台遠かったです。もしかして、今年はメダル無しかいと思い始めていたときに、彼は颯爽と現われたのでした。

   「出ました、具志堅幸司10点!

   輝く笑顔でした。満員の場内はアメリカの観客ばっかり、「U.S.A.!」の連呼で、誰も日本人選手の演技なんか真剣に見ちゃいなかったように見えたのに、かれはひとり、腐らずにベストの状態で演技を披露し、笑顔でアピールをしていました。真っ白のランニングシャツに白いズボン、じつに日本らしい簡素で清潔な装いで。

   状況はあなたに冷たいかも知れない。どれだけ努力を積み重ねて、それをしっかり自分のものにし、見事なパフォーマンスを行うことができても、それを理解してもらえないかも知れない。でも、腐ったり、ふて腐れたりはしないで。誠実に、いまそこでできることを感謝しながら、十二分に自分の力を発揮して。

   ひたむきな姿勢と心からの純粋な笑顔は、ひとの心を動かすのですから。それはそれ以降のどんな金メダリストの姿よりくっきりと高校生のわたしの心に焼き付けられました。その頃の天声人語にも取上げられたんじゃなかったかしら。

   具志堅で行こう。金メダルはきっとあるから。

   熱があったのか、うっかり悪夢に起こされました。お勤め時代に戻っていて、わたしの心の師匠が延々仕事態度を責めてきて。あーもう心が破れちゃうかと思った。夢でよかった。タケモトさんごめんなさい。あの頃はありがとうございました。

   理不尽と歯がみするとふ起こされて
    我身はいかなる悪夢に惑ふや     舞音

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