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2013年9月24日 (火)

「シド&リド」シリーズ ― 母原病とはこのことか ―

   例によってレンタルコミック。作者は木々というお名前。
   「ロマネスク・バリエ」という単行本のタイトルに惹かれて一巻を手に取ると、いきなり母を焼き殺して逃げてきたと語る超能力を持つ少年と、それを追って現われた兄はさらにその前に末弟を殺したと言うという。マジもんで精神の不安定な年頃の美少年たちが愛憎をぶつけあって泣いたり喚いたりする話でした。
   彼らの母はいわゆる「魔女」で、彼らもその血を引いて、超能力を持っています。しかしながらあやしげな血の儀式を行ったりとか魔法陣を描いたりとかはしません。話が進むにつれて血を与えた動物を使い魔として使役するとか、幻想鏡を通して一瞬にして行きたいところに移動したりはしますが、あとはいわゆる念動力系かな、触れずにものを動かしたり、自分が浮いて移動したりとか、炎で相手を焼き殺したりとか。まあ、そういうアクションもそれなりにありますが、それが見所ではないと。

   そういう訳ありの美少年兄弟が、どっちがママに愛されていたとか、どうせハーフの俺は能力が低いとか、実は弟は父親が違っていて純血の魔術使い(この作品では「魔法」使いではないらしい)だからママに愛されるのはそっちだとか、ママはぼくをひいきしてたって兄さんは言うけどぼくは父さんにも愛されたかったとか二人して無い物ねだり(しかしながら世界の狭い彼らにとっては死活問題)をして消耗しておるのであります。

   さりながら、ひごろ傷つけあうことも多いとはいえ、苦労してる分ひとのこころの傷に聡い2人は周囲の不思議な事件にもその裏の人々のちいさな悩みを嗅ぎつけて、円満(?)解決にこぎつけたりもするのでした。

   生きてく事は大変よね。という中盤から、彼らのママとその魔術使いの婚約者との間の子であるリド(弟の方)が魔女の世界の最後の純血の魔女であったということが判明してからは、少子化で滅びかけの魔女界を背負わされることになって兄弟は自分たちの運命に立ち向うことになるのでした。

   

魔女は強力な魔力を持つ半面精神が不安定で、ほぼ発狂して終わるという設定がきついです。そして、ハーフは魔力が弱いため、近くの魔女に影響を受けやすいというのも、後出しながら、兄、シドの苦悩を一気に説明してくれています。それがため、シドは母に疎まれたと思って育つわけで、終盤、彼女の残留思念に乗っ取られ大変なことになるわけで。
   逆に、最後の魔女であるリドは、運命から逃げるため? いや、運命に立ち向うための時間を稼ぐために男の子として生まれ、特別扱いを息苦しく思いつつも兄を慕って育ったわけです。

   「たとえ狂っていても、
   母さんに一度も
   抱きしめられずに
   平気な子供なんていないんだよ……」

   末弟エドはエクソシストに保護されて能力を失っていたために、その力を見誤ったシドの過失で死んでしまったのですが(それを偽悪的に殺したと最初言っていた)、使い魔として蘇り、同様に愛憎混沌とした感情でシドをつけねらいますが、最後にはその母を宿したシドがその心を安らげるのでした。ほんと、一気に片が付いたよ。

   そういうわけで魔女の息子達は大きな事をやってのけ、いろいろ一身の秘事も解明されてスッキリ! で一回り大きな男になってまた人間界に帰ってきて、よかったね、という話でした。めでたしめでたし……。

   娘なんかは「ホモ臭かった!」と簡単に言ってますが、ううむ、たしかにこの相互依存の強い兄弟は何だろうと思いつつ、そこまで母親の影響って強いもんか、責任重大だなと読み進めてしまいました。初期短編みたいに、それはあなたの心の闇のさせたことであって、必ずしも魔女の血のさせたことではない、明るい気持ちで日々過ごせば悪いものは近寄ってこないという解釈も嫌いじゃないです。

   奥付を見たら、これが初出はLaLa だったという。言われてみれば、清水玲子みたいな絵だわー。睫毛バサバサで体も骨っぽくて、清潔って言うかもう生き物ですらない、プラスティックでできてるような美少年、栄養もゼリーで採ってて完璧に消化分解して排泄しなさそうってカンジ。いえ、これはこれで堪能しました。

   いい話だったと思ったのに、レンタルだと布教できないのよねー。あと、途中から出版社変わって、掲載誌も色々変わって、最後はWebスピカだった模様。それでレンタルに落ちて。180ページ内外で一冊500円×全九巻。こういう作品の救済ができるならレンタルも良いものです。

   

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