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2013年7月28日 (日)

「ドリフターズ」 ― いざ狂え ―

   「ドリフターズ」平野耕太 僥倖によりて、ノイエ・リリエンベルクのブックオフでお救いしてきました。2巻以降は定価で書店で購入したいと思います。いや、昨日バイトに行くお兄ちゃんに頼んであったんだけど、町田には無かったらしいです。やはり自分で探さないと。

   あらすじは前回書いたけど、関ヶ原で決死の敵前突破を図った島津衆のなか、養父である伯父を脱出させるためにその場に残った島津豊久が異世界に紛れ込むところからはじまる異世界ファンタジーであります。エルフだのドワーフだのが人間の「帝国」に支配されて暮らすファンタジー世界において「漂流者(ドリフター)」と呼ばれる、われわれの「現実社会」から呼ばれて入り込んだ勇者達(主に生死不明、死体の見つからない者)が国盗りをする話であるような。
   その「帝国」も、ドリフターであるところの「国父(=演説と人心掌握のうまいチョビヒゲのあのひと)」が立てた物らしく、エルフやドワーフというもとから世界にいた亜人種を差別し搾取することで社会を構成しているというところがいやらしい。そこに、真っ直ぐな豊久は怒り、根っからいくさ人の信長は野心をかき立てられ、外道(?)な主君のもとで心をすり減らしていたらしい与一は「やらされる戦」ではない主体的な戦というところに魅力を感じて国盗りに突き進んでいくのでした……。根っからいくさびとの彼らは自分を観察する存在に気付き……そして集まる仲間たち。ハンニバル&スキピオとか、ワイルドバンチとか、菅野直とか山口多聞とか、すごすぎる。

   そんでもって、もう一つの勢力、黒王(ひとを癒やす能力があり、食べ物を増やすことができ、そしてかつて人類に裏切られたという「彼」!)を首魁とする「廃棄物(エンズ)」。こちらは恨みを持って死んだ歴史上の人物が呼ばれ、明確に「人間を滅ぼす」ために戦いを挑んできます。最初は帝国を目標にしていたのですが、「ドリフター」たちを保護し、管理する「十月機関」という魔術師たちは、かれらをこの廃棄物への対抗者に仕立てるつもりだったようで。これがまた個性派揃いのドリフターズは言うこと聞かない(笑)。この世界どうなるの?

   誰が呼ばれるか、呼ばれた彼または彼女のこの世界で発揮できる能力の限界はどこまでか。読む方が予習してわくわくできる作品です。

   信長がすごい! この状態で「便所の土掘れ。硫黄調達しろ、それから木炭」と硝石を自作し、黒色火薬の合成に成功するし! 豊久を保護したことでエルフの村がとがめを受けるとすぐに救出に駆け出す豊久、その真っ直ぐな心意気と抜群の攻撃力を冷静に見極めて、豊久を担いで国盗りを始めるし。それが、狂気さえ感じさせる生き生きとした楽しみっぷりで、作者の信長像が伺われます。そうだよな。「女信長」は、結局なにがいけなかったのか総括しないまま来ちゃったけど、いやな男装の麗人の極みだったのが失敗だったと今にして思います。いやいややってる感がものすごく違和感あったと思う。そこが感情移入を排除してたと今になって思いましたよ。信長はいろいろ極端な人だけど、あれはあれで人生楽しんでたと思う。「へうげもの」でもそんな感じ。この作品はとくに際だっていて、そこが読む方に迫ってくるのが魅力だと思いますね。

   それにしても、異世界召喚ものなのにこの順応力の良さはなんだろう

   よいっちゃんなんか片言でもしゃべれるようになってるしさ。
   なにより、初対面で「おれは信長だ」「嘘つけ信長はもう死んでる」と当然ながらかなり危ない喧嘩になるところを、矢をぶち込んで仲裁するよいっちゃんはもう史上最強の天然だと思いますね。そんでもって、
   「羽をばむしり候(そうら)へ」と鳥を出す。
   毒気を抜かれて羽根をむしり出す信長。豊久にも、
   「お手透きか」
   「むしり候へ」って。
   そして3人は黙って羽をむしりつつ頭を冷やすのでした。その鳥はあとでちゃんと丸焼きになってて、火を囲みながら落ち着いて豊久はその辺の事情を語り、信長は受け入れるのでした。
   もう黙っていてもゴハンの出る身分じゃないことを表わす(そして彼らがそれを悟ってすぐ対応する!)いいシーンです。そんでもって、400年の先達者(いやいつ召喚されたのか、その時差は不明だけど)でも、年が19だとこのメンツでは従者の役割になるわけねーとおかあさんは納得。そこは持って生まれた人間としての格なんでしょうか。まあ、あの状態の信長を顎で使える人はそういないな。

   けっこー良い性格してるようなのですが、一巻をさらっと読んだだけでは敬語(そんでもって古語)をつかうきれいなにーちゃんでしかないよいっちゃん(那須与一)でした。いやでも、ページめくった右上段から2段ぶち抜きの大駒で、

   「那須資隆
    与一で

    御座います」

   には魂を抜かれました。美人だし、信長に仕えてるし、お豊じゃなくても森蘭丸と思うだろそこは。そのまんまお豊(豊久)に突っ込まして、
   「だったら良かったんだけどネェー」と信長に答えさせてるところがスゴイ。やっぱそのへんは不自由しておるのか。一応迫っては見たのか(やめなさい)。それを「?」と流す辺り義経主従には衆道の雰囲気はなかったのか、いや歴史的に義経と弁慶はアレだったことになっとるハズだがその辺はよいっちゃんが鈍いのか。いやべつにおかあさんよいっちゃん単体を愛でたいんでかえって相手をあの中で選ぶつもりはないです。純粋に楽しみたい。

   それにしても、戦国時代以降の名乗りのパターンで言うと、姓+通称である数字系の名前若しくは官名というなんちゃって律令官職名+諡という漢字二文字本名になるはずだと思ってたからこの名乗りはちょっと違和感がありました。与一は産まれ順を示す(10+1:11男)幼名・通称なので、間に挟むのがポピュラーなんではないかと愚考。平安の頃はまた作法が違っていたのやも知れません。

   まだ単行本が3巻なので、ゆっくり追いつけそうな気がします。ドリフターズ側もエンズ側も、そして帝国側も歴史の大物が出てくるのでこれは楽しみ。

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