« 「ファイブスター物語」 ― 世にはばかる ― | トップページ | 回帰熱 リーベスリーダー 第2曲 »

2013年4月28日 (日)

メイ曲アルバム 「ここに輝かしい日がはじまって」

   こないだの週末にTVでやっていた「テルマエ・ロマエ」、映画館に見に行けなかったのでありがたく視聴しましたが。確かに、最初はかぶりつきで「1巻のあのエピソードだぜ!」「アレか? 次はアレ来るか?」とゴキゲンだったのですが、オリジナル展開になった後半は下向いてそこら辺のお掃除はじめてたりして。まあいい。
   おかあさんががばーっとTVにかぶりついたのはBGMが変わったとき。
   「ドン・カルロだぜ! よぉーくやった!」
   あの映画なんでBGMどれもこれもオペラからとってきてたんでしょうね?
   確かに壮麗な感覚は近いものがあるかも知れませんけど、この「ドン・カルロ」にしても「蝶々婦人」にしても、じゃあ最後は来るなと思っていた「アイーダ」にしたって、近代の作品じゃないですかよ。アイーダはエジプトの話しだし、時代もローマよりうんと昔だよ(たぶん)。「ドン・カルロ」は無敵艦隊の頃(エリザベス朝としてもざっと徳川家康と同時代)だし、「蝶々夫人」なんか幕末~維新の頃じゃん! ローマ帝国最盛期、チーム・ゴケンテイのセンター、ハドリアヌスの頃からは1000年以上も離れてますよ! 
   ……野暮を言うな。

   それにしても、大昔オペラの合唱曲集のCDで聞いてからわたしの心を燃えたたえせ続けている「ドン・カルロ」の合唱曲、ええと、2幕めだったり3幕めだったりヴァージョンによって違うみたいですけど、異端審問がはじまるぞーって群衆が集まってくる「ここに輝かしい日がはじまって」に久々出会えて嬉しかったです。この曲マイナーでさ。
   オペラの曲の呼び方ってのは、多分頭からの通し番号もあると思いますけど、普通に「何幕何場の誰それのアリア・二重唱・合唱……その他イロイロ」っていう客観的な表現と、「女心の歌」とか、「闘牛士の歌」みたいに、曲に端的なタイトルがついてる場合(超有名な曲ね)と、その曲の出だしをマンマ言っちゃう場合、「恋の悩み知る君は」とか、「思いよ黄金の翼に載って」とかがあります。これは3番目のパターン。一番客観的と思われる何幕何場っていう表現も、オペラは時々編集されたりして幕数変わったりしますんで(この作品がそうだ!)え? このオペラ3幕まであったっけ? とか齟齬を来たすこともありますんで、難しいですね。歌詞で言おうとしても、日本語訳で言っても海外のファンには通じないし。訳者によって微妙に揺れがあるし。うちのお義母様も「それは Voi che sapete?」と原語で聞き返してこられて、こっちは絶句。ほんと悩ましい。

   で、この「ここに輝かしい日がはじまって」は、チャン、チャララン、チャン、チャララン、チャッチャッチャ、チャララ~♪ とファンファーレが鳴り響くなど文字通り輝かしく始まって、それまで「どれもこれもよく解らん……」と眠くなりながら聞いていたまいちゃん@おちこぼれ新入社員の目をこじ開けてくれた名曲なのです。しばらくはこれをカセットテープにダビングしてお目覚めタイマーで流しながら起きていたと思います。うん、スッキリ起きられましたよ。「こ~こにはーじまるー輝くー日はとてもとてもとてもとてもす~てき♪」って適当に歌詞を付けましたが、往年の近藤真彦のようにギンギラギンにはじまって、たゆたうようなメロディを弱い音で唱える部分を経て、抑えつけたパワーをゆっくり盛り上げていってもう一度最初のテーマを繰り返し、次から今度はお坊さんの恐ろしい異端審問の合唱。なんか転べ転べとも言ってるようだし(切支丹じゃあるまいし)。また盛り上がったところで今度はファンファーレのあとお説教パート(これはメロディはなく語り、異端の人々を弾劾しておるらしい)を経て盛り上げ返してまたテーマで三度盛り上がってエンディング(異端の人達は処刑されるらしく連行される)。カッコイイ曲なんですが。なんでマイナーなんだろう。どうマイナーかと具体的に申しますと、たとえばアイーダの「凱旋」、「大行進曲」とも言いますが、ユーチューブを開けて、検索の箱に「アイーダ」と「凱旋」と入れれば、直ちに目指す曲がいろんな指揮者、オペラハウスで引っかかります。ところが、「ドン・カルロ ここに輝かしい日がはじまって」と入れても、「検索の結果はありません」って……。しくしく。「ドン・カルロ 合唱」と入れてもいろいろ二重唱が混ざって現われ、それを取捨選択してやっと引っかけたのがこれ。http://www.youtube.com/watch?v=R9jmAuVAbGQ

    原語のタイトル判ったらそれを入れると次からは簡単かも知れません(クラッシックの検索の裏技)。

    なんでこの曲マイナーなんだろう(後年自分でCD買おうと思ったらもうなかった)と思ってたら判った。このオペラ自体がマイナーなんだよ。

    歌劇「ドンカルロ」はヴェルディ作曲のグランドオペラです。作品№でいくと25って中期ぐらいかな、後期に入るんでしょうか。もともとフランス語台本らしいですがそれじゃ難しいのでイタリア語ヴァージョンもあるとか。原作はシラーさんなら原本じゃドイツ語なの? 向こうの人って語学が堪能じゃないと仕事できませんね。
    なんでマイナーかというと以下調べた上での私見を箇条書き。

    1。純粋に長い。 オリジナルヴァージョンだと5幕、4時間。付き合えません。カットしたヴァージョンがいくつもあって、決定版がないというのもあるかも。
    2。配役が派手すぎて歌手を揃えられない。 オペラってなソプラノとテノールが恋仲で、それに悪玉のメゾソプラノとバリトンが横恋慕して割り込んで悲劇になるもんだそうな。これがまたヴェルちゃん気合い入りすぎて、題名役のカルロ王子に相手はエリザベッタ王妃(親父の後妻)、息子の婚約者を奪ったクソ親父がフェリペ2世の親父の愛人のくせしてカルロに横恋慕するエボリ姫がそれぞれ難しくていい曲を割り振られているので、どれもそこそこの歌手を必要とするらしいんです。「カルメン」はカルメンとホセにエスカミーリョいればいいし(ミカエラなんて一瞬だ!)、「トスカ」なんてトスカとスカなんとか(スカルピアね)さえしっかりしてればいいんだけど、これは4人がフルに大物じゃないと無理。そんでもって異端裁判長なんてじいさんも必要だし、カルロの親友がまたいい役だし、この派手な合唱を支える群衆役も数必要だ!
    ……マネジャーさんの苦労が知れるよ。
    3。宗教的にヤバイらしい。 フェリペ2世の頃のスペインって、アレよ、宗教戦争。勝ったもんの歴史観から語りますと、スペインはインジュンコソクな旧教国ということになっております。カソリック教会なんかに牛耳られておる「遅れた」、真面目な新教徒の商工業者を弾圧する「悪」の大帝国。フェリペ2世はその親玉。どうりで息子の婚約者を奪ったうえに二股。最低。いやそうじゃなく。世界史的にもフランドルとか、ネーデルラントとかの新教を信じる住民の多い領地を差別して弾圧したことになっております。そういう嫌な親父を描くにあたって、作中も「たとえ王でも教会の権威には逆らえない!」とか坊さんに絶叫させてます。
    なんか、この辺? 初演の時ナポレオン三世の奥方が遺憾の意を表して退席したらしいですな。これは、セレブとしてはアリな対応みたいです。当時はツィッターも試写会のあとのワイドショウ向けのインタビューもありませんから、「この作品糞だわ」と思った場合、セレブは途中で退席するのがお作法だったみたいよ。他の作品でも、ウィキペディアとか、別のメディアででも調べると、「貴婦人が退席するということがあった」ってスキャンダルの記録がありますから。……まああのひと(ウジェニー皇后)お里がスペインらしいし。
    4。物語として意味不明。 これが大きいと思う。わたしバブルの頃NHKBSオペラアワーでこれ眠い目擦りながら見てましたが、最後、カルロ王子謀反の罪を着せられ処刑寸前、エリザベッタが隠れて会いに来て、「2人の恋はあの世で結ばれる」と涙の別れをしていて(なんか「アイーダ」と被ってるんですけど)と思ってたら、墓がぱっくり割れて、ご先祖様の霊が出てきてカルロを墓に連れ込んで終わっちゃった! なにこのスペクタクル! 笑えばいいの? 糞親父に制裁は!? 納得行かん!

    ……書いてきたらこれは受けなくて当然って気がしてきました。ご先祖様の霊が進退窮まったカルロを神隠しにして、どこか遠くでこっそりフランドルの民のために活躍できるようにしてくれたんならまだいいけど……(「サラディナーサ」河惣益巳のアウストリア公ドン・ファンのエピソードはこれに拠っているらしい?)どうもそういうんでもないらしくて。「ドン・ジョヴァンニ」のラストの、ドン・ジョヴァンニが騎士団長に地獄に連れ去られるようなもんで、トラブルメイカーはあの世に去ったよ、めでたしめでたし……てな感じなのかも、酷すぎる。

    ……オペラの傑作って、天の時地の利人の輪じゃないけど、いろいろ揃わないと成立しないもんなんですね。そこんとこが、「カルメン」や「トスカ」と「ドン・カルロ」やその他マイナー作品との差なんでしょうか。
    でも、「ここに輝かしい日がはじまって」はいい曲(異端のやつには死の裁きをって言ってるかもだけど)ですから、これだけでも聞いてみませんか?

|

« 「ファイブスター物語」 ― 世にはばかる ― | トップページ | 回帰熱 リーベスリーダー 第2曲 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/138427/57265929

この記事へのトラックバック一覧です: メイ曲アルバム 「ここに輝かしい日がはじまって」:

« 「ファイブスター物語」 ― 世にはばかる ― | トップページ | 回帰熱 リーベスリーダー 第2曲 »