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2013年2月15日 (金)

「謎解きはディナーのあとで 2」 なかなかやりおる

   「謎ディナ」は東川作品の中ではつまらない方なんて書いたおかあさんですが。

   甘高の図書館で借りてきた2巻を読んでみたら、やっぱり面白かったのでした。

   まあねーあの赤い宝石のお嬢さんは誰ってやつは、もうネックレスの描写が出てきただけで、あのネタで来るなーってのが解るぐらい見え見えでしたけどね。それに絡ませてた、人間関係ってやつの認識の細かさが(そういえば、最初のシリーズでも人間関係で同様に誤認させるやつがあった)目から鱗というか、そういわれればそうよねーって膝ポンなナットクリョク(人を納得させる論理の展開、物語の力)がありました。

   そういう安楽椅子探偵な面白さは変わって無くて。

   読んでて思ったんですけど、東川作品は、脇を支えるディーテイルの描写が楽しくも細かいですよね。ユーモラスな線は外していないながらも、「謎ディナ」で言うならお嬢様のスタイルが、具体的ブランド名をちりばめるワケじゃなく、でもああ、ステキなお洋服をお召しなのねとか、風祭警部は残念なお坊ちゃんなわけねとイメィジがちゃんと浮かび上がります。
   これが、友に隠れて探偵小説読みながら東大出て公務員になったような昭和のおじさんミステリ作家だと、ミステリとしての根幹は論理的で圧倒的でカタルシスもある作品なんだけれども、残念ながらヒロインがただのお飾りだったりして、残念どころかオイオイと突っ込みたかったりするのでした。

   具体的に言うとだね。大学の頃読みあさったような斎藤栄だと、
   「ショートカットとセミロングの中間のような髪型」とか書いてある。おいおい。そりゃレングス(髪の長さ)であって髪型じゃないよ。その髪の長さでも、まっすぐおとなしめにおかっぱ(ボブ)にしてたり、その年なりの流行のスタイルにセットしてたりいろいろあるじゃん。ボブだって、クラシカルなボブでお嬢さんスタイルとか、モードなボブでモデルさんみたいな可能性だってあるよ? 装いの描写と言い、頭がよくて快活な美人の感じと伝えたかったのかも知れないけれど、もう少し努力してください、あなたの本領であるところの大胆かつ緻密な暗号トリックに割く分のほんの少しでいいから。って、いちいち覚えてんのかよ、覚えてました、それくらい衝撃的だったから。

   由良三郎になるともっとひどい
   ちょっとファム・ファタールなカンジの美人看護婦が誘いを掛けてくるシーンで、「髪油がぷーんと匂った」って、ねえ、これ昭和60年代よ!? あなたのお育ちになった環境では色っぽいおねえさんはそういう感じだったかも知れませんが、もう少し若い人間にも魅力的に感じるように書いてくださいよ!
   でも、このひとの得意とする大学医学部内のネタとか、クラッシックネタ、それから、男女の微妙なところとかは非常にナットクリョクを感じたので、気に入って作品はだいたい読んだんだけどさ(もう現役は引退されたのであろうか、心配)。

   風俗を反映させつつ、読者層にも解るように魅力的なヒロインを描き出すのはなかなか難しいようです。

   「翔んでる警視」の胡桃沢耕史になると、作風もあってか、「松板慶子さんみたい」「夏目雅子さんみたい」とハッキリ言っちゃって、ヒロインそれぞれの美貌を表現しちゃってる。でも、それだけでなく、会津の出で真面目で融通が利かない女性警官と、頭の回転が速くってお茶目な女性警官をそれぞれ生き生き書き分けてる。うまいです。バブルの入り口で、まだブランドにも疎かった読者に、「ゲルベゾルテ」という煙草とか、大きなダイヤモンドを(カラットという単位ではなく)「1キャラ」とか言っちゃう感じ、「アメックスのゴールドカード」という無敵の小道具でなんだか解らないけど一流なんだなと納得させていました。

   ここで漫画の話を出して恐縮ですが、「ファイブスター物語」の永野護も、バブル期のSF的作品にいきなり遊び人の騎士がブルガリの時計をしてる描写があって、こっちはそんなもん見たこともなくて、もしかして多分に漫画家の自己満足だったかもしれませんが(この世界にもブルガリやBMWはあるの! と欄外に書いてあった……?)、そういう世界観というか心意気は作品に溢れてましたね。やっぱ、神は細部に宿る?

   バブルを経て読者も書く方もブランドに詳しくなっちゃうと、もっとお金持ちや美人の描写も簡単にピンポイントになっていくんでしょうか。そういえば、「犯人に告ぐ」でしたっけ、主人公が劇場型捜査に乗り出すと言って小田急でブランドのスーツを買うってのが、なんともぴったり来てましたとここにも書いた覚えがあります。

   そんなのと比べると、東川作品は必要十分なんじゃないですかね。やっぱ、ユーモアミステリは評価されにくいって事に帰ってきますかね。

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コメント

 ちょっと調べたら由良三郎もう亡くなられてました。あと、女性描写のみならず言葉の選び方が古いって指摘もいろいろ。クラッシック・ファンとしての当時のあるあるが懐かしいんだそうで。そういう昭和の古めかしい感覚を楽しむ意味で史料になる作品かも知れません、かえって。

投稿: まいね | 2013年2月15日 (金) 03時12分

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