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2012年11月 2日 (金)

遠いどこか別の世界で

   3年ぶりの新刊という「三千世界の鴉を殺し」を読んでいたら、主人公のパパ上のヒドイ性格を表す文句が出ていました。

   「親父の他人に対する認識はほぼ3パターンに当てはまる。遠くで幸せになっても構わない人間、遠くでも不幸になればいいと思った人間、そして、目の前で不幸になれば嬉しいと思っている人間」

   これはひどい。

   世界を滅ぼすことができるほどの人間の身には過ぎた超能力を持って生まれた父子ならではの感覚なんですが、これは現実世界にいないことが判明している「2次元のキャラクター」だから許せる発言だなあ。まあ、そう思うのもむべなるかなという生まれとお育ちなんですけどね、お父様の方は。「超人」を創り出そうという人体実験みたいなDNA操作の上で誕生した子供だったような。そんで、軍に権力を持つ根性の曲がった超能力者に囲まれて育てばねえ。本人も、その曲がった根性と文字通り星をも砕く超能力を活かして軍の情報部で出世して、ほぼ同等の力を持つひとと巡り会ってとんでもねえ友情と愛情とどうしようもない憎しみをぶつけ合った果てに子供を儲けるわけですが。

   わたしは彼(父の方)に丸くなって欲しいよ。子供ができてもその子が大きく育って恋をしようという年になっても全然独善的なところは変ってないのか。

   そうでないとこの世に愛の存在する意味が無いじゃないか(今自分をすんげえロマンチストと再認識しました)。

   あまりのことに我が子にこの節を読み上げて反応を期待したのですが、
   「えーあたし解るなその気持ち」って!
   「そんな恐ろしいことを考えてはいかん! 敢えて言うなら、
    目の前で幸せになって欲しいひとと、
    どこか遠くででも幸せでいてくれたらいいひとと、
    どこか遠くでもしかして幸せになっていたとしても構わないかなあというひとだろう!」

   「おかあさんカッコつけすぎ」
   「何を言う! たとえ常々コンチクショウと思わされてきた人間であっても、そいつの不幸せを積極的に願うなんて人間が汚れた気がするではないか!」
   あー自分に関わりのない犯罪者とかは、こんなやつは死刑になれと常々申しておるかも知れませんが。
   おかあさん怒濤のスルースキルがあるので、一瞬すっごく怒ったりへこんだりしても、ひとたびお家に帰ってお気に入りの漫画や小説を手に取ればそれはもうどーでも良くなってしまうのよね。それがこの年まで生きてこられた秘訣。わたしにとって他人はそこまでも自分に食い込んでこないです、ごめん。

   そういえば、似たようなシチュエーションで全く逆のことを言っていたキャラクターがいました。とってもささやかな超能力者で、むしろ、超天才児。小学生にしてアメリカの軍の天才児研究施設にスカウトされ、軍の基地に忍び込んでジェット戦闘機乗っ取って飛ばすとかそういう悪戯しちゃうような。
   「パーム」の、ジェームズ・ブライアン。
   彼だって、望まれない生まれをして、養父(ガチで遺伝上も父だった)からネグレクトを受け、その仕事のとばっちりで誘拐され殺されかけてからの怒濤のサヴァイヴァルの末に80年代アメリカ西海岸でやっとホッとする日常を掴んだんですよ。彼の人間観はこうです。

   「嫌いな人間はいない。一緒にいられない人間がいるだけだ」

   かれは母を死なせて生まれてきて、父に嫌悪されて無視されて育ってきたけれど、乳母が真っ直ぐな愛情を注いでくれていたから、国の行方を左右するような恐ろしい頭脳と美しい肢体、優れた身体能力を持ちながら、素朴で温かな精神を持ち続けることができたのでしょう。本人は常々「自分は牧歌的な人間だ」と申しております。どれだけ真実の自分を見てもらえなくて哀しい思いをしようと、自分をめぐって幾多の血が流され、善意/悪意を問わず命が奪われようとも、世界の平安と善意の人々の幸せを願い続ける善良さがかれの精神の根底に変らず息づいているのでした。それこそいまのわたし達とは別世界の、「2次元のキャラクター」ならではの存在でありますが。

   彼の人生と同じ道を歩みたいとは思わないけれど、彼の精神を美しいと感じ、彼のようにありたいとは願います。

   だからわたしは思います。思うようにしたいです。

   「遠いどこか別の世界で、幸せになっていて欲しい人はいます」

   まあそれは負け惜しみで。そのひとに、目の前で幸せそうにしていられると、ちょっといろいろ考えちゃって性格歪みそう、目の前はやめてね、っていう裏の意味はあります。ごめん、口ほどにもなくて。

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