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2012年11月17日 (土)

名香智子ミステリの世界

   気分が滅入ったときには好きなものを読んで気分転換しよう。

   名香智子はゴージャスな世界をコミカルに描いて昔から独自世界を創っている人ですが、なんといってもその華麗な絵柄とドライな感覚がレディース・コミックのミステリにジャスト・フィット。細かいトリックとか、アリバイがどうとかではなく、ふつうに泥酔した人を冬の夜放置したり、泥酔して風呂にはいるような人をかっとなって沈めたりとかでレディや美少女が簡単に人を殺してます。
   見るべき所は、その華麗な絵柄もさることながら、どんでん返しの巧みさですね。

   ネタバレありますから注意。

   とある作品では、大金持ちの家に下宿している美少女が、そこのうちのお嬢様の取り巻きと恋に落ちる。取り巻きはわりと地味な生活をしている秀才で、顔で取り巻きに加えられたが、お嬢様のお育ちの良さから来るぶっ飛んだ感性についてゆけず、かえって庶民派同士ヒロインと意気投合したという筋の運び。ここまではシンデレラ的少女漫画の夢の展開に見えたが、それは、彼女がそこのうちの隠し子であることを知っての巧妙なお家乗っ取り作戦だった……! 
   お嬢様が過去にそのぶっ飛んだ感性(しかし正義感)でひとを破滅させていたことが分かり、その縁者の復讐劇が物語の裏で進行する。お嬢様は謎の復讐犯に殺され、うちに子どもがいなくなったから、とヒロインはその家の相続者として迎えられる。ヒロインとさわやか~なできちゃった結婚(あるかそんなもの! そう言われれば後で気付く)をしていたその取り巻きは晴れてお婿様として会社の経営も任される……? それに気付いたヒロインの反撃が見事。

   一応美少女の範疇とはいえ、登場時「身よりなく父親の友人の家にご厚意で住ませて貰っている」可哀相な少女だった彼女が最後に強かに勝ち残ったあたり、美形ながら素朴な感性を持っていた秀才と見えた取り巻きが野心のためにひとを操っていたという意外性、そうして、ひとの心を全くなんとも思っていないお金持ちのありがちな我が儘娘と見えたお嬢様がじつは登場人物中一番まともで心温かだったというどんでん返しにあっと言わされます。まさか、いや、まさかの連続。そこは名人芸なので飽きることがありません

   範疇としてはサスペンスなのかな、謎を呼ぶ展開にハラハラさせられて、オチにはあっといわされ、そして、女というものの底深い恐ろしさを感じさせる名作群であります。ほんと、線の細い美少女が、「でもそんなのわたしのこの不幸に比べたらたいしたことじゃない」とかあっさり大量殺人をほのめかしたりする恐ろしさよ。そんなに血が流れたり恐ろしい暴力があったりもしませんが、しみじみコワイお話ぞろいであります。

   傑作選とか、文庫になっておりますし、レンタルコミックでも出ています。どこからでもお試しあれ。

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