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2012年9月14日 (金)

「がっぴに!」 立て万国のPTA!

   事の起こりはえーと今年の春くらいだったんじゃないでしょうか、この本奥付に発行年月日がねえよ、それくらい酷い本(言ったよ!)。
   プランタン出版ティアラ文庫「8月10日を楽しみに」。
   お小遣いを持って麓に買い物に行った虎美が、
   「野梨原先生の新作あったー!」というので、良かったねと応じたら、
   「でもなんか知らない出版社でエロだった!」と半べそ。
   「なんじゃそりゃ! 読んではいかん! 18禁と書いてあったのか?」
   「ううんでも、そういうシーン飛ばして読んだらやっぱり世界観が野梨原先生だった」ってさ。おかあさんもどうぞと言われて、母がそんなものを読むかと却下した記憶が。

   そして、、今週また、
   「れいの野梨原先生のエロの話、続きが出てた。まさか続篇が出るはずないと思ってたのに、辛うじて続いてた」って!
   で、
   「やっぱりエロかったけど我慢して読んだらほんと良かったから!」って、虎美押しつけていきやがりました。エロいと自分で認識したものを母にも読ませようという感覚がわからん。

   読みました。
   こりゃ凄い。
   のっけからラヴシーンです。濃いです。愛し合う恋人達が「熱く湿った陰部」やらから「とろりと蜜が零れ」るようなことをしております。登場人物の説明もその世界観とやらもガン無視でヤっております。そんでもって、可愛らしい挿絵が付いています。ええもう、2人とも服着てないのが。
   「こんなものを年頃の娘が読んではいかーん!」おかあさん絶叫。
   「我慢して読み進めて!」
   虎美は悲鳴。

   これはほんとに掴みが凄いな。何気なく手に取ったお嬢さんはここんところで、もうドキドキ、先が読みたいけど、こんなの公衆の面前で読む訳にもいかなくて、これはお家に帰ってひとりで自分のベッドで読まなくちゃとお買い上げになるんだな。

   野梨原先生プロフェッショナル過ぎ。

   たしかに、この世界観はファンタジーにそこはかとなくエロスなものを融合させていて面白い。
   「進撃の巨人みたいなところもあるでしょ」って虎美、いやーそれは褒めすぎででしょ。

   突如謎の生命体の襲撃を受けて人口の半分を溶かされた小国ヴァライは、周囲の国から援助の代わりに国境閉鎖を宣言されて、ただ死に怯える日々。ただ、第1作のヒロイン、エローラだけが対処法を知り、彼女の活躍でなんとか敵の侵攻を食い止めています。そして彼女は宣言します。「9年後の8月10日に敵は消滅します!」その日を耐えて待とうと。それが第1作「8月10日を楽しみに」
   「救国の大天使」に祭り上げられてしまいながら日々戦いに身をすり減らしていたエローラと、エローラ以外に敵を屠ることのできる能力を発見され、彼女の元に配属された王子ヴァーツラフが恋に落ちるのが「8月10日を楽しみに」なんですが。
   ハッピーエンドの後、その9年後の国境閉鎖解除の調査のために訪れた隣国の伯爵と、その接待役に指名されたエッティラとの恋が第2作「8月10日が待ち遠しい!」なわけで。

   タイトルの横に、「守護天使(巨乳でチビ)と王子(イヤミで口が悪い)」とか、「才媛(眼鏡クールストーカー気味と隣国の貴族(腹黒笑顔伯爵)とか、カップルのスペックをマンマ示して、ただそういう組み合わせのシチュエーションをどうぞ楽しんでくださいと言ってるようで浅くてイヤッ! このレーベルは、巻末に載ってる広告も全て、「こういうシチュエーションでこういう2人の恋っていうかエロです」とうたっているカンジでほんとイヤになる!
   野梨原さんも遊んでるって言うか荒んでるって言うか。  
   ヒロインの名前が「エロ様」(エローラの愛称)に「エッテ(チ)ィラ」だもんな。わかっててやってるでしょ? まあ、エローラはふつうにヨーロッパならありそうだし、アッティラってのも世界史には(フン族だけど)いたから、そこまで違和感のある悪意あるネーミングではない、ギリギリ綺麗で可愛らしい名前だと思うけど……でもやっぱエロでエッティーなわけよね。

   えーと、文面が白いです。野梨原さんは「ちょー」シリーズでは架空の世界の国々をさまざまに描き出してくれていたひとで、そんな、会話文だけで話を持っていったりするようなひとじゃなくて、この「がっぴに(シリーズ名。なんでもひらがな4文字にするのが当世のお作法)」でも、氷に閉ざされたヴァライの冬の街角、宮廷の人間関係を全て把握しているおっかない貴婦人、みんな心にすっと入り込む巧みな描写をしてくれていますが、……いかんせんなんというか、若者の恋事情が中心で。そこはそれ、流石野梨原さんという胸に迫る片恋描写で、そりゃ読んで損はないですよ、ホント面白かったですよ? でも、コバルトより読書馴れしてないお嬢さん向けにしてるなー感がありました。

   でも官能描写もあの、乙女向けにワクドキの範疇でしっかりしていて、濃くって、まあどうしましょう。こんな嬉しはずかしの初体験ホントにできたらはまってセックスのことしか考えられなくなるわよ、キケン! いや世の中そんな甘くねえよ。初体験同士で初夜でお互い3回ずつイったりするかバカ、ごめんおかあさんオバサンで。そんでもって、そういう官能シーンが作劇上重要なシーンに結びついているので丸ごと飛ばすわけにもイカンのですよ。敵に乗っ取られた元カレが誘惑してきたりしてハラハラドキドキして、寸止めで、ホッとしたりちょっと残念だったり……ごほんごほん。

   これがBLものだと、使ってる器官がてめえのものとは違うからそこんとこがファンタジーで、ああそういうこともあろうかとか(ねーよ!)甘い夢を見られることでしょうが、ものが男女のラヴシーンだと、ホントもこんなに素敵なものと思ってしまうんじゃないかと(おもわねーよと読者達は言うだろうけど)かえって心配

   乙女はこんなの読んじゃいけませんです! 立て全国のPTA! 可愛い少女小説の振りをして未成年にこんなもんを売っちゃイカン! 

   そんでもって、作者さんが野梨原さんというのが!
   虎美が引っかかったように、人気のシリーズを過去に持っていた少女小説家を起用するというのがもう許せない! 野梨原さんお願い仕事選んで(号泣)!
   「キャンディ キャンディ」読んで大きくなったような乙女が、久し振りに書店でいがらしゆみこの名前を見つけて買ってみたらごく濃いレディース・コミックだったと思ってみてくださいよ! そりゃびっくりするでしょうよ! 

   「どうよ? やっぱり面白かったでしょ?」と、どや顔をしてひとの周りをうろうろする虎美には個人的に焼きを入れるとして、わたしはやっぱりこの出版社をゆるせませんです。

   でも、悔しい! 面白かった! そんで、……官能シーンはぽーっとなった。ちくしょう。

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