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2012年6月20日 (水)

「銀河のワールドカップ」 ここにあり

   ええと、れいのNHKのサッカーアニメ「銀河へキックオフ!!」の原作小説。
   虎美の学校の図書室に入れてもらったそうで。……神奈川県立甘木高校最高。その他、「恥パー(恥知らずのパープルヘイズ)」や「THE BOOK」など最近のジョジョ本(「ジョジョの奇妙な冒険」の世界観によるプロ小説家の本)なども入っているというからそれ系のリクエストにはすぐ応えてくれるようです。

   ざっと読んでみましたが、これは、コーチ花島勝視点で、失業して飲んだくれてる彼が三つ子の悪魔と出会ってサッカー・コーチに復帰、彼らの野望に付き合ううちに彼も自分の心と向き合い現役復帰するまでを描いていまして。
   主人公オトナじゃん。
   そりゃライトノベルじゃないよな(原作は「銀河のワールドカップ」川端裕人、レーベルは集英社文庫というからアニメの原作なのにラノベじゃないの? と不審に思ってたけど)。初出は小説すばるだったようです。そりゃホントに大人向けだ。

   「銀河」とついてるから、なんかえすえふな展開になるのかと思ったら、別に宇宙人とかは出てこなくて、リアル世界の「宇宙人」のようなファンタジスタ達、あのスペインの有名チームをモデルとした架空のチームのレギュラーに戦いを挑むというところから来ているようです。いえいえ、最初の方は彼らもそれを見果てぬ夢としていて、「日本一? 世界一? ううん、宇宙狙っちゃおう、銀河一とか」ってノリだったのですが。ホントにやるとは思わなかった。フランス人の名プレイヤーの名前がゼットンってなによ、ウルトラマンか。まさかジダンのことじゃないだろうな。
   勝ちゃん自分がオトナの言うこと聞かないプレイヤーだったから、コーチとしての挫折の反省もあり、悪魔はじめ肉食獣(プレデター)ちゃんたちの個性を尊重する指導をして、彼らに銀河に挑ませることができるようになるというのが面白い展開でした。ってゆーか、一緒に成長してます。彼らは心身ともに成長著しい年頃なので、いろいろつまずきながらもそれを自分たちで乗り越えて、やや勝ちゃん引きずられるかたちで銀河に連れてってもらうんですよね。うん、軍師は竜持、三つ子のグリーン、慇懃無礼策士くん。
   そういう、個性を尊重して、自分を活かせる、相手の得意なところを発揮させない土俵を慎重に設定すれば、サッカーという競技なら十分オトナと渡り合える、そういう持って行き方は目から鱗で、爽快でした。うん、必殺技も化身もなしでね。リアルはそうなんだよ。そして、オトナがコドモを導いて成長させる、んじゃなく、オトナもコドモもいろいろ考えながら本気で渡り合って、物語の終わりには問題を自分で乗り越えてる、というところが新しいと見ました。
   いやーわたしうちの子が野球始めたとき、野球の方ができない子ちゃんに親切って言っちゃったけどか。サッカーは(とくに初心者団子サッカーのときは)巧い子しかボール触れないって。
   この作品では、へたっぴなレイカや翔でも活躍できてるもんね(そこは、ボールが来るところがわかるゲーム感覚や、俯瞰で試合を見られて指示を出せる戦術眼? があるからだけど)。

   サッカーの試合描写は熱い感じでした(解説によればそこも売りらしい)が、ごめん急いでたからその辺流し読みでした。

   アニメの方では思春期入りかけ少年少女の交流を期待させているようですが(わたしがネットで触れるファンは期待しまくっている)、原作中ではなかったですね(ハッキリ)。
   スピードスターのエリカちゃんはれいの日西合作のゴンちゃんに一目惚れで結構アプローチしてる感じだけど、基本の視点がコーチなのでその辺は狂おしいほどの内面描写はないです。異性としてより、選手として惚れ込んでる感じだし。まあ、終盤かれのプライヴェイトにお節介はするけどね。
   お嬢様のレイカちゃんの恋心は……ザ ・ マ ・ ミ ・ ロ !(ネタばれ自粛)
   あの年頃の女の子ならそっちだよなあ。
   かえってコーチと恋人の杏子ちゃんの関係が、抱いたとかその気にならないとかやや生々しかったですかね。まあ、そこらへんは「すばる」だから。虎美に見せられない! レヴェルじゃあなかったです。

   そういうことで、アニメはよく少年少女向けに換骨奪胎したなあという感じ。イヤまだ終わってないけど。原作の方は、いい青春小説でした。うん。青春小説ここに在り。よかった。

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コメント

 あと、この作品での「敵」は、相手チームの天才プレイヤーじゃあなく、そのチームの指導者だったりします。竜持の得意技、「相手の心を削って点も入るお得なシュート」:自殺点ねらいのトリックプレイをコドモらしくないと難癖を付けてくるわりに、自分は大きな声で高圧的な指示をゲームの最中出していたり。連帯責任を取らせたり、プレイヤーを一個の人間として尊重しないものいいとか、サッカーに限らず昔の指導者にありがちな姿勢をこの作品では批判しています。
 そうだよね。
 イナイレの敵指導者のように、あからさまに命を狙ってきたり(交通事故を仕組んだり、スタジアムのてっぺんから鉄骨を降らせたり!)、ドーピングを強要したりはしませんが、地味に少年少女達の自尊心や独立心を削ってると思います。それは、いくら結果をだせて彼らに成功をもたらすとしてもいけないことなんだよと小さな声ながらはっきり言うのはいいことでしょう。
 「サッカーってのはなんだ?」という問いに、銀河一のチームのブラジル人選手さえ答えられなかったというオチが秀逸。少年達に上手をいかれて「営業」続きで調整不足な超一流のはずのかれらがラフプレイをしはじめるあたりのレイカちゃんの批判が小気味よかった。作者なりの現代クラブサッカーに対する批判なのかも。
 そして、三つ子の進路も、意外だけど納得。きみたちはまだティーンになりたてなんです。一生3人組で生きていかなくってもよろしい。サッカーしか知らない人生もどうかとおもうよ。サラブレッド3兄弟としては期待が大きすぎて重い、なら早いうちに天下取っておくかっていう竜持くんのモチヴェーションには脱帽。

投稿: まいね | 2012年6月20日 (水) 13時21分

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