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2012年6月22日 (金)

骨までしゃぶり尽くすハーレクィン2 「愛を捨てた理由」

   例によって今回更新のハーレクィンのレンタルコミックがなかなか面白かったので。
   「愛を捨てた理由」作はペニー・ジョーダン、画はJET。
   JETさんは、講読してた雑誌の読者コーナーを担当してたこともあり、その別冊でエッセイ漫画を連載してたこともあり、近しい感じを勝手に抱いてますが、漫画家としてのホームグラウンドはなんというかポオとかドイル系の海外ミステリややゴシック入ってる系のようです。骨太でチェストのある男性がお上手。彫りも深く、美形というよりハンサム・ガイと呼びたい黒髪オールバック系が得意かな、そう思うと、ハーレクィンに向いてる、向いてる。日本女性の一般的好みから言って、これはもしかして原作では胸毛も想定してるだろうという男臭いヒーローでも、ハーレクィン・コミックではそういうの一切描かれてないですが、ことこのJETさんの絵柄ならあっても許せる感じです。それくらい、バタ臭い

   そのバタ臭いJETさんの画でどういうストーリーかというと、公式からあらすじをもってくるとこう→

> 新社長の姿を見てケイトは我が目を疑った。5年前、他に女性ができたと告げて彼女のもとを去った元夫のショーンだったのだ!

   ハーレクィンのパターンでいうと、「元彼(夫)が上司となって現われて思わぬ再会!」系です。結構これはあります。だいたいが、過去に説明責任を果たさず振られているので、ヒロインは大ダメージを負ってます。そして、往々にしてそういうときは妊娠もしてるので、「シークレットベビー」タグも付きます。ヒロインがひとり、事情のある子供を育ててる系です。これは自分の子に限らず、双子の姉のだったり、奔放な従姉のだったりしますが、今回は自分(と元夫)の子。

   ヒロイン・ケイトは結婚早々夫に「自分は結婚に向いてないと解った」と離婚を切り出され、その後で生まれた息子オリヴァーを女手1つで育てているけなげなシングル・マザー。けなげも行きすぎてやや過労気味です。オリヴァーは「ぼくんちが犬を飼えないのはパパがいなくて貧乏だから?」なんてクリティカルなことを聞いてきて、もう思考回路はショート寸前。そこへ新しく会社を買収して代わった社長がその元夫ショーンが現われます。これ以上傷付きたくない、とばかりにその日のうちに辞表を出したのですが、ケイト優秀すぎて、こんな経理責任者を失ってはこの会社を買った意味がない、とショーン社長うちにまで慰留に来やがる。
   そこで、質素な家のリヴィングでひとり(ショーンに別れを告げられた)悪夢に涙するケイトの姿に、ショーンは愛の再燃を痛感するのでした!
   未練あるんだよ! クソ社長まだケイトのこと好きなんだよ!
   じゃあなんで離婚したんだよとこの物語の謎を押し出しながら、2人は激しく求め合います……って、寸止め。ハーレクィンはこの辺が長い。原作だと、キスだけで3ページぐらい使ってると思う。いかに自分が昂ぶっているか、しかしながらそれをプライドやらトラウマやらで認められない……ってのを男女とも(そこはその物語による)これでもかと出してきます。今回も、自分からショーンの首に腕を絡めたところでオリヴァー帰って来ちゃった。

   息子、空気読め!

   ところが、ちょっと神経質で人見知りなオリヴァーが、
   「おじちゃんご本読んで」と彼のジャケットの裾を掴んで離さないという驚くべき積極性を見せるのです! 
   やっぱり血は水よりも濃いのか!?
   ここんとこが絵師の見せ場で、ちゃんとオリヴァーはショーンそっくりの黒髪、ウェイヴのある髪に描いてあります。
   養護施設育ちで温かい家庭に憧れていたというショーンは、つい絆されて、オリヴァーが寝付くまで絵本の読み聞かせを買って出てくれるのでした。
   子供に温かい気持ちを持つことができたショーン、しかし、それが愛するケイトの子であるということはともかく、ケイトが他の男性との間になした子ということに心を乱されておるようです。じゃあ子供が嫌いだから結婚生活に向いてない、わけじゃないよね……?

   ケイトは離婚の傷で心を閉ざすばかりなのに、ショーンは狂おしくケイトを求める、その逃げれば追う構造に、ナイスなイヴェントが起こります。
   過労のケイトがオリヴァーともどもインフルエンザで倒れるのです。医者は3週間の休養を求めます(正しく空気読んだ医者だ!)
   ここんとこが伏線といいナイス!
   社長として、元夫として、ショーンは2人を看護し、仕事をしながら面倒を見るためには会社に近い方がいい、とばかりに彼女たちを引き取ってしまうのです。彼女が結婚したての頃憧れていた館を買って! よかったね、犬も飼えるよ!
   社長正しいお金の使い方をしてますな。今まで読んだハーレクィン物のヒーローで一番正しいお金の使い方かもしれん。
   しかし、そんな5,6年前の憧れをちゃんと覚えてるなんてどんだけ惚れてたんや
   それだけ惚れてたんです。彼にとって、ケイトはほんとの心の灯火、誰より大切にしたい相手だった。だからこそ別れざるをえなかった。だから、再会してすぐ燃上がった。ここんとこがもう最高にしびれました。

   ケイトの方はもう逃げる気満々。ところがオリヴァーは軽くてすぐ回復して、ケイトが寝込んでる間にどんどんショーンと心を通わせて、
   「ママと同じベッドで寝てもいいよ。でも、ぼくも入れてね」とまで言うに及んで、親の方がもう照れちゃう。
   しかしながら、ショーンが「オリヴァーの父親は?」と問いただすと、また2人はケンカになります。あなたの実子というのになぜ認めないの、自分の子と言うことはありえない、オリヴァーを身ごもったのが自分との結婚期間中だったにしてもそれは許すと言っているのになぜホントのことを言わないのか、2人は決定的に擦れ違うのですが……やっぱ子はカスガイだなあ。オリヴァーかわいさにショーンは求婚し(イヤその前にベッドインがあるのだが)、オリヴァーのためにケイトはそれを受けます。
   やっぱりこの物語の救いはショーンがちゃんとした男だったことですね。
   ちゃんと教会で再婚式するんだもんな、ドレス着て、前の社長やお隣さんや息子の前で。
   そして、オリヴァーを正式に養子とする段になって、決定的な秘密をかれは口にするのです。
   「僕に子供が作れないからといって」
   彼はほんとちゃんとした男でした。結婚にあたって生殖能力のチェックまでしたところが、「あなたに子供ができる可能性はまずない」「子供は諦められた方が」って。それで、孤独な人生で身を寄せ合うように愛し合った2人、子供の多い幸せな家庭を作るんだと誓い合った愛する女性の幸せのために何も言わず身を引いたんでした……。でもそれなら式を挙げる前にやっとけよ。

   カッコイイよ! 最高の男だ、ショーン……?

   でもそれでケイト最高に傷付いたんだけどね。
   悩ましいところです。これこれこうで、きみに家族を作ってあげられないからと言ったら、優しいケイトはじゃあ子供は要らないって言ってくれるだろうと思ってのことだったんだろうけど……やっぱカッコつけすぎだったかなあ。

   「オリヴァーの父親」に嫉妬して逆上してケイトを組み敷きながら、
   「……僕は 何をしているんだ……」と涙を零すショーンの顔は最高に美しかったです。やっぱ男性不妊は男のプライドを根こそぎにするって言うからなあ。かわいそ。

   そんでもってカスガイくん登場。正しく空気読んでます。
   「ケンカするママもパパも嫌いだ!」と飛び出していく、そこへトラック! やっぱりちゃんとしてるショーンは父として彼を庇ってはねられます!

   幸いにもたいした怪我ではなく、彼が寝込んでる間にしたDNA鑑定で彼らの父子関係は証明され、ハッピーエンドが彼らを待っています。

   ほんと、この方面は奇跡っていうか人智を超えとるらしいし。お悩みの方もいろいろとおられるでしょうが、努力ばっかりしないでください。「頑張」らないでね。大切なパートナーと自分の人生を豊かにすることをまず考えてください。子供ができりゃ幸せかって言うとそうでもないしぃ(経験者は語る……っておい)。

   ほんとよくできた話でした。例によって作画担当の方がいろいろ刈り込んでるんだろうと思いますが、これは「おいおいあの脇筋はどうなった」というところもなく電車道で非常によかったです。ヒーローが、ありがちな独善的ハーレクィン・ヒーローではなく(まあ、ややカッコつけすぎで説明不足なところはありますが)、ちゃんとしてたのが物語を救ってますね。ヒロインもそんなに無茶に強情でもなかったしね。3人(+2人)が幸せでありますように。

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コメント

 しかしこれは、作中脇役から指摘があったとおり、
「別れた旦那が成功して迎えに来てくれたなんて幸運じゃないの」という話。欧米のシングルマザーの切望するシンデレラ・ストーリーなのかもしれません。かつては深く愛した人が自分を今も愛してくれていて、その美点はそのままに、別れた理由はクリアして現われる、そんでもって、女は仕事なんてしなくていいなんて言わず、努力して積み上げたそこまでのキャリアを正当に評価して得難いと認めてくれての復縁。
 フルハウスだ!
 それだけ、向こうのシングルマザーは疲弊しておるというわけですかな。
 妊娠中絶を認めるかどうかが大統領選の目玉になるくらいだからなあ。望まぬ妊娠で人生を狂わせられてる女性がいっぱいいるってことですね。なんとかならないものでしょうか。

投稿: まいね | 2012年6月24日 (日) 00時28分

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