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2012年4月19日 (木)

「舞姫 テレプシコーラ」 物語の締め方

   姫ちゃんがおうちを片付けるのでよろしければという打診に、一も二もなく手を上げて頂戴してしまいました、「舞姫 テレプシコーラ」 「アラベスク」の山岸凉子によるバレエ漫画です。今でもネット掲示板で「衝撃の結末を迎えた作品」に挙げられる名作なわけですが、その衝撃のクライマックスのあと、辛くて第1部の最終話を見られなかった、2部も途中で引っ越して見られなくなったので、どんな終わり方をしたのだろうと思っていましたので。

   現代の日本において、バレエをやっている小学生(物語開始当時)の女の子が主人公でした。年の近い努力型天才の姉との比較、バレエをやるにあたってのハンディキャップが判明する不運、すぐにしょげる甘ちゃんな性格など、かなり最初はきつい出だしでした。バレエというものの魔性を現すための脇役、転校生の空美(くみ)ちゃんが、貧困、バレエによって人生を狂わせられ現実社会に適合していない伯母、DV、娘を「売る」親など不幸てんこ盛りだったのもきつかったな。
   途中、音感の良さは伏線として最初から描かれていたようですが、伴奏からストーリーを紡ぎ出してそれを言葉で表現できる才能、続いては、それを振りつけに反映できる才能が描かれます。これは、バレエ漫画としては珍しい描かれ方なんじゃないでしょうか。ほらやっぱり、昔のバレエというと、「白鳥の湖」でオデットやるのが目標みたいな感覚がありました。実は、「アラベスク」なんかでも、終盤はたしかモダンの特別委嘱作品をやるのが最後の山だったような気がします(あれ「アラベスク」だよね? なんか記憶があやふや?)。でも、それも、主人公の踊る才能の現れという描き方だったような。
   というわけで、ダメコちゃんの六花(ゆき)ちゃんがいろんな才能と欠点を持つバレエダンサーの卵たちと触れあって成長してゆく第1部では、最大の悲劇を乗り越えてひとつの才能を開花させるところで終わってました。

   第2部はなんと16才になった六花がローザンヌ国際バレエ・コンクールに挑戦するところから始まるんですから凄い! あれですよ、こないだ相模原のナントカちゃん(名前出そうよ)が優勝したってアレ! それを、日本を発つところからやってるんですが、さすがの取材力で、もうコンクール挑戦がビジネスになってる辺りをシヴィアーに描いてるのが興味深かったです。ツアー組んで、現地ツアコンも付くとか、どんだけ日本人コンクール応募者多いんや。
   物語的には、第1部終了後からここまでの回想を交えつつ、飛行機が飛ばないトラブルやら、荷物がなくなったとか(海外旅行では昔から良く聞くトラブルですよね?)、風邪を引いた同行者に振りまわされるとか、さまざまなトラブルで始まって、目が離せません。
   新しい謎の中国系アメリカ人(?)キャラも登場して、誰が落ちるやら、注目されるやら、楽しみで。
   その中で、やっぱり上がったり下がったりが著しい六花が、持ち前の善良なところを発揮、また、自分で表現するコンテンポラリーや即興に強いところを見せて、変わっていない長所と持ち前の才能の開花を見せ、1部からの読者を安心させつつもしかしたら入賞するのでは思わせる構成もさすが。
   本選の前にとうとう風邪をうつされて棄権、いいところまで行ったのに他の参加者とは違ってただの1つも留学のオファーがなかった(このコンクールはただ優劣を競うのではなく、若手の発掘が目的で、各バレエ団の眼に留まると留学や入団、セミナー参加の話が来るらしい)と泣かせておいて。
   実はあったオファーの話が手違いで渡っていなかったことにコンクール側が気づいて慌てて六花を探す下りとか、最後までハラハラさせられましたけれど。

   

堂々の大団円だったじゃないですか。

   1部の最初、恐るべき才能を見せながらもよんどころない事情で雲隠れしてしまった空美ちゃんのその後もなんとなく語られ、そう、気になってたんだよという最初からの読者にちゃんと応えてくれたと思います。

   家庭の事情で続けられなかった空美ちゃん、怪我で夢を断念した姉の千花、堅太り体質克服のために摂食障害にまでなってしまうひとみちゃん、超強気のヒール茜ちゃん(もっとぎゃふんと言わせて欲しかった!)などのライヴァルもさることながら、さまざまな指導者達がまた個性的で楽しい!
   いつも優しく支えてくれる金子先生はそれでも理論派で、細かい技術的なところを指導してへえと言わせてくれますし、おっかない五嶋先生もそれなりに存在意義はあることを作中言われておるし。振り付けの才能に早い時期から気づいてくれる富樫先生はいちいち渋いし、自分が国外で活躍できなかった理由を直視し、自分が教える少年達にはその轍を踏ませまいとする鳥山先生も立派。さまざまなタイプの指導者がそれぞれの思惑を持ちながらも熱意を持って生徒達を指導するさまは感動的でした。……五嶋先生には毎度あちゃーと思わせられましたが。

   1部で取りこぼしたようなところをみんな掬って、毎度ハラハラドキドキさせながらちゃんと物語をいい気分で終わらせるあたりはやっぱりヴェテランの仕事でした。ああ、よかった。1部最終巻はあの悲劇に涙し、2部最終巻はまさかの大どんでん返しに涙しました。

   姫ちゃんどうもありがとう! 

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