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2012年4月 3日 (火)

「ぼんたん」堂々の完結

   12月発売最終巻で打ち切りとの噂を聞いて慌てて注文に出かければ、ノイエ・リリエンベルクの有隣堂では「当店では入荷はないです」って言われてて。それじゃあ眼に止まらなかったはずだよ。

   注文でやっと5巻入手。前の巻で輝宗パパが敵に質に取られるというおよそ大名としてあるまじき失態をやってしまい、政宗ちゃん(この作品では女の子)苦渋の決断で「父を撃て!」と狙撃命令……といいところで終わっていたのですが。
   羅刹と化した政宗が敵畠山義継の骸を晒すというところからはじまり、どんどん才長けて麗しい政宗ちゃんが(間接的)父殺しの業を背負っていく展開となります。政宗と(片倉)小十郎が父殺しを互いに背負わせまいと思いやりながらそれが擦れ違う様が、想いを通わせられないこの作品ならではの立場に絡んで切なさを際だたせております。
   物語は(打ち切りとの報に違わず)3万の大軍での伊達包囲網・人取り橋の戦いをなんとか凌いで休戦、これから全国へ出て秀吉・家康と対決するぞ……というところで終わっております。作者さんも「政宗の青春篇」といって満足げだったので、これはこれでいい終わり方だったのかも知れません。

   業を背負う、とかいいながらも良いタイミングでギャグシーンが入っており(たぶん作者さんが政宗を血液型B型というところから、切り替えが早くでクヨクヨしないと解釈して今まで性格を作ってきたこともあろう)、そこまで暗くてやりきれない感はなかった感じ。
   ここまで登場してきた脇役のキャラクターがそれぞれ生きていて、みんながんばって修羅場を乗り越えたのだなとしみじみ。ほんと、この合戦をクライマックスに据えたのは神の構成でした。好みを言えば、やや危ない趣味であろう屋代(蛇をイメージしていた)はそんなに出さなくていいから、からっとのんきな鬼庭綱元をもっと活躍させて欲しかったかなあ。おやじの鬼庭左月はいやーんな頭の固い宿老あつかいでしたが、あっぱれな最期でした。大河ドラマ「独眼竜政宗」のいかりや長介の熱演を思い出させました(この辺までは見てた)。ここへきて登場のライヴァル佐竹義宣がまたいい感じのタイプの違った美形で(鬼義重じじいも良かった!)。もう眼の保養、力入ってましたねえ。

   いやほんともう限界だったと思うし。

   これまでは愛姫ともままごとのような夫婦で来られたけど、この先飯坂の局? 愛妾もできるし、史実じゃあ子供も産まれるし、女の子のままで話を作るには限界があったと思います。ほんとどうするんだろうと思ってたし。

   結局周りみんな(政宗と小十郎のことを)両思いだと思ってるし、本人同士も憎からず思っているのになにも進展せず(キスぐらいはしておったようだが)、さわやか~に終わりました。そういう意味では堂々の少女漫画。

   絵も美麗で、馬とか甲冑とか頑張って描いてたし、そうそう考証無視のところとかはなかったみたいだし、それでいてお遊び(相馬義胤!)は大胆素敵だし、ほんと良かったんじゃないかなあ。わたしは満足ですね。

   歴史物というのは、一応正史というものがあって、学説の流行り廃りというか、研究の進み具合で、昔はこういう解釈だったけど、今はこういうのが主流、なんてこともありますが、だいたいの筋はきまっておるわけで。歴史上の人物ですから、一応、生年とか、氏素性とか、記録が残ってます。そういう、ゆるがせにできない大筋、ある程度の人には共通認識(織田信長は桶狭間からいろいろあって叡山を焼いて本能寺で死んだとか)があるところを、独自解釈を入れつつ進めていって、おいおいそんなんでいいの? なんて思わせながらも締めるところは締めて史実に絡めて「こう来るか!」とうなる/うならせるのが醍醐味なんだと思いますよ。
   例を言うと、以下ネタバレ「女信長」マエストロ佐藤賢一で、いろいろあって信長に反逆した明智光秀が、本能寺で「おなごは苦しからず」と女性は逃がしたという史実を、進退窮まった「女性の信長」を解放するため、としたのはもう膝ポン! あ、ごめんネタバレで。
   そういう意味では、大河の「新選組!」とか、漫画の「へうげもの」なんてのはほんと大胆素敵で好みなんですが、最近はなんだか外しすぎな作品が、ドラマと言い漫画と言い多くってなんだか嫌だわ。この作品は、それに比べたらアレンジの仕方が大好きな部類です。

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