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2011年10月19日 (水)

「C.M.B.」 ― ミステリに出してはいけないひと ―

   またしてもW新刊の加藤元浩作品でございます。「Q.E.D.」40巻の方は平積みで、今回はこっちだけかな? とひっくり返してみると、腰巻きに「同時発売!」と書いてあってので、お店のひとに出して貰いました。こけたとはいえドラマ化のおかげで知名度は「Q.E.D.」の方が上のようです。

   ミステリの流行りはじめの時は、あまりにもいろんなひとが参入してきて、ちょっと不思議な話を粗製濫造したもんだから、心あるミステリ作家のひとがルールを作ったらしいですな。ノックスの十戒。「犯人は物語の最初から登場してなくちゃだめ!」「超自然的なことで解決とかいけません!」とか、ある程度の目安で、世の名作は必ずしもこれを全部クリアしてるとは限らないそうですけどね。
   その中に、「中国人を出しちゃダメ」というのがあります。
   それは人種的偏見というかなんというか。
   今で言う「ニンジャ」かな、東洋の神秘ってのを過大評価しすぎなところからきていて、中国人ならどんな万能薬をもっていてもおかしくない、どんな常識を超えた身体能力を持っていてもおかしくない、そして、キリスト教世界とは違った価値観を持っているかも知れないので常識が通じない……そんなところから、
   「なぜなら犯人は中国人なので、これこれこう」と説明されたら敵わん、とそう言うことでしょう。
   時が21世紀になりまして、もう語り手が探偵だろうが語り手が犯人だろうが男に見えて女だろうが双子が入れ替わってようがアレとソレが同一人物だろうがなんでもアリアリ……なんですが。やっぱり、ある程度の良識はあるみたいです。
   とんでもねえ鉄壁の密室ものとか、アリバイ・トリックものとかで、探偵が一同を集めて「さて……」なんて言い出したところで、登場人物が、
   「ええ、仰るとおりわたしは××星人です。××星人ならそれくらいのことはできますが?」なんてけろりんと言われたらその本壁にぶつけたくなるでしょう!?

   そういえば、それを逆手に取ったミステリがあるとかいうの、誰かのエッセイで読んだなあ。主人公A氏のところのコックのチャンはなんかあやしい、いったことには従わないし、なんだかいつ見ても顔が違う。A氏はどうもチャンを信じ切れない、なじめない。でも中国人ってこんなものか、とA氏は深くは追求してなかった。そのA氏の周りで事件が起きて、解決したら、なんとチャンは一人の人間じゃなかったというもの。なんだっけ、今の偽装結婚ビジネスみたいなもんで、A氏の家のコックという職は中国人のイギリス出稼ぎの玄関になっていて、みんな1ヶ月ぐらいで入れ替わっていたというのです。だからなんだかいつ見ても顔が違うような気がする、指示が徹底してなかったというわけ。大胆な話だと思ったけど。

   それで加藤作品ですが、平成の世において中国人が出てこないというわけではありません。香港の黒社会は何度か出てきています。今度もそういう独特な感覚が使われていて……。常識で考えていくと、その事態で確かに不利益を被っていたのは彼なので、彼がそれを企図していたとしてもおかしくないです。ひとの心理を深く理解していて実に彼らしい話と思われました。しかし、彼についてのちょっとした説明が、そう言われてみればそのコックのチャンを偲ばせるんだなあ……。

   「Q.E.D.」がもう40巻で、よくネタが続くものと思いますが、ネタが切れてきたなら切れてきたなりにいろんな所からヒントを得て物語を作るものだと毎度唸らされます。実は今回気に入ったのは、例のコージー系の「四角関係」なんだなあ。一生懸命なひとをみんな応援したくなるっていう結果はホッとしました。

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