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2011年9月11日 (日)

日記の効能

   ちょっとしたリンクをたどってみたら面白いものを引っかけました。
   →http://www.youtube.com/watch?v=MFOt5TqOKFs&NR=1

   サイパンで玉砕した海軍の中尉さんの日記がアメリカの公文書館に残っていて(太平洋戦争中の米軍は日本人兵士の日記を回収・解析して情報収集していた)、サイパン戦の検証をしようと思っていたNHKに引っかけられたそうで。日記の最後には残される妻子への思いが綴られていたので、重松清氏とプロデューサー氏はその中尉の遺族を捜して日記を返しにいったところ、奥様がまだご存命で(95才!)、日記を渡されて読み始めた奥様、途中から音読し始め、最後のくだりを読むや号泣されたとのこと。
   戦後生まれの自分が他人の悲しみを掘り返すようなことをして良いのかと悩み悩み訪問した重松氏、とうとう、奥様に、日記をお渡しして良かったのかと問うてしまったとのこと。
   奥様立ち上がって最敬礼すると、夫の気持ちをとどけてくれてありがとうとお礼を申された由。
   べつに愛しているとか、君は我が最高の女性だとか甘ったるいこと書いてあった訳じゃないんですが。
   ただ、子供を守り育てて欲しい、今までの日々に感謝するとかそういう堅苦しい引き継ぎめいた言葉とお礼で。
   でもやっぱり、最期の言葉を受けることができたのは何年経っても喜びであったのでしょう。

   戦争中のネタ話で、「日本軍の兵士は実にまめに日記を付けていたが、米軍はそれを回収して解析し、部隊の進軍先とか内情とかを細かく割り出して活かしていた。今でも米軍(に限らずふつうどこでも?)は兵士に作戦中の行動の記録を付けることを許さない」云々いっているのをネットで何度も目にした(そしてアチャー! と思っていた)のですが、これは、長田中尉痛し痒しですね。結構つぶさに戦況を書きつづってあったそうです。しかしそれ故に、貴重な史料として処分されずに平成の世までこの日記は残り、NHKに渡り、結果、奥様のもとに戻ることができたのですから。ううーん、これまで多数のアメリカ人の目に触れてきたことを思うと、固い書き方でよかったですね中尉。これが最期、誰も読まないだろうとばかり閨のこととかあけすけに書いてたらもう、奥様受け取り拒否だし、そもそも返しに行こうと思わない……(いや、人に託したって書いてあるから読まれること前提で、それが故の固さかも知れませんが)。

   でも、アメリカンどもに、おまえさんたちが闘ってきた相手は野蛮な猿ではなく、死を前にして心静かに妻子を思い、精一杯の愛情を綴ることのできる情の深い人間であったのだと証拠を残し、訴えることができたのですから、この日記はあってよかったんではないでしょうか。

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