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2011年8月22日 (月)

夏が終われば

   そう言えば、わりにリアルな高校野球を描いている「おおきく振りかぶって」でも、夏の甲子園地方予選が終わったらすぐ合宿をやっていたと思いましたが。

   べつに甲子園を目指してない流石高校野球部も、このまえ合宿がありました。春の合宿は地震のせいで延期になりましたから、まあ、ここでみんな心をひとつにしておくのもよいでしょうって、学校に泊まり込みするの? 学校の宿泊所ってあるんじゃなくて、教室にお蒲団敷いて? ゴハンは? お風呂は?

   正解 : お母さんが来て2食作ってあげる。お風呂は近くのジャイアンツランド横「ヴィクトリー温泉(仮名)」まで車を持ってるお母さんがピストン輸送。

   ええっ、マジで?
   こっちは5時まで働いたらその後はまともな家事もまだできてないぐらいなのに、この暑いのに徒歩45分の流石高まで行ってゴハン作ってやるの? 早乙女家車ないんですけど!? って言ってる間にママさんのメイル・ネットワークでは持ち物や材料の持ち寄りの分担がどんどん決まっていってました。

   「合宿費とべつにお米3合持たせて!」

   見なかったことにして切り抜けようと思ったら、
   「ごめん黒アンダー忘れた持ってきて。おかあさんどうせ夜ゴハン作りに来るんでしょ」って。
   やはり悪いことはできないとばかりに、お仕事のあと、指定の忘れ物を持って、とりあえずこれで足りないことはなかろうと30人分紙パックのジュースを買い込んでタクシー拾いました、わたし。

   6時頃流石高校にたどり着くと、もう体育館下の泊まり込み用準備室(ちいさなキッチン付き)ではカセットコンロを並べてカレーが大鍋に5杯出来上ってました。皆さん慣れてらっしゃる。フルタイムで働いているニシゴーリママも、
   「うふ、今来たとこ。なんにもお手伝いしてないのよ」とふんわり笑ってました。あ、ジュースは歓声を以て迎えられました。
   5,6家庭から持ち寄った大きな炊飯器いっぱいにゴハンが炊けていて、こちらまで食事室に決めた教室に運んで、のこりひとつは夜食用におにぎりにでもするか、それとも明日の朝ご飯に……といっていたら、マネジャちゃんが駆け込んできて、
   「足りないって言ってますぅ!
   嗚呼、野獣のような高校球児!
   足りないのはゴハンの方だったので、慌てて明日用の残りひとつの炊飯器をもってってもらって、明日用に空けておいた炊飯器にまたお米を研いで入れて早炊きコース・スイッチオン!
   「野球部の子の食欲ってすごいね……」

   「おにぎりになんか混ぜるんでしょ? 用意してないの? じゃあまだ開いてるうちに近くのスーパーに買い出しに行こう!」と、おかあさんいたたまれなくて提案します。
   「え? この辺にスーパーがあるの?」と、あくまでニシゴーリママはおっとり。
   「こないだ歩いて帰ったときに見つけた! リーリエ・マートの流石校前支店! すぐだから、教えてあげる、行こう!」
   「じゃあ、車を出すわ」
   なんてことをいって、暗くなってきたところをニシゴーリママの車で流石高前支店へ。同じリーリエ・マートとは思われない綺麗で広い店内でした。おにぎりに入れる青菜やしそ、塩むすび用の食卓塩の他に、ちょっとしたおせんべい類や菓子パンなど、夜食も少し買い込んで。……ちゃっかりお会計は逃げるおかあさんでした。ごめんよ、ジュース差し入れたから早乙女家からはもう出せない。

   帰ったら、野獣野球部員たちは食事を終え、お風呂へと順々に送られていました。
   「早乙女さん、送っていってあげるから待ってて」とニシゴーリママが言ってくれたので、せめてものお手伝いに、とおにぎりを作ったり、ボウルやしゃもじなんかを洗ったり。

   帰ってきた野球部員達は、
   「ママーこれ」といって袋に突っ込んだあの泥まみれの一式をなんの疑いもなく差し出して。……おまえら、自分で洗えよ。まだ着替えの少ない1年生ちゃん達の分は、マネジャが洗ってくれる約束だそうで、それも、洗濯機なくて手洗いって聞いて、送り迎えの車を待ちながらおかあさんたち悩む悩む!
   「それならお母さんに来て貰って洗って持ってきてもらった方がいいんじゃ?」
   「でも1年生のお母さん誰も来てないよ」
   「コインランドリーないの? この辺」
   「下がったところにあったかも」
   「でも、乾燥機かけると2,3時間かかるよ? 取りに行くの大変じゃん、夜なのに」
   「どうしよう?」
   「お風呂はいってる間に洗うんじゃ?」
   「時間的に無理でしょ」
   小田原評定してる間にお風呂から帰って来ちゃって、その辺はうやむや。
   「なんだかお腹がすいたわ」とニシゴーリママが切ない顔をするので、おかあさん自分の非常食に持ってきたケンちゃんちからもらった売れ残りパンで作ったラスクを出しました……。

   「これ2組の葛原君ちからもらったラスクなんだけど、食べる?」
   大喜びで空きっ腹のママ達の間を回っていきました。葛原さんありがとう。

   「豹太、洗濯物を出せ」
   「え? いいよおれ持ってきたよ。おかあさん明日の朝来ないんでしょ?」
   「明日の夜も来てやるからその時渡す。明後日の分にしろ」2泊3日の予定です。
   「……うん。じゃあ、白いTシャツ持ってきて」
   お泊まりだー♪ とご機嫌だった豹太はいつも着てるお気に入りのバャリースのTシャツやら、台湾土産の赤いTシャツやらをカバンに詰めていたのですが、合宿だからさ、みんな白とか、紺とかのスポーツシャツ着てて、これはやばいと思ったらしいです。いやー豹太おかあさんに似て赤が好きで。困っちゃう。「(「坊っちゃん」の)教頭先生」とあだ名が付かないように……大丈夫、流石高校にそんなひねくれた奴はいない。

   あとはエアコン完備の教室にお蒲団を敷いて、みんなで就寝。
   「いいなあ、豹太帰ってこないんじゃないかしら」
   ほら、お盆の頃だから。毎晩熱帯夜だった頃です。

   「早乙女さんお疲れ様。さあ帰りましょ」
   ワンボックスの素敵な車が禍いしてすっかりタクシーにされているニシゴーリママ、ふんわりのんびりしているので頭が下がります。
   「もう9時になっちゃったわねえ。お腹もすいちゃった」
   そんな言葉もふんわりとおっしゃるニシゴーリママが大好きになりました。明日はもっと美味しいお菓子持っていくからね! と心に誓って。
   「早乙女さん明日も行くならうちに声かけてね。一緒に行きましょうよ」
   もう脚向けて寝られない!   

   翌日は、乾いた一式と依頼のTシャツとどうせいっぱい要るだろうと替え洗面タオルを持って角に出てメイルしてニシゴーリさんを待ちました。
   「支度が手間取って遅くなってゴメンネ」と謝ると、
   「いいの、先に御飯食べてたから」って、流石です。じゃあ、ママに差し入れと買ったおつまみ豆の小分けパックは要らないかしら……。

   今日の夕食は豚丼と聞いたので、実家から現物支給でもらったタマネギを持ってったら、もうできていて、「もう要らないよー」とあっさり言われました。いやーホントすいませんね。よそのママさん達はみんな仕事はもうお盆休みだったそうで、来られる人だけが来られる時間だけ来てやれることをやって去ったとのこと。ええと、……おかあさんどうしよう?

   とりあえず、豚丼を食事室に運んで盛りつける役をさせていただきました。

   お部屋の隅にはちゃんと各人のシャツが畳んで置いてあって、マネジャちゃん達あれから昨夜お洗濯して干してくれたらしいです。そしてなだれ込んできた野球部員たちはそれぞれ匂いを嗅いで自分のシャツを識別……豹太が言ってた、みんなほぼ同じシャツを持っているなかで自分のものを見つけるために匂いを嗅ぐというのはホントだったとこの目で知りました! でも、いつもは自分ちのママが使ってる洗剤の匂いで識別するのに、昨夜はみんな同じ洗剤でマネジャちゃんたちが洗ったからみんな同じ匂いで、
   「わかんねえ!」と騒いでました……うう~んこのおばかちゃん達! 自分のものには名前を書こうよ!

   この日は近隣の学校2校と練習試合巴戦をやったので、7時過ぎまで全然部員達は上がってきませんでした。おいおい。7時いただきますじゃなかったのか。結局7時45分いただきますで、全然予定通りに行きませんでした。それからまたヴィクトリー温泉(仮名)に送っていって、みんなが出たとメイルをもらってまたお迎えに行って……という予定。
  
   ところが、炎天下で2試合も練習試合をした流石高生たちはもう疲れちゃってこの日は食欲がなかったのか、お鍋に3杯作った豚丼も具だくさん豚汁も余っちゃった……。余らせていてもお鍋を洗わないと帰れないし、お腹すいたでしょとみんなで子ども達をお風呂にいかせといて残り豚丼はママさん達のお腹へ……。美味しかったぁ。

   残ってる差し入れのお菓子も、
   「遠慮して手を出せなかったのかしら。子供会みたいに小分けしたら絶対持って帰るって」とささっと手の空いたママさんが人数分小分けしてくれて、見事にお土産セットができました。まだ帰ってこないわ、お風呂長いわねと笑いながらみんなで手分けしてお鍋を洗って後始末して帰り支度。もう、みんなちゃっちゃと手を動かしてすぐに片付く~! あとはお茶を飲みながらいろいろ子ども達の様子を聞いたり。

   「なんでこんなに時間かかってるの!?」って、そりゃお盆の金曜日ならみんなそういう大きなお風呂に行って裸のつきあいしたりするわよねーって、納得。激込みのお風呂からやっと帰ってきて、みんなちゃんと寝なさいよと声を掛けて解散……したら、
   「今日は10時になっちゃったね」
   それでもニシゴーリママの笑顔に曇りはないのでした。ああ、尊敬します! 車に乗せて貰ったらもう10分で着いたしね。

   その日はOBも来て一緒に泊まったとかで、その逆らえない先輩がエアコンを19度にセットして寝ちゃったので豹太は
   「死ぬかと思ったって!」と震えながら帰ってきました。でも、みんな仲良くなれて楽しかったらしいですよ。

   ……でも野球部のママって大変だよねえ。

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