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2011年7月13日 (水)

「下流の宴」 ― 偉いのはどっち? ―

   

NHK火曜夜10時のドラマ枠はなんというか大きいおねえさんというよりオバサンにさしかかった女性対象枠のようで、毎度問題作を取り上げていて凄いですよね。ニュースを見終わった後からという時間帯でついずるずる行ってしまって、「八日目の蝉」も「セカンド・バージン」も、「マドンナ・ヴェルデ」も見てしまって、「下流の宴」も見てます。虎美に至ってはさらに「別居離婚」? も何となく見ていたとか。
   毎度、そういう大きなおねえさんの問題点を大胆に抉っていって、見ていて冷や冷やしたり、見事に煽られて不愉快というか辛かったり、それでもついつい最終回までには引き込まれて真剣に見入ってしまうのでした。

   「下流の宴」は、もともとそういう話の作りのうまい林真理子原作だったものだから。もう、ヒロインである由美子(?)の考え方にいちいち神経を逆撫でされて、「何このひと!」と、もう腹が立って腹が立って! でも見ないではいられない! これがマリコ・クオリティ! 「不機嫌な果実」でもいいように転がされたというのに!
   なぜか虎美も加わって、
   「なんなのこのオバサン!」
   「バブルの頃若くてきれいだとこんな感じに勘違いしたんだろうか……母は違うぞ、残念だった組だ」
   と2人してはまっています。

   こないだはとうとう結末が知りたくて、原作本を立ち読みして来ちゃった。そう来るか。ああ、「不機嫌な果実」の結末もそんなカンジだったよ。子供は万能のおもちゃじゃないよう! 可哀相!

   あ、一応あらすじ。
   バブルの勝ち組(?)であるところの由美子さんは、早稲田の理工かどっかを出て一流会社の部長さんであるダーリンを捕まえ、一男一女に恵まれて幸せな奥様生活を送っていると思いきや、お姉ちゃんはこのご時世せっかく決まった就職を「あんな地味な会社イヤ!」と断ってきて、一流企業に出入りしたいと派遣社員になっちゃうし、ぼくちゃんは私立の一貫校に入れたところが高校から不登校になっちゃうしと実は悩み多き生活。今はフリーターになってるぼくちゃん(名前は翔)が、フリーター仲間の女の子と結婚したいと言い出してもう天地がひっくり返るほどの大ショック!
   沖縄の出で、離婚して再婚してと複雑な家庭で飲み屋をやって母親は彼女を育てたと聞くと、上昇志向(?)持ちの由美子さんはもう頭っから彼女をうちとは家柄が違うと斬って捨てるのです。それが、「下流のひとだから」といういいぐさ。由美子さんは、幼いときに亡くなったパパがお医者様で、未亡人のママが死にものぐるいで働いて大学に行かせて貰ったらしいのですが、そこらへん、おばあちゃんたらプライドの持たせ方を間違ったらしく、「うちは死んだ父がお医者様」という間違った選民意識を持っているのが根本的な痛いところ。医者がエリートなんて、ホント、バブル期までだよね。この時もそれをうっかり口に出したものだから、気の強い翔ちゃんの彼女(タマオちゃん)に、
   「お医者ってそんなに偉いんですか!? じゃあ、あたしが医大に合格したら翔ちゃんとの結婚許して貰えます!?」って言われちゃう。
   売り言葉に買い言葉、タマオちゃんは入試のカリスマに教えを請い、愛とプライドを賭けて受験戦争に身を投じるのでした。

   おねえちゃんの方も、おまえそんな理由で派遣社員になって、と冷や冷やしてるとうまく一流会社に潜り込んで、派遣なのに(というと差別になりますかね?)正式採用の女性に混じって天ぷら学生のように(たとえが古い!) その「エリート様」とお近づきになろうとする、たくましい。そんで奇跡のようにいいエリート様を引っかけたと思ったら!

   ほんと、目が離せない。

   このまま、由美子さんが、おねえちゃん(カナちゃん)がぎゃふんと言えばこちらは満足するのか、そういう自分がなにやら薄ら寒い、どういう終わりを迎えれば自分が満足するのか、ついつい自分に問いかけてしまう、ほんとに自分の内面にまで食い込んでくる怪作、名作なわけですよ。

   虎美は自分と引き比べて翔に感情移入をしているようですが、いや、その翔にしてからが、自分の妻に迎えようという女性をそこまで言われて怒れない、タマオがプライドにかけて受験勉強をしていくのにどんどん引いてゆくさまがもう情けない、草食系にもほどがある、けっ飛ばしてやりたいのですが、これもバブリーな親に育てられた被害者なのかと思うと、もう、自分たちが間違ってた感にどーんと押しつぶされそうになります。蹴飛ばしてやりたい同じエネルギーが自分の心を抉るぅ。

   前の「マドンナ・ヴェルデ」もとうとう虎美自分で買ってきて、夏休みの読書の課題図書にするつもりだったようで、結局もう読んじゃったらしいですが、
   「凄かった。随分ドラマと違ってる。あの女最低」と。
   「それって、りえちゃん(ヒロインみどりさんの娘であるところの女医)?」
   「かなり子供を産むためにあくどいことをしてた」
   ……あくどいことの中身は割愛しますよ。
   「お茶の間にドラマを流すためにかなりNHKがんばってマイルドにしたらしいな」

   「下流の宴」も、マイルド化されてるのでしょうか。じゃあ、ご家庭のママさんが見てホッとするような結末が用意されてるかも知れません。あれだけ「マドンナ・ヴェルデ」にはまれたのはそのアレンジのおかげだったりして。「下流の宴」のこの引きの強さも、エライのは林真理子じゃなくてNHKドラマ・スタッフなんだったりして。ドラマ版の最終回が楽しみです。

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コメント

時々ダイジェストで内容をチラ見するだけですが、確かに気になりますね>下流の宴
ただ、医者がエリートといわれるのは、大学のレベルの問題でなく、卒業までに3千万円かかるといわれる学費を躊躇なく出せるだけの財力所以なのであろうと、しみじみ思います。もし医大に合格したとして、誰が学費を出すのやら…気になる。私も見かけたら立ち読みしてみます。

投稿: 波多利郎 | 2011年7月13日 (水) 09時07分

 ああ、うん、そこんとこは、合格すれば資格が得られるということで、べつにお医者さんにまでなるつもりはないんだと思ってました。由美子さんは受かりっこないと思ってたみたいだし。わたしも、そんな気持ちで医大に来られて医者になられたらまた大変とも思ってましたが、どうやらタマオちゃんは医者になる気も沸き起こってくるようで……。
 途中からは、ドラマを見る限り翔ちゃんがフリーターでもして貢ぐ気になっているように感じましたが、甘いよなあ。まあ、奨学金とか取るつもりかも知れませんね。戦前だと、田舎の見所ある秀才に地主さんがお金を出してやるってのあったかも知れませんが、世の中が民主的になったらかえってそういうの無くなったかも。

投稿: まいね | 2011年7月13日 (水) 19時38分

 虎美9時半からTV前に陣取って最終回を待ってましたが、台風で延長でじりじりしてました。
 巧く終わりましたね。原作の筋から大きく外さず、だからといってあの毒のある結末をそのままにせず、なんとかホッとできる方向へ持っていった感じです。
 具体的には、由美子さんがほんの少し変わって、翔ちゃんを認めた、翔ちゃんをこうしてしまったのは自分だと責任を認めたところでしょうか。
 翔ちゃんの選択については、
「殴ってやりたいコイツ!」と虎美呟いててました。おまえが言うか。

「うちも下流になっちゃって」と開き直った温かい団欒のシーンはもうここまでするかと開いた口が塞がりませんでした。
「オバサンってたくましいね」
「あ、……ああ」
 最後、ベビーカーを押した由美子さんと宮崎へ旅立つタマオちゃんが擦れ違うところ、演出を虎美が褒めてました。ここが中流と下流の分岐点と彼らの未来を表わしているのだと。演劇部は生意気に言う言う。

 努力を否定しなかったのは物語として正しかったな。
「だから林真理子は凄いんだって」と娘に得々と申しますと、
「人間としては嫌いだけど作品は好き?」と返す。そういう意見がどっかのブログにあったんです。
「いや、人間としても結構スゴイやつだと思っているが、作品内容がいちいちむかつくのだ」
 ほんと、いい作家だよなあ。

投稿: まいね | 2011年7月20日 (水) 09時31分

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