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2010年7月23日 (金)

なんきん事件 ― そこに愛はあるか ―

   おかあさんは宴会のチラシが好き。もうはや専業主婦となって10余年、居酒屋やレストランでお酒を飲みながらいろんなお料理をつつく楽しい会にはとんと縁がありません。せめてきれいな写真を見ながら、前菜:海老のカクテルってこれかなー、とか、主菜:海の幸鉄板焼き盛り合わせ3種はこれねなんて指さして探しながらイマジネーションを喚起しておるのであります。結構頭の体操にもなって楽しいですよ。

   夏休みは都内のホテルもかき入れ時のようで、そのチラシは近場のホテルのものでした。お昼のカレー・ブッフェは3種のルーに10種のトッピングって、じゃあ、カツも海老も茄子やピーマンも、トングで取って自分で御飯の上に置いて、その上からルーを掛けるわけ? 味がしみてないみたいで嫌だわなんだか。サラダやパスタなど軽食も加わって、4時からのブッフェって、景気が悪くなるとアフタヌーン・ティー(一時期はやりましたね)もここまで砕けるか。それからそれから、これが楽しみ、デザート・ブッフェ。季節柄冷たいデザートが中心で、
   「7種のフルーツのジュレ、ムースをお楽しみ下さい」って、色とりどりの、クリスタルっぽい器に盛りつけた涼しげなゼリーや冷製菓子の写真が美味しそう! でも、ベリー類って、実は、日本で改良したイチゴ以外はそんなにありがたがって食べるほどのもんじゃないと思ってます。ブルーベリーとかラズベリーとか、酸っぱいばっかりで、種がザリザリして舌触るし(おかあさんは酸っぱいものが嫌い)。下はその果物のゼリーかなにかで、上にはまるのママその果物を載せてある趣向。一番左はラズベリーだな、次は……果肉がオレンジで扇形に切ってあるその円周部にいくに従って色が緑にグラデーションしていって……
   「虎美や、すごいぞ今は、カボチャのムースがホテルのデザートに偉そうに出ている」
   お野菜に貴賤はありません! おかあさんこれはいけません。
   「ほれ」と見せると、虎美は一見して答えました。

   「メロンでしょ」

   正 し い 。

   シチュエーションからみても、画像からみても、ここは夕張系赤肉のメロンとみるのが正しいですね。でも、おかあさんムキになっちゃって。

   「いや、これはカボチャだろう!」
   「常識で考えてメロンでしょうよ」

   双方がっぷり4つ、譲りません。
   「うわぁん旦那様ーッ!」と、あまりの暑さに書斎を蒸され出て、和室に転がってた旦那様を揺り起こして訴えます。
   「これ、あそこのホテルのデザートのチラシ!」
   「連れて行けませんけど」
   「いいから見てッ! これッ! これはなんて果物でしょうッ!?」

   「……」
   聞こえていたのか、旦那様間を取ります。
   「カボチャだよねッ」
   「ううむ」
   「カボチャに見えるでしょうッ」
   おかーさんずるい、見えないよと虎美の声がかかります。
   「カッ ボッ チャッ ですよねッ!?」

   「

   「今時瓜なんかホテルのデザートに偉そうに出すかーッ」
   いえ、旦那様のおうちは、今時のメロンは甘すぎていけないとかいって、わざわざ取り寄せてマクワウリを植えて夏のおやつにしますけどね。
   「ねーッ常識でメロンだよね」と虎美が勝ち誇るの何のって。
   「……やっぱり夕張メロン……ですかねえ?」とややおかあさん気弱に。
   「……うむ」
   「だってここんとこがオレンジでしょう!? どう見てもオレンジだもん! そんで皮が緑で! これはカボチャ!」
   「瓜で」
   どうもこの辺りから旦那様笑っていたような。
   「うわぁん! カボチャだって南の瓜だもんッ!」
   「カボチャはデザートにはしないのでは?」
   「ハロウィンにはプリンになるじゃないですかッ、万聖節の意味も解ってないのにそこら中でッ!」だから季節が違うんだってば。

   とうとう旦那様は吹き出してしまわれました。
   わたしの顔をたててくれたっていいじゃないですかッ!(いや十分立てているだろう)


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2010年7月21日 (水)

虎美ちゃん本気を出す?

   虎美は演劇部に入っています。
   転校してきてうまく学校になじめず、ひきこもり一直線だったのを、中学入学に当たってお兄ちゃんが心配して、各方面問い合わせて趣味の合いそうな優しい先輩のいそうな部活と言うことで、
   「根回ししといたから。おまえ手芸部入れ」って言ってたんですけど、いろいろ見学したら、もっとよりオタク趣味の濃い部活があったようで、
   「演劇部にしたから」なんてけろりと言って、
   「おれの顔を潰す気かァ!?」って、言ったとか言わなかったとか。
   手芸部って、オタク趣味とは相容れないかと思いましたが、そういえば、去年の文化祭の展示ではあのボーカロイドちゃんのお衣装を見事に縫い上げて飾ってあって、判るひとはおおーっと唸ってました。ああそうか、コスプレの方に行くのか……。おかあさん何に仮装してもおこがましい系になるひと(=デブ!)だから、若い頃からそっちはとんと考えたことなかったわー。おかあさんが中高生の頃だと虎皮ビキニが主流で、とても勇気がないとできないカンジだったし。

   で、オタク趣味のひとが演劇部ってなにをしているかというと、漫画やラノベのあの掛け合い台詞を自分たちでやって「キャーッ」って言ってる程度。「アメンボ赤いなアイウエオ」のあの字も言ったことがないと仰る。
   だめだこりゃ。
   「声優になりたーい!」って言ってる方がまだマシだ。
   去年の文化祭では、虎美はこれでも図々しくて声が出るというので、その前の9月は体調不良で学校に2日しか行かなかったらしいのに役をもらって、堂々と舞台に立ってました。わたくしも、稽古に出ない人間は舞台に立つ資格はないと口を酸っぱくして言ったのですが……。とりあえず台詞は入っていたし、一応後ろの方まで聞こえましたけどね。
   ……みなさんホントに声が出ていなくて、結果的にみな緊張して一言も台詞を聞き逃すまいと客席は静まりかえってました。どんないい台本かと思いました、一瞬。いやーゴルドベルク中のみんなは優しいね。

   反省して、一応腹筋とか、腹式呼吸とかを始めたらしゅうございます。わたくしも、「アメンボ赤いな」をグーグル検索して、プリントアウトして渡したりして。
   そして、また、秋の文化祭に向けて始動したのですが……。

   「『外郎売り』をやってみる」と虎美が言い出しまして。自分で検索して、印刷も行ったのでございます!
   「おう! 『外郎売り』は演劇部・放送部、しゃべりの基本だ。そらで言えたら持ち芸になるぞ! 高校の面接はちょっと判らんが、大学入試や就職の最終面接で『外郎売り』やりますつったらキョーレツにアピールするぞ!」
   わたくしも話芸については少し興味を持っておりますので、いっぺんはやってみたかったですね。

   読ませてみましたら、これが、現代っ子だから、歴史的仮名づかいはともかく、七五調が身体に入ってない、ゆかしい語彙になじみがない、喉が「のんど」になる言葉のノリを理解しないので、どこで切ったらいいか判らない、ボロボロ、もう、聞いてて可哀相になるくらい。

   「……ガンバレ」

   外郎というのは、こないだトリヴィアかなんかでやってたかと思いましたが、あの名古屋名物のむっちりしたあれではなく、お口をスッキリさせる仁丹のような丸薬なんだそうで。中国伝来のそれを独占的に商っておったその小田原の外郎やさんが、お得意に出してたむっちり菓子が有名になって、そっちが外郎の名を取っちゃったというのがホント、ということだそうで。
   「ええと、ホントの外郎というのは、だから、仁丹というか……フリスクだ」
   「判った、フリスクね!」

   そのフリスクのお店の所在を述べて、名を述べて、フリスクの由来を説明し、効能を説明し、コレこのように口が滑らかになると言うことで言葉遊び、早口言葉の連発になるという流れ、要はがまの油売りのような口上が、シャベリを仕事とする方の練習台、声楽に於けるコンコーネ、ピアノに於けるエチュードのようなものと認識しておりましたが。

   「おかーさんやってよ」
   「おう」
   「拙者親方と 申すは、御立合の中にご存知のお方もござりましょうが……」
   「この辺の話だね」 
   「そうだな、神奈川、川崎……小田原が出てくるな」
   東海道でございます。
   「……薬師如来も照覧あれと、ホホ敬って外郎は、いらっしゃりませぬかァ!?」

   口上なんだからって、聞いたこともないのに勝手に最後は上げ調子にして、見栄まで切って娘にいい格好をして見せて。
   「さすが!」
   おかあさんはかるい運動をしたようなご機嫌。

   そしたら、丁度その翌日は旦那様名古屋に出張で。旦那様もとから外郎お好きみたいだし(あのむっちりの方ね)。
   「おとうさんのお土産は外郎だな」
   「バッチリ!」
   って、ああしかし旦那様のお土産は坂角「ゆかり」だったのです!」

   

旦那様空気読まない!

   「だってあんた外郎嫌いだったじゃない」
   ええ、わたくしはあんまり美味しいと思って食べたことないですが。
   「名古屋駅限定ゴールド缶わざわざ買いに行ったのに」
   大変ごおじゃすでよろしゅうございました。ありがとうございました。

   学校に持っていって、部活の時間にみんなに出して見せたところ、反応は薄く、誰もやろうとしなかったそうで。あの劇団さんふらわあ(仮名。笑)所属で、ミュージカルで役が付いたといって先日チラシを配っていた男子(それでも空き時間には虎美と「リボーン」というジャンプのイケメンがいっぱい出てきて闘う漫画について熱く語り合っているらしい)に見せたら、「無理! ダメ!」と逃げたとか。
   顧問の先生にお見せしたところ、
   「おお、『外郎売り』ができると一目置かれる、がんばってやってごらん」とニヤニヤされたとか。さすが、演劇は専門じゃないと仰っても国語の教科主任。「『外郎売り』? ナニソレ」って先生はちょっとねえ。

   それで、毎日練習しておるのかと今尋ねましたところ、
   「たまに」
   「なんだそれは!?」
   「わたしの本気は3年に一度しか出てこないの」
   「バカ野郎!」
   本当に、バカ。

   大丈夫なんでしょうか、ゴルドベルク中演劇部。

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