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2010年3月21日 (日)

ちょ~新世界は薔薇色! ちょーシリーズ読破記念

   アルバイトが終わったとたんに弾けて、ゲームは日に3本も落としてやりまくるは、文庫を1冊1時間で3冊読破するはの春休みモード。虎ちゃんまだ一週間残ってますがな。引き締めていかないと。

   その1日3冊の対象が、虎美のためにシリーズ完結まで貸していただいていた「ちょー」シリーズ。コバーリム篇までは買ったんだけど、続きはとむ影さんに貸していただいちゃったので。ラノベの森にとうとう足を踏み入れた虎美が、
   「面白い!」と言ったのにしめしめと、
   「次は南の砂漠の国。
   怪しい魔法を使うために美しい姫君が必要といってダイヤがさらわれて、ジオは海賊に弟子入り。子ども達はスマート様と一緒に砂漠の国に潜入するんだけど、スマート様よんどころない事情で大変なことに……」と続きを語って聞かせたところ、
   「読みたい! とむ影さんにお願いしてえ!」となったのでした。
   本当にいつもすいません。

   「すごかった! 徹夜して全部読んだ!」って、虎美、おかあさんでもそれはしなかった。ああ、こらえ性のない性格に育てたわたしが悪いッ!

   お話は、「美女と野獣」を下敷きとしたファンタジーのシリーズ。王位を巡る陰謀で獣に変えられてしまったジオラルド王子が、行きがかり上自分の幽閉されていた森で近隣国の王を助けてしまって。
   「お礼に娘をやろう!」って、そこ子だくさんなので娘はいっぱいいたのでした。その中で、魔神の加護で人間レヴェルを超えた美貌を与えられた(おかげで孤独にたくましく育ってしまった)ダイヤモンド王女が「はーいパパあたし行く!」って名乗りを上げて。彼女はうわべに捕らわれる人間より動物が好きな人だったのです! ぼんぼんでおっとりな王子とたくましくて明るい王女は容姿を超えて恋に落ちたのでした。だってかれらは人間としてなにが一番大切かを知っていたから。
   てなお話が、パート2コバーリム篇で陰謀により神の祭祀が途絶えたため地の恵み(鉱業)が得られなくなって衰えた隣国の再興に関わったり、パート3レフーラ篇で魔神召喚の秘術に取り憑かれた魔法使いの野望のせいで王宮が乗っ取られた砂漠の国で世界を救ったり、そこで世界の狂ったバランスを支えるためのイケニエとして彼らの息子が捧げられるのを阻止するために身代わりになって悲嘆の第1部完! になったり。
   波瀾万丈抱腹絶倒だったわけです。
   驚天動地の結末にも、彼らの気のいいそして能力の高い友人達がきっと何とかしてくれるだろうということで希望を残した一時休止でした。
   そして、満を持してのシリーズ再開が「ちょー新世界より」。
   このシリーズ、一部の例外を除いてクラッシックのタイトルから題名を取ってきてます。一部フィナーレは「ちょー魔王」だし。
   はじまりを東の大陸にして、文化の違う地域を持ってきました。ヒロインは黎宝珠。チャイナな文化圏を匂わせてますが、そのものズバリな単語を使ったりはしません。食べ物も、シュウマイとは言わず、「挽肉や貝を小麦粉の皮で包んで蒸したもの」なんて表現して。この作者さん、こういう描写がウマイです。見たこともない国の風俗、行ったこともない国の地勢がみごとに描かれます。こういうのがファンタジーを読む醍醐味です。登場人物のすがすがしさだけでなく、御伽の国の世界が楽しくてこのシリーズを読みたくなるのです。
   宝珠はとある外見的事情で忌みきらわれています。今のニッポンではいや~んなにそれカワイー! な特徴なのですが、迷信深い東の大陸では、悪魔の象徴にも見えるのです。そして、母からの虐待・ネグレクト。
   さすがです、美しすぎて畏怖される姫君の次には、悪魔的容姿で虐待される少女を持ってきました野梨原花南(作者)。
   相手役には、今までの世界の中で陰気で企み事ばかりしていると仮想敵国として扱われて来たジールのクラスター王子。彼もまた異相によって親に嫌われ、外の世界に出ては殺される、と幽閉されてきた少年でした。殺されてなるものか、と必死の努力で勉強し、耄碌した父を圧倒して国政を握るようにはなりましたが、どうしても刷り込みから解放されない、まだ城から出て国民に姿を見せることができないでいるのです。
   その彼は、心の隙を魔法使いに突かれ、世界全てを呪うようになります。
   「世界を壊す!
   被害妄想に取り憑かれた王の国、魔法学校を擁する国ジールが、世界破壊を世界征服と偽って作戦行動を始めました。
   魔王の召喚・捕縛そして軍事的利用です。
   その大きな物語の中で、宝珠の役割は「東から来た少女が魔王を害し、望みを叶える」という予言の実行者。そして、宝珠とクラスター王子は出会い、クラスター王子の姿に驚かなかった宝珠にクラスター王子は感動するんですね(皆が黒髪黒い瞳の東の大陸から来た宝珠にとって、髪の色も目の色も肌の色もさまざまな西の国々の民はみな見慣れず、一度レフーラに上陸してその洗礼を受けてしまっていた宝珠にとっては目が何色でも髪が何色でももはや驚くに値しなかっただけ)。
   クラスター王子は宝珠に恋をしてしまうのです!
   自分を認めない世界を壊したいクラスター王子と、自分を排斥する故郷を出て自分を受け入れてくれる国をめざす宝珠の心の戦いなのです。
   自分の愛を容れて王宮にとどまって欲しいというクラスター王子と、自分に求婚してくれたことは嬉しいけど、トードリアの宰相への伝言を頼まれたという約束を果たし、自分がトードリアに迎えられたいという宝珠の心はすれ違い続けます。これがメインのテーマ!召喚されて、捕らわれて、出頭して。3度宝珠はクラスターと巡り会い、3度その手から逃れます。逃げるからまた追う! 世界の真理!

   大戦前の混乱期に宝珠は国を超えて手配されてしまいます。恋の相手を探すのに国家権力使うなよ、男の風下三千里だおまえは。人間・魔族双方から追われる身となった宝珠に従うのはダイヤの息子、三つ子の一人オニキス。世界のためにイケニエとなる運命の子でした。彼ら兄弟は父母を救い出すためにまたそれぞれ方策を探っていたのでした。二人は熱砂のレフーラからコバーリムの森林地帯、ジールの街角、冬の山脈を越える命がけの旅を続けるのでした。

   子供達篇も登場人物がたくましい! 彼らはつらい現状に甘んじようとはせず、それぞれあがきます。宝珠は家を出て、西の大陸、トードリアを目指します(これが、レフーラ篇で最後にジオと出逢って奴隷の身から解放してもらったリターフが約束通り東の大陸を訪れていて、その縁というのがウマイ!)。クラスター王子にしたって、迫害されるだけの日々から脱却して、父王を圧倒し、政治権力をほぼ奪うまでに既に成長しています。三つ子は魔神と交渉して父母を目覚めさせることに成功し、秀才サファイアは魔術を学び、元気なオニキスは必要な「神剣」を探し、女の子のオパールは王族としてのしがらみを引き受けて女学校で大人しくしています。脇役の大人達が、ほんとに「美女と野獣」の頃からのレギュラーから、名もなきおじいさんおばあさんまで、彼らを優しく、時には厳しく見守り、手助けしてくれてるんですよねえ。実にいい大人です。

   

ダメダメなのは魔法使いです。レフーラ篇もそうでしたが、今回も、手段を目的にスライドさせちゃって、マッド・サイエンティストのようになってしまってました。そういうのに限ってまた力がある。一国の資源(人的含む)とか富とかを費やして、おまえそんな私的でしょうもない目的のために魔神を召喚したり魔王をとっ捕まえたりするか!
   クラスター王子もそうでしたが、力のあるものはその力の使い方についてよく考えなくてはいけないという実例(いや、現実ちゃう)でした。
   ま、その大変な世界の危機を救ったのも、主人公側の魔法使い達なんですけどね。彼らも必ずしも「いい魔法使い」ではないです。レフーラ篇の冒頭で、事情があって正体を明かせないゴルディオン様を市井の見せ物扱いしてイヤミを言ったレードラとか、大昔に命を落とした自分のために妻が渾身の魔法で魔神達に交渉した結果、生き返り、子孫とともに世を見守り、世界の危機が起る度にイケニエを選定していた魔法使い一族の長老とか、作中何度も言われてます。魔法はただの力、使うものの意志でどうにも転ぶ、と。実に真理です。魔法を科学に置き換えれば現実にも通用するでしょう。

   そういう、人参のケーキですとか、フルーツやなんかで甘く口当たりをよくした今時の野菜ジュースのように、目や舌を楽しませるようでいてちゃんとそれを摂取するお小さい人たちの心身のためにもなる、非常によい物語であったと心から思います。もう、ライトノヴェルのよい見本のような作品。作者さんを尊敬してやみません。

   そして、尊敬するのはスマート・ゴルディオン様!
   貧窮の中で身を起こし、魔法学校の門前の小僧から向学心を認められて名門の秀才と机を並べるや才能を開花させ、努力で魔法を修めたのち、友人との競争で悲劇を経験してからは苦悩の日々を送り、よき師を得て復活してからはもうはっちゃけた遊び人になってしまわれて。だいたい「ラボトローム王家ご一行」になにかあったらこのひとが無茶やったと相場が決まっていて。お供えの団子をつまみ食いして下痢するというしょうもない登場から、旅費を蕩尽して王子様に貧乏旅行をさせたり、魔法の余波で南の果てに飛ばされた子供達を守るために身をやつして花街でいかがわしい占い師の真似をしたりと、獅子奮迅のご活躍。それでも世界を救うことのできる最高の魔法使いの一人には余裕で数えられてしまって。作中、3柱の魔神全部の召喚に立ち会ってるのだから実力は確か。ガリ勉で飲みに誘うと睨まれる青春時代から、いつどんな状態でも若人に暖かく目配りしつつ人生を楽しんでいる老年期(姿は若いハンサム)へのシフト・チェンジは理想です。わたしもこんないい年寄りになりたい!

   あと、大変だなあと思うのが、親についての描き方。人間を作ることだしなあ。
   我が子のために命を投げ出したダイヤモンド夫妻、異相を持って生まれた娘を魔物、魔物と罵って虐待して育てた宝珠の母(それでも、後ろ暗い技術ばかりとはいえ、いろいろ仕込んでくれた義父たちがいたということは、彼らにはそれなりに可愛がられてもいたとは思う)。異相のクラスター王子の生母は同様に、おまえを生んだおかげで自分は幽閉された、と愛憎入り交じる想いから「姿を見られた殺される」と呪いとも言える言葉を浴びせ続けてました。父王は、他に嗣子が得られなかったことから手のひらを返してクラスターを頼るようになり、今や足かせとしか見られていません。物語終盤では、その父も「卒業」されるように描いてありましたが、大団円後、ジール王室がどうなったかについては不明。

   わたしはあまりにも物語世界に没入したために母からキチガイと言われて育ちましたが、自分が親になったら子供にはこうしてやろう、こう接したいと願って親になったのに、さて、ちゃんと思った通りの親になれていますかどうか。同じ本を読んで感想を言い合ったりということはできていますが、娘にはありがたいと思われているのかどうか。
   とりあえず、この本を紹介できて良かったと思っています。とむ影さんも、どうもありがとうございました。
   ご覧のみなさまも、もう完結して久しい作品ですので書店にはないかと思いますが、お目に留まりましたら是非どうぞ。

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コメント

おもしろかったですよね!
うちでも、娘と、彼のこういうところが良いの何のと楽しくおしゃべりをします。娘はぶっちぎりでスマートゴルディオンのファンだそうですが、王子のふさふさのしっぽはやはり捨てがたい、と申します。
私の一番のお気に入りはジオラルドです。もともと好きでしたが、海賊編でよけい!好きになりました♪
ちなみにちょーシリーズ、以外だと、「マルタ・サギーは探偵ですか?」のシリーズもとってもいいですよ。

投稿: とむ影 | 2010年3月29日 (月) 16時53分

 王子様達もいいですよね。アラン王子は最初ただのやられ役のぼんぼんだったのに、なんて立派に成長されて。でも、産まれた子供がもう少年少女なんだから、その親世代のアラン王子もきっとアラサーだよね。それくらいの分別はないとなあ。
 ジオはいいです。おっとりさんだけど、締めるときは締める、心の中に王族としての心の芯がちゃんと通っている。これも、いい王子様のモデルであると思います。レフーラ篇での痛恨の一事、自分ひとりが助かるのも精一杯の時、隣の誰かをも助けることができるか、は、胸にいつまでも残る究極の選択でした。助けなかったことで一生心を焼かれるということもあるんだなあと。その告白に対するダイヤの反応も凄かったけど。
 ほんと、いいお話でした。

投稿: まいね | 2010年3月30日 (火) 13時50分

はじめまして。
最近、10年振りにちょーシリーズを手にとり、思わず完読してしまったものです。

かなり感動して、ググっていたところ、ここにいきつきました。

シリーズ全般がすごい纏められたブログに思わずコメントを描いてしまいました…

ちょーシリーズ、いいはなしですよね!!
小学生の頃は、そこまで深くはわからなかったけど、人間の暖かさとか、希望とかがたくさんのすてきな話でした…

まだ、ライトノベルという言葉がはやってなかった時代のお話ですが、ほんとにライトノベルの見本みたいなお話でした…

すてきなブログをよませていただき、ありがとうございました★

投稿: さい | 2010年12月10日 (金) 20時52分

 いらっしゃいませ さい さん!
 いいお話というのは読んでうっとりするだけでなく、それについて語り合うことでまた知らないひとと出逢うこともできるのですね。あの「楽しかったぁ!」という気持ちを共有できて嬉しいです。

投稿: まいね | 2010年12月11日 (土) 02時40分

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