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2009年12月22日 (火)

あなたの絶頂の時に

   その昔、中世の日本文学史の時間、だいたいあやしい性格のひとが中世を選ぶのか、どんな健全な文学青年も中世を選ぶとあやしい心持ちに後天的になるものか、やたらとヘンなネタを振ってくる先生でした。

   「あなたはどのような名前で後世に残りたいですか?」とか聞いて来やがりました。

   たしか、平家物語のころの歌人であるところの彼女、日本(文学)史でいうところの女房です。ひとの奥さんかどうかじゃなくて、ひとんちにお仕えして、個室を貰ってる高級侍女という意味。下働きはしません(お裁縫ぐらいはやってたかな? 枕草子にそんなシーンなかった?)。やんごとないひとのスタッフとして渉外やら公報(てゆーかコンパニオン・ガール?)で活躍するのよね。後年の大奥のお客あしらいとかお中臈とかもこんな感じでしょう。
   生涯有名なところに2回ほど仕えていて、そういうときのおつとめネームは、「レディなんとかのところの窓口さん」もしくは「清原氏の少納言さんちのコ(これは清少納言だ)」という名乗り(呼ばれ)方をするんですが、彼女は「○○門院××」と呼ばれることをこそ欲した云々。百人一首の作者レヴェルで言うと、待賢門院堀川、皇嘉門院別当とかいうネーミングね。なんの5文字熟語かと思いますよね。
   最初にお仕えしたレディ○○(院号を許された貴婦人ってことは皇族のお妃レヴェル)のところで呼ばれた名前、そのお名前を冠して呼ばれることを許された自分をこそ尊んでおって、源平争乱ののち、次に仕えたレディなんかあほくさくてしょうがない、こんなお方のところのスタッフとして記憶されたくない、そこまで言ってはいないけれど、そういう気負いが名乗りにある、とこういう流れであったような。……もしかして、後年読んだ「ひかりと影の平家物語」大塚ひかり(?)の内容と混ざっちゃってるかもだけど。

   その後でまた度肝を抜いたのが、
   「誕生日は選べないけれど、命日は自分で決められる。自殺という手段でね。……あなたは何月何日に死にたいですか?」って。
   これは西行。
   ねがはくは花のもとにてはるしなん そのきさらきのもちつきのころ

   「西行の命日は2月16日です」
   釈尊入滅日ですね。じゃなくて。
   陰暦2月だからばっちり花の季節の満月の頃です。もう一日がんばったところが可愛い、と言ってましたが、コンピュータ発達して軌道計算して調べてみたら、その年の2月は16日が満月だったって、でき過ぎ!

   死ぬ時期を選べるならなんて良いでしょう。

   万雷の拍手のうちに立ちつくす 我が玉の緒を絶てアトロポス 
                                       舞音

   最近はTV局が映画を作るから、映画封切り前には人気を煽る番組が目白押しです。先週末は、「のだめカンタービレ」の映画が封切りだというので、ドラマの再放送やら総集編やらであのテーマがさんざん掛ってました。結局見ちゃったんですけど。
   Sオケ篇かな? クライマックスで、千秋がタクトを振りながら、泣きそうな顔になるんですね、ちょうど、ベートーヴェンの7番を振りながら、最初に指揮者失格と言われた日からのことが彼の胸に去来する(再現映像で流れる)といううまい作りだったこともありますが、あの時間帯の気持ちはよく解ります。
   本番、ステージの上で、曲をやりながら、ああ、楽しい、やってきたことが全部出し切れている、いい出来だ、でも、もう終わってしまう、もう次はない、明日からはこの仲間で集うことはない……という達成感と裏腹の切ない感情に襲われるんですよね。

   音楽は、構築したそばから崩れていく芸術なので。

   録音技術の発達で、その側面は限りなく消えてしまってますけど。

   じゃあ音楽でなくっても。

   昭和の末期、たぶんジャンプでやってた器械体操の漫画、主人公はなにやら持病を抱えながら体操をやっておって、最後の大会の、最後の演技、持てる力を振り絞って床の演技に挑むわけです。最後、新月面かなんかを隅っこで決めるんですが、勢い余って演技区域から出ちゃった。四角の床面の、その角のところをちょうど一歩出ちゃった辺りで、いい演技だったけど失格(? 致命的減点?)惜しかったねと声を掛けると、最後バンザイして直立不動で、彼は息絶えてたんだと記憶してます。
   前後の脈絡はわかんなかったんですけど(そんな真剣に読んでなかったので)、感動的シーンだと思いました。
   当時の年長の読者は、あり得ない、やりすぎとか冷笑してたかもですが。 

   わたしなら、一曲やり終えて、拍手が鳴り響いてるその時に終わりたいですね。

   「玉の緒」は、万葉以来の由緒ある「命」の美的表現ですが、ギリシャ神話ではひとの命数である麻糸を、運命の女神の次姉ラケシスがはかり取り、末妹クローソーが紡いだのちに時が来てそれを断ち切るのが長姉アトロポスなんだとか。大河SF漫画に使われたのでゲーテ読まなくてもオタクな人たちは知ってます。和洋折衷ですいませんが、そういう感じ。 
   まあ、後始末するひと大変だから、ベッドの上で死ぬのが一番平和なんでしょうけどね。

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