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2009年10月 2日 (金)

文学の使命

   一生懸命検索したけど出てきません。こないだまでアニメでやってたから、絶対どっかで名台詞として上がってると思ったのに。

   近頃とみに衰えている記憶を振り絞って再現するに、こんな感じ。

   「だったら貴様がやってみろ! 
   貴様の空虚な弁舌に似合いの金鍍金の棺を用意しておいてやるからな!」

   田中芳樹「タイタニア」、しゃべったのは宇宙を支配するタイタニアという貴族のトップ5人のうちの一人、主人公にこてんぱんにやられてしまってつるし上げを食らったアリアバートという軍司令官だったか大臣だったか。
   「貴様」は、悪い意味で石田三成のような、同じくトップ5人の最年少(だけに、時期トップを狙う他の3人に噛みつきおとしめることを存在理由にしているフシがみられる)のイドリス。どっちも若い美形という設定であります。就職した当時、同じ作者の「銀河英雄伝説」を読み終わって盛り上がってた頃だったので、期待とともに手に取りましたが……3巻まで出て途絶。なんで今更、続きを書き足したわけでもないのにアニメ化なんだろうなと思ってました。

   30前の気取ったアンチャンたちが、「天の城」とかもったいつけた司令本部で、200年ぶりの軍事的敗北の責任を問う会議でいやみの応酬をした結果がこういう啖呵なんだから、このタイタニアという宇宙貴族もそろそろ落ち目ね、という話なんですが。
   真面目なんだけどおもしろみがないとか、2流の彫刻家が作った彫像(生き生きとした魅力がないという意味?)とか、それまで地の文でもムチャクチャ言われておったアリアバートが、年下のくせにキャンキャンあげつらうイドリスにとうとう堪忍袋の緒を切って言った台詞が上の台詞でした。

   もう、びっくり。

   「金鍍金(きんめっき)」という当て字がもう綺羅綺羅しくって、20年たっても脳裏に焼き付いてたんですが(でも細かいところは忘れたみたい)。
   若くて実績がないのに、トップ5家族の当主として(父は病気で彼の成人を待ってやっと引退。その辺の壮絶さが描写されてるので読み進めるとかわいそうなヤツとも思えてくるのですが)いつも偉そうに振る舞っている、口ばっかり達者で中身が伴ってない、というのをびしりと言い当てているんですね。
   そんで「棺桶」だからな。
   自分は大敗を喫したがなんとか生還できた、けれど、あの敵に貴様が当たればきっと死は免れないであろうという冷静な決めつけ。だっておれはタイタニアの軍事を長年(つっても彼も27才)司ってきたから。現場を、戦いという物を知っているから、という重みのある台詞です。

   アニメの方は一瞬旦那様がチャンネルを合わせたのを見て、あら、リディア姫可愛い、と思ったぐらいで全然見てませんでした。この姫様、とある政治的事情でタイタニアに人質としてやってきた某国の王女様なんですが、精神が健全で、アリアバートのイトコで異母兄弟というややこしい関係のジュスラン・タイタニアさんうちのいいお客になっています。洞察力に優れているのに言いたいことはハッキリ言う性格で、ドロドロな貴族社会の中での一服の清涼剤なんです。

   で、なんでこんな台詞を思い出したかというと、だって、うふふ、

   あのひと、あんまり得意そうだから

   未曾有の国難に、ややこしいことは仲間に押しつけて国を明けて、飛び回ってたりするから。

   バラの御殿に、金鍍金の棺はきっと似合うわよ。

   ラノベからまた引いてなんですが。

   旧社会党の皆さんは毎日「十二国記」(小野不由実)からこの台詞を暗唱なさったらよろしくてよ。

   「責難は成事に非ず

   えっとね、シリーズ後半の短編、「華胥の幽夢」からです。前の王は失政続きで、このままじゃいかん、王の施政はここがいかん、と若い理想家たちが王を追って新しい王朝を開いて数年……どうも上手くいかない、わたしは天に選ばれた王じゃないのか、理想を現実に行うのはどうして難しいのだ、こんなにがんばっているのにどうして民心が離れるんだ……悩み始めた新王が、とうと「しでかして」、その遺言。

   ひとが一生懸命やって、それでもほころびが出ている物を、あげつらうのは簡単。さて、じゃあそれをチャラにして一から皆を満足させる物を作るのは……別の問題。

   似たようなことは、「ジェネラル・ルージュの凱旋」(海堂尊)でも言ってましたね。

   若い思慮の浅い人々を対象にしたような軽く読める読み物でも、これくらいのは持っております。文学ってまだまだしっかりしておりますね。

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コメント

いきなりやってくれちゃいましたァン! 無駄を省いたはずの予算が「庶民の皆さんの生活を考えた結果」史上最大規模ってどうよ? 「十二国記」の方の前王の政治を否定しつくしたらなにも政治ができなかった理想倒れ王の路線ね。ラノベの登場人物にも劣るようなことをやるなよ。
 しーおーつーを削減するならその排出もとの自動車の利用を抑えるべく目配りするのが筋じゃないのかよ、なんでもただにすればいい政府って中学生ですか。うちでラノベ読んで昼寝してるだけの主婦にも突っ込まれるようなご立派な政策!
 とりあえず神奈川補選には行きまーす♪

投稿: まいね | 2009年10月19日 (月) 19時54分

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