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2009年8月20日 (木)

はめられた話

   例によってお盆過ぎに実家に顔を出すと、両親が作り笑いをして言うには、
   「今年こそはうちの墓に参って貰う」って。
   「毎年毎年堪えてきたのだ。嫁ぎ先の早乙女家の墓参りより先にうちの墓に参る訳にもゆかず、かといってあんたはいつも帰ってしまう前日に4,5時間しか来ないから、大聖寺に点在するうちのゆかりの墓全てを回るには時間が足りなかったが、今年という今年は絶対行って貰う!」と、子供や旦那様には留守番をさせておいて、わたしだけ車に乗せられて金沢から南へ100キロ(もないかな?)の県境の街へ。分家やら祖母の実家など関連のところまで回っている余裕はないからと祖父母の入った見覚えのある墓だけに直行。

   早乙女家がわの墓は金沢市の中心部に集中してるしバス通りをちょっと入ったところにあって判りやすいし行きやすいので、猫科のひとを含め毎年ちゃんと参ってるんですが。
   「嫁に行ったからこのうちの辛気くさい墓とはもう縁が切れたと思っていたよ」
   「そんなわけがあるか! 生きている者の義務だ!」
   父は昔からこういうことだけはきっちりした男でした。
   でもさー、大聖寺近郊の山にひとつ、海際の寺にひとつ、市街の寺にひとつ、さらにもうひとつあったと思うんだけど、子供の頃からシーズンごとに通ったけど、あなた任せで全然場所覚えてないんだなあ。父が亡くなったらもう行けませんです。

   それでもまあ、ご近所から
   「おたくのお嬢さんは(毎年顔は出すくせに)お墓参りには行かれないの?」なんていやみ混じりに聞かれたとか聞きますと、親の顔も立てねばならぬかと、大人しく拉致られて大聖寺までドライヴ。
   さすがに見覚えのあるお寺の脇から墓地へ入り、そういえば、もう山まで通うのは辛いからと数年前この菩提寺に持ってきたという見覚えのある墓石の前に立ちますと、なにやら殊勝な気持ちになります。昔から変わっていない実家の墓参りセット(お菓子の空き缶に線香や蝋燭、ライターなどを入れて持ち歩く)を開けて、両親はいそいそと火を点けようとするのですが、この寺は海に近く、いつも風が強くて蝋燭になかなか火が点かないとか……。それが、なんどか試すうちに順々に灯りが点り、伯父か誰か、先に来ていたひとの燃え残りの蝋燭にもついでに火を灯すと、合計4本も点ったのでした。
   こういうのにも宗派や地方色があるようで、あのへんの線香は、やや太め、色鉛筆の芯ほどの線香を4,5本束にしたものを、燃えやすいように赤い紙で巻いたものを使います、長いまま火を点けて、線香立てに立てるはず。細い線香も見たことはありましたが、一本だけすっくと立てるのは見慣れなかったですね。

   「珍しい、ここは風の強い場所で、2本が揃って点ることも絶えてなかったのに、今年は4本も明々と灯っている。きっとおばあちゃんが喜んでいるのだ。あのひとは、5人も産んだ自分の子を滅多と負ぶうことのない猛女であったが、おまえのことだけは喜んでおんぶした。それほどおまえを可愛がっていたのだから」云々と言われますと、さすがにこちらも、
   「おばあちゃんごめんなさい」という言葉が口をついて出たのでありました。ちっ、ハンカチが濡れたぜ。

   とりあえず義理は果たしたと言うことで、
   「今年はハードスケジュールでまだ早乙女家の墓にも参っていないのに」とさんざん恩に着せて実家に舞い戻り、お留守番をおさせした旦那様とすっかり自分ちのようにくつろいでいる猫科の人々(片や涼しい場所でお昼寝、片や弟の「こち亀」を出してきて読破)を引き連れて焼き肉を奢らせたのでありました。

   ちゃんと翌日、早乙女家のお墓にも参ってきましたよ(3カ所)。しかし、少子化になると父方母方だけじゃなくなるから墓参りもツアー化して大変。回りきれません!

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コメント

お帰りなさい(#^.^#)
うちの父は、墓の地図を作って、それに沿ってまわってました。今年は年寄り二人で10箇所まわって、大変だったようです。例年だと孫達が手伝うのですが、今年はいろいろとタイミングが悪くて。不肖の娘は……まあ、あまりあてにされておりませんで。

投稿: とむ影 | 2009年8月20日 (木) 14時53分

 地図は必要ですよねえ。父が健在のうちに書いといて貰いましょうか。
 弟は真面目に受け止めて、「小松に降り立つと同時に大聖寺に向けてハンドルを切る」そうです。彼がいればうちは安泰……?

投稿: まいね | 2009年8月21日 (金) 22時59分

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