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2009年3月 4日 (水)

ページをめくれば - ちょーシリーズ再評価 -

   じゃあちょっと趣向を変えて。

   文章がうまいというか、いかに文字を配置するかまで演出というかに凝っているという文脈で出てくるのが、京極夏彦が、もうあとはこのまま紙に印刷するだけというところまでレイアウト込みで原稿を出力して持ち込んだという話。それがどのくらい凄いのかというのはまだちょっと意味が実感できてないです。熟語がページをまたがってないとか、そういうの?
   そういえば、幻冬舎が、 郷・ひ・ろ・み の離婚に合わせてそれにいたる経緯を綴ったエッセイだか自伝だかを出すとかいって、極秘で印刷するその原稿が、たとえ一ページを持ち出したとしても内容が漏れることのないように、離婚という文字と語り手である大スター ・ 郷・ひ・ろ・み の名前とがページの中で一緒に存在することがないようレイアウトに気を配ったとか、そういう苦労話まで披露されてたなあと思うくらい。

   小説を読んでて、おお、これはやったなあというレイアウトは、「ちょーシリーズ」でした。
   これは、最初の長編が「ちょー美女と野獣」というパロディものの可愛らしい少女向け小説で。とある王国の王子が、王位簒奪を企むイトコの陰謀で野獣に姿を変えられ、「その姿でも愛を誓ってくれる人が現れたら魔法は解けるよ」なんていって森に閉じこめられてたところ、旅の途中迷い込んだまたとある国の国王の命を偶然救ってしまい、「うちの娘を嫁にやろう!」と約束され、そこの人間バナレしているとまで陰口を利かれる一番の美姫を差し向けられてしまうわけです。で、なぜか一心に彼に尽くす姫君に絆されて恋に落ち、二人は永遠の愛を誓って、彼は晴れてもとの姿に戻った……ところが。
   「え~なんでぇ~? もとの方が良かったぁ~」と、いきなりガラ悪くなってしまう姫君。姫君は、初恋のひとが半獣の姿の魔神なので、獣が好きな人だったんです……。という、抱腹絶倒ながら人間の価値は見かけの美しさじゃない、正義を志向して努力する気高い心にある、というテーマを持っておるじつに名作でありました。

   地味にこれ、ジョジュツで。たぶん、このイトコさんは……なんだな、と、良く読めば解るんですが、解ったあとはじつに爽快で、そうだろそうだろ、と肩入れしたくなります。二度読み推奨作品。悪役ながら、見事に主役カップルに敗れたあと、続編以降はじつにいい主人公側の脇役として活躍してくれます。悪役のときでも、自分に従え、とばかりに王子の親友の魔法使いをけっ飛ばすシーンは妖しい魅力がありましたって、おいおい。

   さて、そういうわけで地味に筆が立つひとであると認識しておるこの方(野梨原花南)の、「文章レイアウトが凄かった作品」例は。
   パート2「ちょー夏の夜の夢」のクライマックスでは、魔法合戦があります。
   前述の、王子の親友の魔法使いA、彼は、シリーズ中、第1作のように心ならずも王子を害する魔法を掛けさせられたり、敵に潜入した結果主人公側と敵対させられたりと可哀相な役どころ。もう1人は、パート2でなんとも因果な過去を背負ってることが判明したけれど、飄々としたいい年寄り(でも容姿は青年、ズルイ!)、自称、美貌の流浪の大賢者。主人公達を導いたり、ヒロインの姫君とホントに子供のような口げんかをしたりとなかなかいい脇役をやっておるのですが、物語のクライマックスで、敵の魔法使いに操られ、心ならずも王子を害しようという魔法使いAと、主人公の危機に颯爽と現れた魔法使いB(大賢者)が、目を見合わせて、同時に呪文の詠唱を始めるんですな。これが何を典拠としておるのだろう、魔法っぽい美しい言葉を延々紡ぐのであります。高まる緊張。なんの呪文かは解らないなりに、なにか、凄いものを召喚しているであろう雰囲気に気づいて、悪の魔法使いは戦慄します。大げさな、今まで以上の美辞麗句が重なって。呪文は最終段階、との地の文が。
   「いざや来たらん魔術の宰(つかさ)!」と、あとは魔法使いBが名乗って。次にはAが名乗りを上げる。そして、リフレイン。
   「いざや来たらん魔術の宰! この場に音律の波は満ちたり!! ……マジックマスター……」
   ここまでで、ちょうどページの終わり。
   読者の方も、疑問を抱いたところで、ページをめくります。
   いいや、期待だ。
   魔法使いのレヴェルの上にある、魔神(マジックマスター)、しかも、主人公の味方といったら、読者が知るのはただ1人。

   「バロックヒート!」
   このページには、この一語のみ。

   彼が現れてしまえば事態は一変するというのが、如実。じっさい、片付いておるし。

   

今までこれよりスゴイレイアウトには、出会っておりません。

   シリーズは完結しておって、そうなるとこういうライトノヴェルは店頭から消えるのが早いですが(わたしはこの巻までしか買っていなくて、去年発掘して読んではまった娘に泣かれた)。これはテーマといい、こういう文章の巧みさと言い、わかい人には読んで欲しいと思いますね。こういうの、中学校の図書室に入れてくれるような司書のかたって、いないのかな。

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コメント

 ああ、だがしかしうちの豚児ならぬ豚娘(とんむす)は、「美女と野獣? そんな話しらなーい」と申すのであります。オマエはラノベなんか100年早い! そこのボーモン夫人の書いた原作から読め!(おかあさんは自分も、ご存じの連中を使ったWパロディを書くためにちゃんと原作を買って読んだ、古本だけど)
 ディズニーアニメはどのくらい改変されてます? 

投稿: まいね | 2009年3月 4日 (水) 01時31分

はじめまして。

ちょーしょーもない目的でバロックヒート召喚の詠唱を探していてGoogle先生にこちらをご紹介いただきました(^-^;

このシリーズは多分最後まで読み通したのですけど、所々にある呪文の詠唱シーン、呪文そのものも詠唱の描写もほんとにかっこよくて大好きでした。

ご案内のシーンも、師弟ならではの息のあった詠唱の描写とあわせ、今でも思い出すだけでぞくぞくしますね。

このシリーズの文庫本は確か保存してあるはずなので、また読んでみようかな、という気分になりました。いいきっかけをありがとうございました。

投稿: ×ね | 2014年4月29日 (火) 10時05分

 いらっしゃいませ(^^)
 「ちょーシリーズ」ほんとに良かったですよね。
 呪文自体の言葉の美しさ、その詠唱シーンの描写のかっこよさ、たしかに、たしかに~~~~!
 コバルトの記念本での書き下ろし番外編ご覧になりましたか? やっぱり野梨原節炸裂で読んでいて心が温かくなりましたよ! なんだかんだいってあの夫婦はベストカップルだと思います。
 

投稿: まいね | 2014年5月10日 (土) 08時08分

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