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2009年1月18日 (日)

切れる脳  - 漫画の中で描かれる天才 -

   ジョジョ5部の名場面と言えば、序盤、ブチャラティチームの皆にジョルノが紹介されるシーンで、殊勝に小学校の算数をやっている二人のシーンでしょう。
   小学生にして育児放棄に遭った少年ギャングのナランチャ(17才)は、学がないのを苦にしていて、丁度自分を拾ってくれた先輩(だが年は16で下)、フーゴが天才児でチームの参謀役であるのを利用して、勉強を教わっています。フーゴも、丁寧な言葉遣いで、その向学心を褒め、勇気づけながら初歩から算数を教えようとしています……。問題は、16×55。
   「いいですか、6かける5はいくつです」
   「6かける5はろくご…」ここでページをめくって、最初のコマで、自信なさそうに、
   「30?」教えるフーゴは身を乗り出して、
   「そうッ!  やっぱりできるじゃあないですか! もう半分できたも同然ですよ!」
   「そーかッ! ろくご30ねッ! よしっ!」ナランチャも顔が輝きます。

   ここで、別の登場人物に描写が移って、しばらくナランチャは外れます(計算中)。運ばれてきたデザートが4つで縁起が悪いと言って、ミスタが暴れ出したのです。これでなんだかあんまりみんな知性的じゃないなという雰囲気が醸成され……ただけじゃない伏線もあったのです。
   そして、
   「できたの……どれどれ?」でまたページが変わり、次のページの右上には、

   「   16
    × 55
       28 
 」

   という伝説に残る迷解答が提出されていたのでした。 

   「何これ……?」と、冷静なフーゴの端正な横顔が描かれます。
   「へへへ(ハァト) 当たってる?」と得意そうなナランチャ。

   その下のページの3/4を使った大コマでは、なんとフーゴが左手でその辺にあったデザートフォークを握り、ザグゥッとナランチャの頬を刺していたのです!! 当のフーゴはもう涼しい顔で、ね。
   フォークがあって不自然でない状況のための「ケーキが4つ」だったんですね。すごい。

   それで、さっきまで穏やかだったフーゴがいきなり切れるのです。

   「このチンピラがオレをナメてんのかッ! 何回教えりゃ理解できんだコラァ!
   ろくご30ってやっておきながらなんで30より減るんだこの……」

   「クサレ脳ミソがァーッ

   フォーク2本を重ねて頬に突き刺し、かなり深く入ってしまってます。頭を掴んでメキメキ言わせて、ドグシャァと叩きつけてもいますから、流血の大惨事。

   彼らは彫りの深い若いイケメンなのにです。読者は思いっきりビックリさせられます。   
   (うわーこのひとたち本当にギャングだ!!)

   この「クサレ脳ミソ」という単語は、週刊誌に発表されたときにはこういう言葉ではありませんでした。

   「ド低脳」と言っていたらしいです。これが、どうも良くない言葉なんじゃないかというふうにもの言いが付いて、でも、そういう悪い言葉を使う悪いコちゃんを描くシーンだからと、作者も悩んだ結果、語呂が悪いとか、より悪意が籠もっているとかいろいろ言われますこの表現に落ち着いたらしゅうございます。

   ま、短く言い捨てた方がとりあえずギャングらしいわな(←とりあえずこれがうちの公式見解)。

   細かいニュアンスの違いはどっちの意見も聞きすぎてよくわかんなくなっちゃった。保留。

   作品として見るべきところは、それを、さっきのケーキ4コで暴れた少年や、そのあとジョルノにとんでもないイタズラを仕掛ける青年が、「あーあ、切れた切れた また切れた」と平然と見守ってたり、やられっぱなしではなく、ナランチャがナイフを取り出して突きつけ、
   「ひとを見下す言い方は良くない」(これも「クサレ脳ミソ」に対する台詞として教育的に変更が入ったらしい)と言ったり、殺伐とした雰囲気が良く出ておった点なのでした。

   で、天才というものの描き方として見るなら、

   「16×55 は二桁掛ける二桁……というレヴェルでの概算ではなく、一度ろくご30の計算をして30という積を計上している限り、全体の答えが30を切ることはないという概算の立て方をしていること」

   「よく言われる、『天才は計算の解らないひとの解らない理由が分からない』を解りやすく描いていること」

   この2点において優れているシーンだと思うんですよ。

   いや、わたし天才じゃないですけど、この計算で、繰り上がりの3が消えるとかならまだしも、なんで1の位に8が来るかとか、どこから2が出てきたのか、ミステリアスな誤答だと思いますよこれは。

   30って言っといてなんで30より小さくなるんだという切れ方は、最初理不尽だと思いましたが、よくよく考えると合理的であります。数字に強いひとってこういう考え方するんだ……。

   そーいえば、大学の頃、会計をやってたのは数学科の子で、一枚7円のコピー屋でコピーを取ったとおおざっぱに、
   「108枚で75……5円くらいだったかな~」と言ったらば、
   「一枚7円でどうして端数がそうなるの?」と細かく突っ込まれたことがありました。
   こっちは五円玉を支払った視覚の記憶でしゃべってるのに、向こうはちゃんと計算をしておるのでした(それはまいちゃん@大学生が緩すぎ?)。

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コメント

頬には翼突筋静脈叢とかいう細かい静脈のごちゃごちゃしたところがあって,切りようによっては大出血するらしいです,気をつけましょう (違)
その会計さんのように,数学的センスがあると正しい答を計算するまでもなく間違いは見えることがありますね.16×55だったら,九々を知らなくても「答が55より小さいのは変じゃない?」とか,九々で5×6=30がわかるなら末尾の数字は0でなくちゃいけないはずとか,気づくわけです.まじめに16×55を計算するのは面倒くさいです.
16が2の4乗だから16倍するには2を4回かければいいわけで
55→110→220→440→880
と暗算すると楽かも.

投稿: 三ねんせい | 2009年1月19日 (月) 10時28分

 あはは、たしかに1以上の数同士なんだから増えてなきゃいけませんね。
 わたくし愚考いたしますに、このミステリアスな誤答、まず、ろくご30で3繰り上がって、5に足して8が出た時点で嬉しくなって、30のゼロを忘れて1の位に8を書いちゃったのではないかと。そんで、10の位の方の×5も、あ、同じだ、2回やればいいのね、と、2回やるの2をそのまんま書いちゃったんじゃないかと。
 中学年の担任の先生はこういうの見て、思考の筋道を追っていけてるんでしょうか。スゴイナア。

投稿: まいね | 2009年1月19日 (月) 14時50分

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