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2008年12月18日 (木)

メイ曲アルバム 「グローリア」プーランク -サッカクさせて-

   フィギュアスケートと言えば、大学時代の友人は、伊藤みどりをひいきにしていました。なんでも、その前の年のフリースケーティングの曲に、彼女の熱愛するところの大河少女漫画のイメージアルバムからの曲を使ったんだそうで。ナルホドなあ。
   フィギュアのBGMは、歌詞の付いていないない器楽曲を、種目に応じて決められた時間分つぎはぎして使用するらしいですな。最近は特に、時間内に一つの世界を創り上げて表現することが求められるから、もともと何かを強くイメージして作られた曲はもってこいだったのかもしれませんね。伊藤みどり本人もその作品のファンだったかも知れないし。友人は、そう信じてました。ホントのところは、コーチが持ってきた曲で、ご本人は(この曲あんまり好きじゃないのよね)とか思ってたかも知れませんが。それでも、毎日練習で聞き込んで、思い入れは少しは持って貰えたかもと言うことで。

   好きな曲を、このひとも聴いている、好きかも知れない、ということは、なんてそのひとを近しく思わせてくれるのでしょうか。わたしも自分が演奏会でやり込んだ曲を演技で使ってくれた選手がいたら、ファンになっちゃいますよ。
   とくに、プーランクの「グローリア」の第6曲、「Qui sedes ad dexteram Patris」。当時はそれこそ、伊藤みどりに滑ってもらいたいとおもってました。今でも、グランプリシリーズみたいな大舞台でやってくれたら一生貢ぐ自信はあります(女子選手に限る)。

   これねえ、いいんですよ。ドラマチックで。

   「グローリア」って、ミサの中の一番派手なところで。「天のいと高きところにては 神に栄光あれ!」とはじまる、神の栄光を称えるところです。倒置の強調構文で始まるから、歌詞の最初は「Gloria!」で、それがタイトルになってるの、宗教曲の基本。へそまがりプーランクは、ミサ曲の中からその一番派手なところを抜き出して、そこだけで1曲作ったので、長い歌詞を6部に分けてます。フォーレといい、20世紀になるとフランス音楽界も自由だねえって、もともとそういう「グロリア・ミサ」ってジャンルもあるそうで。へえ。
   最初は怪獣映画のようなおどろおどろしいイントロで始まって、「グローリア!」というかけ声が「ゴッジラ~!」と聞こえてしまうギリギリネタくさい曲ですが、そのうち宗教っぽさが出てきます。
   「Qui sedes~」は、その最終曲。「神の右にお坐りになるところのお方」と、関係代名詞から始まるいやらしい文です。「右に坐る」ってのは、いわゆる右腕的存在とかいうんじゃなかったかな。宗教曲ではある意味定型文みたい。あらゆる表現でヨイショし倒す「グローリア」の、最後のヨイショ部分です。
   これが、イントロなし、一発、無伴奏で、
   「Qui sedes ad dexteram Patris, miserere nobis.」と、ここまでの祈りの文句のオチに当たる文を一気に歌い上げちゃうんです。
   「神の右にお坐りになるところのお方、哀れみ給え」って。要するに、目的はそこよ。身も蓋もナッシング
   アルトとテノールの2パートユニゾンで。これは、両性具有的イメージを持ってるとか言ってたかな。言いきった瞬間、チャン、チャッチャチャ♪ とファンファーレが入ります。ここがこの曲の器楽テーマ。
   「miserere nobis」という決めぜりふは、ベースとソプラノも加わって繰り返されます。3というのはキリスト教では聖なる数です。徐々に遠慮がちになりますが。

   ここでトリプルアクセルを入れて欲しいっ!!(わたしの主題はここだ)

   そして、ハッと我に返って合唱は、
   「Quoniam tu solus sanctus, tu solus Dominus, Amen」(それは主のみ聖にして,主のみ主なればなり、アーメン)って、ボソボソ理由を言ってますが。
   それからは、「右に坐る、右に坐る」と「哀れんで、哀れんで」のスピードのある掛け合い。チャン、チャッチャチャの合いの手。
   宗教曲のお作法は、基本、ラヴソングに同じとわたくしは理解しております。アンタはエライ! の褒め殺し
   田口ランディが言うには、口説きというのは多少無理があっても言葉の物量構成力押しが効くそうです。フランシス(プーランク)も愛の国の男だから。攻めるときは攻めます。さっきアルトが歌ってたフレーズを、テナーと交換したりして。プーランクお得意のたすきがけ攻撃。「クィー セーデス! クィー セーデス!」そろそろ耳栓要るよ。

   この辺は、がんばってリンク全体を滑り回って、助走をためて、チャン、チャッチャチャで飛んで欲しいです。ダブル、トリプル、コンビネーション。
   極まったところで、「クィー セーデス! クィー セーデス!」チャン、チャッチャチャ!(鎮痛剤のCMでもいいですよ、ここ)

   

ソプラノソロが入りま

   「Amen」
   空間を大きく使って、長い長いリボンのようなフレーズのアーメン(そうでありますように)。これは足を高く掲げたバックスケーティングでも、レイバックド・イナバウアーでもどうぞ(一人しかできませんが)。

   ここからは、睦言モードです。天晴れ、プーランクはフランス人だと思うのがこう言うところ。そよ風に、寝室のカーテンが僅かに動く。うっとりした心地よい疲労の中といった風情。ここのフレーズ18禁! と思いました。

   ハープおったんかいという優しいたゆたうような伴奏に、囁くようなつぶやき。
   「Quoniam tu solus altissimus」(主のみいと高ければなり)。「グローリア」のクライマックスはふつう、3つの理由フレーズを並列、連呼するのがならいですが、プーランクは最上級の入ったこのフレーズだけ最後に残しました。そんで、この、合唱の人数も絞って半分での指定で睦言モードなんだから。エッチ。
   そして、最後の最後に残しておいた、大切な人の名前。
   「Jesu Christe」(イエス・キリストよ)2回言うし。
   「Cum sancto spirito, in gloria dei Patris」(精霊とともに、父なる神の栄光の元に)
   ああ、もう、堪らん。

   ここんとこは、村主章枝ねーさんに、あの芸術的なステップ、スピンの技術を駆使してやって欲しいッ! たおやかな手の振り、止まりそうで、止まらない、まだ止まらない、まだ回っているあのスピン、プリーズ! 

   でもここでは終わらない。(だからスケートの伴奏に推してるんだって!)
   ソプラノが、甘い霧を払う一声を告げます。

   「ミーゼレレ ノービス!」哀れんでください!

   もう一度、チャン、チャッチャチャ。飛べ! ここでだめ押しのトリプルアクセル!(無理だ!)  

   「アーーーーーーーーーメェン、アーメン……」
   余韻のうちに終わります。

   

絶対! 魅了されると思うけどなァ…………。

   ちなみに、大切なことだからもっぺん言いますが、ルール上、歌詞の付いた曲は公式戦では使えません。やっぱ、「インターナショナル」とかで滑られたら堪らんからな。

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コメント

 ごめ~ん、「QUI」は関係代名詞だから、「クィー セーデス」は「坐る人」だわ。失敬、失敬。

投稿: まいね | 2008年12月18日 (木) 21時04分

 さらにミス発見! キリストはラテン語でも「Christe」だよね? h抜けてました。訂正しましたぁ~スイマセン!

投稿: まいね | 2009年1月12日 (月) 22時44分

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