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2008年10月24日 (金)

「容疑者Xの献身」1粒で2度美味しい

   やっと読めました。東野さん直木賞受賞記念に帯が掛かってるうちに買おうとか言ってたのは何年前だろう。ごめんよ(ハリポタも今年のうちに読まなくちゃ!)。

   ううむ。TVでは湯川を福山雅治が格好良く演じていたのもあり、「Q.E.D.」とかで美形の学者さん達を見慣れていたので(こないだの「シュレディンガー~」のだーりんとか)、なんだか理系の学者ってスタイリッシュなイメージがありましたが。柔道家でやや頭髪が寂しい中年数学教師。現実は厳しいな(現実ちゃう)。自分の旦那はどうなんだ!? って、うーん、世間一般でいうイケメンというのとは違うな、たしかに。

   映画の公報なんかで言われているレヴェルで申しますと。とある母子家庭のママさんが、ストーカーとなりはてた別れた亭主をとうとう殺してしまいます。やった後途方に暮れておる彼女たちに、隣人で、かねてより彼女に気があるんじゃないかと見せていた高校教師が後始末を申し出てくれるんです。それが、湯川の大学時代のライヴァルで親友とも言える天才だから、手際の良いことったら。彼女たちは、あやしいけれど、証拠のない容疑者(未満?)として警察にマークされます。例の、湯川を頼りにする刑事さん、草薙が担当に付いたのが運の尽き。同窓生つながりから湯川が興味を持ち、その見事な偽装トリックに湯川が心ならずも挑むことになりますが。

   導入部分は、「博士が100人いる村」だっけ、ちょっと前にはやった全世界がいかに不平等に満ちているかという寓話のもじりで、博士課程修了者がいかに不遇であるかの寓話を思い出しました。そのうちX人は関係ない仕事に就いています。そのうちX人には仕事がありません。そのうちX人は自殺しています……。ヒドイよね。「片想い」と言い、東野さんはそういう知られていないヒドイ話をミステリに取り込むのがウマイ。

   そんでそういう不遇な生活もある意味伏線で。
   捜査を攪乱する数学の天才ですが、彼の完璧な工作は思わぬところから破綻を来します。「恋は思案の外」。彼女に想いを寄せるのは彼だけではなかったのです。全く善意で、「元旦那が死んだために疑いを掛けられていて気の毒な彼女」にモーションを掛けてくるシャチョー。彼女も悪い気はしていない。彼と結ばれた方が幸せ? じゃあ彼のやったことは? どす黒い想いに支配され、「完全犯罪」は破れるのかと思いきや。

   これって、ジョジュツ? あとで時系列確認し直しました。やられた。思いっきりやられた。そんで、イロイロちりばめられてたキレイな伏線の決めぜりふ。東野作品は2度3度読んで面白いようになってます。

   そんで、人間の魂の美しさが泣きたくなるぐらい尊くそして悲しく描かれているし。

   娘さんもかわいそうだったです。
   「知っているものがわたし一人なら、あなたの幸せのためにわたしは消える」
   これは、「秘密」のメインでもありますね。

   途中、最悪の結果、田中芳樹風に言うと、「狼を追い払うために家に虎を入れてしまう」的なことになってしまってみんな不幸になるのかと思いきや、余りにも美しい想いが湯川によって導き出されて、それをそのまま黙って受け取れないひとの弱さ、哀しさがもう極まって。

   

美しいけど哀しい話でした。まあ、次郎のように泣けるとまでは行かないですが。
   「マダミス」の時効寸前の犯罪の話のように、みんなして罪に服して「そうして彼は大切なものに赦される」とよいのですが。あのシャチョーだったら待っててくれそうだし。

   そんでもってミステリはミステリだしな。

   

東野圭吾最高

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