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2008年9月26日 (金)

憧れは千代女

   朝顔元気で。

      朝顔に物干し取られて如何せん        舞音

   「朝顔や 釣瓶取られてもらい水」は、加賀の千代女の作。ローカル有名俳人で、石川県金沢郊外(今は合併して白山市、もとは松任)に生まれると、小さいころには必ず習うもんですが、全国的にはどうでしょう?
   朝顔の蔓が釣瓶の縄に絡んでしまって、切るに切れない、しょうがない隣に井戸使わせて貰いに行くか、なら優しくもおかしい景色ですけど物干しに絡んじゃったらもうお手上げ。でもないか、部屋干ししよう。いやでもやっぱり切りますか。

   7月には生育が危ぶまれた朝顔ですが、「お盆のあとに見頃なのよね」と苗をくださった早乙女おかあさんが仰った通り、お盆の帰省から帰ったらとんでもないことになってました。
   それでも、脚立を使ったりしてなんとかはみ出した分を絡めたり、伸びすぎたところを摘み取ったりしておれば良かったのに、放置、放置で夏が終わり……。
   網をつり下げたひもを伝ってヴェランダに到達、さらに手すりから水平移動して物干し金具に至る縦枠を上り尽くし、とうとう物干し竿に絡みました

   心を鬼にして カ ッ ト !

   でも、迷子になった宅急便やさんが
   「近くまで来てるんですけどこの番地だとおたくは……」と泣きを入れてきても、
   「そこの角を曲がったすぐの朝顔が2階まで派手に上ってきてるうちです」と言うと、
   「判りました!」とすぐにインターホンが鳴るくらい。
   そういえばなんでよそはちゃんちゃんと持ってくるのに佐川急便さんはよく迷子になるんでしょうね……。

   さて、それで、千代女というのは元禄期の女性俳人で、天才少女として10代の頃から有名だったみたいですよ。どちらかというと「上手いこと言う!」作風で。永井路子だっけ、歴史エッセイで言ってた女性文学者の系統分けで言うと、「清少納言型」。
   田舎で良く聞きましたのが、天才少女として有名だった頃、俳句の先輩(たぶんオッサン連中だよね)とかに、なんか名月の句、詠めよなんて無理を言われたとか。そこでお千代ちゃん、
   「三日月の」と短冊にすらすら。
   おいおい、名月だっつうの。お若い方はこれだから、と冷笑が浮かびかけると、続き。
   「……頃から待ちし この夜かな」
   ウマイ
   月はくまなく、花は盛りばかりを愛でるものかは(誰の台詞だっけかよ)。
   いやべつにそういう変わった月を題材にもしてなくて。満月という言葉を使わなくっても、満を持した、という言葉通りの月が目の前に浮かびます。
   ナルホド、機知に富んだってのはこういうのを言うのね。

   さて、ライヴァル関係みたいに言われる清少納言と紫式部、永井さんの歴史エッセイによると、結構タイプが違うらしくって。清少納言は、即意当妙、いまでいうヴァラエティタレントみたいに、頭の回転が速くって、気の利いたことがすぐに言えちゃう。ただ、永井さんは軽薄、という印象も持っていたのか、「○×式秀才」と言っていたかな、「マークシート型」と言っていたかな。早押しクイズで「『老人と海』と言えば……」まで聞いて「ヘミングウェイ!」とすぐ正解できるタイプ、と言っていたような。
   しかしながら、真にヘミングウェイの文学について深く理解をして論文をものしたりすることは「紫式部型」の方が得意、というような文意だったはず。わたくしは、清少納言型であることに価値を見いだし、そうあろうと思っておりますけれど、このエッセイの影響で紫式部型であることにも憧れを抱いておって、年若いひとの心に深い影響を与える小説をものしたいとかねて願っておるのですが……しくしく。

   お千代さんは残念ながらだーりんとは早くに死別し、メリーウィドウライフを俳句に打ち込んで過ごしたそうでございます。探すとネット上でも結構作品が検索できました。元禄って、赤穂浪士の頃ですか、意外と地方も文化的だった江戸時代でございました。いやべつに未亡人になりたいわけではないです。

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コメント

作者が加賀の千代女とは、知りませんでした。
浅学の至りです。

思うに地方でも大大名のお膝元で泰平の世が長いところは、豊かな文化が根付いたのではないかと思っています。
金沢は前田のお殿様ですものね。

以前松江を旅した時、街全体に茶の湯の文化が浸透しているのに驚きました。七代目藩主松平不昧公の影響だと、街のあちこちに書かれていましたっけ。まあ、この政治に無頓着な数寄者のせいで出雲松江藩は財政が傾いてしまったんですが。

最近読んだ本はいくつかありますが、その中で新刊が出ると必ず買うのが

投稿: はなまる | 2008年9月26日 (金) 15時12分

ごめんなさい、途中で送信してしまいました。

最近読んだ本です。

夢枕 獏 著「陰陽師 瀧夜叉姫 上・下」
発表から3年経ってやっと文庫になり、ようやく読むことができました。

オカルトはあまり好きではないのに、これだけは読んでしまいます。バックボーンがしっかりしていると言うか、「ん?」と思うところがなく安心して読めるのが良いのかも。
映像化されると、この面白さが半減どころか3割くらいになってしまうのが悔しいです。せっかく野村萬斎がハマリ役だというのに…。

ああ、また長くなってしまいました。
それではまた。

投稿: はなまる | 2008年9月26日 (金) 15時26分

千代女の「つるべ取られて」の句は小学校低学年ぐらいから何となく知ってました.学校で教わったわけでなく,常識みたいな感じで.うちの家系は加賀とは関係ないから,千代は全国的に知られてるんじゃないでしょうか.
余談.雪国の我が家の井戸は屋内にあって朝顔に絡まれる心配がありませんでした.

投稿: 三ねんせい | 2008年9月26日 (金) 19時11分

ああ、「陰陽師」! 「瀧夜叉姫」もいいですか? 出てましたよね。じゃ、久々に買ってみよう。コミック化してから、岡野版の方に興味が移ってたんですが(NHKでドラマ化されたのがとんでもなかったので熱がやや冷めて。野村萬斎さんの方は良かったのね)、コミックの方も最後とんでもなくなっていて。じゃ、久々に原点に立ち返って原作の方をしみじみ味わうことに致しましょう。人間というものの哀しさ、いとおしさを描いていて、原作はほんとうにいい話ですね。
 金沢も、3代様はもう外観からバカとのを演じて無駄遣いをしまくったそうですが、あんまり名君で藩内が豊かになりすぎると謀反の疑いとか掛けられちゃって大変らしかったみたいですから。もしかして不昧公さんもその辺を考えていたのかしら。バイエルンのルートヴィヒさんはあれはホントに無配慮だったと思うけど(また知らないで偉そうに)。
 あれだ、「もうかりまっか?」に「ええ、もうかってもうかって」と素直に答えるひとはいないそうですし。「あきまへん」「かんにんしておくんなはれ」が普通で、「ぼちぼちでんな」「おかげさんで」がいい方、だそうじゃないですか。閉鎖的な時代は今とはイロイロ常識が違ってて面白いですね。
 それから、三ねんせいさん、屋内井戸は目から鱗! そうでなくても、一晩でそんなに伸びるか! と隠れ突っ込み待ちな句であることは確かだと思いますね。

投稿: まいね | 2008年9月26日 (金) 20時49分

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