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2008年7月15日 (火)

「アイシールド21」 日本の生きる道

   最近の我が家の流行はこれ。
   「アイシールド21」原作 稲垣理一郎 村田雄介。週刊少年ジャンプで時々ある、特定のスポーツを流行らせようという企画からの作品に見えますね。原作担当者もしっかりついているようで。取り上げられているのはアメリカンフットボール。まーねー。ルールとか難しそうだし、全然グローバルじゃないし。はまると面白い球技らしいですが。ほとんど予備知識なしで読み始めました。タイトルのアイシールドとは、ヘルメットにつけた目を覆う透明板。主人公の瀬那くんは最初正体を隠した覆面選手で、必ずこの目を隠したヘルメットをつけていたことによります(21は背番号)。大昔ふうにタイトルをつければ「覆面選手21番」。ああ、なんか全然違う雰囲気。

   さて、少年漫画の役割とはなんでしょうか? 将来の日本を背負って立つ青少年少女いけないおねえさんに、健全(?)で安価な娯楽を提供することに違いはないんですけれど、もうひとつ、あるべき人間の姿を学んでいってもらうと言うこともあるのではないでしょうか。日本の今の若年層は、あの「ドラゴンボール」その他ジャンプ方式の漫画で「今は憎い敵だけれど、未来には頼れるチームメイトになって一緒に戦ってくれるものだ」というノーサイド将棋マインドを学んだんだと思うんです。間違っても、恨みを千歳に伝え残し、最後の一人まで敵を殺し尽くせとは決して思ってないと思います。グローバル化した国際社会において、それはそれで尊い心ではないですかね?

   「アイシールド21」の主人公は気が弱く、長いパシリ(気の弱さから使いっ走りをさせられるいじめられっ子)生活を送るうちにひとの間をすり抜けてダッシュしてお使いをさっさと済ませる術を会得してしまった新高校一年生です。その神速のダッシュ力は、しかし生来の気弱から体育の時間などでは発揮されることはなかったので、今まで埋もれていたという設定。それが、部員2名で細々と活動をしていたアメフト部の鬼才、蛭魔に見いだされて覆面選手、アメフトにおいてボールを持って逃げるポジションとして活躍するというお話。

   このヒルマがねー。
   つんつんに立たせた金髪、吊り目に尖った鼻、牙のような歯、尖った耳にはピアスと意図的に悪魔のようなスタイルを貫いております。ニッポン国だというのに重火器を持ち歩いて何かと言えば乱射、口にするのは「ファッキン~」「YA-HA!」、悪魔手帳に管理した学校の内外の人々の弱みにより人を支配し、アメフトにおける甲子園大会のような「クリスマスボウル」出場を夢見てあらゆる手を打ってくる文字通りの悪魔なわけです。
   しかしながら、「一生に一度スポーツに打ち込んでみたい!」と、勉強漬けの生活から2年次にしてアメフト部入部を志した雪光を、東京タワーの展望室まで歩いて氷を運ぶという根性試しの入部テストにおいてその根性に免じて「ひとかけらだけ氷が残っていたから合格」と恩情を掛けたり、アメフトの練習試合で賭をし、負けた相手チームを「奴隷」にしてこき使いながら、大会前には練習もあろうと解放したりと、
   (もしかして、実は結構いい奴なんじゃ?)と思って読んでいるうちに、連載の長い作品でよくある読者による登場人物の人気投票で、一回目2位、2回目1位を取るほどに読者の支持を得てしまっているのです。
   読者の目も節穴じゃありません。

   冷静になってよく見ると、次々現れるライヴァルたちが恐るべき体格・身体能力を持っているのに比べれば、ヒルマは体格・身体能力、ともに凡人レヴェルです。チームメイトたちさえ、セナをはじめ、野球部補欠からの鞍替え組、キャッチングで日本一を目指す雷門や、ひとの良さからいいようにこき使われる陸上部の主将駿足石丸、「カス」からの脱却をめざすもと瀬那をいじめていた不良3人組、体格を補うパワフルさの小結、家の事情で休学していたキッカー武蔵……と、多士済々(まーこーゆー漫画は普通そうだ)なのを見た後では、ふと疑問を感じさえします。

   しかし、この泥門(でいもん。チーム名がデビルバッツなど、このチームはいろいろ「悪魔」的イメージを持たせてある。少年漫画の主人公が「悪魔」ってところがスゴイ)高校チームの快進撃の原動力は司令塔の彼、ヒルマだったのでした。
   いかなる危機的状況でも、現有勢力から有効な作戦を編み出すその頭脳と粘りには敬服します。
   いや、今はその夢のクリスマスボウル挑戦中らしいのですが、その結果より彼が部活を引退した来年のこのチームが心配なぐらいです。別物のように弱くなったりして……。いいのか、この大会に優勝とかすれば大団円でお話自体が終わるから。

   さて、ここでわたくしがはたと思い至りましたのが、実は主人公より身体能力に劣りながら、主人公その他を支配して夢を実現させんとしたそのヒルマの行き方であります。

   

これが日本の生きる道よ。

   狡い、非道といわれながらも、夢に向かって最大限努力し続ける。生まれながらの体格の不足を恨むことなく努力して必要な能力を身につけ、自分の持った能力、優れた頭脳を最大限に駆使して持てる力を最大限利用する作戦を立案し、実行させる。

   狭く貧しい国土しか持たぬ日本が生き延びる道も、ヒルマの取る道に近いのではないでしょうか。

   そして、その努力し続ける孤独な姿を支持する読者がのべ4000人ほどもいたぐらいには、日本のことを評価してくれる外国のひとも現れるのではないかと期待したいわけです。  

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