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2008年6月 8日 (日)

「絶対可憐チルドレン」 エスパーはガキンチョにジェントル

   「絶対可憐チルドレン」椎名高志。この春からアニメ化で。虎美が早起きしてTVの前に正座して見ていると思ったら。とむ影さんに原作をお借りして読んでみました。

   面白かったぁ。

   超能力者が人口の一定数現れるようになった近未来(でも少数)、能力に応じてランク分けされた超能力者達は、低レヴェルの者は能力を抑える器具を身につけることで日常生活を送り、高度な能力者は政府機関に登録されてその能力を生かす仕事についていた……と。

   で、最高レヴェル7(これが地震の震度とリンクしてるのが地味におかしい)の能力を持つのが「ザ・チルドレン」と呼ばれる10才の少女達。念動力の薫に瞬間移動の葵、サイコメトリの紫穂。これがまた生意気ながきんちょたちで。だって、子供のくせに(くせにって敢えて言っちゃうよ)そんな高い特殊能力を持ってるといえば当然思い上がったりしがちなのに、ただでさえ生意気な小学校高学年の女の子! それが3人も!

   主人公皆本君の苦労いかばかりか

   これは、名探偵コナンにも通じる「大人達はおれ達のことを子供だって言うけど、子供だって結構ものは解ってるし、大人なんかよりずっと能力があったりするんだぜ」というキモチを根幹に持ってるお話作りですよね。いやそのキモチじたいがお子ちゃまの専売特許なんだけど、自分にも身に覚えがあるからイタくもほほえましいわ。

   超能力者は一般社会に受け入れられておるわけではなく、能力を悪用して犯罪を犯そうとする超能力者だけでなく、差別を恨んで超能力者による「悪の」超能力者組織を主宰し、「ザ・チルドレン」を勧誘しようという魔の手は迫るし、一般人側からも、超能力者を排斥しようとする急進的組織も存在してテロ行為を行ったりもするようで。なかなか作中の世の中は騒がしいようです。

   というわけで、3人のカワイイ超能力者ちゃんたちにもみくちゃにされるグウェンダル型苦労人(「今日からマ王」の登場人物。美女の尻に敷かれて心身共に苦労させられる)皆本君のエスパーアクションコメディなのですが、ややビターな味付けが。

   超能力というと予知能力も有名ですが、彼らについては予知があり、そのイメージを皆本君じしん、能力者から見せられています。それは、未来において、能力のない一般人との共存を拒否する「悪の」超能力者組織の「女王」として3人のうちのひとり、薫が皆本君と対決する運命にあると言うこと。そして、決定的な事態は避けられず、悲劇が待っていることになっているのでした。

   予知を回避しようと「ザ・チルドレン」を「まっすぐ」育てようとする皆本くんですが、周囲は「じゃ、恋愛関係に持っていけば離反しないかも」と能天気に焚きつけるし、本人は、身近な年上の異性の理解者ということで一応の好意は持っているらしく、おませだったり、でもやっぱりまだおこちゃまだったりとそっち方面でも毎回健全に(?)ドキドキさせられます。

   でもさーやっぱり、まともな大人がいねぇよ。

   皆本君はIQ180の天才という設定で、20才なんですよ。ま、サンデーだし。あんまりお兄さんでも読者の共感が得られないと。「ザ・チルドレン」の3人に対しては大人として振る舞いますが、組織の中ではまだ下っ端なわけです。時折、その「天才的頭脳」を活かして作戦を練ったりもしますが、どちらかというと青臭い、自分も天才児として疎まれた過去から彼らの心に寄り添おうとする優柔不断な若造主人公のスタンスです。
   彼らの上司が、3人娘を猫かわいがりするあまり数々の暴走をしでかす困った大人代表で。この人がいるから3人娘はエスパーものにありがちな非人間的扱いは受けないんですけどね(一般職員などが、無意識に恐れる行為を取って傷つけたりということはある)。
   さらに、同じ組織の女子高生エスパーの上司と来たら、彼女を自分の理想の女性として育て上げ、ゆくゆくは妻にという野望を持っているスケベ中年で。なにかっていうとその女子高生エスパーに対する執着を全開にしちゃうし、全然尊敬できねえ(彼の名が「谷崎一郎」で、女の子の方が「ナオミ」ちゃんなんだから国文科ごころがうずくったら!)。
   皆本君の友人の、サイコメトリ(接触することにより相手の心などを読む)能力を活かして医者をやっている賢木も、不遇な子供時代を送った分、同じサイコメトリの紫穂に気を遣ったり漠然とうらやんだり、でも医師としての倫理感はちゃんと持ち合わせていたり、なかなか複雑なところを見せますが、基本、女好きだし。

   旧日本軍の超能力部隊として活躍しつつも、終戦と、「将来、一般人に仇なす組織を作る」という予知のため殺されかけた過去を持つ兵部も、まともな大人とは言えないでしょう。超能力でテロメアをどうこうしているとかで、容貌は美少年のまま、悪い意味の子供っぽさを残したまま暗躍しています。薫を超能力者の指導者として期待し、惚れ込んで、何度も勧誘に来ますが、皆本の命を救ったりと、決定的に薫(や読者)に嫌われるようなことはしない、憎めない悪役の線を保っています。彼もまた戦争の中で少年期を過ごしたためか、超能力者の疎外感を掬い上げるのが上手く、いつもは入場を断られる彼女らのために遊園地を貸しきりにしたりとなかなかジェントルです。

   その兵部のもと同僚、こちらは体制側の超能力者の元締め、蕾見管理官は……。こちらは他人の若さを吸い取って自分のものにできるため今も20代の若さと美貌を保っております。予知の内容も知っており、彼らの将来を心配しながら……でも面白半分でやってるようにしか見えないし。かなり強引にマイウェイ派です。能力や経歴は尊敬できても……。

   かろうじて尊敬できそうな大人は紫穂のパパかな。警察庁のエライさんで、実の娘といえど10才の女の子を血なまぐさい捜査に利用するところは皆本君に苦言を呈されてましたが、配慮すべき所はきちんと配慮していたように見えます。

   能力があり未来がある女の子達を、周囲の大人がやや良識を逸脱しつつも温かく見守っていこうとしているのが解るのでじつに読んでいてうれしくなる作品です。彼らならきっと、予知を破って幸せな未来を見つけてくれると信じられます。

   余談。

   読んでいてすぐ気がつくのが、主要登場人物の名前が源氏物語から持ってきているということ! 主人公の皆本君は字こそ変えてありますが「源(みなもと)」ですよね。薫ちゃんは「明石薫」明石の上と薫、チルドレンの残りは「野上葵」で葵の上と「三宮紫穂」で女三宮と紫の上。ちゃんと源氏の正妻&子供を産んだ女性が入ってます。
   甘い上司の名前が「桐壺帝三」って、マンマだし。
   スゴイのが、「末摘花枝」ちゃん。「末摘花」っていや~ブスの代名詞なのに、なんでこんなカワイコちゃん……? と思っているとスゴイ裏があったり。
   「悪」の超能力者兵部京介は、「兵部卿の宮」でしょうねえ。ケッサクなのが、彼にひろわれて忠実な従者をやってるのが「コレミツ」。
   ふつうのおこちゃまたちでも、紫穂ちゃんに交際を申し込んできた少年が「火下」くん、葵ちゃんに来た方がが「黒木」くんで、これは合わせ技で髭黒大将? 
   大物で出てないのは藤壺(いや、蕾見不二子が解りにくいけどコレか?)、花散里、六条御息所、夕顔ぐらいですかね。
   あとは、章段のタイトルで賢木、ほたるに澪(澪標)。宿木や初音ってのもありませんでした? と、国文ごころがそそられるのでありました。

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コメント

まいねさぁ~ん、篤姫レポートの更新は~、どないなってるでしょうか。早く続きを書いてほしいよ~weep

投稿: アマサイ@科学の星 | 2008年6月 9日 (月) 15時54分

 あ~アマサイちゃんごめんよ。篤姫は最近まともに感想を述べる気力がわいてこないのです。体調も優れないので調べてまで細かい事情書くのがめんどくさい。いや、正直新しいゲームにはまって魂を抜かれておって。
 途中は抜くにしてもそろそろ再開するから許してちょうだい。

投稿: まいね | 2008年6月10日 (火) 01時40分

 この、登場人物の名前がみんな源氏物語というところに娘が食いついて、
 「兵部卿の宮ってなーに」
 「それはむかしの防衛庁長官は皇族がやることになっておって、その長官である宮様のことだ。源氏物語ではイケメンとして出てくるぞ」
 「ナルホド。東野君は?」
 「そりゃ頭中将だろう。秘書課のトップで中将兼任のデキル君がよくついたポストだ。源氏のライヴァル」などと解説がはじまり、
 「マダム六条は前の皇太子のお妃だったのだが、ダーリンに死なれて未亡人なのだ。娘がいたのだが、その娘が伊勢で国家鎮護のお祈りをする巫女の役に就くことになって一緒に伊勢に行って源氏とは別れた。この人がストーカーになって最初の奥さんの葵ちゃんを呪い殺したので源氏は引き気味だったし」云々とおかあさん語る語る(今NHKで瀬戸内さんが講釈してくれてたので頭に残ってて)。
 「『あさきゆめみし』という漫画になっている。今度読むか?」
 「うん」と言うことに相成りました。おかあさんがほらを吹いてたと責められなきゃいいけど。

投稿: まいね | 2008年7月 7日 (月) 23時22分

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