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2008年5月10日 (土)

「塩の街」 恋は地球を救う?

   脇カラムでも書いてますが、あそこじゃとっても感想書ききれない!
   また、脇は「リスト」形式なので、月が変わってレイアウトを変えるともう閲覧では見られなくなるんですね。わたしは管理者画面から過去のデータも(時間かかるけど)検索できるけど。書評がメインのサイトじゃないけど、ちょっと構成考え直そうかしら。

   「図書館戦争」ではまった有川浩さんは自衛隊三部作というのがあるミリタリー系な方なんだそうで。とりあえず、デビュー作でもある「塩の街」を買ってみました。これ、学生が選ぶ大賞の候補作にも選ばれたそうです。

   で、自衛隊三部作としては「陸」にあたるそうで。こんな話。
   群馬から歩いて東京に出てきた遼一は、行きだおれる寸前に高校生ぐらいの少女、真奈に拾われます。東京湾の埋め立て地にある日塩の結晶のようなものが落下してから、人間が塩になってしまう奇病が発生、もう日本だけで600万人も死んでいて、社会はまともに機能していないのでした。
   主人公は遼一だと思ってましたが、拾った真奈ちゃんと、「あたしの大家さん」秋庭さんの方だったのでした。
   「大家さん」って、偏屈なじじいだと思ってました。
   じゃなきゃ、同じくバイオハザードで世界滅亡する「BH85」みたいに訳知りなおばあさんとか。
   そうじゃなくて、秋庭さん、ちょっと不器用な、でも優しいお兄さんでした。「引き出しは多い」そうです。

   とってもくたびれながら、とっても無謀な旅をしながら、でも目は据わっちゃってる遼一君、人が殺せるぐらい重いリュックの中身を、「きれいで温かい海に返してあげる」ことが目的だそうで。
   それってさ、いわゆるドラえもん映画でいうところの敵UMA(ネッシーとか、未確認生命体)とほぼ同じ種族のUMAで、でものび太にはなついてて、クライマックスで敵UMAに特攻・相討ちで世界を救って涙のお別れという役回りのアレなんじゃないかと思うわけだ。

   真奈ちゃんのお節介に秋庭さんが呆れながら力を貸してくれて、遼一くんはなんとか海にたどり着きます。そこで開けるリュックの中身は。
   UMAなんかじゃなかったのでした。

   泣いた泣いた。

   これは中高生にはわかんないでしょう、ってゆーか、判って欲しくない。もっと上の年齢対象だな、たしかに。

   人間が、突如、塩の柱となってしまう奇病に取り付かれた社会の話です(ギリギリネタバレ)。

   いやもう、この第1章だけで爆泣短編として最高な所へ。

   帰りは秋庭さんと真奈ちゃんの哀しい2人旅です。
   そこで出会った脱獄囚のトモヤくん、自分は人体実験されて「発病した」と語ります……。この病気はあの「隕石」のせいじゃないの?

   「引き出しの多い」秋庭さん、また特技を披露してくれて、そして、妙に顔の広さを覗かせます。人質にされてしまった真奈ちゃんに、「もう他人だなんて言わない」と誓う秋庭さん、2人の関係が変わりだそうとする第2章。

   そして、トモヤくんのせいで旧友に探し出されてしまった秋庭さんが「ちょっとした大規模テロ行為」の片棒を担がされてしまう物語後半へ……。そう、これは「自衛隊三部作の『陸』」なのです。

   危機に乗じて自衛隊の立川駐屯地に潜り込んでニセ司令になってしまう入江さんがスゴイです。某所で有川作品のそれぞれでコワイ人を挙げて、誰が一番コワイかという話で、「塩~」の入江が最強ということになってました。ナルホド。「図書館」からは小牧2正が挙がってましたが、入江に対するには小牧2正では黒さと影響力が足りません。手塚兄ぐらいじゃないと。状況の違いはありますが、それでもその名の下に死へ追いやった人間の数では入江ニセ司令に勝るものはいないんじゃないかと。「空」と「海」は未読ですが。

   「見ると死んでしまう何か」といい、「最後には戦闘機」といい、藤田和日郎の「邪眼は月輪に翔ぶ」みたいな話でした。もう、あのミネルヴァと同じくらい理不尽な致死性ね。この辺、科学的考証を望みすぎると野暮らしいです。ホラーなんだから、「考えるな、感じろ」ということで。ま、「塩~」の方はナトリウムがどうとか、科学的根拠を入江ニセ司令が一応説明してました。

   「世界が滅びるその日まで人間は恋をしていた」ということで、美しい話なんじゃないでしょうか。わたしは楽しかったな。後日談の、真奈ちゃんに親身になってあげてた女性自衛官の恋とか、入江ニセ司令が死に追いやった人の遺族から逆恨みの復讐を企てられる(?)話とか、どれも後日談としてきれいに過不足なくまとまっていて。

   

買ってよかったと思いました。

   いやしかし、自衛隊というのは「アレが飛来してからコレが起きたんだから、とりあえずアレを除いてみたらどうでしょう」という具申も却下されるぐらい硬直化しておるのでしょうか。問題ですな。怪獣映画には疎いのでその様式とかはよう知らんけど。

   あと、社会が機能しなくなって2週間で日本が無法地帯になったって……信じたくないな、フィクションの世界でも、日本だけは大丈夫だと思っていたかった。阪神・淡路大震災を経験された方、どうでしょう? 略奪はなかったというふうに聞いてますが。


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» 【塩の街】 有川浩 著 [じゅずじの旦那]
世界が終わる瞬間まで、人々は恋をしていた。 その中の一つの恋が世界を救った。 そのことを僕はこれから書こうと思う。 なくしかけて、初めてわかる愛ですなぁ… 第10回電撃大賞<大賞>受賞作にて有川浩のデビュー作。 塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。それ... [続きを読む]

受信: 2008年5月20日 (火) 10時08分

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