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2008年1月25日 (金)

花嫁修業じゃありません

   それは一昨年の暮れのことでした。
   「ママ、まいこさん、ちょっと虎ちゃんをつれて公民館に行ってきて頂戴」早乙女おかあさんから指令です。いつもだったらおかあさんが行ってくるお正月のお花の講習会に、わたしが行けとの仰せです。

   南無三!

   おかあさんごめんなさい、わたしは数寄ごころと食欲との2本立てでお茶は表裏みっちりやりましたけど、お花はさっぱりなんですう! お正月の玄関のお花なんて活けられません!! こちらにお嫁に上がれるほどのたしなみがなくってゴメンなさい!(それを考えたらお花の方がよっぽど実利的なお稽古ごとだよな)

   ところが
   「いいのよ。あなたじゃなくて。虎ちゃんにさせてあげてほしいの」
   わたしゃ番犬ですか。もう日はとっぷりと暮れておりました。

   おうちの裏手の公民館(ホラ、地域の寄り合いに使う会議室とかの入った建物で、昼間は大正琴のお稽古やらくもんの学習教室とかに貸してる建物。仙台の方じゃコミュニティセンターなんて舌噛みそうな名前になってました)には、ご近所のおばさま達がより集まって、花材の選定を真剣にやっておられました。どうも、婦人会かなんかでこちらでお花を教えてる先生にお願いしてちょっとご教授されつつお花を共同購入してお正月のお玄関や床の間を飾っちゃおうという企画のようで。
   お花を選ぶと和室に入り、適当に持ち込んだ自分のうちの花器(花瓶その他お花を活ける器ね)にマイ花ばさみでもってチョキチョキ活けこんで、多少先生に声をおかけして助けて貰って、いいカンジになったらそれを持ってどんどん帰ってるようでした。ホラ、みんな主婦歴長いし、暮れの忙しいときだし、みんなそれなりの年頃のひとだから、華道ぐらいある程度かじってお嫁に来てるし。草月のひとにごちゃごちゃ言われたくないわ、わたし池坊の名取りですなんてひとははなっから来てないし。

   

途方に暮れるのは早乙女母子だけでした。

   「早乙女でぇす! ことしはおかあさんがお忙しくって。この子にさせてやってください」と叫んだ後は立ちつくすばかり……。スーパーでお会いしたり、おかあさんのやってる太極拳にいつも飛び入り参加してたりするので虎ちゃんはもう覚えてもらってたみたいでよかったけど(いや、古式ゆかしく嫁の実家から白無垢で嫁ぎ先まで訪問して両家の水を混ぜて飲んだりという儀式やら、お仏壇にお参りして嫁入りの挨拶をするなんて嫁入りをして、毎年盆暮れに相当日数帰省してるんだからわたしだって覚えて貰ってなかったら情けないよ)。

   虎ちゃんは親に似て(イヤ違う!)恐れを知らないので、とっとと花材を選び出し(2種類から好きな方を選択)見よう見まねで枝を花瓶に突っ込みます。
   「いや、そうじゃなく! 枝には心、副え、控えちゅう役割があってだな、メインの枝にたいしアシンメトリーに三角を作るのが華道の基本で……」クラブ活動で半年やっただけの記憶をたぐるたぐる……でも虎ちゃんそんなの聞いちゃいねえ。
   枝が太くって切れないときだけ、
   「おかあさぁん」と振り向いて上目遣いになるのでした(おまえ、長生きするよ)。おかあさんはそのときとばかり愛想よく
   「すみませぇん!」といいハサミを持ってるひとににじり寄り、お借りして切らせて貰って、
   「こちらのおねえさんにお借りしたから。ほら! ちゃんとお礼を言う!」と無駄に大きな声を出します(おかあさんも十分世渡り上手だよね)。

   おかあさんが無駄に消耗するのを尻目に虎ちゃんはご機嫌でお花遊び。
   「だから左右対称にするなっつの! それは西洋のフラワーアレンジメント!」おかあさん、講釈を垂れさせたらなんでも言うけど実際には何もできないの。
   「まあまあ、可愛いじゃないの。早乙女さんのところのお孫さんなのね。虎ちゃんは小学何年生? 大きいわねえ」なんて先生はやっぱり人格ができてる。ちょいちょいと直して、
   「立派だこと、筋がいいわ」なんておだてて帰すのでありました。うん。気がつくともう7時近く。周りに人はなく、花材ももうあとひとり二人分しか残ってませんでした。

   ご機嫌で花瓶を持って帰ると、またおばあちゃんが褒めそやすから、虎ちゃんご機嫌で。お正月、挨拶に参ったうちの親だの親戚のおねえさん達にも披露してお世辞を強要して(?)。

   

虎美の得意になることったら

   ここまで一昨年の話。

   ほぼ同じことが去年の暮れにもあり、
   「虎ちゃんは筋がいいみたいだし、興味もあるからお花をやらせてみたらどうかしら」ということになったのです。お姑さんには逆らわない長いものにはロ~ル♪ な処世観もさることながら、密室の子育てになりがちな今時、親とは違う価値観の大人に触れさせておくのも必要と思っておるので。

   さて、21世紀になってお花のお稽古。
   今はフラワーアレンジメントだよね。ま、それも、小学生がやってるかって、もう少し年上のおねえさんでしょう。
   それでも、日本の文化をなにかちゃんと身につけておくに越したことはないか、と前向きになってみましたが。

   

お花ってどこで習うのよ?

   新しい住宅地であるイーヴィヒベルク、わたしどもの田舎とはちがって「○○流生け花教授いたします」なんて看板、どのうちにも提がってないし、だいたい、ちいさい商店街すらないからお花やさんの2階にお教室が、なんてこともない。学校のクラブに来てくださってる先生をお願いしようにも、そんなクラブないんだって! 

   まあそうだ。わたしの友達も結構先生になっているけど、誰がそんなもんのお免状を持っていたというのだ(お茶にお花に着付けの免状を取ってた才媛の後輩はシステムエンジニアになっちまったし)。

   

日本の荒廃はこんなところにも出ていますな(また大げさな)。

   外国の人が日本の文化に憧れて留学なんかしてこられても、そんなの教えられる先生が学校の方に既ににいないという情けなさ。

   まあいい。
   この前大きなお散歩をしたついでに、昔ながらの商店街が軒を連ねるアルト・リリエンベルクでお花屋さんを発見、教室を紹介して貰って先週行ってきたのでした。

   やっぱり「こんな若いお嬢さんいないわあ。今最年少なのはこちらの方」と、どう見てもOLさんをご紹介されちゃって。中学からもう10年通ってるとかさらりと年を暴露してたり。でも先生もうれしかったようで、入会金不要、ハサミと花器はすぐ注文するとして、来るまでは貸してあげる、小さいお嬢さんは夜道が心配だから、もっとお稽古の時間を繰り上げてあげると便宜はかりまくりでした。恐れ入ります。
   「この下のお花屋さんで、その日のお稽古の花は自分で選ぶのよ。初めてだからこんなもので。青文字と、菊」その日は750円ぐらい。2度目のときは、レンギョウと菊で680円だったので「あんまりお花屋さんに申し訳ないからもう一つ買って貰ったのよ、ごめんなさい」と、紫色のスターチスが付いてました。
   「今時お花代千円以下でお稽古できるところもないわよ」ううむ。1500円ぐらいを想定してました、わたしも。
   華道のお稽古で使うお花はどうも和風で辛気くさいカンジがして(それで積極的に習う気がしなかった)、虎美はどうかしらと思ったのですが、余り気にしてない様子。だって菊ってさ、何のためにあんなにお花屋さんに並んでるのかって、お花のお稽古のためだったんだ!
   「菊は初心者に向いているのよ」茎が太くて比較的切りやすい割にしっかりしていて、たしかに剣山に刺しやすいですね。それに、割合日持ちがいいし。

   第1回目のお稽古の時には
   「おうちにお花器ある?」と聞かれ
   「すいません、たしなみがないんで、ありません」って。チェコスロバキア友好杯はあるけど、活け花には向かないと思います。だいたい、引っ越しの時どこに放り込んだか思い出せません。
   そしたら、「ここのお稽古場のものだから」なんて、半月型の黒い水盤貸してくれて、おかあさんそれ抱っこしておうちに帰りましたけど、先生肝腎の剣山を貸してくれるの忘れて。往生したあげくお庭に転がしてたじょうろにお水を入れて、それにぶち込んで玄関先に置いときました。それが、まだ今週になっても咲き誇ってて。いや、お玄関って寒いし。

   今週はちゃんと剣山も貰って、お稽古場で活けたとおりにまた活け直して。下駄箱の上も片付けてなんとか大きな水盤を置けるようにして。やっぱりナマのお花がうちにあると気分が違いますね。

   「おかあさん、虎ちゃんがこれから毎週お花のお稽古に行ったら
   豹太が困ったような顔をしてました。
   「なんだよ?」

   「花瓶が10個ぐらいいるんじゃない?
   大丈夫、来週はお休みだから。その頃には萎れてるでしょ。

   「今のひとは華道を花嫁修業と思ってるみたいですけどね、違いますよ。絵画教室と同じです」って仰る先生だから、安心してお預けしましょう。
   「そうそう芸術ですよね」

   さて、虎美ちゃんの心にいい影響が出るといいけど。

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コメント

まいねさん、さらっと表裏納めたなんてなかなか言えなくってよ♪

花嫁修業って死語ですか?近頃の娘さん方は修行はせずに嫁に行くと。いやいや、おつとめは立派な花嫁修業でしょうよ。むしろ、修行したからと言って嫁に行けるわけではないと気がついてしまったからでは……?

でもおうちに華がある雅な生活っていいですわね~。私ももっとうるおいのある穏やかな生活を送りたいものです……

投稿: とむ影 | 2008年1月29日 (火) 17時15分

 うーむ、でも、お茶は毎週顔出して先生の言うとおりに動いていればある程度順調にお免状取れましたよ(お年寄りの言動に慣れればね……)。日頃の立ち居に反映されてないと周りの人にはいたく不評ですが。そうそう日常でお点前を披露することもないし。持ってても全然役にたたない免状ナンバーワン。
 お花はその点あとあと日常生活に生かせていいんじゃないでしょうかね。
 ま、いわゆる花嫁修業レヴェルではその後お教室を開いてもしかの時に食べていくってのは無理だったでしょうけど。やってても役に立たないってのは……事実なのかなあ? わたしはとりえあずお弟子を取れるレヴェルより一つ二つ下の段階なので、純粋に趣味でしかないです。もうすでにおぼろげだし。
 「よいところにお嫁入りした後、たしなみがないと恥をかきます」といって勧誘されましたが、今時上司夫人にお茶会に付き合わされたりなんてないし(実際付き合わされてらっしゃる方はゴメンなさい)。
 とりあえず、お姑さんとお花の流派が違うばっかりに、せっかく活けた花を「嫁子さん(仮名)の花はばあさんとは違ってなにかおかしい」とお舅さんにくさされて参ったと言う話は聞きました(実話)。そうか、修行してもだめなときはダメなのか。

 花嫁修業って、結婚するために必要なのはそういう精神的「たしなみ」じゃなく、実際的スキルであるっていうふうに世の中変ったんじゃないかしら。とりあえず、車の運転ができないと地方都市じゃ生きていけないし、今時ワープロソフトが使えないとPTAや町内会の書類も作れない。
 女性の趣味としての「お茶やお花」は、紅茶や中国茶の煎れ方教室やフラワーアレンジメントとして、形は変ってるけど生き残ってると思うな。あとは、お裁縫系と音楽系、踊りも。多彩で自由になって、それはそれでいいでんじゃないかしら。
 

投稿: まいね | 2008年1月30日 (水) 00時16分

お茶が花嫁修業として役に立った例ですか……
婚約した頃か結婚してすぐの頃か、主人側のお仲人さん(実際の生活地と主人の実家の2カ所で披露宴を行ったので、主人の実家のほうでも、お舅さんの上肢筋の方にお仲人さんに立って貰ったんです。)に初めてご挨拶に行ったとき、御抹茶出されまして。たかだか2年ぐらいしかやらなかったお稽古でしたが、恥をかかずにちゃんといただくことができましたので、花嫁修業として役に立ったと言えるかな?

趣味の踊りと言えば、今本当にベリーダンスってはやってきてるみたいですね。うちみたいな田舎の市でもカルチャーセンターでベリーダンス教室やるみたいです。

投稿: とむ影 | 2008年1月30日 (水) 17時14分

 ひーっ、お見それしました。あるんだ、そんな、今時お客様にお抹茶出すおうち……。
 わたしは旦那様とはじめて逢ったとき(お見合い)が仙台で有名な笹かまメーカーのショウルーム附属の料亭で、最後に出ましたね、お抹茶。そんで、主菓子についた長い楊枝を最後どう扱うんだったかど忘れして冷や汗がだらだら出た情けない記憶ならあります。それからなお一層の精進を……してないな。
 ベリーダンスは、だって週刊モーニングでもベリーダンスを紹介する漫画やってるぐらいだし。いや、多様化してるよなあと思っただけ。インドの映画は具体的に性交渉はできないからダンスシーンが多いとか、ある種のもう若くない女性はダンスにはまるとかそっちを考えちゃったな、失礼ながら。

投稿: まいね | 2008年1月30日 (水) 21時36分

今時……いや、20年ほど前の話ですから。当時もびっくりしましたけど、今だったら、へたすると嫌みになっちゃうかしら。

>お舅さんの上肢筋の方
すいません、上司、ですね。上司かつ地域の名士だったんだろうと思います。おうちの造りとか庭の広さとか、昔の豪農の家柄とお見受けしました。


投稿: とむ影 | 2008年1月31日 (木) 13時44分

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