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2007年11月29日 (木)

大河の行方

   今日は一発ネタ……かな?

   数年前から作者が「自分の手元では最終話までの物語は完成している。途中X章まではシナリオもできあがっている」と言ってる割にはなかなか話が進まない大河コミックって、ありますよね?

   

絵が独特で、作者さんも、その、なんというか独自の世界を築いていて。
   登場人物同士の関係も網の目のように絡み合ってて。またこの登場人物が多いこと! でもそれぞれ個性的で、ファンもしっかり付いているという作品。

   なんて言う作品を思い浮かべました?

   いつもだと「ファイブスター物語」永野護なんですが、最近、新刊が出たもんでここのところは「パーム」シリーズ伸たまきあらため獣木野生(この獣の字は旧字、というか異体字? ツの部分が口二つになってるやつです)。

   物語はあと2章を残すのみとなったそうで、2011年完結予定ですって。

   この方はこのシリーズの第1話ぐらいでウイングスにデビューして、ずっとその続きを書き続けてここまで来たんですよ。初期短編以外はほとんどこのシリーズに関連した話で。
   こういう漫画家ってのもアリなんだなあ。自分の中から生まれてきた強烈な存在、その描きたいものだけを描くために漫画家になって、漫画家を続けている。恐るべき意志の力です。
   ま、ウイングスがSFっぽいマイナー雑誌だったころなんでそれが許されたんでしょうか。登場人物間に超自然的なつながりがあるにせよ、あんまりSFっぽいところはないです。超天才児なためにストーカーを呼んでしまうところ(当時はそんな言葉なかった!)とか、そうでない登場人物でも、複雑な家庭のせいで毎日心に生傷だらけの半生を送ってきた彼らが出会い、西海岸の都市生活の中でサバイバルをしてほんの短い幸せな時間を過ごす落差がもうたまらない。ほんと、「苦難に見合った幸せな後半生」と今続けようとして、前々章のエピローグで彼らのその後が軽く紹介されてて、とてもそんな「幸せ」なんてもんじゃなかったことを思いだして。胸が痛くなりました。ほんの、北半球の初夏みたいな、つかの間の美しい時間を過ごすことができるという切ない美しい話であるようです。

   久しぶりに読んでみるとやっぱりあの練られたシナリオとか影絵か切り絵のようなシャープな描線が堪らなかったので、最後までおつきあいすることにいたしましょう。

   P.S.
   そんでもって不謹慎なほどの神経の太いギャグも魅力。
   ジェームズに返り討ちにあった殺人鬼のストーカー、サロニーは、どうもそのまま霊的にジェームズにくっついているようで。それに気づいた仲間がおそるおそる
   「お手」と言ってみると、そのサロニーのオーラが手の形を取って現れてちゃんとお手をして見せたり。

   物語の初期、彼らがカーター宅に下宿を始めるとき、遠縁のサボテン女子高生アンジェラが「こんな得体の知れないひとといっしょに暮らせない!」とかみつくと、彼女の父である心理学の博士はまあまあ、と心因性の病気を抱えているというジェームズをウソ発見器にかけてみるんです。
   「何かウソを言ってみたまえ」と、博士。
   「アンジェラ、俺と付き合わないか」顔はいたってへーぜんと。そして、針は思いっきり心拍の乱れ(ウソ♪)を示していて……。
   ちなみにそのサボテン女子高生というのは、カーターが彼女のなんにでもかみつく姿勢を指して
   「君と暮らすぐらいなら歩き回るサボテンかヤマアラシの方がナンボかましだ」云々言い放ったことに拠ります。まじめな顔してこのおっさんもきついです。親との決定的不仲に絶望して若いころ教会の祭壇ぶっ壊したこともあるくらいですから。

   ま、物語の遠い発端、「蜘蛛の紋様」辺りからどうです? 新刊なのでまだ書店にあるところもあるでしょう。はるか大河を旅してきたこっちにはああ、イロイロ言われてたのはこういうことだったのね、と腑に落ちるところですが、始めてご覧になる方は、3人のあまりに悲惨な過去に胸が張り裂けておしまいになるかもよ。

   

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