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2007年11月 3日 (土)

 「まちがい」謎のお得意様

   ご近所の積ん読本バスターズとして、お友達のうちに上がり込んでは本を読みあさっていた頃と思いねえ。学研の読み特だったかな、またしても、小学校高学年向けの読み物で。

   欧羅巴のとある街の片隅に、わりあい流行ってるパン屋があったとさ。そこの看板娘のメリーさん(仮名)は、やや年増だけど気のいい女性で、毎日くるくると立ち働いておりました。そのメリーさんが気づいたことには、どうも毎日、一日経った古いパンばっかり買いに来る客がいる。メリーさんのお店は流行ってる店だけど、毎日売れ切れ御免というわけには行かない。2,3切れ売れ残って、それは別にして安く売ってるのを、ま、貧乏な人が買いに来たりはするんだけど。
   毎日ってのは尋常じゃない。
   それが、痩せて目の鋭いちょっと渋い若い男なんだ。
   メリーさん気になって、今日はあの人は来るかしら、古いパンが先に売れそうになると断ってとっといたりして、ちょっと肩入れしすぎじゃない?
   ところが、気になり始めるとその古パンさん、来なくなるんだから。こないだも、1週間ぶりに来たと思ったら思いっきり痩せてて、袖口なんか黒く汚れてて。
   「古いパンはないんですか?」それがまた、ちょうど売り切れてたんだ! 済まなそうに言うと思いっきりがっかりされて。
   「あの、こちらの、新しいパンはいかがですか」って勧めても、
   「古いモノでないとダメなのです」って帰っちゃう。   

   (ああ、この人、売れない画家なんだ!)
   恋する女性はある種の探偵でありますな。勝手に古パンさんを画家と推理。一生懸命勉強してるけど、絵が売れないんだ。一日経った安いパンしか食べられないんだ。
   そう思ったら、もう気が気でなくって。
   今まで身なりなんか構ったことはなかったけど、店に出るにもちょっとこましな格好してみて、美容のために青汁(そんなのあったかな? とりあえずまずい美容ジュースだと思いねえ)なんか飲み始めて。店にも絵なんか掛けて。もう、「ものや想うと人の問う」状態。

   ある日、決死の覚悟で話しかけたりして。
   「あ、あの、この絵、どうですか?」なんて。
   古パン男、ちらっと見るなり
   「……パース狂ってるんじゃないスか?」って、そんだけ。
   「私、絵が好きなんです!(絵じゃないだろう、絵描きだろう! とセルフ突っ込みアリ)」と決死の告白もスルー。古いパンをあるだけ買って、渋く店を出て行くのです。もう、すっごく追い詰められてる感じが背中に漂ってます。
   「ああ! あたしがあの人にしてあげられることはなんだろう!?」
   古いパンに卵やハムでも挟んであげようか。そこまでやるのはお節介だろうか。でも、せめて栄養たっぷりになるように、バターをいっぱいはさんであげよう(みんな飢えてたコレステロールとかの観念のなかった時代の話です!!)。
   メリーさん、妄想が暴走してます。

   で、実行しちゃった。
   どきどきしながら、古いパンを袋に入れるときにナイフで切れ目を入れ、解らないように(ここポイント)バターをナイフにたっぷりつけて、塗り込めちゃった。
   ああ、これであのひとが少しは元気を出してくれますように。私のことに、気がついてくれますように……。

   ところが次の日、その古パン男が怒鳴り込んでくるんです。
   「このあま、なんであんないたずらをしやがった! おれがいったいあんたになにをしたっていうんだ!?」もう、顔は真っ赤、目は見開いて、もう鬼のような怒りよう。あとから追っかけてきたそのひとの友人が、上手くなだめて彼を連れ去って、種明かし。

   「わたしたちは、設計の仕事をしているのです」
   今度のコンペに出すために、何日も前から製図を引いていて、毎日がんばっていたのだそうで。
   「古いパンは、鉛筆の線を消すのに非常に具合がよいのです」って、消しゴム代わりに使ってたんですって。……ま、史実的には正しいけど……罰当たりめ。
   「それが、もうすぐ完成というところで、この前のパンを使ってしまったので」塗り込められていたバターが、大切な製図をめちゃくちゃにしてしまったと。
   話を聞いたメリーさん、すぐさま裏へ引っ込んで、こじゃれた服を脱ぎ、美容ジュースを窓から投げ捨てて、ベッドに倒れ込んでしまいましたトサ。

   幼心に後味ワル~な話でした。やっぱ、恋は盲目? 違うよなそう言う話と。

   で、なんでこんな話を出してきたかというと、お向かいのベーカリーに、最近は足繁く通って鳥のえさ用パン耳をゲットしておるのですが、厨房につめてるご主人までわたくしの顔を覚えたらしく、いつも愛想良くしてくれるんです。もう、申し訳ないくらい。
   「おかあさん、鳥にやるなんてお店の人に聞こえるところで言っちゃダメだよ。かわいそうじゃない」いや、豹太それは気の回しすぎ……?。

   その古パン男じゃないけど、やっぱ、目当てがパン耳なだけに、耳がないときは心持ちがっかりしてるでしょうかね、おかあさん素直だし。で、カムフラージュに虎美の朝ごパン用の食パンや、旦那様用の胚芽パン(わたくしはあるものは何でも食べますです)、子どもたちにおやつパンを買ったりしてるんですが。

   今日なんか
   「ガーリックのラスクを作ってみたんです。ぜひおためしください」なんてご主人飛び出してきて試供品を一握り手渡ししてくれて。いや、ラスクも嫌いじゃないし、香ばしくっておいしかったけど(コレ打ちながら食べちゃった。だめじゃん、ご飯前に)、加工したら鳥にやれないからできれば古パンのまま頂戴、10円でも20円でも値段つけていいから。

   わたくしも、パン耳を食べねばならないほど困窮している、もしくはパン耳も愛しいほどここのパンを愛好していると思われてるのでありましょうか。  

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コメント

 あ、パン耳は好きです。実家の母は、細く切って揚げて砂糖を絡め、よくかりんとうを作ってくれました。これも歯ごたえがあっておいしくて……。
 「まあ、活田さん(仮名)、パンの耳なんかそんなにどうするの」と笑われても
 「これはかりんとうにするとおいしいんですよ」って、平気にしてたけどな。ミキサーに掛けて、うちはカツもコロッケもハンバーグもこの生パン粉使用でした。
 パン耳ってのは
 「いいえ、鳥にやるんですよ」と持って行くのと
 「工夫すれば十分おいしいですよ」と持っていくのとどっちが正しいのかしら? こんなもんに正しいもなにもないかしら。

投稿: まいね | 2007年11月 4日 (日) 10時53分

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