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2007年3月17日 (土)

「6枚のとんかつ」 悪くはない

   え~と、3月になってから左柱の「今月の本」コーナーのネタがないのは、さすがに荷造りをやっておるわけではなく、発掘された本を読み返しておるからです。オイオイ。もう引っ越し1週間前だよ。
   とうとう買ってしまったのは「6枚のとんかつ」蘇部健一 壁本として有名なアレです。

   ミステリの世界には壁本という範疇が存在するそうで。
   あまりの駄作さに、読んだ後壁に叩きつけたくなる(実際やってしまった)本だそうで。
   え~と、この「6とん」とか、有名なところで綾辻の「人形館」とか(わたしはやってません、気持ちは解るけど「あほか~っ!」ってカンジ )。選ばれる作品は人によっていろいろです。
   まあ、一般にバカバカしいというか、人をバカにしているというか。

   実際読んでみると、う~ん、軽い。軽すぎる。短編集なんですが、みんな、薄いコンヴィニ文庫の推理クイズ集みたいな軽さ。登場人物が薄い、ネタを紹介するための存在で、細かい実在っぽい奥行きが感じられない、それは「どんなネタよ、どんなネタよ」と急いで読んだせいもありますか。バカバカしいネタを読ませるために、わざと俗っぽい人間に書いてあるのかとも思いますが、この探偵役にはちょっと好意を感じられません。
   トリックは短編でなら通用するちょっとスウィートな小ネタで、実はセンスのあるひとなんじゃないかと思いますが、照れ性なんでしょうかね、あまりにも料理が悪い感じ。衆人環視のパーティの最中に有名な宝石が「消える」。すぐさま出入り口を封鎖して全員身体検査をしたはずなのに出てこない、それは、いろいろな条件が重なって「宝石を持ってる人」が透明人間化していたからというトリックは、「ウブメのナツ」なんかよりずっと気の利いた、そしてフェアな視覚錯誤だと思いますけど。ホントに不愉快な地の文で。雑食型のわたしがここまで神経逆撫でされるのも珍しい。イヤホント、なんでだろ。

   で、表題作、シマソウにあやまれという「六枚のとんかつ」は(島田荘司のあの「占星術殺人事件」のあの大トリックの換骨奪胎であるという)、流し読みして、あのとんかつ5枚から6人分創り出すという図で大いに笑い、この図のために714円払ったかいがあったと悦に入ったわけです。

   

結局は 面 白 か っ た のよ

   A地点からB地点までの時刻表トリックと見せかけ、ねえ、その地図ホントに日本地図? というベタな引っかけもあり(ギャグでそれはよく聞くけど、ミステリにまともにネタにした人はこの人が最初であろう。しかも、コレがデビュー作だとか)。しかも応用編もあり(2回目は誰もひっかりません! 寒かった!!!)

   同じトリックをさらに衆人環視の被り物ショウに翻案した「5枚のとんかつ」、これはもうわざとねらって同じ口調で同じトリック解説をしているところを楽しむものだとは思うんですけど、ただでさえ好みでない語りを2回読むのは油の悪いとんかつ2枚食うようなもんだわ、ちょっとおえっぷ(失礼しました) 。

   

トリックのセンスは悪くないと思うの。流し読みでもほほうと思ったし。ただひたすら、文体というか物語として全体にお品がない、くだけすぎな感じがやっぱりなんだかなあというものでした。

   壁本ではないです。かえって、たまにぱらぱらしたい本ですね。短いし。

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コメント

わはは、買ったですか>六とん。新書版を図書館で読みましたが、確かにギャグとしてはなかなかよかったです。ダジャレはともかく、下ネタはちょっとアレでしたが。

壁本の双璧は、これと清涼院でしょうか。こちらは、挫折しましたが…

投稿: 波多利郎 | 2007年3月19日 (月) 08時18分

 ええ、買っちゃいました。そうか、図書館とか、古本で読むべき本かも。でもまあ、話のネタに読んどくのもいいかもと。「斜め屋敷」も、「占星術」も、「姑獲鳥の夏」も、何十年たってから読んでる周回遅れ読者です(何十年も経っとらん)。
 清涼院ね、あれも、いろいろ噂は聞きます。あと、二階堂レイトというひとも……「人狼城」ってどうなんでしょう?

投稿: まいね | 2007年3月19日 (月) 09時35分

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» 透明人間 [透明人間になりたい]
透明人間になりたい欲望を押さえつつ、透明人間を語ります。 [続きを読む]

受信: 2007年3月18日 (日) 16時17分

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