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2006年12月17日 (日)

「アルスラーン戦記」最後までガンバレ!

   綾辻の話もしたことだし。
   綾辻行人にはまった時期と、田中芳樹にはまった時期は、私の中では重なります。大学を卒業してすぐの頃。春休みに、生協でやすく本を買えるのもこれが最後と一括注文した「銀河英雄伝説」を読み始めたら面白くって、外伝もすぐ揃えて。ああ、板橋の、大学の寮の近くの書店の、どこの棚にあったかまで思い出せます。
   で、わたくしに田中芳樹を教えてくれたサークルの友達が
   「あの作者の次のシリーズが、角川から出てるよ」ということで買ってきてもらったのが「アルスラーン戦記」でした。「パルス暦7××年」って、全然スペースオペラな話じゃないじゃん。一瞬面食らいましたが、歴史として重厚に語る語り口と独特の翻訳調(?)な修辞技巧はそのまんま。ぐいぐい引きつけられていきました。
   中世ペルシャによく似たパルスという架空の大国は、西の大陸の果て、一神教を信じるルシタニアという国の侵略を受けておりました。勇壮な王のもと、大平原で乾坤一擲の大戦に挑むはずが、味方、将軍のひとりが敵に内通しておって、まさかの敗北を喫するのであります。哀れ、初陣の王子アルスラーンは、護衛に付けられた若武者一人と野をさまようことになったのでした。
   彼の幸運は、父母に疎まれ、物心つくまで市井で育って妙に身分意識のないところ。また、そばに付けて貰った武人が若手有望株、20代の若さで文字通りライオンと一騎打ちをして倒し獅子狩人(シールギールというフリガナが異国情緒)の称号を受ける黒衣の剣士ダリューンであったこと。脳みそも結構鍛えられてるダリューンは、隠棲中の天才、旧友ナルサスを頼って落ち延びてゆくことに決めます……と、どんどん彼の元に個性的な武将が集まって、第一部最終巻「王都奪還」まで山あり谷ありの話は続くのでした。7巻ですから。すごい寄り道よ。隣国に遠征して、庶民派王子の戴冠を助けてやったり、東北国境を越えて侵入する騎馬民族は退けるし。彼のすごいところは、抜群の人心掌握術で他国の武将もメロリンとさせてしまうところ。おかげで解放王の部下は見事に多国籍。その他、旅の楽士はいるは、「そこの絶世の美女!」と呼びかけないと振り向いてくれない女神官とか、弓の名手の山賊、じゃないえ~と自由民の皆さんの若長はいるは。個性的です。いや、マジメで家柄もいい仕事のできるおじさんもちゃんといますが。
   この登場人物たちがすごいです。「銀英伝」も、数えるひとが数えると台詞と名前のある人だけでも500人は登場人物がいたとか。これがまた、洋ものスペオペだと白いひと限定なイメージがあったんですが、この人のは名前を見ても、容貌の描写も、西アジア、東南アジア、どう見ても日系、漢民族系、ヴァラエティに富んでました。地名もね。西欧文明一辺倒じゃなく、あとで調べたらインドの彼ら自身を指す言葉を星系の名に使ってたり、そういう多国籍文化なところが妙に目新しかったですね。
   それが、一応大陸の真ん中で、どうヴァラエティ出すのかなと思ってたら、ちゃんと各人の個性が描き出してあって。この人本を出すのがとっても遅いひとなんですが、10何年ぶりにこの前の前の巻が出て、ジムサ? 知るかよ。何人だっけ? と思っててもしばらく話を追ってくと、「ああ、吹き矢の彼ね!」と記憶が蘇り、そうそう、この人は異民族トゥラーンからの寝返り組だけど、ちゃんと大陸公用語であるパルス語がしゃべれて、それがために一度捕まった時に、しらんぷりで彼らの作戦全部聞いてて、逃げて、味方に密告して、でもそれもナルサスの罠だったからスパイ容疑を逆に掛けられて自国に帰れなくなってのことだった、なんて彼のエピソードがそーまとー(走馬燈)のように蘇るのでありました。
   そんな感じに一人一人得意分野だけじゃなく弱点とか設定してあるから楽しくって。
   パーフェクトな解放王とその愉快な仲間たちは、第2部に入って、もう敵は地上の人間なんかじゃなくなりました。ペルシャ神話にホントにいたらしいですが、蛇王ザッハーク。両肩からヘビ生えてて、人間の脳みそ食べるんだって! きゃ~!! ヴォルデモードなんかへでもないですね。向こうは死んだ人間を生き返らせ、鳥人間や羽の生えた猿とかを使役する妖怪軍団なのです。それなのに、味方は多少精霊の声を聞いたりできるだけの女神官ぐらいしか霊能力者ぽいひとはいないのです。大丈夫か? 隣の国とかはひたすら当てにならないし。危うし! アルスラーン!! 

   作者の田中芳樹と言えば、序盤書いただけで途中で投げ出したシリーズがいくつもあるように言い伝わってますが(90年代にはいろいろ新しいシリーズ出してましたが、完結したものはとんと耳に入らない。タイタニアとか、レッド・ホット・ドラグーンとか七都市物語とか、クランとか、どうしたのよ! 後半二つは他の方に書いてもらうことになったようですね)これだけは、がんばって完結させて欲しいものです。切に願ってます!

   あまりの原稿の遅さに(さらにオトナの事情があったとかで)出版社を変わって、今はカッパの光文社から出てます。挿絵画家も変わってさ。ま、イラストで読んでるわけじゃないけど、「ナバタイの鉄鎖術の名手」というトゥース卿(3人姉妹を紹介されて、誰か一人に決められなくてまとめて3人嫁に貰っちゃったシアワセな人でもある)の挿絵で、その鉄鎖がマンマ、ニンジャ映画の鎖鎌だったのを見たときはさすがに萎えました。オイオイ。鎌がついとるとは一言も書いてないだろう(実はコレが言いたかった)。

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