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2006年10月26日 (木)

「後宮」どろどろは淑女の愉しみ

   「のだめ」が目的で立ち読んでおります「KISS]誌において、わたくしもうひとつの目当ては「後宮」です。あの教科書で教えられない女房文学、後深草院二条の「とはずがたり」のコミック化です。これを知りましたのはたしか「クララ白書」で、高等部のお姉様たちが古典を題材にした劇を披露するためのトンデモ候補に上がってて、どんな話じゃと思ってたらその頃母の買ってたまじめ系婦人雑誌で取り上げられていて、息を殺して読んだという……まいちゃんのおませさん!(笑)
   えーと、院政期、一応じいさんは太政大臣という名門のお嬢様二条たんは幼くしてママに死に別れます。ところがママは後深草院(てことは隠居したしかし時代的にまだジジイではない天皇)のところに勤めてた女房(高級侍女ですね)で、院の初恋の人だったとかで、院は二条たんを娘代わりに育ててくれるんです。年齢差は微妙、あの時代のことだし、光源氏ー若紫ぐらいか? 実際1257年生まれらしいんで1243年生まれの後深草天皇とは14才違い。まだまだオッケーでしょう。院は16才で譲位してますね(かわいそ)。そうか、譲位後のつれづれを子育てで慰めたのか(よう知らんけど)。それが、14才で院の寵愛を受けることになり(怒らない、怒らない、当時としては適齢期)、さらに「雪の曙」氏(コミック中は実名で登場!)との二股愛、院の子を産んだ直後に今度は「雪の曙」氏の子を極秘出産、さらに有名な寺のやんごとないお坊様「有明の月」まで彼女に懸想して泥沼の4角関係に突入、そんでまた極秘出産。当時のことですから幼児は死にやすく、貴人もあっさり死ぬと。そんで二条たんは良心の呵責に耐えかね出家、そのあとおまいは伊能忠敬のママンか? といいたくなるほど日本全国を旅して回るパワフルな生活に突入するのでした、というようなお話。
   はい、鎌倉時代の文学で尼が旅行をするのは「十六夜日記」と答えたくなりますが、「とはずがたり」も正解に引っかかるので注意しましょう!(そんなマイナーなクイズ出ません)いや実際大塚女子大学(仮名)の卒業口頭試問に「鎌倉時代の紀行文を上げよ」ってのあったよ。「とはずがたり」が正解にカウントされたかは不明だけど。

   人間関係はドロドロで、事件もスキャンダラスですが、そうそうきわどいシーンはなくって、息を詰めて読んだだけ無駄でしたが(古文の力も付かなかったしぃ)。これがコミックになるとすごい。あのドロドロがたまりません。だいたい、隠居した天皇なんてすることないし、権威はあるし、時代はラヴ至上だしでもう花折り放題。二条は一応お手つきですが、(正式な妃は当然いらっしゃるし)お気に入りの女房という公的立場なので「あそこの姫君を落としたいからお使いして♪」と言われれば文の使い、「あそこの女人と今日デートだから付いてきて」と言われればお床入りの直前まで付き従うと、もう神経にヤスリを掛けられるような日々なんですな。それでも初めての人というか前半生の全てみたいなひとなのでひどい院のことを思い切れない二条たん、思いを寄せてくれる雪の曙氏に揺れるのも解る! これは想像以上にレディースコミック向きな題材でした。絵は意外とシンプルですのでナマナマしくないです。「あさきゆめみし」よりは山内直美の平安もの(「ざ・ちぇんじ」や「なんて素敵にジャパネスク!」)に近いか。

   だいたいさ、男と女、やることはたいして変わらないのであとはシチュエーションのえぐさで攻めるしかなくなるんですよね。コミックも大人気だった氷室冴子の「ざ・ちぇんじ」、元ネタの「とりかえばや」は男女の兄妹(コミックでは姉弟)が入れ替わって出仕するその危なさが売り。その男尚侍が女東宮を押し倒したり、女中将が親友の筈の宰相中将に押し倒されたりの同性愛なんだか異性愛なんだか分かんないぐちゃぐちゃ感が危なくも面白かったんですが、当時から良識派には冷たい目で見られてたようで。……やっぱ女房文学には同人ケがありますな。
   大学の時に図書館で発掘してしばらくうきうきして読んでた「我が身にたどる姫君」も、大臣が中宮と密通してできた姫がこっそり育てられてて、「わたしっていったいどこの誰?」と悩むという台詞がタイトルなんだそうで。各章のあらすじには「甥である宮が女帝を犯す」とかいうショッキングな内容があって目を皿にして見たけれど 「緋袴をさばいて逃げまどうみかど、しかし宮の情熱には抗いがたく、とうとう手の中に堕ち賜う、『どうかお嘆きなさいますな、これは前世の因縁です』……」みたいなシーンはなかったような気がするなぁ……残念。気がつくとみかどは宮を避けまくるようになってただけで(もっと深読みしよう)。そういうシーンは個々人の胸の中だけで想像して愉しんで、目に触れるものはシチュエーションを提供するだけなのであります。やっぱりこりゃ女性向け官能小説ノリでないかい。いえ、今時は女性向けでもそのシーンはちゃんと書いてありますからって何を読んでるんだ!?

   ま、そういうことで、日本女性は進化していないというか、大昔からどろどろ好きで、メディアはちゃんとそれに対応しておるのであります。……だからといってアニメ化しないように! いやしかしこんなもんまでコミック化して……そのうち壇ノ浦夜の何とか合戦とかも……(見たい!

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