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2006年9月 5日 (火)

「ダ・ヴィンチ・コード」オチの付け方

   軽い感想は今月の本の所に書いたんだけれども。例によっておかあさんは話が長いです、ご注意。ネタバレも多少はありますか。
   去年だったか「キャラクターノベルの書き方」とか言う本を読みまして。いわゆる、マンガのようなイラストのたくさん入った、若い人向けの、登場人物の特徴的な、漫画やアニメのような内容・文体の小説とでも申しましょうか。わたくしが目指しているようなジャンルの小説を、どのように書いたらいいかという本と思って読みました。そこに、ハリウッド映画にはストーリーを組み立てるためのチェックシートのようなものがあり、その辺をきっちり固めてから作っているので大きな破綻なく大衆受けするようになっているとかいってました。
   曰く、主人公は、物語が始まる前からある葛藤を抱いており、物語を経験することによりその葛藤が解消され、主人公は成長するべきである。
   ははあ、ナルホド。「物語において主人公が傍観者に過ぎない」という大ミスをこれで防げるんだ。「ハリー・ポッター」なんかこれですね。両親がいない、おじさんの家の厄介者という悩みが、最初の一年では見事に解消されて彼は若き魔法使いとしての自分を見いだすのです。その他、主人公から脇役に至るまで身体特徴、ブロンドなのか、ブルネットなのか、背は高いか、ガッチリ系か、喫煙者なのか、酒はいける口か、信仰を持っているのか、およそ考えつく全ての要素について設定を定めておくべきだと言ってました。ハリウッドだと、いっぱい人が関わりますからね。その人ごとにキャラクターのとらえ方が違っていてはちゃんとした人間像が浮かび上がってこないのだろうと。
   ……イロイロ勉強になったんだけど、実際の応用はまだうまくできてません。テヘッ。
   話を元に戻して、そんなことを思い出すほど、この話は定型的だったかなと。
   「ハーヴァードのハリソン・フォード」ロバート・ラングドン教授はともかく、ヒロインのフランス司法警察の暗号解読官、ソフィー・ヌヴーがまんまその法則の体現者で。
   彼女は、冒頭、自らの身体でもってダイイングメッセージを作って死んだルーヴル美術館長の孫娘だったんです。多感な頃に、その祖父がやってるヒミツケッシャの秘儀をのぞき見しちゃってじいちゃんとは絶縁したんだけど、幼い頃から暗号ごっことしてその秘儀を受け継ぐ下準備はすでにされていたんですよ。でも、ふつーにクリスチャンの彼女はおじいちゃんが悪魔崇拝のわるい人なんじゃないかとおびえ、悩んでた。そう、ここに彼女の葛藤があったのです。
   あ、そうか、この話は「ハリウッド版ルパン三世カリオストロの城」だったんだ!

   だからルパ~ン、じゃないロバ~トは自分の名誉を守るためにお姫様(うまい具合にソフィーの幼い頃のニックネームがプリンセス)と英仏股に掛けて逃げ回りつつお宝の謎を解くことになるワケね。
   しかしこのクラリスは、「羊たちの沈黙」のクラリス並に修羅場に強いです。登場からが、ロバートが殺人の容疑者として逮捕されるところを颯爽と救いに現れる白馬の王女様です。ロバートを巧みに誘導して暗号を解かせ、美術館内で祖父が本当に見つけて欲しかったものを次々指示してゆく文庫上巻辺りはもうどこの女神(アテナ)様かと思いました。このお姫様、話が中巻以降になっておじいちゃんがヒミツケッシャをやってたと確定的になるととたんに守られ、癒やされる側に回るんですけどね。「カリ城」のクラリスが身を挺してルパンを守るほど強くなるのとは逆に。
   もしかして、物語時間では一昼夜ぐらいかもしれない短い冒険の最後に、彼女は大いなる謎が解けて、なくしたと思っていた大切なものに出会えるんですけど、読んでるこっちは「お宝? お宝?」で。ま、最後にロバートはそれを見つけるっぽいんですが、ほら、「カリ城」のお宝って、「ポッケに入らない宝」だったでしょ? そんな感じ。ロバートは、真実に突き当たって、大いなるカタルシスを得、「畏敬の念が湧き起こり、膝をついた」かも知れませんが、こっちはどっちらけなんだよう。ほら、ロバートは一応学者ですから。真実を知ったと思えばそれで満足なんですね。それを公表して功名とか、世界平和実現(いや逆に、教会の権威失墜、政界大激変だ)とか、考えないんだ。それでいいのかも知れないけど。

   これが、同じ、宗教っぽい謎解きでいうと、「勇午」のインド篇。学生時代の恩人のインド研究者から死に際に助けをもとめられた勇午、インドでヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立を解消する謎の「ニルーファの涙」というものを捜すことになります。物語は2転、3転して、勇午はその隠し場所を知り、急進派に煽動された民衆の前にそれを「予言」に従った演出で公開することにより対立感情を巧く消し去ったんですけど。一方の方で、ああ、予言のとおりだ、「ニルーファの涙」がここに現れたからには敵を憎んではいけない、というふうになるカモだけど、もう一方の方は、だからって手を出してこないとは言い切れないんだよね。でも、おかあさんすっごく読んだときは騙されて、嗚呼、これでインドは安泰ねとかいい気分になっちゃったんだな。
   別に、キリストが妻帯してようが、それを否定するためにバチカンその他がダーティーワークを何百年やっとろうが、それで今、地道に愛をもって活動してる宗教家の全てが否定されるワケじゃないでしょうが。そんな枝葉のことで権威がどうの、体面がどうの言うヤツがまちがっとると思いますよ。だから、
「かくされた事実はそれだったからといって、別に公開する気はないよ」というロバートは、事なかれ主義なんじゃないかもしれません。そんなことのために家族が引き裂かれたり、人が道具として死んでいったりする方が哀しい、あってはならないことなんだよと。

   いやしかし、「ダ・ヴィンチ・コード(ダ・ヴィンチの暗号)」って言うからには、ダ・ヴィンチの絵をそれこそ図像学的に解釈するのかと思えば(中盤では英国紳士のおじさんと手を変え品を変えやっとったかな)、後半は死んだじいさんの作った暗号解読ものじゃん。騙された。

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コメント

小説は読んでないです。映画は見ました。で、なんでキリストが妻帯してて子孫がいるくらいでそんなに問題になるの?と日本人(の大多数)にはそっちのほうが謎のような気がしましたですな。
映画で見るべきビジュアルは、鞭打ちに恍惚とする修行僧と、ラストシーンでした。

投稿: とむ影 | 2006年9月 6日 (水) 15時54分

そうそう、キリストが妻帯していて何故悪い!?
お坊さんと言い神主さんと言い、聖職者が結婚してるのがふつうである日本人にはわかんない感覚ですかね、やっぱ。
今は巫女さんもヴァージンかどうかは不問だそうな。
……そういえば、「ゴーストハント」の綾子はどうだったんだろう???(おかあさんたら不潔!)

投稿: まいね | 2006年9月 7日 (木) 03時05分

綾子はヴァージンな気がする……

投稿: とむ影 | 2006年9月 7日 (木) 17時04分

そしてぼーさんは童貞ではないような気が。

投稿: とむ影 | 2006年9月 7日 (木) 17時06分

う…………うん(^_^;)

投稿: まいね | 2006年9月 7日 (木) 20時05分

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